事実婚と同棲の違いとは?法律・生活・制度の差をわかりやすく解説

「事実婚」と「同棲」は、どちらも婚姻届を出さずに一緒に暮らすという点では共通しています。しかし、法律上の扱いや受けられる権利には大きな違いがあります。事実婚は「夫婦として生きる意思と社会的な夫婦実態がある関係」を指し、同棲は「恋人として一緒に住んでいる状態」を指します。この違いを正しく理解しておかないと、いざというときに思わぬ不利益を被る可能性があります。本記事では、事実婚と同棲の違いを多角的な視点から解説し、トラブルを避けるためのポイントまでご紹介します。

事実婚と同棲の違い

事実婚と同棲は、外から見ると同じように見えることもありますが、法律上の位置づけは大きく異なります。ここでは、それぞれの定義や成立要件を確認し、両者を区別するポイントを整理します。

事実婚の定義と成立要件

事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、お互いに夫婦として生活する意思を持ち、夫婦同然の共同生活を営んでいる関係を指します。法律用語では「内縁」とほぼ同じ意味で使われることが多く、判例上「婚姻に準ずる関係」として一定の法的保護を受けられます。

事実婚が成立するためには、主に以下の要件が必要とされています。

  • 互いに「夫婦である」という婚姻意思があること
  • 一定期間の同居と共同生活の実態があること
  • 周囲からも夫婦として認識されている社会的実態があること

同居期間については、目安として2〜3年以上で事実婚と認められやすいとされていますが、厳密な年数要件は法律で定められていません。生計を共にし、家事や生活費を協力して営んでいるかどうかが重視されます。

同棲の定義と成立要件

同棲とは、婚姻の意思を持たずに、恋人同士が一緒に住んでいる状態を指します。一般的には「入籍していない者同士が同居して生活していること」と定義され、法的には単なる同居・交際関係として扱われます。

同棲には、事実婚のような婚姻意思や「夫婦」としての自認は必要ありません。同居開始の時期や期間、家計の一体性なども多様であり、法律上は原則として婚姻から生じる権利・義務は認められません。

両者を区別する判断ポイント

事実婚と同棲を区別する最も重要なポイントは、「婚姻意思の有無」と「夫婦としての共同生活実態」です。以下の表で両者の違いを整理しました。

項目 事実婚 同棲
婚姻意思 あり(夫婦として生活する意思) なし(恋人としての同居)
共同生活の実態 夫婦同然の生計共同 多様(必須ではない)
周囲からの認識 夫婦として認識されている カップルとして認識
法的保護 一定の保護あり 原則なし

長期間一緒に暮らしていても、婚姻意思がなければ法律上は同棲として扱われます。逆に、同居期間が短くても、双方が夫婦として生活する意思を明確に持っていれば、事実婚と認められる可能性があります。

法的・金銭的な面における違い

事実婚と同棲では、税金・社会保障・相続など、お金に関わる制度上の扱いが大きく異なります。ここでは、具体的な制度ごとに違いを解説します。

税金と配偶者控除の扱い

所得税の配偶者控除や配偶者特別控除は、原則として法律婚をしている夫婦のみが対象となり、事実婚や同棲では適用されません。これは、税法上の「配偶者」が戸籍上の婚姻関係にある者に限定されているためです。

そのため、事実婚カップルは法律婚の夫婦と同じように生活していても、税制上のメリットを受けられないケースがあります。同棲の場合も同様に、配偶者に関する税控除は一切適用されません。

年金や健康保険など社会保障の扱い

社会保障制度においては、事実婚と同棲で扱いが分かれる場合があります。健康保険の被扶養者認定では、事実婚を「事実上の配偶者」として認める運用が行われている一方、同棲は対象外とされるのが一般的です。

遺族年金についても、事実婚のパートナーが受給できるケースがありますが、法律婚よりもハードルが高く、事実婚であることの証明が求められます。同棲の場合は、原則として遺族年金の受給対象にはなりません。

制度によって扱いが異なるため、自分たちの関係がどのように認定されるかを事前に確認しておくことが重要です。

遺産相続と相続税での扱い

事実婚のパートナーには法定相続人としての権利がなく、遺言書がなければ相続を受けることができません。これは同棲の場合も同様です。法律婚の配偶者であれば当然に相続権がありますが、事実婚・同棲ではそうした保護が及びません。

