二拠点生活の費用を抑えるには?使える補助金・支援制度を紹介

都市と地方、二つの拠点で暮らす「二拠点生活」は、新しいライフスタイルとして注目を集めています。しかし、いざ始めようとすると住居費や交通費など、費用負担の大きさに悩む方も多いでしょう。実は、国や自治体では二拠点生活を後押しするさまざまな補助金や支援制度を用意しています。移住支援金として最大300万円を受け取れるケースもあれば、住民票を移さなくても利用できる柔軟な制度も存在します。この記事では、二拠点生活で活用できる補助金・支援制度の種類や内容、申請方法から注意点まで、網羅的に解説します。自分に合った制度を見つけ、賢く費用を抑えながら理想の暮らしを実現しましょう。

二拠点生活で利用できる補助金の全体像

二拠点生活を始めるにあたって、どのような補助金や支援制度があるのか、まずは全体像を把握しましょう。ここでは、二拠点生活と補助金の関係性について整理していきます。

二拠点生活と補助金が想定する支援の範囲

二拠点生活に関連する補助金は、完全移住だけでなく「関係人口」の創出や地域との継続的な関わりを支援する目的で設計されています。

従来の移住支援は住民票を移すことを前提としていましたが、近年では柔軟性が高まってきました。テレワークの普及により、都市部での仕事を続けながら地方で暮らす人が増えたことが背景にあります。自治体によっては、週末だけ滞在する「週末移住」や、年に数回訪れる「多拠点生活」も支援対象としているところがあります。

支援の範囲は、住宅取得費や改修費、家賃補助、交通費補助、起業・就業支援、子育て支援など多岐にわたります。さらに、リモートワーク環境の整備費用や地域活動への参加支援なども含まれます。自分のライフスタイルに合った支援制度を見つけることで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。

国の支援と自治体の支援の違い

国が主導する支援制度は全国統一の基準で運用される一方、自治体独自の制度は地域の特性やニーズに応じた柔軟な内容になっています。

国の代表的な支援策としては、地方創生移住支援金があります。これは東京23区在住者または通勤者が地方に移住し、対象となる企業に就業または起業する場合に支給されるものです。単身で最大60万円、世帯で最大100万円、さらに18歳未満の子ども1人につき最大100万円が加算されます。全国統一の基準で運用されるため、どの自治体でも一定の水準で支援を受けられるメリットがあります。

一方、自治体独自の支援制度は、地域の課題や特色を反映した内容になっています。例えば、空き家が多い地域では空き家バンクと連動したリフォーム補助が充実しており、住宅購入時のリフォーム費用の50%(上限50万円)や家財処分費の50%(上限10万円)を補助する自治体もあります。また、通勤や商談での新幹線利用に対して月額最大2.5万円(最長36か月)の交通費補助を行う自治体も存在します。

二拠点生活の補助金の代表的な制度と支援内容

ここからは、二拠点生活で実際に活用できる具体的な補助金や支援制度を紹介します。それぞれの制度の特徴や支給条件、金額などを理解することで、自分に適した支援を見つけやすくなります。

地方創生移住支援金の概要と支給条件

地方創生移住支援金は、東京圏からの移住者に対して国と自治体が連携して支給する代表的な支援制度です。

この制度の対象となるのは、移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区内に居住していた、または東京圏から23区内に通勤していた人です。移住先では、都道府県が運営するマッチングサイトに掲載された中小企業等に就職する、テレワークで移住前の仕事を継続する、または地域課題解決に資する起業をすることが条件となります。

支給額は単身で最大60万円、2人以上の世帯で最大100万円です。さらに、18歳未満の子どもがいる場合は1人につき最大100万円が加算されるため、例えば夫婦と子ども2人の世帯であれば、最大300万円の支援金を受け取れる計算になります。

ただし、移住後5年以内に転出したり、支援金の交付理由となった就業や起業を継続しなかったりすると、支援金の返還を求められることがあります。長期的に地域に根付く意思があることが前提となる制度です。

