ダンスを通じて社会課題を解決するのは無理、なんてない。 ―LIFULLのリーダーたち―LIFULL ALT-RHYTHM責任者 宮内 康光
2024年4月1日、ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLは、チーム経営の強化を目的に、新たなCxOおよび事業CEO・責任者就任を発表しました。性別や国籍を問わない多様な顔ぶれで、代表取締役社長の伊東祐司が掲げた「チーム経営」を力強く推進していきます。
シリーズ「LIFULLのリーダーたち」、今回は「LIFULL ALT-RHYTHM」責任者の宮内康光に話を聞きます。
連載 LIFULLのリーダーたち
- 第1回代表取締役社長執行役員 伊東 祐司
- 第2回代表取締役会長 井上 高志
- 第3回CLO平島亜里沙
- 第4回執行役員CCO 川嵜 鋼平
- 第5回不動産転職事業CEO國松圭佑
- 第6回LIFULL HOME'S物件情報精度責任者 宮廻 優子
- 第7回LIFULL FaM事業 CEO 秋庭 麻衣
- 第8回LIFULL HOME'S FRIENDLY DOOR責任者 龔 軼群
- 第9回執行役員CPO 羽田 幸広
- 第10回執行役員CTO 長沢 翼
- 第11回LIFULL HOME'S戸建・注文事業CEO、Sufu事業CEO 増尾 圭悟
- 第12回執行役員CFO グループ経営推進本部長 福澤 秀一
- 第13回LIFULL HOME'S CPO、分譲マンション事業 CEO 大久保 慎
- 第14回LIFULL ALT-RHYTHM責任者 宮内 康光
- 第15回LIFULL HOME'S流通・売却事業CEO 古谷 圭一郎
- 第16回LIFULL Financial代表取締役社長 清水 哲朗
- 第17回LIFULL 取締役 宍戸 潔
- 第18回LIFULL 取締役、グループデータ本部長、CDO 山田 貴士
2025年には競技人口が1,100万人になるといわれるダンス。急成長を続けるダンス業界を伸びしろと捉えて、LIFULLは2021年4月にプロダンスチーム「LIFULL ALT-RHYTHM(ライフルアルトリズム)」を発足しました。今回は「LIFULL ALT-RHYTHM」の“情熱リーダー”に任命された宮内康光に、事業拡大のために取り組んでいること、ダンスを介して解決していきたい社会課題について話を聞きます。
多様なメンバーが集まったダンスチームも、社会課題を作品に昇華するのも、作品を多くの人に届ける活動も、「LIFULL ALT-RHYTHM」の活動すべてが、LIFULLのビジョンを体現しています。
ノンバーバルなアート表現を介して、LIFULLを体現する
――LIFULLにおける宮内さんの管掌領域を教えてください。
プロダンスチーム「LIFULL ALT-RHYTHM」の責任者です。チームの役割は主に二つあり、一つ目は、LIFULLの新規事業として利益を求めていくことです。スポンサー協賛企業を募ったり、ダンス興行やダンスレッスン、グッズの販売などで収益化を図っています。もう一つの役割は、D.LEAGUE(日本発のダンスのプロリーグ)への参画など、チームの活動を通してLIFULLのブランディングに寄与することです。LIFULLは「世界で最も多様性を認め、社会課題に向き合う企業」を目指しています。ダンスを通して、このメッセージを体現していくのが僕の役割です。
――「LIFULL ALT-RHYTHM」の特徴を教えてください。
性別・年齢・ダンスジャンルが多様なメンバーが揃っていることです。Dリーグに参画している他のチームは、メンバーの年齢層とジャンルを揃えて統一感のあるパフォーマンスをしているチームが多いです。一方で、「LIFULL ALT-RHYTHM」のダンサーは20歳から52歳までと年齢の幅が広く、ストリートダンスのジャンルで世界タイトルを獲得している人やコンテンポラリーダンサーとして世界中で活躍している人、また、新体操の分野で日本一のタイトルを獲得している人など様々なメンバーがいます。
例えば、「LGBTQに優しい社会にしよう」と言葉で発信するのは簡単ですが、僕たちはダンスで表現していきます。「LIFULL ALT-RHYTHM」には、冒頭で同性が愛し合うシーンから始まる『One』という作品があります。
