愛するペットと最後まで一緒にいるために。イベント「ペットとわたしの終活 〜愛犬・愛猫とずっと安心して暮らすための『備え』と『住まい』〜」開催レポート
「人生を終う瞬間まで、愛するペットと一緒にいたい──」
簡単なことに感じる人もいるかもしれないが、実はそう簡単ではなかった。
LIFULL STORIESでは、愛犬や愛猫とともに老後を豊かに過ごしたい人を応援すべく、プロの知見と最新情報に触れるイベントを開催した。人もペットも、どちらも最後まで安心して暮らすための基礎知識と、具体的な住まい探しについて学んだ時間。ほぼ満席となった会場の様子をレポートする。

なぜ、最後までペットと暮らすことは難しいのか。理由はさまざまだが、一般的に60歳を過ぎると賃貸契約が難しくなるという住まいの問題がある上に、里親として保護団体から犬や猫を受け入れるのにも年齢制限がある。また、単身者は特に、万が一の時を想定しておかなければいけない。
「ペットとわたしの終活 〜愛犬・愛猫とずっと安心して暮らすための『備え』と『住まい』〜」と題したイベントでは、おひとりさま終活士として長年、単身者の終活をサポートする大和泰子さんと、老人ホーム検索サイト「LIFULL 介護」の編集長として老人ホームの情報を発信する小菅秀樹さんを迎えて、充実の90分間となった。それぞれのお話に挙がったポイントを紹介したい。
とにかく備えておくことです。想像してみてください。もし今日から入院することになったら、24時間以内にペットを迎えに行って預かってくれる人はいますか?
イベント参加者は、「今ペットと住んでいる人」と「これから迎えたいと考えている人」がほとんど。晩年を過ごすのはまだまだ先のこととはいえ、いずれはやってくる未来を想像している参加者たちに、大和さんは優しく共感を示した。
「今日一番お伝えしたいことは、おひとりさまでも、ご高齢でも、準備があることでペットがいる生活は送れる、ということです。ただ、人生後半になると若い時よりもリスクが増えていきますね。ご病気になる可能性もあれば、認知機能が低下したり、いずれは誰でも必ずお亡くなりになる日もやってきます。そうした時に、わんちゃんやねこちゃんたちのお世話をどうするのか。これは、飼い主の責任の範囲でもあることです」
大和泰子さん。一般社団法人包括あんしん協会 代表理事、株式会社WishLane 代表取締役。証券会社・大手生命保険会社・外資系生命保険会社の営業職を経て、2000年にFPとして独立。2006年、ライフプランサポート事業の株式会社WishLane設立。2016年には保険やお金の準備だけでは足りないサポートの実現を目指し、一般社団法人包括あんしん協会を設立。おひとりさま・おふたりさま・一人暮らし高齢者の安否確認から死後の手続きに至るまで、家族のように寄り添った支援を行う。(大和さんの活動についてはこちらの記事でもご紹介しています)
備えは責任。愛犬・愛猫が自動的に守られるシステムはないから
自分に何かあった時、ペットの世話をどうするか。よく「親しい友人にお願いね、と言ってある」という声は聞くものの、多くの終活に寄り添ってきた大和さんは、「法的文書にしなくてはいけない」と現実を示す。
「口頭で約束していても、法的権限がないと、引き取る手続きや保護はできません。法律上、ペットは物扱いになりますので、相続人の財産になってしまうんです」
もしも愛犬や愛猫が自宅に取り残されてしまった場合、誰も世話する人がいない空白期間ができてしまうこともある。そんな悲劇を避けるためには、どんなに親しい友人であっても法的な備えを要するという。
また、認知症などによって判断が難しくなると、家庭裁判所が定めた成年後見人によって預貯金の管理や手続きなどを代行してもらえる法定後見という制度がある。しかし、その場合も現状では、ペットの優先順位は低い。生活に必要な医療費や生活費が対象となっており、「ペットの飼育にかかる費用は出してもらえないだろう」と、大和さん。
「残念ながら備えがない限り、わんちゃんやねこちゃんが自動的に保護されるような仕組みはありません。私たちのようなペットサポート事業も増えていますので、どうか皆さん、お元気なうちから準備して、緊急時の里親も早めに決めておきましょう」
ペット同伴の参加が可能だったこの日、参加者に寄り添って参加していたわんちゃんも
では、自分に必要な備えを理解するにはどうしたらいいのか。大和さんが示した「5つの確認」事項は明確でわかりやすい。
| 項目 | もしもの時の備え・ペットのための5つの確認事項 |
|---|---|
| 1 | ◻︎もし今日入院したら、24時間以内にペットを迎えに行ける人がいる |
| 2 | ◻︎その人は、実際に引き取ることを了承している |
| 3 | ◻︎自宅の鍵・フード・薬・動物病院の情報を、緊急時に確認できる |
| 4 | ◻︎認知機能が低下したときの契約・財産管理の備えがある |
| 5 | ◻︎その人は、実際に引き取ることを了承している |
どのくらいチェックできただろうか。少しドキッとした人もいるかもしれない。もしこのなかで1つでも「まだ」があるようなら、そこからできることを始めてみよう。