住宅ローン系の優遇

住宅ローンの金利優遇制度を活用すると、数十万円から数百万円の利息負担を軽減できる可能性があり、住居取得費用の大幅な節約につながります。

例えばフラット35地方移住支援型は、地方公共団体の移住支援施策を利用する人を対象とした住宅ローンです。通常のフラット35に比べて、当初5年間の金利が年0.6%引き下げられます。例えば3,000万円を借り入れた場合、金利優遇により総返済額が数十万円減少する計算になります。

この制度を利用するには、自治体が定める移住支援要件を満たす必要があります。多くの場合、移住に関する相談窓口への登録や、移住計画の提出、一定期間の居住実績などが求められます。自治体によって細かな条件が異なるため、事前に確認することが大切です。

また、自治体独自の住宅購入補助金と併用できる場合もあります。例えば、新築住宅購入に対して50万円から100万円、中古住宅購入に対して30万円から50万円の補助金を支給する自治体があり、これらを住宅ローン優遇と組み合わせることで、より大きな費用軽減効果が期待できます。

空き家活用や改修に対する補助の種類

空き家バンクを通じて物件を取得すると、改修費用や家財処分費用に対して手厚い補助を受けられる自治体が多く、初期費用を大幅に抑えられます。

空き家バンクとは、自治体が運営する空き家と移住希望者をつなぐマッチングサービスです。この制度を利用して住宅を取得すると、リフォーム費用の50%(上限50万円から100万円)、家財処分費用の50%(上限10万円から30万円)などの補助を受けられるケースがあります。

例えば、築30年の空き家を200万円でリフォームする場合、50%の補助があれば実質負担は100万円に抑えられます。さらに、家財の処分に20万円かかったとしても、補助により10万円に軽減できます。合計で110万円の費用軽減効果があるため、空き家活用は費用面で大きなメリットがあります。

自治体によっては、DIY型の改修を推奨し、材料費の一部を補助する制度もあります。自分で改修作業を行うことで、さらに費用を抑えながら、愛着のある空間を作り上げることができるでしょう。ただし、補助対象となる工事内容や業者の指定がある場合もあるため、事前の確認が必要です。

補助金以外の支援策と組み合わせ方

補助金だけでなく、お試し移住住宅やシェアオフィスの利用補助、地域体験プログラムなどの支援策を組み合わせることで、より安心して二拠点生活を始められます。

お試し移住住宅は、移住を検討している人が一定期間、低料金または無料で地域の住宅に滞在できる制度です。1週間から3か月程度の利用が可能で、地域の生活環境や気候、コミュニティの雰囲気を実際に体験できます。本格的な移住を決める前に、自分に合った地域かどうかを確かめられる貴重な機会です。

リモートワーク支援としては、シェアオフィスやコワーキングスペースの利用料補助があります。月額利用料の50%を補助する自治体や、初回登録料を無料にする取り組みもあります。高速インターネット環境の整備費用を補助する制度もあり、テレワーク環境を整えやすくなっています。

地域体験プログラムでは、農業体験や伝統工芸の習得、地域イベントへの参加などに対して費用補助が行われることがあります。これらのプログラムに参加することで、地域住民との交流が深まり、二拠点生活をより充実したものにできるでしょう。複数の支援策を組み合わせることで、経済的負担を抑えながら、段階的に地域との関係を築いていくことが可能です。

二拠点生活で補助金を受ける手順と注意点

補助金を実際に受け取るには、適切な手順で申請を進める必要があります。また、申請後の義務や注意点を理解しておくことで、予期せぬトラブルを避けられます。ここでは、申請の流れから注意すべきポイントまで、実践的な情報を解説します。

申請の一般的な流れと必要書類

補助金の申請は、事前相談から交付決定、実績報告まで複数のステップがあり、各段階で必要な書類を準備する必要があります。

申請の基本的な流れは次のようになります。

  1. 自治体の移住相談窓口や担当部署に問い合わせて、制度の詳細や要件を確認する
  2. 必要書類を準備し、申請書類を作成する
  3. 自治体に申請書類を提出する
  4. 自治体による審査が行われ、交付決定通知を受け取る
  5. 対象となる事業(住宅改修、移住など)を実施する
  6. 事業完了後、実績報告書と証拠書類を提出する
  7. 自治体による確認後、補助金が交付される

