外国人だから日本で働きにくい、なんてない。― 韓国出身の私が、LIFULLで働き続けるワケ―

多様性を確保するための取り組みの一環として、外国人雇用にも取り組んでいるLIFULLでは、現在26名(※)の外国籍社員が働いている。注文住宅事業部の開発エンジニアとして働くホ・ヨンジュンは、2018年に祖国の韓国を離れ、LIFULLに入社した。ホ・ヨンジュンはLIFULLに惹かれた理由を「会社のビジョンに共感したから」だと語る。今年で入社から6年目を迎えたヨンジュンに、LIFULLで働くことについて語ってもらった。(※)2023年9月期時点

LIFULL 社員 ホ・ヨンジュン

自分の祖国を離れて、異国の企業で働く。その事実だけで、当事者にしかわからない相当な不安や困難があることは容易に想像できる。今回取材に応じてくれたヨンジュンも、きっとこれまでに数々の困難に直面してきたのではないだろうか。そう質問を向けると、ヨンジュンは異国の地で働く自らの心構えを語ってくれた。

多様な人たちを迎え入れる環境づくりだけに終わらず、その能力を最大限に発揮できるような環境をつくることを目指すLIFULLを、外国籍社員の視点から見てみる。

「違いを理解すること」と「わからないと言える勇気を持つこと」が、外国で働く上で大切です

2018年に新卒でLIFULLに入社し、現在は注文住宅事業部の開発エンジニアとして働くホ・ヨンジュンは韓国第三の都市・大邱の出身。LIFULLで働くことになるまで、日本で本格的に暮らしたことはなかったというヨンジュンは、日本語も韓国にいながら学んだという。なぜ日本で働こうと思ったのか、その経緯についてまず尋ねてみた。

「韓国の男性は、兵役が終わるとこれから何をして生きていけばいいのか悩む人が多いのですが、僕も兵役を終えて大学に戻ってきた後、これからどうしようかなと考えました。そうした時に大学に海外就職をメインの進路にしている専攻がありまして、その日本就職クラスを教授におすすめされたんです。そこから日本語を学び始めました。元々日本のアニメは好きでしたし、浜崎あゆみとかJ-POPもよく聴いていました。だから日本自体には親しみはありましたね」

そうして大学時代は日本語の習得に励むと同時に、ヨンジュンは社会課題にも興味を持つようになる。大学の卒業研究では視覚障がい者向けのサービスに取り組んだという。

「みなさん全く目が見えない人のことを、いわゆる『視覚障がい者』だと思っている方が多いと思うんですけど、実は全く見えないことの方が少ないんです。ぼやっと見える方もいるし、見える範囲がすごく狭いという方もいます。一言で視覚障がい者と言っても、そこにはレイヤーがあり、いろんな障がい者向けのサービスが世の中に存在してることを知って、そうしたサービスに興味を持つようになりました。僕が大学の卒業プロジェクトのチームで開発したのが、本をスキャンして文字を点字端末に出力するアプリでした。従来も視覚障がい者の方は点字端末で本を読むことはできましたが、点字端末用にデジタル化された本でなければ読むことができないという問題点がありました。その問題を解決するために、視覚障がい者の方が自分のスマホで活字の本を読めるアプリを作ったんです。そのスキャン技術はGoogleが提供しているものですが、その経験を通して技術は社会的に弱い立場の方に役立つものなんだということを感じました」

LIFULL 社員 ホ・ヨンジュン

技術を社会課題の解決に活かす、というのは就職先を決める中でヨンジュンの大きなテーマになった。そして就職活動を進める中で、LIFULLのビジョンに惹かれていくようになる。

「やはり技術というのは何かしらの課題を解決するために発展していくものだと思っています。LIFULLはまさに社会の課題に対して技術で解決していこうと考えていた会社だったので、そのビジョンにはものすごく共感しました」

その後無事内定をもらえたヨンジュンだったが、春から日本での新生活をスタートさせるため住居探しで日本を訪れた際に、思わぬところで日本の壁に直面することになる。

「最初日本に来ても銀行の口座もないし、電話も契約していないですよね。でも、家を借りるためにはそれらがないと契約できないんです。そこがまず苦労したことでした。それで、携帯を契約しに行ったら、銀行口座がないと契約ができないと言われたり(笑)。当時はまだ韓国の大学生でしたので、家を借りるための準備に必要なことを全く知りませんでした。それにいざ家探しを始めても、緊急連絡先が日本人じゃなきゃダメだったり、そもそも外国人には貸してない物件だと言われたこともありました。もし、韓国に来る前にそうした苦労があると知っていたら、無理だと思ったかもしれません。その時は、ただ『生き残らなきゃ』と必死でしたから、なんとか乗り越えられました」

異国の地で働くために大切なこと

そうした家探しでの苦労に加え、働き始めてからも当然大きな苦労があったに違いないと思い、ヨンジュンに仕事での苦労はなかったか尋ねてみた。しかし、周囲のサポートもあり意外とそこまでの大きな苦労はなかったそうだ。「周りの人に恵まれました」とヨンジュンは当時のことを振り返る。

