サスティナブルな取り組みとは? 世界共通の問題の解決を目指すSDGsとサスティナブルな社会
2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標・SDGs。17のゴールと169のターゲットが設定され、世界が一つとなって人間の生活や地球環境の問題を解決しようと立ち上がりました。この地球に住むさまざまな人がサスティナブルな社会の実現を目指し、問題を解決する方法を模索しています。
この記事では以下の4点を見ていきます。
- 最近よく聞く「サスティナブル」とは?
- サスティナブルな世界を達成するための目標・SDGsとは?
- 企業が取り組むサスティナブル経営とは?
- 一人一人が考えるサスティナブルな生き方とは?
人間だけでなく、地球上の自然や動植物も含めた長期的な目線で地球と人間社会のバランスを考えるサスティナブルについて解説します。
最近よく聞く「サスティナブル」とは?
最近、よく耳にする「サスティナブル」とは一体何なのでしょうか。
サスティナブル(sustainable)とは、「持続する(sustain)」と「できる(able)」を組み合わせた言葉で「持続可能な」「持ちこたえられる」「ずっと続けられる」という意味を持ちます。サスティナブルな社会とは「人間・経済・環境を未来までずっと継承し続けられる社会」のことです。
サスティナブルな社会の重要性を、広く伝えたものの一つに世界自然保護基金(WWF)が2012年に発表したリポートがあります。
人類は現在、地球1個分がもともと持っている生産力を上回る規模で消費を続けており、このままでは2030年までに、地球2個分を必要とする規模にまで、消費の圧力が大きくなる可能性が示されています。
引用:WWF JAPAN 地球環境の現状を明らかに 『生きている地球レポート2012』発表
このリポートは「このままの社会・経済をずっと持続することは不可能である」という警鐘であり、サスティナブルな社会を作り上げていくことが、「人間・経済・環境」を継続させるためには不可欠ということを示しています。
サスティナブルな社会の実現を目指すためには次のような行動変容が必要です。
- 環境を壊さない(地球温暖化の防止・水質保全など)
- 資源を使い過ぎない(地下資源・森林資源など)
- 現代の世代も未来の世代も豊かさを享受できるよう配慮する
サスティナブルな社会を目指すには環境保全は重要な課題ではありますが、それだけでは足りません。未来の世代も含め世界中の人々が幸せや豊かさを受け取れるようにすることも、サスティナブルな社会を実現するために必要な要素です。
エシカルとは?
サスティナブルと似た言葉で「エシカル」がありますが、基本的な意味は少し異なります。エシカル(ethical)は「倫理的な」という意味を持つ言葉です。エシカルは、多くの人が正しいと思う良識的な社会的規範であり、人間・環境・社会に配慮した行動や考え方を指します。エシカルな行動の身近な例として「エシカル消費」というものがあります。
エシカル消費は、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うことです。サスティナブルな社会の実現には、我々一人一人が消費行動を考えることが重要です。
サスティナブルな世界を達成するための目標・SDGsとは?
サスティナブルを知る上で、併せて理解しておきたい言葉がSDGsです。
SDGsとは?
