【対談】「解きたい課題」が技術を、そして組織を強くする。LIFULLの「経営をリードするエンジニア」

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LIFULLのエンジニアたちには、「エンジニアとして経営をリードする」という共通のエンジニア像がある。ただ技術を磨くのではなく、事業や社会課題に向き合い、問いを立て、価値を生み出すために自己研鑽する。この姿勢はどのように生まれ、組織に根付いてきたのだろうか。

CTO/CAIO長沢翼×シニアプリンシパルエンジニア相原魁

今回は、CTO/CAIOの長沢翼と、LIFULLグループ共通のアプリケーション実行基盤「KEEL」の開発を主導し、現在はAIイノベーション本部も兼務するシニアプリンシパルエンジニアの相原魁による対談をお届けする。経営をリードするために必要な4つの要素をはじめ、LIFULLだからこそ踏み出せる挑戦、そしてAI時代に求められるエンジニア像について語ってもらった。

エンジニアリングの面白さは、一人で100人分の成果を出せること。新卒4年目に構築した基盤が、今では人々の生活やビジネスを支える土台となっています。自分の手がけた仕事が何倍にもスケールし、大きな価値へとつながっていくことに、最高の魅力を感じます。(相原魁) 

新卒4年目で全社共通基盤を直談判。「経営をリードする」エンジニア像と4つの要素 

――LIFULLのエンジニア像「エンジニアとして経営をリードする」という言葉が生まれた背景から教えてください。

相原魁(以下、相原) 僕は2015年に新卒入社しましたが、長沢さんが2017年にCTOに就任されてから、LIFULLの理想像が明確になっていった記憶があります。

長沢翼(以下、長沢) 相原くんが入社した頃は、LIFULLのエンジニアが目指すべき価値の言語化や共通認識がまだありませんでした。そこでマネジャー陣と議論を重ね、この理想像と、体現に必要な「4つの要素」を策定したんです。

CTO/CAIO長沢翼

長沢  1つ目の要素は「問題・課題に対して本質を考え続ける」。生成AIが普及した現代に最も重要な力です。企画職の要望をそのまま実装するのではなく、本当にその解決策が最適なのかを自ら論理的に考え、より良い提案を発信していく姿勢を大切にしています。

2つ目は「建設的にエンジニアとして伝え・表現し続ける」。私たちの最大の強みは「実際にものを作れる」こと。言葉で説明するより、プロトタイプを見せるほうが議論は早く進みます。相原くんが開発した「KEEL(グループ共通のアプリケーション実行基盤)」がまさに好例ですね。

相原 入社当時はAWSへの移行期でマイクロサービス化が進んでいましたが、チームごとの品質のバラつきや、共通機能の重複(車輪の再発明)が課題となりつつありました。「いずれ全社共通の基盤が絶対に必要になる」と確信し、実はプライベートで3年ほど、Kubernetesベースのプラットフォームを自主開発していたんです。だから、社内で基盤刷新のプロジェクトが立ち上がったとき、「僕が作ってきたこれが使える。任せてほしい」と長沢さんに直談判しました。

長沢 当時から相原くんの成長の早さと、主体的に取り組む姿勢が際立っており深く信頼していました。提案を受けたときも、技術的な重要性はさることながら、何よりも「社内で一番これを理解し、熱量を持っている相原くんにこそ任せたい」と迷わず決断しました。

相原 事業成長に必要な理由があり、実現できる力があると認められれば、役職や年次に関係なく挑戦の機会をくれる。LIFULLはそういう会社です。「KEELはこれからのLIFULLを支えるために不可欠な基盤だ」という確信があったからこそ、新卒4年目でも迷わず動けました。

――4つの要素のうち、残る2つについても教えてください。

長沢 3つ目は「世の中の変化を理解し、自らも変化し、周囲や環境も変えていく」。生成AI領域では1ヶ月前の最適解が翌月には陳腐化することもあります。常に最新情報をキャッチアップして自らを変革し、より良いものづくりのために周囲を巻き込んで環境そのものを変えていけるエンジニアであってほしい。

そして4つ目が、すべての土台となる「技術力を身につける」。私たちはエンジニアなので、土台になる技術力を磨き続けることを大切にしたい。高い技術力があってこそ、解決できる課題の幅が広がり、社会へより大きなインパクトを生み出せます。

