夫婦別姓 海外事情まとめ|制度・実例・日本との比較

結婚後の姓をどうするかは、個人のアイデンティティや家族のあり方に深く関わる問題です。日本では民法750条により夫婦同姓が義務付けられていますが、OECD加盟国の中でこのような制度を持つのは日本だけとされています。一方、海外では夫婦別姓や選択的夫婦別姓を採用する国が増えており、その制度や運用方法は国によってさまざまです。本記事では、海外における夫婦別姓の現状や具体的な手続き、社会的影響について詳しく解説します。

海外での夫婦別姓の現状

世界各国では、夫婦の姓に関する制度が多様化しています。結婚後も各自の姓を維持できる国、どちらかの姓を選べる国、さらには両方の姓を組み合わせる「結合姓」を認める国など、選択肢は幅広く存在します。ここでは、海外における夫婦別姓の制度の種類と、国・地域別の運用の違いについて見ていきましょう。

制度の種類と選択肢の違い

夫婦の姓に関する制度は、大きく分けて「夫婦同姓」「選択的夫婦別姓」「原則夫婦別姓」の3つのパターンに分類できます。夫婦同姓は結婚時に夫婦が同じ姓を名乗ることを義務付ける制度で、日本がこれに該当します。選択的夫婦別姓は、同姓か別姓かを夫婦が自由に選べる制度であり、ドイツやアメリカなど多くの国が採用しています。

原則夫婦別姓は、結婚しても法的に姓が変わらない制度で、フランスや韓国、中国などがこれにあたります。また、夫婦の姓を連結させる「ダブルネーム」や「結合姓」という選択肢を設けている国もあります。このように、姓に関する制度は国によって大きく異なり、個人の価値観やライフスタイルに合わせた選択が可能な国が増えています。

国や地域別の運用の違い

夫婦別姓の制度は国や地域によって運用方法が異なります。以下では、主要な国々の事例を見ていきましょう。

アメリカとイギリスの事例

アメリカでは、夫婦が別姓を選択することが法的に認められています。州によって細かな手続きは異なりますが、結婚時に妻が夫の姓を名乗る、夫が妻の姓を名乗る、各自が旧姓を維持する、あるいは結合姓を作成するなど、複数の選択肢が用意されています。

イギリスでも同様に、夫婦別姓が可能です。伝統的には妻が夫の姓を名乗るケースが多いとされていますが、法的な義務はなく、個人の選択に委ねられています。両国に共通するのは、姓の変更は個人の自由意思に基づくという考え方であり、行政手続きもそれに対応した柔軟な仕組みが整えられています。

ドイツや北欧の事例

ドイツでは1993年の法改正により、選択的夫婦別姓制度が導入されました。それ以前は夫の姓を自動的に採用する仕組みでしたが、憲法裁判所が「夫の姓を優先するのは不平等」と判断したことで制度が見直されました。現在は、結婚時に夫婦どちらの姓を名乗るか、あるいは各自の姓を維持するかを選べます。

スウェーデンをはじめとする北欧諸国では、ジェンダー平等の観点から夫婦別姓が広く受け入れられています。これらの国々では、姓の選択は完全に個人の自由とされており、社会全体としても別姓を選ぶカップルに対する違和感はほとんどないとされています。

アジアや中東の事例

アジアに目を向けると、韓国と中国では原則として夫婦別姓です。韓国では2005年の法改正により、子どもは父または母の姓を選べるようになりました。中国でも伝統的に夫婦別姓が原則であり、結婚によって姓が変わることはありません。

一方、中東の国々では宗教や文化的背景によって姓の扱いが異なります。イスラム圏の多くの国では、女性が結婚後も旧姓を維持するのが一般的です。このように、アジアや中東では夫婦別姓が文化的に根付いている地域が多く見られます。

海外では夫婦別姓を認める制度が主流となっており、日本の夫婦同姓制度は国際的に見ると例外的な存在といえます。

海外で夫婦別姓を選ぶ際の手続きと注意点

海外で夫婦別姓を選択する場合、各国の法制度や行政手続きに対応する必要があります。特に日本人が海外で結婚する場合や、国際結婚を行う場合には、日本と現地の両方の制度を理解しておくことが重要です。ここでは、実務的な手続きや注意点について詳しく解説します。

戸籍の扱いの違い

海外では多くの国で戸籍制度そのものが存在せず、氏名の登録方法も日本とは大きく異なります。例えば、アメリカやイギリスでは出生証明書や婚姻証明書が個人の身分を証明する書類となり、日本のような戸籍簿は存在しません。そのため、結婚後の姓の変更も、これらの証明書類や社会保障番号などを通じて行われます。