SDGsとは、2015年に国連で採択された2030年の地球のあり方を描いた目標ですSDGsへの道のりは、1970年代に環境や資源枯渇への危機感が生まれたことから始まりました。それまでは、多くの人が人類の富や資源は無限にあると考えていました。しかし、1987年の国連総会で提出された報告書『我ら共有の未来(Our Common Future)』で経済成長には物理的・生物学的な限界があると認識を改めるように提言したことをきっかけに、「持続可能な開発 」という考え方が世界中に広まったのです。そして1992年の地球サミット、2000年のMDGs(ミレニアム開発目標)を経て、現在のSDGsが採択されました。
SDGsはさまざまな目標がありますが、内容が環境問題だけにとどまらず、貧困やジェンダー平等、教育など、地域的な問題から人種間の問題まで包括的にまとめています。これらの目標を大人・子ども、先進国・発展途上国の区別なく、全人類で取り組むことが求められています。
SDGsの日本の達成度と取り組み
ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が毎年、各国のSDGsの進捗状況を取りまとめたリポートを公開しています。リポートには、「SDGインデックス&ダッシュボード」という国別のランキングが掲載され、2021年の日本のSDGs達成度は165カ国中18位でした。上位はヨーロッパが独占しておりヨーロッパ諸国のSDGsに対する意識の高さが窺えます。
順位:国名(ランキングスコア)
1位:フィンランド(85.9)
2位:スウェーデン (85.6)
3位:デンマーク (84.9)
4位:ドイツ (82.5)
5位:ベルギー(82.2)
18位:日本 (79.8)
SDGsの17のゴールを明記したダッシュボードは、進捗度によって色分けされています。カードの色は該当目標の達成度を表しています。
達成度が最も高いものは緑「SDGs達成」
2番目は黄「課題は残っている」
3番目はオレンジ「重要な課題が残っている」
最低評価は赤「大きな課題が残っている」
取り組み状況の良しあしは矢印で表示しています。カードの色と同じように、緑が最も良く「SDGsの達成を軌道に乗せる、または維持する」で、黄・オレンジ・赤の順に取り組み状況の悪化を示しています。
日本のSDGs、2021年の評価は次の通りです。
日本は「4.質の高い教育をみんなに」や「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「16.平和と公正をすべての人に」は緑色の達成となっています。一方で、「5.ジェンダー平等を実現しよう」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさを守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」は赤色がついており、大きな課題が残っているという評価を受けています。「15.陸の豊かさ」は矢印も下向きであり、特に改善が必要であることが示されています。
SDGs達成を目指し、日本国内においても政府主導の取り組みを行っています。主な取り組みを3つ紹介します。
- 人間の安全保障:人間一人一人に着目し、生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、人々の豊かな可能性を実現するため、個人およびコミュニティの保護と能力強化を通じて、豊かで持続可能な社会づくりを目指す
- 防災:東日本大震災をはじめとする過去の災害を教訓としながら、災害に負けない強靱な社会の構築や、開発と国際協力における防災の主流化を主導する
- 気候変動:2020年以降の温室効果ガス排出削減を目指し、実効的な排出削減を実現させる
企業が取り組むサスティナブル経営とは?
経営において持続可能な企業を目指すことを「サスティナブル経営」といいます。サスティナブル経営では環境・社会・経済の持続性に配慮しながら、事業を成長させていきます。
従来からCSR(企業の社会的責任・社会的対応力)を掲げた社会貢献活動に取り組む企業はありましたが、経営とは切り離されたものも少なくありませんでした。これからの社会における企業経営では、次の2点が重要になります。
- CSRを経営に統合すること
- ESG(環境・社会・ガバナンス)に重点を置いた経営をすること
サスティナブル経営に取り組む企業として、丸井グループの活動を一例として紹介します。
丸井グループの商業施設は、年齢・性別の差異、障がいの有無にかかわらず全ての人に適応するデザインという概念であるユニバーサルデザインを採用しています。また、消費者と一緒に商品開発を進めるサスティナブルな取り組みは、環境省から高い評価を獲得しました。
サスティナブル経営で得られる主なメリットは以下の4点です。
- イメージアップにより企業価値が向上する
- 従業員が仕事に対する誇りを持てる
- サスティナブル意識の高い優秀な人材の確保ができる
- 消費者や取引先から優越的に選ばれる
環境や人権への配慮が足りない企業からは商品を調達しないポリシーを表明する企業も増えてきています。このような企業は増えることはあっても減ることは当面ないでしょう。サスティナブルな経営をしていないと、得意先からの発注が突然途絶えるようなリスクを抱えることになります。
今後、企業が長期的に成長するために、経営とサスティナビリティが一体化したサスティナブル経営の需要性はますます高まっていくことでしょう。
一人一人が考えるサスティナブルな生き方とは?
