自立した女性は何でも完璧じゃなきゃ、なんてない。【第4回】
2019年12月にYouTubeに登録し、「バービーちゃんねる」を開設。今やチャンネル登録者数は21万7,000人(※1)の人気YouTuberである。メイクや美肌をテーマにした動画はもちろん、生理用品や生理痛、ピル、性に関することなどデリケートなテーマを扱った動画も配信。日本のジェンダー観の変容や現状を見つめ、自分の発信で若い世代に伝えていきたい衝動がある。「きっとみんなが知りたがっているはず」「困っている人がいるはず」だから「動画にしよう」という彼女ならではの純粋な思いがあった。
※1 2021年2月時点
テレビやラジオへの出演、YouTube配信、下着のプロデュース、そして地方創生の取り組みと、多方面で活躍するお笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービーさん。昨年は雑誌「FRaU」のWeb連載がきっかけで初のエッセイ集『本音の置き場所』を出版。「最も信頼の置ける言葉を持つ芸人」の一人として、その発信力と多動力が注目されている。誰もがふと思うなにげない日々の疑問を独自の視点で切り取り、言語化する彼女の感性はいつごろから形成されたのだろうか。さまざまなテーマをもとに彼女の本音を探っていく全5回のシリーズ。第4回は「YouTubeでの活動」について。
「困っている人」「情報を探している人」の役に立ちたい
2020年2月に配信した生理用品の使い方を解説する動画は、再生回数300万回を突破。約1万2,000近くのコメントが寄せられるほどの大反響だった。
「私は性教育の専門家ではないので、自分の経験談をもとに『生理用品はこう使うんだよ』と教えられたらいいなと思って動画を作りました。女性特有の生理現象だけど、父親しかいなくて誰にも教えてもらえない家庭環境にいる子どもも多いでしょうから、私の動画が役に立つといいなと。いざ動画をアップしてみると、想像以上に生理に関する情報を欲している人が多いんだなと思いました。寄せられたコメントには、『折り畳み方を知らなかった』とか『ナプキンの粘着テープ面を陰部に直接貼っていた』とか本当に初歩的なコメントも多くて(笑)。それと同時に感じたのは、『生理のことは誰にも話しちゃいけない』と生理の話題はタブーだと信じ込んでいる人が本当に多いということ。日本の性教育って、すごく閉ざされた世界なんだなって改めて知ることができましたね」
10代の男性であろうとおぼしきコメントがたくさんあったことにも驚いた。
「セクシュアリティをテーマに扱う動画には、男性からの偏見に満ちたコメントもいくつかありましたが、若い世代の方からは『勉強になりました』とか『これからできるパートナーのために知っておきたい』っていうコメントが多くて驚きました。YouTubeに慣れ親しんでいる10代の子は、こんなにもフラットな感覚で性に関する情報にアクセスをしているんだなと。
その半面、純粋な気持ちで性教育の情報を知りたい、学びたいって思っていたらいいんですけど、“ジェンダー観を変えていかなきゃダメだ” みたいな、大人が先導する社会の正義感や同調圧力を押し付けられていないかな、窮屈じゃないかなって時折心配になります」
「私がすすめたから」ではなく、最後は自分で判断してほしい
とある企画で大学生たちとオンライン対談をした際に、「ダイエットすること」「メイクしてかわいくなること」が罪だと思い込んでいる若い世代がいることを知った。
「ルッキズムとかボディポジティブといった考え方を知り『外見主義にとらわれちゃダメだ』という激しい思い込みをしたがゆえに、ダイエットやメイクに嫌悪感や罪悪感すら持ってしまう。そんな10代、20代の若者たちに、多様性やジェンダーフリーといった社会正義を大人が押し付けている形になっていないかなと危惧しています。
私のYouTubeチャンネルを見てくれた10代の男性から、フェミニズムな価値観を持っているなと感じるコメントをたくさんもらいました。でも、私の動画がきっかけで『自分の考えが間違っていた。正しい知識を知ろう』という気づきになればいいんですが、『そうしなきゃダメなんだ』という強迫観念にまで発展していたら、違うと思うんですよね」
時にはWeb広告やネットニュースにて、自分の真意ではない言葉を切り取られ、意図しないタイトルで発信されることに違和感を持っているという。
「美容クリニックで施術体験をしている動画でも言っていますが、答えは一つじゃないんです。クリニック、皮膚科医、コスメの専門家と対談して、『いろんな治療方法があります、あなたはどれを選択しますか?』と選択肢を視聴者に提示しています。私個人が発信しているYouTubeでは、『うのみにしないで、自分で選択してね』というメッセージを伝えていきたいんですよね」
~自立した女性は何でも完璧じゃなきゃ、なんてない。【第5回】へ~
1984年、北海道生まれ。本名・笹森花菜。東洋大学文学部インド哲学科を卒業。2007年、ハジメとお笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。2019年末にYouTubeチャンネル「バービーちゃんねる」を開設。生理や女性下着、美容といったテーマの動画を配信し、主に同性から支持を得ている。
2020年末には、「FRaU」 webでの連載をまとめた初の著書『本音の置き場所』を上梓。また、ピーチ・ジョンとのピーチ・ジョンとのコラボ下着のプロデュースを担当し、
コラボレーションコレクション第2弾が2021年2月17日に全国発売された。芸人、下着プロデューサー、作家、ラジオパーソナリティーなど幅広いジャンルで活動中。
YouTube Official
https://www.youtube.com/c/barbie0126/featured
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