相原 キャリアの初期にLIFULLのエンジニア像と4つの要素を示してもらえたことで、僕自身の意思決定の軸になりました。現在、私が率いるKEELグループでも、普段の会話から「それは経営にどんなインパクトを出せるか」という視点が自然と飛び交います。技術をビジネスの価値へ転換していく思考が、LIFULLのエンジニアのDNAとして深く根付いていると感じます。

シニアプリンシパルエンジニア相原魁

「情報の非対称性」を解消するテクノロジー。脈々と受け継がれる利他の遺伝子 

――これまでのキャリアを振り返って、LIFULLだからこそ取り組めたと感じることはありますか?

相原 僕たちが開発している共通基盤の技術自体は、あらゆる企業で必要とされるものです。しかし、私は「LIFULLでこの仕事をする」ことに強い価値を感じています。「あらゆるLIFEを、FULLに。」というビジョンに向けて、当社はこれからも新たなサービスを生み出し続けます。その挑戦を、KEELというプラットフォームを使って最速・低コストで実現できるよう支えるのが僕たちの役割です。自分の仕事が事業の可能性を広げ、その先にある社会への価値提供へダイレクトに繋がっていると実感できるのは、LIFULLならではです。

長沢 当社の社是は「利他主義」であり、その精神はプロダクトに色濃く表れています。今では当たり前となった「地図検索」や「家賃相場」、ハザードマップの重ね合わせ表示も、私たちが業界に先駆けて実装しました。これらはユーザーにとって不可欠な情報ですが、事業者様にとっては不利益になる懸念もあります。それでも「あらかじめリスクを理解して住む場所を選べるほうが、絶対に良い」と、情報の非対称性を解消してきました。ユーザーにとって必要な情報を開示していくことが巡り巡って業界のためになると信じているからです。

この「テクノロジーで情報の非対称性を解消し、ユーザーの意思決定を支える」という利他の姿勢は、現在挑んでいる最新の統合型AIエージェント「LIFULL AI」にまで脈々と受け継がれています。後追いを選べばリスクは避けられますが、私たちは業界の常識を塗り替え、世の中に新しい仕組みを創り出したい。そんな「テクノロジーの業界初」を自らの手で仕掛け、社会の仕組みを創造していけることこそが、LIFULLでエンジニアをやる最大の魅力です。

CTO/CAIO長沢翼

国籍や拠点の壁を超えるワンチーム。生成AIによる「価値創造のスピード2倍」の未来 

――LIFULLのエンジニアは、どのようなキャリアパスがあるのでしょう。

相原 「マネジャー」と「スペシャリスト」という道がありますが、一度選んで終わりではありません。マネジャー経験後にスペシャリストへ進むなど、行き来が柔軟です。僕自身、キャリアを固定していませんが、今は現場でものづくりをするほうが組織やプロダクトに影響力を出せると考え、スペシャリストの道を歩んでいます。

長沢 私も最初に組織長を打診されたときは、マネジメントに進むべきかかなり迷いましたね。

相原 長沢さんはCTOでありながら常に現場の感覚も持ち合わせていて、スペシャリストとの会話もスムーズですよね。

シニアプリンシパルエンジニア相原魁

長沢 そこはCTOの責務として常に意識し続けている部分です。

相原 社内には、技術的な専門性を持って組織を見る「テクニカルマネジャー」という役割もあります。根底にある「技術力を磨き続ける」という意識は全員共通で、その上で組織か専門領域か、どこに軸足を置くかの違いだけ。決して二者択一ではありません。

――LIFULLのエンジニア組織には、どのような特徴がありますか。

長沢 特徴のひとつは、相原くんが所属している「テクノロジー本部」です。LIFULLグループ全体で利用する共通基盤やプラットフォームを作っていて、品質を支えています。一方で、LIFULL HOME'Sの各サービスを担当して、事業やユーザーに向き合う「プロダクトエンジニアリング部」があります。共通基盤を支える組織と事業に近い組織の両方があることで、事業成長のバランスを取れる体制になっています。また、優秀なエンジニアは世界中にいるという考えから、今はベトナムとマレーシアに開発拠点を置き、グローバルな開発体制を敷いています。