サスティナブルな社会の実現を目指すう上では、一人一人の考え方や生き方も大きく影響します。消費行動や環境への配慮など、まずは身のまわりのことから見直し、少しずつでも行動に移していくことが重要です。
エシカル消費から考える
サスティナブルな社会を実現するために個人ができることはたくさんあります。「電気をこまめに消す」や「食べきれないほどの食料を買わない」といった身近な行動は、環境問題やフードロスの解決に貢献できます。
SDGsの17のゴールのうち、個人がエシカル消費として取り組めるものもあります。例えば、「1.貧困をなくそう」では、途上国の社会的に立場の弱い生産者を守るため、生産者の搾取を助長しないような商品を選択できます。ほかには「12.つくる責任つかう責任」「15.陸の豊かさも守ろう」については環境負荷の低い商品を買うなどがエシカル消費につながります。
サスティナブルな活動を実践している人たち
サスティナブルな社会を目指し、先頭に立って活動する人たちから学ぶことはたくさんあります。LIFULL STORIESでインタビューした3名の実践者を紹介します。
鎌田安里紗さんは、自然環境や労働者の人権などに配慮したエシカルファッションプランナーとして活動しています。アパレルショップ店員時代に流行が始まったファストファッションにモヤモヤを感じたことがきっかけで、ファッションとサスティナブルについて興味を持つようになりました。生産背景を知るために現地に足を運んだり、消費者とコットン栽培からの服づくりを企画したりしながら、サスティナブルな社会について考えています。
ダーヴィド・グロスさんと関根健次さんは、映画制作を通してフードロス問題に立ち向かっています。映画の制作はダーヴィド・グロスさんが行い、関根健次さんは配給会社としてこの社会問題を多くの人に伝えようと奮闘中です。映画を通して生き方を変えたいという思いや勇気を持つきっかけを作ることで、人生をエンジョイできる平和な世界をつくりたいと願っています。
加藤貴之さんはダチョウで食の未来を切り開くべく活動中です。人口増加や異常気象の影響で食環境も変化せざるを得ない今、オルタナフードであるダチョウ肉で問題解決に立ち向かいます。日本では飼育数も少ないダチョウですが、おいしく環境にやさしい食用肉です。多くの人の役に立つ食材でサスティナブルな社会を目指しています。
まとめ
企業・個人を問わず、SDGsを意識して行動することは、サスティナブルな社会の実現につながります。世界にある貧困・飢餓・環境問題・経済成長・ジェンダーといった地球規模課題に対して、世界各国における取り組みが加速し、SDGs達成に向かって一丸となっています。日本政府も、SDGs を通じて豊かで活力ある未来を創造するため、“誰一人取り残さない社会の実現に向けた取り組みを一層加速していく” と宣言しています。今後は民間企業や自治体においても、サスティナブル経営の重要性がますます高まるでしょう。社会課題に向き合ったCSRや経営ビジョンを定め、企業存続に向けて活動していく組織が増えていくはずです。
地球の未来を考えることが、私たち人間の快適な暮らしを持続させることになります。サスティナブルについて考え、SDGsに取り組み、小さな行動を起こすことがサスティナブルな社会の実現につながるでしょう。
監修者:秋山宏次郎
ベストセラー書籍『こどもSDGs』監修者。一般社団法人こども食堂支援機構・代表理事。SDGsオンラインフェスタ・ソーシャルイノベーションディレクター。企業版ふるさと納税の新たな活用モデル構築検討戦略会議・学識委員。
企業から食品の寄付や、フードロスになるはずの食材を集め、全国の子ども食堂に食料を200万食以上提供。大手通信会社の社員時代から、他社や行政にさまざまな提案をし、内閣府認定の官民連携良事例など、20以上のSDGsプロジェクトの発足人として多くの案件を実現に導く。その他、大学での授業、講演、執筆活動などさまざまな分野で活躍中。
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