日本人が海外で結婚した場合、現地の婚姻証明書を取得した後、日本の在外公館または本籍地の市区町村に届け出る必要があります。この際、日本の戸籍には日本の法律が適用されるため、夫婦同姓の原則が適用されます。ただし、外国人と結婚した場合は、相手の姓に変更することも選択できますが、その場合は6か月以内に届け出を行う必要があります。

パスポートとビザでの姓の扱い

パスポートに記載される姓は、基本的に戸籍上の姓と一致する必要があります。そのため、日本人が夫婦別姓を希望する場合でも、日本のパスポートには戸籍上の姓が記載されることになります。ただし、旧姓を併記することは可能であり、2019年からはパスポートへの旧姓併記の手続きが簡素化されました。

ビザの申請においても、パスポートに記載された姓と各種書類の姓が一致していることが求められる場合があります。国際結婚をして海外で別姓を使用している場合、パスポートと現地の身分証明書の姓が異なることで手続きが複雑になる可能性があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

子どもの姓と親権や戸籍への影響

夫婦別姓を選択した場合、子どもの姓をどうするかという問題が生じます。国によって子どもの姓に関する規定は異なりますが、多くの国では父母どちらかの姓を選択できるほか、両親の姓を結合した姓を付けることも可能です。

日本人と外国人の夫婦の場合、子どもが日本国籍を取得するならば、日本の戸籍上では日本人親の姓を名乗ることになります。ただし、外国での出生届では異なる姓を登録することも可能であり、二重国籍の場合は国によって異なる姓を持つこともありえます。このような複雑な状況を避けるためにも、出産前に両国の制度を確認しておくことが大切です。

夫婦別姓がもたらす社会的影響

夫婦別姓の制度は、単に姓の問題にとどまらず、社会全体にさまざまな影響を及ぼします。ここでは、海外における夫婦別姓の影響について詳しく解説します。

男女平等や家族観への影響

夫婦別姓の導入は、ジェンダー平等の実現に向けた重要な一歩として位置づけられることがあります。日本では結婚時に女性が改姓するケースが約95%を占めており、この偏りは性別役割分担の固定化を反映しているという指摘があります。一方、海外の多くの国では、姓の選択が完全に個人の自由に委ねられているため、結婚による改姓が女性に偏る傾向は見られにくいとされています。

家族観への影響については、夫婦別姓が「家族の一体感を損なう」という懸念がある一方で、「個人のアイデンティティを尊重することで、より対等なパートナーシップが築ける」という見方もあります。どちらが正しいということではなく、それぞれの家族が自分たちに合った形を選べることが重要だという考え方が、海外では主流になりつつあります。

職場や教育現場での受け入れと差別のリスク

職場や教育現場において、夫婦別姓がどのように受け止められるかは、社会の成熟度を示す指標の一つともいえます。海外では別姓を選んだカップルに対する偏見や差別は少なくなっているとされていますが、地域や職場環境によっては、依然として違和感を持たれるケースもあります。

職場での実務面では、社員名簿やメールアドレス、名刺などで使用する姓の統一性が求められることがあります。また、教育現場では、子どもが両親と異なる姓を名乗っている場合に、説明を求められる場面が生じることもあります。ただし、多くの先進国ではこうした状況に対する理解が進んでおり、特別な問題として扱われることは減少傾向にあります。

文化的受容と市民運動や政策の動き

夫婦別姓の制度が社会に定着するためには、法制度の整備だけでなく、文化的な受容が不可欠です。ドイツでは1993年の法改正に先立ち、市民運動や女性団体による長年の活動があり、それが制度改革につながりました。北欧諸国でも、ジェンダー平等を推進する市民運動が政策変更に大きな影響を与えてきました。

日本でも選択的夫婦別姓を求める声は年々高まっており、国連からも日本に対し4度にわたり「選択的夫婦別姓を認めるべき」との勧告が出されています。今後、日本でどのような政策判断がなされるかは、国内外の動向を踏まえながら注視していく必要があります。

まとめ

海外における夫婦別姓の制度は、国や地域によって多様な形態を取っています。OECD加盟国の中で夫婦同姓を義務付けているのは日本だけであり、多くの国では選択的夫婦別姓や原則夫婦別姓が採用されています。

海外で夫婦別姓を選択する際には、氏名登録やパスポート、銀行口座など、さまざまな実務面での手続きが必要になります。また、子どもの姓の問題や、日本の戸籍制度との整合性にも注意が必要です。

夫婦別姓の制度は、ジェンダー平等や個人のアイデンティティ尊重という観点から支持される一方、家族の一体感への懸念も存在します。どちらが正解ということではなく、それぞれの価値観やライフスタイルに合った選択ができる社会を目指すことが大切だといえるでしょう。

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LIFULL STORIES編集部

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