「日本語のコミュニケーションは大丈夫でしたが、業界用語とかは学ぶ機会がなかったので、わからないことがあればその都度先輩に聞いて確認していきました。僕が入社した時は、チームに先輩のエンジニアが4人ほどいたのですが、みなさん年齢が近くてとても話しやすかったです。すごく頼りになる存在でした。また、LIFULLでは上司とのコミュニケーションの時間を大切にしています。週一回、1対1で上司との面談の時間があるのでそこで困ったことがあれば相談したりしていました」

また、LIFULLでは外国籍社員や様々なバックグラウンドを持つ社員が集うランチ交流会が開催されたり、韓国料理を食べるだけのサークルも存在しているという。様々な国籍の社員が集う交流の場は、外国籍社員同士が繋がったり相互理解を深める場となっている。ヨンジュンも時々参加するそうだ。

「私も韓国料理を食べる会にたまに参加しますが、そこではブラジル、アメリカ、ベトナム、もちろん日本も様々な国の方が参加しているので面白い話が聞けて楽しみなんです。ちなみに今は新大久保が韓国料理の有名な場所ですが、あそこは若者向けの料理が多いイメージです。ちょっと高級で美味しい韓国料理を食べるなら赤坂、昔からやっている老舗の韓国料理は上野、コスパがいい店は新橋に集まっているので、ぜひオススメです」

LIFULL 社員 ホ・ヨンジュン

LIFULLの環境はとても働きやすいとヨンジュンは語る。しかし自分の祖国を離れて異国の企業で働くというのは大きなストレスも生じやすいのではないだろうか。日本の企業で働くということは、外国籍の社員はどうしても「マイノリティ」になってしまうことを意味する。ヨンジュンの日本語はとても上手だが、微妙なニュアンスの違いに戸惑うこともあるだろう。そしてお隣の韓国出身といえど、文化習俗も異なる国での暮らしに戸惑う場面に直面することも多いはずだ。

ヨンジュンに改めて問いかけると、外国で働く上でヨンジュンが考える二つの大切なことを教えてくれた。

「まず第一に、『違いを理解すること』が大切です。日本と韓国だけじゃなくて、他のどんな国で働いても自分の育ってきた環境とは全く違うはずです。母国との違いに慣れずに、ストレスが溜まって帰ってしまう人がいますが、その違いを理解できればすごく楽になると思います。僕は自分の強みを『慣れること』だと考えています。それはすぐに違いを理解できるからだと思っています。だから多分、日本じゃなくてもどんな国に行っても変わらずに働けると思います」

LIFULL 社員 ホ・ヨンジュン

「二つ目の大切なことは、『わからないと言う勇気を持つこと』です。なぜかというと、やはり日本語的にどうしてもわからないところが仕事中に出てきたりしますが、わからないままその場をやり過ごして、後で何か問題となってしまう方がもっと大変だからです。細かいところから、『これはどういう意味ですか?』『なぜこれはこうなるのですか?』というのは常に聞くようにしていました。わからないことは恥ずかしいことではありません。逆にわからないことを隠す方がよっぽど恥ずかしい。わからなければ、学べばいいんです」

「違いを理解する」「わからないと言える勇気を持つ」。ヨンジュンが挙げたこの二つのマインドは確かに言われてみれば大切なことだとわかるが、実際にそれを実行できるかはまた別問題だ。ヨンジュンも「確かに難しいかもしれません」と語る。しかし続けて、「でもそのままでは何も変わらない。自分が苦しまないためにも必要なんです」。

「自分のやりたいことが実現できる会社」が、みんなが働き続けたいと思う会社

この4月から入社6年目に突入し、ヨンジュンは注文住宅事業部のエンジニアチームの中でも古株のメンバーとなってきた。これまでの期間を「あっという間だった」と振り返るヨンジュンだが、それはLIFULLで働く時間が充実していたことの証明かもしれない。

「僕はLIFULLの会社としての姿勢に共感して入社しましたが、LIFULLで働く人たちもその姿勢を体現している人たちが多いです。とてもフラットな会社だと感じています。コロナ禍の際には、韓国にいる家族の体調が悪くなり手術をしないといけない状態になりました。当時はまだ海外に渡航したら2週間の隔離期間が必要な時期でしたが、会社は僕の要望を通してくれて韓国で1か月以上在宅勤務として働くことができました。そういった個人の事情にもフレキシブルに対応してくれて、改めていい会社だと感じましたね」

「まだまだLIFULLで働きたい」と語るヨンジュンに、外国籍の社員が働き続けたいと思う企業とは、どんな企業なのかを最後に尋ねてみた。

多分、外国籍だからどうかとか関係なく、全ての社員にとって『自分のやりたいことが実現できる会社』かどうかが重要なのだと思います。やりたいことは人それぞれで違うでしょう。お金が一番大事だと言う方もいるし、自分の理想とするキャリアプランがある人もいます。もちろん外国籍社員も一人ひとり考えていることは違うはずです。その個々人の希望を受け止めて、実現のために尽くしてくれる会社であれば、誰もが働きたい場所になるはずです。

取材・執筆:平木理平
撮影:阿部拓朗

LIFULL 社員 ホ・ヨンジュン
Profile ホ・ヨンジュン

2018年にLIFULLに新卒入社。住宅・不動産情報サイトLIFULL HOME'Sの注文住宅事業部所属のエンジニアとして働く。

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