おしゃれは可愛い子の特権、なんてない。―こすぱっしょんゆりえに聞く“なりたい”より“ありたい”から始めるおしゃれ―

こすぱっしょんゆりえ

「職場に何を着ていけばいいの?」。新生活を前に、そんな不安を感じている人は少なくないはずだ。ファッションをセンスではなく理論で解説した動画が人気を博し、YouTubeで54万人超のファンを持つこすぱっしょんゆりえさんに、おしゃれのコツやオフィスコーデを楽しむポイントを聞いてみた。

こすぱっしょんゆりえさん

「おしゃれに大切なのはセンス」「結局スタイルのいい子しかおしゃれはできない」。そんなふうに考えたことはないだろうか。ファッションに興味はあれど、なかなか思い通りの服装はできていないという人は少なくなさそうだ。

今回話を聞いたこすぱっしょんゆりえさんは、そんな不安を打ち消してくれるような発信を続ける。「モデル体型ではないからこそ、自身を魅力的に見せるコツを」と、これまでに1000本以上の動画を公開してきた。

「普通」の人がおしゃれを楽しむカギはどこにあるのか。ゆりえさんに聞いてみた。

「なりたい」ではなく「ありたい」自分をイメージして

スポーツ一筋の生活を送った10代

愛知県出身のゆりえさん。今でこそ、ファッションを主軸に活動しているが、振り返ると、特別おしゃれに関心があったわけではないという。

「雑誌をたくさん読んでいたとか、ブランドに詳しかったとか、そういうわけではありません。服を買うといっても、地方都市のショッピングモールによくあるお店だけ。母の買い物に付いていって、たまに『これ買ってよー!』とねだるくらいの関心度合いでした」

そんなゆりえさんが力を入れていたのはスポーツだ。幼少期から運動が得意で、姉や周りの影響もあり6歳の頃からソフトボールに打ち込んできた。

「今振り返ると、特別ソフトボールが好きだったというわけではない気がするのですが、部活動の雰囲気は好きでした。みんなで一生懸命に練習した後に、部室でワイワイとする時間。仲間と過ごす時間が好きだったし、得意な運動でみんなに貢献できるならやろうという気持ちで続けていました」

こすぱっしょんゆりえさん

得意を活かして体育教師になることを目標に、大学に入学。小学生の頃に始めたソフトボールも続けた。しかし、ある授業をきっかけに、ゆりえさんは初めて別の進路を考えるようになる。

「体育専攻だったので、周りの学生も命をかけてスポーツをやっているような人ばかりでした。でも、ある授業で『スポーツの起源は暇つぶし。もともと余暇に楽しむものである』と知って、もしかしたら別の考え方もあるのかなと気づいて。『スポーツに本気で取り組むこと=正しい』ではないかもしれないと考えるようになりました。

私にとっては、『当たり前』が覆るような体験でした。それから自分って本当にスポーツが好き? 本当に先生になりたい? と考え直して、別の道もあるなと思ったんです」

自分の中の常識が大きく揺らいだゆりえさんは、部活を辞める選択をした。これが、ゆりえさんにとって、初めての自分の意思で下した決断だったという。進路を見つめ直し、就職活動を始めた。

ジャージ姿の同級生に囲まれて、スカートで通学

ここまで聞いて、ファッションインフルエンサーとしての活動につながるきっかけはどこにあるのか、と疑問に思う。しかし、このスポーツ畑で長い時間を過ごしてきた経験こそが、いまのゆりえさんの活動につながっている。

ゆりえさんが専攻していた体育系の学部では、学生たちは基本的にジャージ姿で通学する。スカートを履いて登校しようものなら「デート? デート?」と大騒ぎになるほどの環境だった。そんななかでも、おしゃれにも関心を持ち始めていたゆりえさんは、純粋な興味から私服で通学するようになる。