相原 これは、単に開発を外注するいわゆる「オフショア開発」とは全く違いますよね。LIFULLではかなり早い段階から取り組み始めたと記憶していて、今ではそれぞれの開発拠点からシニアクラスのメンバーも生まれてきていて印象的です。私は全社のシステムアーキテクトとしての役割も担う中で広くグローバルなメンバーと関わってきていますが、この取り組みはかなり機能していると感じます。

長沢 その通りです。2017年にLFTVがLIFULLグループに入り、2023年にLFTMが立ち上がりました。LFTMの立ち上がりを機に、従来のような仕事をただ外部の会社と同じように発注するだけという形から、開発チームのメンバーとして既存チームに加わり、一緒に開発を行っていく「グローバル開発体制の構築」を推進しています。

現在では、国籍や拠点の壁を超え、海外の優秀なメンバーも一つのプロジェクトチームとして開発に深くコミットしています。まるで日本のメンバーがリモートワークしているかのようなシームレスな環境にするべく、ベトナムやマレーシアといった時差の少ない国を選んでいます。LIFULL本社とほぼリアルタイムで同期しながら開発を進められるこの体制は非常に大きな強みであり、今後もさらに力を入れていきたいと考えています。

CTO/CAIO長沢翼

長沢 さらに、私たちはAI活用を重要な経営方針に位置づけています。AIのナレッジや人材を集約し、グループ全体や社内外へ戦略的に波及させるため、2025年10月に「AIイノベーション本部」を新設しました。同年12月には、その戦略の第一弾として統合型AIエージェント「LIFULL AI」をリリースしています。

※オフショア開発:システムやアプリの開発・運用保守業務を海外の企業や現地法人に委託する手法のこと。IT人材不足の解消 と、コストの最適化を同時に実現できる経営戦略として多くの企業で活用されている。

――AIの進化でエンジニアの役割が変わるなか、LIFULLはAIとどのように向き合っているのでしょうか。

相原 私にとってAIは特別なものではなく、これまで使ってきた便利な道具の延長線上にあります。もともとプログラムの続きを予測する技術は存在しており、生成AIはその精度や範囲が飛躍的に上がったもの。現時点では、新しいアイデアを生むというより、作業効率を圧倒的に高める技術だと捉えています。

長沢 私も同意見です。その上で、単に「作業時間が短縮されて良かった」では終わってはいけません。開発時間が半分になれば、そのぶん新しい機能開発にリソースを割けます。価値提供のスピードが2倍になれば、ビジョンの実現速度も2倍になる。そう捉えると、AIは価値創造を劇的に加速させる技術です。

相原 そうですね。私が兼任するAIイノベーション本部での直近のミッションは、「LIFULL AI」を持続可能なサービスにすることです。現状のAIには多大なコストが費やされるため持続可能でないという課題があります。今後LIFULL AIのユーザーがさらに増えた際、外部サービスに依存せず自社でAIを運用できる状態を作ることで、コストを抑えながらより多くのユーザーへ価値を届けられるようにしていきたいです。

長沢 AI活用の最大の課題がまさにそのコストです。生成AIの多くはトークン料金が発生するため、利用者が増えるほどコストが膨らみ、使えば使うほどさらにコストは膨らみます。既存のサービス構造の上に、コストが更に積み増される機能が増えるので、さらなる事業的な成果を生み出す、もしくはAIによって何らかの機能を代替しコスト効率を上げていく、なども活用と同時に考えていかないと事業の持続可能性に影響しかねません。

相原 ChatGPTのような汎用AIは、あらゆる質問に答えるため大規模なモデルで動いています。一方、「LIFULL AI」が扱うのは住まい探しに関する情報が中心です。例えば領域を不動産に絞れば、モデルを小さくしても回答の精度を高く保てる。結果として、ユーザーの満足度を高めながら運用コストを大幅に抑えることができます。

シニアプリンシパルエンジニア相原魁

――コストの課題が解決しAI活用が進むと、住まい探しはどう変わると思いますか。

長沢 これまでは「駅徒歩10分・ペット可」など、ポータルサイトの検索条件にユーザーが合わせるのが一般的でした。しかしAIが進化すれば、「リモートワークに集中できそうな部屋」といった抽象的な言葉や、好きな雰囲気の写真だけで自分に合う住まいに出会えるようになります。SNSを眺めるような感覚で直感的に検索し、結果として満足度の高い納得のいく選択ができる。そんな次世代のプラットフォームを、私たちの手で創り上げていきたいですね。

AI時代だからこそ必要な「問いを立てる力」と、技術を愛する好奇心 

――これからのAI時代、LIFULLのエンジニアにはどんな力が求められると考えていますか?

