子どもの貧困の実態とは? ひとり親世帯と貧困が生む教育格差、原因、貧困支援を解説

生まれ育った家庭の経済状況や環境によって、満足にご飯が食べられなかったり、教育の機会が得られなかったりする子どもたちがいます。日本に住んでいると、「子どもの貧困」について実感がわかないという人も少なくないでしょう。しかし、データを基に日本社会が置かれている状況を分析すると、決してそうではないことが浮かび上がってきます。

ここでは下記の5点を解説します。

  • そもそも「貧困」とは?
  • 子どもの7人に1人が貧困状態という日本
  • 子どもの貧困が生む負の連鎖
  • シングルマザーの貧困率はなぜ高い?
  • 子どもの貧困対策や支援には何がある?

そもそも「貧困」とは?

そもそも「貧困」とは何でしょうか? 具体的にどのような状態を貧困と定義するかについての指標は、定義する団体や組織、機関によって異なりますし、定義される国や地域、人々によってもさまざまです。

世界銀行は貧困に関するデータを収集し、分析しています。世界各国の物価データを基に割り出された購買力平価(PPP)は、ある国の通貨で買える商品やサービスが他国でいくらになるかを示す独自の換算レートです。2011年のPPPを基に1日1.90ドルを国際貧困ライン(貧困を定義するボーダーライン)としています。

※出典:よくあるご質問(FAQs): 国際貧困ラインの改定について:世界銀行|日本

また、国連機関のUNDP(国連開発計画)によると、貧困とは「教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」とされています。

※引用:UNDP-貧困とは

貧困には、必要最低限の生活水準が満たされていない「絶対的貧困」と、ある地域社会の大多数よりも貧しい「相対的貧困」という見方があります。

貧困は、決して途上国で暮らす貧しい人たちだけの問題ではありません。先進国においても貧富の差が確実に存在し、相対的貧困状態の人が一定数います。国や地域にどれくらいの相対的貧困層がいるのかを見るための指標が「相対的貧困率」です。

厚生労働省によると、相対的貧困率とは「一定基準(貧困線※)を下回る等価可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)しか得ていない者の割合」を指します。「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によると、2018年の日本の相対的貧困率は15.7%でした。日本人口の約6人に1人が相対的貧困の状態にあることが分かります。

※貧困線…等価可処分所得(世帯の可処分所得、つまり収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入を、世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額
※出典:国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問 – 厚生労働省
※出典:2019 年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

子どもの7人に1人が貧困状態という日本

前述したように、日本の相対的貧困率が15.7%ということは、人口の6人に1人が国際貧困ライン以下で生活していることを示しています。2014年のOECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の相対的貧困率は先進国35カ国中7番目の高さで、G7では米国に次いでワースト2位でした。

さらに深刻なのは、18歳未満の子どもに対象を絞っても、相対的貧困率は14.0%だということです。つまり、日本の子どもの7人に1人は相対的な貧困状態にあるのです。

※出典:Poverty rate – OECD

日本の「子どもの貧困」の特徴は?

日本における子どもの貧困の特徴は、「ひとり親世帯」の貧困率が高いことです。厚生労働省の調査によると、日本には推計で約134万の「ひとり親世帯」があります(2022年時点)。

厚生労働省が発表した「ひとり親家庭の現状と支援施策について」を見ると、子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満)のうち、ひとり親世帯の相対的貧困率は48.1%という結果でした。日本のGDP(国内総生産)は世界第3位と「豊かな国」というイメージが根強いかもしれませんが、ひとり親世帯の貧困が非常に多い国であることが読み解けます。

※出典:「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」結果について – 厚生労働省
※出典:ひとり親家庭の現状と支援施策について ~その1~ – 厚生労働省

子どもの貧困が生む負の連鎖

日本の子どもの貧困は外部からは見えにくいという特徴があります。しかし、相対的な貧困状態にある子どもの生活においては次のようなことが起きています。

  • 給食がない夏休み明けには体重が減っている
  • 一日の食事が菓子パン1個、インスタントラーメン1杯だけ
  • 用具が買えないためにクラブ活動に参加できない
  • 親が病気のために家事をしなければならない(ヤングケアラー)

子どもたちが置かれている窮境を近隣住人の大人は認知できないまま、必要な支援の提供や、十分なケアを行えず、子どもの健康面や精神面に重大なダメージが及ぶことが懸念されます。

また、子どもにとって安心できる環境で学習することは非常に重要です。1989年に国連で採択され、1990年国際条約として発効した「子どもの権利条約」28条でも、「教育を受ける権利」は子どもの権利として保障されなければならない、とあります。

子どもが貧困に陥ると、学校に通ったり、希望先に進学したりするチャンスが与えられないなどして、教育を受ける権利が守られなくなる恐れがあるのです。

※出典:子どもと先生の広場:日本ユニセフ協会

教育格差が生まれる背景と学習支援の事例

家庭が自己負担する教育支出の内訳を見ると、公立小学校の学習費内訳の70.2%、公立中学校の学習費内訳の68.4%が「学校外活費」で占められています。つまり、経済的理由で学習塾に通うことなどができなければ、それが子どもたちの教育格差に直結することがうかがえます。