必要書類は制度によって異なりますが、一般的には以下のようなものが求められます。

住民票の写しや戸籍謄本などの身分証明書、移住前の居住地や居住期間を証明する書類、就業証明書や雇用契約書、起業の場合は事業計画書、住宅関連では売買契約書や工事見積書、改修前後の写真などが必要です。また、世帯全員分の課税証明書や所得証明書を求められることもあります。

申請のタイミングも重要です。多くの補助金は事前申請が原則で、事業着手後の申請は認められません。住宅改修の場合、契約や工事着工の前に必ず申請を済ませておく必要があります。また、年度ごとに予算が決まっているため、申請が集中する時期は早期に受付が終了することもあります。

補助金の交付後に必要な報告や返還リスク

補助金を受け取った後も、一定期間の居住継続や事業継続の義務があり、これらを守らない場合は補助金の返還を求められることがあります。

多くの移住支援金では、交付後5年間は移住先に居住し続けることが求められます。この期間内に移住先から転出したり、支援金の交付理由となった就業や起業を辞めたりすると、全額または一部の返還義務が発生します。やむを得ない事情がある場合は、返還が免除されることもありますが、基本的には長期的なコミットメントが必要です。

住宅改修の補助金でも、一定期間その住宅に居住し続けることが条件とされることがあります。また、改修内容が当初の計画と異なる場合や、完了報告を怠った場合も返還対象となる可能性があります。

定期的な報告義務がある制度もあります。年に1回程度、居住状況や就業状況を報告する書類の提出を求められることがあります。報告を怠ると、補助金の返還や今後の支援が受けられなくなることもあるため、スケジュール管理が大切です。

返還リスクを避けるには、制度の要件を正確に理解し、長期的な視点で移住計画を立てることが重要です。不明な点があれば、自治体の担当者に確認し、書面で記録を残しておくと後々のトラブル防止につながります。

補助金を踏まえた二拠点生活の費用試算の方法

補助金を活用した場合の実質的な費用負担を試算することで、現実的な二拠点生活の計画を立てられます。

二拠点生活の主な費用項目と、それに対応する補助金を整理してみましょう。

費用項目 想定費用 利用可能な補助金例 補助後の実質負担
住宅購入費 1,000万円 購入補助50万円+ローン優遇 約900万円
リフォーム費 200万円 改修補助100万円 100万円
家財処分費 20万円 処分費補助10万円 10万円
移住支援金 世帯100万円+子ども加算 △300万円
交通費年間 36万円 月2.5万円×12か月 6万円

この表はあくまで一例ですが、各種補助金を組み合わせることで、初期費用を大幅に軽減できることがわかります。

費用試算を行う際は、以下のステップで進めると良いでしょう。まず、自分の二拠点生活スタイルを具体的にイメージし、必要な費用項目をリストアップします。次に、移住希望地の自治体が提供する補助金や支援制度を調査し、自分が対象となるものを絞り込みます。

その上で、各補助金の支給額や条件を確認し、実際に受け取れる金額を現実的に見積もります。複数の補助金を併用できるか、交付時期はいつかなども考慮に入れましょう。そして、補助金を差し引いた実質負担額を計算し、自己資金や収入とのバランスを確認します。

この試算により、二拠点生活が経済的に実現可能かどうかを客観的に判断できます。また、不足する費用があれば、どの部分を見直すべきか、他に利用できる支援制度はないかなど、次のアクションも見えてくるでしょう。

まとめ

二拠点生活の費用負担は、国や自治体が提供する補助金や支援制度を活用することで大幅に軽減できます。地方創生移住支援金や空き家活用補助、交通費補助、住宅ローン優遇など、多様な支援策が用意されており、それぞれの暮らし方に合った制度を選ぶことが可能です。

補助金を受けるには、居住要件や就業条件、申請時期などの要件を正確に理解し、適切な手順で申請することが重要です。また、補助金だけでなく、お試し移住住宅やリモートワーク支援など、さまざまな支援策を組み合わせることで、より安心して二拠点生活をスタートできます。

自分に合った補助金や支援制度を見つけ、賢く活用しながら、理想のライフスタイルを実現してください。まずは気になる地域の自治体に問い合わせて、具体的な支援内容を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

LIFULL STORIES編集部

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