「最初は、体育系の学生におしゃれなんて、どうせ無理だろうという諦めの気持ちもあったんです。運動でがっしりした体型の私は、細くて何を着ても似合うような女の子にはなれないって。でも、スポーツをやっていたからこそなのか、だんだん自己ベストを出したいという気持ちになってきて(笑)。『あの子』にはなれなくても、いい感じの自分にはなれるだろうと思って、おしゃれへの興味が深まっていきました」

こすぱっしょんゆりえさんの手元

同級生たちは、そんなゆりえさんを頼り始める。普段はジャージ姿の友人たちが「デートの服どうしよう……」「服を貸してほしい」と相談してくることが増えたのだ。同級生たちの相談に乗っているうちに「自分の体型をより魅力的に見せるのが得意なのかもしれない」という手応えが生まれた。自身が経験してきた試行錯誤は誰かの役に立つかもしれないと考え、Instagramで発信を始めた。

そして、2020年4月にはYouTubeもスタート。自分なりにファッションのポイントを分析して、解説するコンテンツを発信してきた。さらにその後、ゆりえさんはHR系の企業に就職。しばらくの間、朝4時に起きて撮影、通勤・退勤電車の中で動画編集をし、日中は会社員の仕事をこなすという日々が続いた。

数ヶ月後、ゆりえさんはまた大きな決断をする。会社員を辞めて、ファッションインフルエンサー1本で生活していくことを決めたのである。

「今、このタイミングを逃したらもったいないって思ったんです」

上司に強く引き止められながらも入社から約3か月で退職を決断。「もしうまくいかなかったら、また雇ってください」と言い残し、発信活動に専念する道を選んだ。現在は自身のブランド「crewre」のディレクターも務め、YouTubeチャンネルの登録者数は54万人を超える。

こすぱっしょんゆりえさん

徹底的に試す・分解するロジカルなおしゃれ

数年の間に大きな変化を遂げたゆりえさんだが、どのようにファッションの知識やセンスを磨いていったのだろうか。「特別なことはしていない」というゆりえさんだが、話を聞いていると、人一倍、実験していることがわかる。

「試着はたくさんします。たとえばものすごく暇な日に、GUやユニクロに行って、同じ商品の色違いやサイズ違いを端から端まで試着したこともあります。私はこっちのサイズの方が似合うなとか、同じ黄色でもこういう黄色だと似合うなとかわかってくるんです」

他にも、自分のコーディネートを毎日スマートフォンで撮りためて、客観視する習慣も役に立ったという。「スマホの画面を通すことで、急に他人を見るように客観視できる」そうだ。さらに、「自分に似合うもの」を見つけるために、こんな考え方もするようになった。

「視聴者さんやフォロワーさんからよく『可愛いと思うもの、着たいもの、似合うものが全部少しずつずれて困っている』という相談を受けます。わたしも自分がかわいいと思った人の服を真似しては失敗してきたので、よくわかります。

でも、全部諦めたくないですし、『可愛い』と思った気持ちは絶対にとっておいた方が良いと思うんです。そういうときは、好きなものの要素分解をするのがおすすめです。可愛いと思ったフリルブラウスの、甘さが好きなのか、薄ピンクの色が好きなのか、装飾のふわふわ感が好きなのか、細かく分解する。そうすると自分に似合うものと好きな部分を兼ね備えた服が見つかりやすくなります」

こすぱっしょんゆりえさん

「自分に似合うもの」を見つけるという意味では、ここ数年で多くの人が意識するようになった骨格診断やパーソナルカラー診断に頼るのも有効そうではないか。しかし、そう尋ねるとゆりえさんはこう言う。

「数種類のタイプに当てはめて終わりにしてしまうのはもったいなくないですか? 『イエベだから青が似合わない』とするのではなくて、なぜこの青が似合わないのかまで掘り下げるのが大事だと思うんです。すると、『青の中でもこういう青なら似合う!』というのが見つかると思っていて。世の中には可愛い服がたくさんあるのに、診断で4分の3を切り捨てるのはもったいない」