ダンスというアート表現を介することで、「LGBTQに優しい社会もいいな」と自然に受け入れられていくと考えています。
――企業がIRとしてLGBTQフレンドリーを伝えるのと、アート作品に昇華して表現するのとでは、広がり方が違いそうですね。
はい。もう1つだけ作品をご紹介させていただくと、印象に残っているのは海洋プラスチックごみ問題を扱った『Daydream』という作品です。
ビニール袋を使ったダンスで海が汚染されていく過程を表現し、終盤はダンサーが悲痛な表情を浮かべます。この作品を見た小学生が自由研究のテーマに海洋プラスチックごみ問題を取り上げ、賞を獲ったというニュースがありました。僕たちが取り組んでいることが誰かに影響を与え、その先へ広がっていくという良い循環が生まれているのを感じます。
――LIFULLは、事業を通じて社会課題解決に取り組む企業グループであることを明示しています。まさに、「LIFULL ALT-RHYTHM」の活動が企業の姿勢を体現していますね。
ダンス領域での社会課題の一つにダンス教育の不があります。ダンスは、小・中学校の必修科目ですが、ダンスを教えられる指導者が少ないのです。そこで、「LIFULL ALT-RHYTHM」はプロダンサーを授業に派遣する事業を進めています。しかし、物理的な距離の問題や時間の制約があり全国に展開するのが難しいため、2023年9月にNFT(Non-fungible Token:非代替性トークン)を使ってプロダンサーのレッスン動画を全国の学校に贈る『LIFULL ALT-RHYTHM GIFT』を始めました。
“情熱リーダー”として、ゼロイチの価値創造と事業のスケールを担う
――これまでの宮内さんの職歴を教えてください。
新卒で人材業界のベンチャー企業に入り、上場するまでのサバイバル期にゼロイチの価値創造をする経験を積みました。その後、株式会社ぐるなびに転職して、当時、新規事業であるレッツエンジョイ東京というメディア事業の立ち上げを経験し、約6年半働きました。その後、先輩とゼロイチの価値創造や事業のスケールをメインキャリアとしていく中で、より大きな規模で自分の事業をしたいと考えるようになったのです。その時に、100社100カ国戦略を掲げているLIFULLを知りました。ウェブ領域でゼロイチをつくっていきたいと思い、LIFULLの採用選考に進みました。
LIFULLに入社して、不動産会社の業務効率化を図る新規事業の立ち上げを担当しました。2020年からは、不動産会社を検索する機能やそのマネタイズ、不動産会社の内部教育を担当するアカデミーなどの事業を伸ばす取り組みをしていました。そんな時に、創業社長の井上(高志)からDリーグ参画の話がきました。
会社としてダンスチームをつくりDリーグに参画する経営判断がなされたのですが、LIFULLと専門性が違う事業なので、「この人なら任せられる」という“情熱リーダー”を置くことになったのです。僕は学生の時からLOCKダンス等を始めて、かれこれ20年以上ダンスに関わっています。井上がダンスをやっている僕に声をかけてくれて、ダンス事業の責任者を拝命し、2021年4月に「LIFULL ALT-RHYTHM」が発足しました。
◆あわせて読みたい|LIFULL ALT-RHYTHMディレクター野口量さん
――宮内さんが経験を積んできたゼロイチの価値創造や事業のスケールと、今後のダンス業界の伸びしろは親和性が高いですね。
学校教育のダンス授業必修化、TikTokやInstagramなどSNSでのダンスブーム、さらにはパリ五輪の種目にブレイキン(ブレイクダンス)が加わったことなどで、ダンスシーンは一段と盛り上がっているように感じます。LIFULLが新規事業としてダンスを選んだ理由の一つも、成長産業であることが挙げられます。2015年の調査ではダンスの競技人口は約600万人、2025年には1,100万人まで伸びると言われています。日本の国民的スポーツと言われる野球やサッカーの競技人口と比較してみても、ダンスは伸びしろがあると思っています。
――これから5年間で取り組みたいことは?
