相対的貧困とは?意味・日本の現状・対策を解説

「相対的貧困」という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのような状態を指すのか、いまひとつイメージしにくいと感じる方は多いのではないでしょうか。飢餓や住む場所がないといった深刻な状況とは異なり、相対的貧困は「周りと比べて生活が苦しい」という見えにくい困難を抱えた状態です。

日本では約6〜7人に1人が相対的貧困の状態にあるとされ、決して他人事ではありません。この記事では、相対的貧困の意味や日本の現状、そして私たちにできる対策について、データを交えながらわかりやすく解説します。

相対的貧困とは何か

相対的貧困を理解するには、まず「何と比べて貧しいのか」という視点が欠かせません。ここでは基本的な定義から、類似概念との違いまでを整理します。

相対的貧困の定義

相対的貧困とは、その国や地域に住む大多数の人々と比較して、所得が著しく低い状態を指します。具体的には、世帯の「等価可処分所得」が国全体の所得中央値の半分(貧困線)を下回る場合に、相対的貧困に該当するとされています。

等価可処分所得とは、世帯の手取り収入を世帯人数の平方根で割った金額を指します。単身世帯と4人家族では生活コストが異なるため、この調整によって公平な比較が可能になります。相対的貧困の状態にある人は、生命の危機に瀕しているわけではないものの、社会の中で「当たり前」とされる生活を送ることが難しくなります。

絶対的貧困との違い

貧困には「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2つの概念があります。絶対的貧困は衣食住といった生存に必要な最低限のものすら満たせない状態を指し、世界銀行の基準では1日2.15ドル(約320円)未満の生活がこれに該当します。

一方、相対的貧困は生存の危機というよりも、社会参加の機会が制限される状態です。例えば、子どもが修学旅行に行けない、友人と同じ習い事ができないといった状況が生じます。先進国では絶対的貧困は少ないものの、相対的貧困によって社会から孤立してしまう問題が深刻化しています。

項目 相対的貧困 絶対的貧困
基準 その国の所得中央値の50%以下 世界共通の最低生活費基準
状態 社会参加が困難 生存が困難
該当地域 先進国でも多く見られる 主に開発途上国

貧困線と相対的貧困率の計算方法

貧困線は、等価可処分所得の中央値を半分にした金額で設定されます。2021年の厚生労働省調査によると、日本の貧困線は年間127万円でした。この金額を下回る所得の人が相対的貧困に該当します。

相対的貧困率は「貧困線未満の人数÷全体人数×100」で算出されます。中央値は平均値とは異なり、全員を所得順に並べたときの真ん中の値です。極端に高い所得の人がいても中央値はあまり変動しないため、一般的な生活水準を測る指標として適しているとされています。

相対的貧困の現状と原因

相対的貧困は日本だけでなく、世界各国で課題となっています。ここでは国際比較と日本の現状、そして貧困を生む構造的な要因について見ていきましょう。

国際的な現状

OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均相対的貧困率は約11%前後で推移しており、国によって大きな差があります。北欧諸国は5〜6%台と低く、アメリカや日本は15%前後と高い傾向にあります。

この差は、税制や社会保障制度の充実度と関連しているとされています。所得の再分配が機能している国ほど、相対的貧困率が低くなる傾向が見られます。ただし、各国の文化や社会構造が異なるため、単純な比較だけでは解決策を導くのは難しい面もあります。

日本の現状

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年調査、2021年データ)によると、日本の相対的貧困率は15.4%、子どもの貧困率は11.5%でした。これは約6〜7人に1人、子どもでは約9人に1人が相対的貧困の状態にあることを意味します。

2018年と比較すると、全体で0.3ポイント、子どもの貧困率は2.5ポイント改善しています。しかし、OECD加盟国の中では依然として高い水準にとどまっています。特にひとり親世帯の貧困率は約45%と突出しており、深刻な状況が続いています。

相対的貧困を生む主な原因

相対的貧困が生まれる背景には、複数の要因が絡み合っています。主な原因として、非正規雇用の増加、ひとり親世帯の経済的困難、教育格差による貧困の連鎖などが挙げられます。

非正規雇用は正規雇用と比べて賃金が低く、雇用も不安定になりやすい傾向があります。また、離婚や死別によってひとり親となった場合、仕事と育児の両立が難しく、収入が限られがちです。さらに、経済的な理由で十分な教育を受けられなかった子どもが、成人後も低所得に陥りやすいという「貧困の連鎖」も指摘されています。