自分にはおしゃれなんて……とすぐに折れるのではなく、徹底的にロジカルに、そして前向きにファッションと向き合う。そんな姿勢がいまのゆりえさんのスタイルを作り上げているのだ。

オフィスでもプライベートでも「いい感じ」だった自分を再現

ゆりえさんは、仕事着としてもおしゃれ着としても通用するようなスタイリッシュなコーディネートを得意とする。しかし、以前からそういったコーディネートを得意としていたわけではない。新卒時には真っ赤なパンツや、パイソン柄のパンプスで通勤したこともあるという。

「今思うと、大丈夫? と思うような格好で通勤していました(笑)。オフィスコーデという枠にハマるのが嫌だったんですよね。周りの先輩たちも優しかったので、『今日も明るくていいね!』なんて言ってくれて。でも、今の私だったらおすすめしないかな」

こすぱっしょんゆりえさん

では、今のゆりえさんだったらどんな服装で通勤するのだろうか。これから迎える就職シーズンに向けて、ゆりえさんにオフィスコーデのコツも聞いてみた。

「個人的に、休日ファッションのようなおしゃれが必ずしも必要とは思いません。まず大切なのは、職業やその日に会う相手と調和していること。清潔感や信頼感があること。その上で、自分の気分を上げるためのおしゃれを加えていくのが良いと思います」

具体的なアイテム選びのコツとして、次のようなポイントを挙げる。

「まずは、使いやすい色のアイテムから集めるのが良いですよ。例えば、ボトムスとアウターを黒・ネイビー・ダークブラウン・グレーなどの重めの色にし、トップスをベージュやライトグレー、ホワイトなどの明るめの色にすると、まとまって見えます。

それから、色味以外にもオフィスコーデなら特に、収納しやすいことやシワになりにくいことも大事です。デスクワークが増えたり、移動したりしてもいつでもカッコよく見えるように機能もチェックしてみてください」

こすぱっしょんゆりえさんブランドのジャケットシワになりにくく、コンパクトに収納できるジャケットは抜群に使い勝手が良い

徐々に慣れてきたら、色の組み合わせやトップスの装飾で遊ぶことも提案してくれた。

「黒のパンツに白のトップスだったのを、グレーのパンツにベージュのトップスにするとか。どちらもベーシックな色ですが組み合わせによって、小慣れた印象になります。シンプルなシャツから、少しだけフリルのついたシャツに変えてみるのも良いですよね」

こすぱっしょんゆりえブランドのバッグ

こすぱっしょんゆりえさんブランドのベルトバッグやベルトもシンプルな黒からそろえるとコーディネートが組みやすい

初心者からすると、どうしていいのかわからないとなりがちなおしゃれも、ゆりえさんの話を聞いていると、急に攻略可能な問題になったように感じる。これまで、自身の考えを数々のコンテンツにしてきたゆりえさんの言葉には説得力がある。

しかし、細かなコツは数々あれど、ゆりえさんは一番大切なことは「なりたい」ではなく「ありたい」自分でいることだと語る。最後に、ゆりえさん流の心地よくおしゃれを楽しむ一番のポイントを教えてもらった。

「なりたい」自分というと、不足している状態に何かを足したり、大きく自分を変えていかなければいけないイメージになります。でも、「ありたい」自分というと、すでに経験している自分から選びとるイメージになる。「あの時の自分、いい感じだったな」という瞬間、あると思うんです。そういう自分でいられる瞬間を増やすと、しっくりくる自分に近づけるはずです。

取材・執筆:白鳥菜都
撮影:阿部 拓朗

こすぱっしょんゆりえさん
Profile こすぱっしょんゆりえ

YouTubeやInstagramでファッション関連のコンテンツを発信。センスだけではなく、理論でわかりやすく解説した動画で人気に。自身のブランド「crewre(クルーレ)」のディレクターも務める。


Instagram:https://www.instagram.com/cospashionyurie/
YouTube:https://www.youtube.com/@cospashionyurie
TikTok:https://www.tiktok.com/@yuri_hnbn
crewre : https://crewre.jp/

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