持続可能なチームであるために黒字化を目指します。様々なマネタイズポイントがありますが、特にスポンサー企業様からのご支援は非常に心強いと考えています。LIFULLのアセットを活かして不動産会社様からのご支援はもちろんのこと、LIFULL ALT-RHYTHMを通じて、新規で様々な業種の企業様からのご支援も多いです。今後とも、ご支援いただく企業様にとって価値あるパートナーであるために、チーム一同、努力を続けてまいります。
また、これからダンスを始める子どもたちのために、安心してダンスを学べる状況をつくりたいと思っています。まずは、半蔵門で土日のダンススクールを開設する予定です。ダンスというと昔からのイメージで「不良っぽい」と感じる親もいますが、僕たちはプロダンサーによる良質なレッスンで誰もが安心してダンスを楽しめる環境をつくっていきます。また、テクノロジーを活用したレッスンに磨きをかけて、ダンスを学ぶ人を増やしたいと思っています。例えば、地方で暮らす方が世界のトッププロから学ぶ機会が増えていけば、日本のダンスシーンはさらに盛り上がると考えています。
今は、ダンス業だけで生計を立てることができないダンサーたちが大勢います。僕は、ダンスのトッププレーヤーが他競技のプロ選手と同程度の報酬を受け取れるまで、ダンサーの社会的ステータスを上げていきたいと思っています。
――最後にお聞きします。宮内さんの「しなきゃ、なんてない。」は?
ダンスを通じて社会課題を解決するのは無理、なんてない。僕は、ダンスを通してあらゆる社会課題解決のきっかけづくりをしていきたいのです。ダンスという言語以外の表現を通してコミュニケーションを行うノンバーバルな媒体を介して、「LGBTQが当たり前の世の中になってもいい」「身体的ギャップがあっても、世の中はきっと素晴らしい」といったメッセージを発信していきたいです。
取材・執筆:石川 歩
撮影:白松 清之
人材系企業でキャリアをスタートし、支店や事業の立ち上げ・成長を経験。その後、Web系企業で新規事業の立ち上げを経て、2018年に株式会社LIFULLに入社。LIFULL HOME'Sの事業戦略やサービス企画など、様々なグループの責任者を歴任。2021年からはプロダンスチーム「LIFULL ALT-RHYTHM」のGMとしてダンス事業の責任者を務める。
みんなが読んでいる記事
-
2022/02/10意見がないなら対話しちゃいけない、なんてない。永井 玲衣
日本全国の学校や企業、寺社など幅広い場所で哲学対話の活動を重ねてきた永井玲衣さん。哲学対話はその場ごとにテーマを設けて、複数人で話しながら思考を深めていく活動だ。数え切れないほどの回数を重ねながらも、未だ「対話は怖い」という永井さんだが、ではなぜ活動を続けるのだろうか。哲学対話、そして他者と話すことの怖さと面白さについて話を伺った。
-
2024/12/27失敗=ダメなこと、なんてない。クリエイティブ本部 マーケティング マネジャー 畠山 大樹
LIFULLのブランディングの責任者として、TVCMやオウンドメディア、ホームレス・ワールドカップ2024日本代表への協賛などさまざまなプロジェクトに挑戦してきた畠山 大樹に話を聞きます。
-
2022/01/12ピンクやフリルは女の子だけのもの、なんてない。ゆっきゅん
ピンクのヘアやお洋服がよく似合って、王子様にもお姫様にも見える。アイドルとして活躍するゆっきゅんさんは、そんな不思議な魅力を持つ人だ。多様な女性のロールモデルを発掘するオーディション『ミスiD2017』で、男性として初めてのファイナリストにも選出された。「男ならこうあるべき」「女はこうすべき」といった決めつけが、世の中から少しずつ減りはじめている今。ゆっきゅんさんに「男らしさ」「女らしさ」「自分らしさ」について、考えを伺った。
-
2022/08/04結婚しなくちゃ幸せになれない、なんてない。荒川 和久
「結婚しないと幸せになれない」「結婚してようやく一人前」という既成概念は、現代でも多くの人に根強く残っている。その裏で、50歳時未婚率(※1)は増加の一途をたどり、結婚をしない人やみずから選んで“非婚”でいる人は、もはや珍しくないのだ。日本の結婚の現状や「結婚と幸せ」の関係を踏まえ、人生を豊かにするために大切なことを、独身研究家の荒川和久さんに伺った。
-
2021/04/23“美しいが善し”、なんてない。山﨑ケイ
「ちょうどいいブス」のキャッチフレーズで人気の芸人、相席スタートの山﨑ケイさん。小学生の頃から読んでいた少女漫画で繰り広げられるような恋愛に憧れるものの、現実はそうではなかったことから、「容姿」について意識し始めたのが中学生のときだったという。2018年には初のエッセイ集『ちょうどいいブスのススメ』を出版し、反響を呼んだ。ルックスをネタにすることが炎上すらする時代の中で、どう自分の立ち位置と向き合ってきたのか――。“美しいが善し”とされるルッキズムの価値観について、改めて考察する。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
個人から世の中まで私たちを縛る既成概念について専門家監修の解説記事、調査結果、コラムやエッセイを掲載。