貧困家庭と一般的な家庭では子どもの教育格差は広がるばかりで、教育機会に恵まれない子どもは人格形成や成長に欠かせない学習機会や学ぶ意欲を奪われてしまいます。家庭の経済状況から満足に教育機会を与えられなかった子どもは低学歴になる傾向があり、希望する進学先を諦めたり、低収入の職業に就かざるを得なかったりと、貧困が理由で人生の選択が狭まってしまう事態になりかねないといえるでしょう。

貧困家庭の子どもにとって塾に行くことは高いハードルですが、そんな家庭の事情を抱えた子どもに対して、オンラインによる学習支援を行っているYouTuberがいます。

少し前までは無料で学校外教育を受けることは一般的ではありませんでしたが、今ではYouTubeなどの配信サービスでのオンライン講義があります。

中でも葉一さんは、チャンネル登録者数187万人、総再生回数6億3,000回(2023年1月時点)を超える人気YouTuberで、小学生から高校生を対象に講義動画を配信しています。2012年にこのサービスを始めてから数カ月はほとんどコメントも付かず、批判のコメントが次々と送られてきた、といいます。

それでも葉一さんは「一人でもいいから必要としてくれる子どもに届けたい」という思いから動画配信を継続。2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の流行では多くの学校が休校になる中、子どもたちだけでなく、多くの親や教師が葉一さんの動画に救われました。

「子どもたちの選択肢を広げたい」「先生が楽しんでいる姿を子どもたちに見せたい」という気持ちが葉一さんの原動力になっています。

※出典:結果の概要-令和3年度子供の学習費調査:文部科学省

教育格差の原因は?

日本で教育格差が生まれるもう一つの原因は、日本政府の教育分野に対する公的支援が少ないことです。

OECD先進国で比較した2018年のGDPに占める公財政教育支出を見ると、日本は39カ国中、36位です。結果的に教育費は自己負担にならざるを得なくなり、家庭の経済状況がダイレクトに子どもの教育に影響を与えます。

シングルマザーの貧困率はなぜ高い?

子どもの貧困問題は家庭の経済状況と密接に結び付いていて、ひとり親世帯では世帯収入が大きく減ってしまうという背景があります。さらに、父子世帯より母子世帯のほうが就業によって得られる収入は低い傾向にあります。シングルマザーの世帯は、貧困率が高い傾向にあるということです。

厚生労働省の調査によると、母子世帯の就業状況は86.3%ですが、そのうち正規の職員・従業員として勤めているシングルマザーは48.8%にとどまります。シングルマザーの半数近くは、賃金の低いパートやアルバイトで生計を立てていることがわかります。

そのため、シングルマザーに対しては社会的に偏見を持たれることが少なくありません。例えば、シングルマザーというだけで「収入が少ない」と思われたり、家探しの際などに不動産店などから不当な扱いを受けたりすることもあります。シングルマザーの暮らしの選択肢を狭めない取り組みが必要です。

1級建築士の秋山怜史さんは、2012年に日本初となるシングルマザーのシェアハウスを企画しました。空き家を活用し、家探しが難しい場合もあるシングルマザーを支援する仕組みです。秋山さんは「豊かな暮らしをするために選択肢を増やし、空間作りだけでなく世の中の仕組み自体をつくる」ことが大切だと語ります。

※出典:「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」結果について – 厚生労働省

子どもの貧困対策や支援には何がある?

日本における子どもの貧困に対する取り組みには以下のようなものがあります。

  • 奨学金:授業料や生活費に対する現金の給付、もしくは貸与
  • 学習支援:無償または低額での学習支援
  • 子ども食堂や居場所支援:無償または低額での食事や居場所の提供

長年、日本の貧困問題に取り組んできた社会活動家の湯浅誠さんは、東京大学先端科学技術研究センター特任教授を務めるかたわら、認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の理事長として子どもの貧困問題にも取り組んでいます。湯浅さんが取り組んだのは子ども食堂でしたが、その理由について次のように語ります。

「貧困問題と言うと、『深刻な貧困』『壮大な社会問題』というイメージを持つ人が多く、『自分にはどうすることもできない問題』と考えられてしまいがちです。一方で子ども食堂は、子どもも大人も高齢者も、みんなが関わることができる場所であり、助けが欲しい人、何かしたいと思っている人……みんなの受け皿になっています。そんな多様な人たちが集まる子ども食堂こそが、貧困問題に関わる人の数を増やし、貧困の解消への糸口になると感じたんです」

また、子どもの居場所を支援する取り組みの事例として、「LIFULL HOME’S Action for all」があります。家探しが難しいシングルマザー・ファーザー向けの住宅探しをサポートしています。「子どもと一緒に暮らす家を探しているけど、見つからない」という悩みを持つ方は利用してみてはどうでしょうか。

まとめ

貧困問題が生む教育格差は根深い社会課題であり、私たちにとって実は身近な問題です。貧困問題に取り組むために、必ずしも多額の寄付をしたり、ボランティア活動に毎週参加したりする必要はありません。身近な隣人やクラスメートに関心を払ったり、気遣いの言葉を掛けたりすることから始めてみるのもよいかもしれません。

監修者:能島裕介
NPO法人ブレーンヒューマニティー創業者。関西学院大学法学部卒業後、株式会社住友銀行(現・三井住友銀行)入行。1999年4月、ブレーンヒューマニティー設立のため、同行退職。現在は公益社団法人ハタチ基金理事、関西学院大学非常勤講師などを務める。

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