長期的な推移と今後のリスク要因

日本の相対的貧困率は1990年代後半から上昇傾向にありましたが、近年はやや改善の兆しが見られます。ただし、高齢化の進行や単身世帯の増加により、今後再び悪化するリスクも指摘されています。

高齢者の中には年金だけでは生活が難しい層も存在し、「老後の貧困」への懸念が高まっています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で失業や収入減を経験した人も少なくありません。景気の変動や社会構造の変化によって、相対的貧困のリスクは誰にでも起こり得るものになっているといえるでしょう。

相対的貧困の対策

相対的貧困の解消に向けては、国・自治体・民間・個人など、さまざまなレベルでの取り組みが進められています。それぞれの対策の特徴と可能性について見ていきましょう。

国レベルでの対策

国レベルの対策としては、所得再分配の強化、最低賃金の引き上げ、社会保障制度の拡充などが挙げられます。税制を通じた再分配や、生活保護・児童手当といった直接的な給付は、貧困層の生活を下支えする役割を果たしています。

2013年には「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が制定され、子どもの貧困対策が国の重要課題として位置づけられました。ただし、制度があっても利用されなければ効果は限定的です。支援を必要としている人に情報が届き、実際に利用しやすい仕組みづくりが求められています。

地方自治体の取り組み

地方自治体では、地域の実情に合わせた独自の支援策が展開されています。学習支援事業、就労支援、住居確保給付金など、生活困窮者への包括的な支援体制を整える自治体が増えています。

例えば、生活困窮者自立支援制度では、相談窓口を設けて一人ひとりの状況に応じた支援プランを作成しています。身近な地域での支援は、困っている人が声を上げやすい環境づくりにもつながります。

教育支援による子どもの貧困対策

子どもの貧困対策において、教育支援は特に重要な柱の一つです。経済的な理由で学習機会を逃すと、将来の進路や就職に影響し、貧困の連鎖につながりやすくなります。

無料の学習支援や給付型奨学金の拡充は、教育格差を縮小する効果が期待されています。また、学校を通じた朝食提供や、制服・学用品の支援など、学びを支える環境整備も進められています。子ども時代の支援は、将来の自立につながる投資としての側面も持っています。

雇用政策や企業の取り組み

安定した雇用と適正な賃金は、相対的貧困を防ぐ根本的な対策の一つといえます。最低賃金の引き上げや、同一労働同一賃金の実現に向けた取り組みが進められています。

企業においても、正社員への転換制度や、育児・介護との両立支援、ひとり親の積極採用など、多様な働き方を支援する動きが広がっています。働くことで生活が安定するという好循環を生み出すためには、雇用の質を高める取り組みが欠かせません。

市民やNPOができる支援

相対的貧困の解消には、行政だけでなく市民やNPOの力も重要です。子ども食堂のボランティア、フードバンクへの寄付、学習支援への参加など、身近なところから関わる方法はさまざまあります。

支援に関わることで、貧困問題への理解が深まり、社会全体の意識向上にもつながります。また、困っている人が「助けを求めてもいい」と思える雰囲気づくりも、支援の第一歩です。特別なスキルがなくても、話を聞く、情報を共有するといったことから始められます。

こうした市民による支援の具体的な場として、全国に広がる「子ども食堂」が挙げられます。長年貧困問題に取り組む社会活動家の湯浅誠氏によると、子ども食堂は単なる食事の場ではなく、多様な人が関わることで貧困解消の糸口となる受け皿としての役割を担っています。

例えば、提供された食事に対する子どもの何気ない反応から周囲には見えにくい潜在的な貧困に気づく拠点として機能するほか、就学援助などの公的な支援制度を知らない家庭に対して、必要な支援情報を「裏メニュー」としてさりげなく提供することも行われています。

支援の現場のリアルな声や、「誰一人取り残さない」社会へのヒントについてさらに詳しく知りたい方は、以下のインタビュー記事もあわせてご覧ください。

まとめ

相対的貧困は、同じ社会の中で多くの人より所得が低く、当たり前とされる生活を送ることが難しい状態を指します。日本では約6〜7人に1人がこの状態にあり、特にひとり親世帯や子どもの貧困は深刻な課題となっています。

貧困の背景には、雇用の不安定さや教育格差、社会保障の限界など、さまざまな要因が絡み合っています。解決に向けては、国の政策から地域の支援活動、そして私たち一人ひとりの意識や行動まで、多層的なアプローチが求められています。相対的貧困は決して他人事ではなく、誰もが関わりを持てる社会課題です。

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LIFULL STORIES編集部

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