相続税においても、法律婚の配偶者には「配偶者の税額軽減」という大きな優遇措置がありますが、事実婚・同棲のパートナーには適用されません。そのため、パートナーに財産を残したい場合は、遺言書の作成や生前贈与などの対策が必要になります。

子どもの戸籍と親権における扱い

事実婚のカップルの間に生まれた子どもは、法律上は「非嫡出子」として扱われ、母親の戸籍に入ります。父親が認知することで法律上の父子関係が成立しますが、法律婚の場合とは手続きが異なります。

親権については、事実婚の場合は原則として母親が単独で持つことになります。父親が親権を持つためには、認知に加えて別途の手続きが必要です。同棲の場合も同様の扱いとなります。子どもがいる場合は、将来のことを見据えて認知や親権について話し合っておくことが大切です。

事実婚と同棲における実務対応とトラブル回避

事実婚や同棲を選択する場合、法律婚とは異なるリスクがあることを理解し、適切な対策を講じておくことが重要です。ここでは、実務的な対応方法とトラブル回避のポイントを解説します。

事実婚で有効な証拠と証明方法

事実婚を証明するためには、婚姻意思と共同生活の実態を示す客観的な証拠を残しておくことが重要です。万が一の紛争時に、事実婚であることを立証できなければ、法的保護を受けられない可能性があります。

事実婚の証拠として有効とされるものには、以下のようなものがあります。

  • 住民票の続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」と記載する
  • 事実婚契約書や合意書を作成する
  • 共同名義の銀行口座や保険契約
  • 結婚式の写真や親族への紹介記録
  • 生活費の共同負担を示す家計簿や明細

これらの証拠を複数そろえておくことで、事実婚としての関係を客観的に示すことができます。

同棲中に作っておくべき合意書やルール

同棲には法的保護がほとんどないため、別れた際のトラブルを防ぐために、あらかじめルールを決めておくことが望ましいです。特に、長期間の同棲や共同で財産を築く場合は注意が必要です。

同棲を始める際に話し合っておきたい項目として、以下が挙げられます。

  • 生活費の分担方法と負担割合
  • 共同で購入した家具・家電などの財産の帰属
  • 賃貸契約の名義と解約時の対応
  • 別れる場合の引っ越し費用の負担

口頭での約束だけでなく、書面に残しておくことで、万が一のトラブル時に役立ちます。

賃貸や住宅購入での名義と保証の取り扱い

事実婚・同棲いずれの場合も、賃貸契約は可能ですが、契約者名義や保証人の扱いで法律婚とは異なる対応を求められることがあります。

住宅ローンについては、事実婚を「実質的配偶者」としてペアローンを組める金融機関がある一方、婚姻を条件とする金融機関もあります。

項目 法律婚 事実婚 同棲
賃貸契約 問題なし 可能(審査あり) 可能(審査あり)
住宅ローン(ペアローン) 可能 金融機関により可能 金融機関により可能
住民票の続柄 夫・妻 夫(未届)・妻(未届)等 同居人

住居に関する大きな決断をする前に、自分たちの関係がどのように扱われるかを確認しておきましょう。

別れや死別時の手続きと備え方

事実婚や同棲を解消する場合、法律婚の離婚とは異なり、届出などの法的手続きは必要ありません。しかし、財産の分配や住居の問題で紛争になることがあります。

事実婚の場合は、内縁解消に伴う財産分与や慰謝料請求が認められる可能性がありますが、同棲の場合は原則として認められません。死別の場合も、事実婚・同棲のパートナーには相続権がないため、遺言書がなければ財産を受け取ることができません。

将来のリスクに備えて、遺言書の作成や生命保険の受取人指定などの対策を検討しておくことをおすすめします。

まとめ

事実婚と同棲の違いは、「夫婦として生きる意思と社会的な夫婦実態があるか」という点に集約されます。事実婚は一定の法的保護を受けられる一方で、同棲には原則として法的保護がありません。

税金・社会保障・相続など、お金に関わる制度上の扱いも大きく異なります。自分たちの関係がどちらに該当するかを正しく理解し、必要に応じて証拠を残したり、専門家に相談したりすることが大切です。

どちらの形を選ぶにしても、パートナーとよく話し合い、将来のリスクに備えた対策を講じておくことで、安心して暮らすことができるでしょう。

LIFULL STORIES編集部

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