相原 AIは人間の能力を拡張する道具だからこそ、重要なのは「AIを使えること」そのものではありません。何が課題かを見極めて本質を捉え、思考し続ける力だと思います。LIFULLでいえばビジョンの実現に本気で向き合っている人ほど、自発的に技術を研鑽し、成長を遂げている印象もあります。

長沢 そうですね。「解きたい課題」がある人は、その手段を模索する過程で新しい技術を前のめりに学び、試行錯誤を重ねる。その積み重ねが、さらに大きな課題へ挑む力に繋がっていきますし、結果としてLIFULLの組織を強くしていくのだと思います。だからこそAI時代は、「何を解くべきか」という問いを立てる力が不可欠です。

例えば「今ユーザーに提案している物件は、本当にベストマッチングなのか」という問いは、非常に難しく、かつ挑み甲斐のあるテーマです。このように日々の仕事から課題を見つけ出す力はどの職種でも共通ですが、その上でエンジニアには、何よりも「技術そのものが好きであること」が大切だと思います。

相原 好奇心を持って走り続ける、良い意味での「根性」は必要かもしれませんね。課題解決力は最初から備わっているものではなく、多様な壁に向き合い続けた結果として身に付くもの。まずは好奇心を原動に、打席に立ち続けることが何より大事です。

長沢 「テクノロジーの力で、世界中の人々の暮らし(LIFE)を安心と喜びで満たしたい(FULL)」。この志に共感し、変化を楽しみながら自らをアップデートし続けられる仲間と共に、次世代の住まい探しの未来を創り上げていきたいですね。

エンジニアは、続けた分だけ確実に積み上がる仕事。成長スピードに個人差はあっても、身につけた技術は裏切りません。文理系といった出身の違いやエンジニアとしての経験の深さより、大切なのは「好奇心を持ち、自ら変化し、学び続けられるか」です。(長沢翼)
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執筆:石川 歩
編集:LIFULL STORIES編集部
撮影:森 裕一朗

CTO/CAIO長沢翼×シニアプリンシパルエンジニア相原魁
Profile CTO/CAIO長沢翼×シニアプリンシパルエンジニア相原魁

執行役員CTO(Chief Technology Officer)兼CAIO(Chief AI Officer)長沢 翼
テクノロジー本部長兼AIイノベーション本部長兼LIFULL HOME'S事業本部副本部長

2008年LIFULL入社。「LIFULL HOME'S」のWeb/iOSアプリ開発、API基盤の刷新などをした後、事業系システムのクラウド移行を責任者として実行。2017年にCTO就任し、事業系システム、社内情報システム領域を担当。また、ベトナム・マレーシア2社の開発子会社の役員として、国内外含むエンジニア組織の技術力向上及び組織力強化する「グローバル開発体制」の構築を推進。
近年はAI活用を強力に推進し、2023年5月に生成AIの専門組織を立ち上げ、社外に向け複数プロダクトをリリースすると同時に社内に向けても生成AIによる業務効率化の取り組みを実施。2025年10月よりCAIO及びAIイノベーション本部長に就任し、AIによる事業革進を主導している。

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テクノロジー本部 シニアプリンシパルエンジニア 相原 魁

2015年新卒で入社しインフラ関係の部署に配属される。2019年に3年かけて独自開発してきた巨大プラットフォーム「KEEL」が正式採用され、以降、事業基盤ユニットKEELグループにてプラットフォームを作り続けている。LIFULLには珍しいスペシャリストとして圧倒的な存在感を放ち、エンジニアのキャリア相談にも乗っている。現在はAIイノベーション本部も兼務。

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