連絡先、病院、お金、合鍵……まとめておくべき情報とは
トークの後半では、大和さんが監修した『ペットとわたしのもしもの備え』を使ったワークを行い、より自分事として考える時間となった。表紙をめくると、緊急連絡先や医療、住まい、お金のことなどなど、12ページにわたってさまざまな情報を書き込めるよう項目立てられている。
「ご自宅で完成させてほしいと思いますが、今この時間は、特に大事な、絶対に書いておいて欲しい情報を一緒に見ていきましょう」
まずは自分自身の基本情報。続いて、緊急時に連絡してほしい人たちについて。
「今は思い浮かぶ人でいいですが、実際にはご了承を取っておいてくださいね。ご住所まで分からなくても、フルネームでのお名前と、お電話番号は絶対に必要です。ニックネームでは書かないでください」
また、住まいに関する項目ではこんな話も。
「ペットがいる場合に大事なのは、合鍵です。預けている人がいる場合はその方のご連絡先を書いてください。65歳以上のお一人暮らしの場合、鍵のお預かりサービスをしている自治体も全国的に増えていますので、預けられる人がいない場合、そうしたサービスを調べてみるのもいいと思います」

ペットに関するページにも、預け先候補の連絡先や、ペットの名前、性格、病院、フード、散歩についてなど、細やかに書き込めるようになっている。
「細かいことまでわかると、対応する方はありがたいです。もちろん書くのに時間はかかりますが、最近は災害も多いですし、いつ何があるかわかりません。まずはペットの情報を、そしてご自身のことも、こうしてまとめておくと安心です」
デジタル端末に集約されやすい現代では、誰も情報にリーチできなくなってしまうこともある。大和さんはその解決策として、ネット銀行やサブスクサービスといった情報も、やはり紙面にしておくことを提案する。不正利用対策として、パスワードや暗証番号を直接記入するのではなく、保管場所や確認方法を書いておくことで、最低限の安全性を守ることを勧めた。
イベント後、参加者から寄せられた質問(抜粋)はこちら。
Q. ペットを預かってくれる人の了承を得る際、どのような内容を書面に残す必要があるのか、具体的に教えてください。
A. 大和さん:「どんな時、誰が、どこまで対応するか」を明確にした書面を作成しましょう。費用についても明記し、相手の方と齟齬がないようにしておくことも重要です。また、注意したいのは、飼い主が「入院した場合」と「亡くなった場合」では、ペットを預かる意味や必要な手続きが異なること。それぞれの場合を想定しておくようにしてください。
その上で書面には、①生前の緊急時の対応、②自宅へ入る権限、③ペットを保護・移送・預かる権限、④合鍵の管理方法、⑤飼育費・医療費等の負担方法、⑥飼い主が判断できなくなった場合の対応、⑦飼い主死亡後のペットの譲渡先、⑧譲渡後の飼育費用をどう準備するか、の8つは必ず記載しておきましょう。特に死亡時は「相続」となるため、遺言書を作成しておき、相続人とのトラブルを回避することが望ましいです。ペットサポートの事業者や、ペット信託の遺言作成を行う行政書士さんなど、ペットに詳しい専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
種類は10以上、入居金はゼロ〜数千万。多様な「ついの住まい探し」のリアル
イベント後半となる第2部は、日本最大級の老人ホーム検索サイト「LIFULL 介護」を運営する編集長・小菅さんによる、老人ホームのリアルを知る時間となった。
「暗いとか閉鎖的といったイメージを持たれている方もいますが、私はこれまで400か所近いシニア向け住宅を見てきて、すごく素敵な老人ホームや、熱い思いを持った素晴らしいスタッフの方にたくさんお会いしてきました。自宅よりもこっちが幸せだと言う入居者さんにお会いしたこともあります。ご自身に合う施設を選べれば、心豊かな生活は続けられると考えています」
小菅秀樹さん。「LIFULL 介護」編集長。1,500件以上の施設入居を支援し、 全国300施設以上を訪問・取材するなど、長年現場で培った知見を活かした実践的でわかりやすいアドバイスと、安心できる住まい選びをサポートする。講演やセミナー登壇の他、テレビ・新聞・雑誌などでリアルな情報を発信する。2025年7月、集英社より『伝説の相談員が教える幸せになれる老人ホーム探し~マンガでわかる高齢者施設~』を出版。
LIFULL 介護のプラットフォーム上で「ペット可」を検索すると、全国で586件がヒットする(※)。東京都に絞ると、都内に約1600件(※)あるシニア向け施設のうち、ペット可は130件だ(※)。
「昔に比べたら増えてきたとはいえ、まだ貴重なのは確かです。それ故に、ペット可の老人ホームは存在自体がまだまだ知られていません」
シニア向け住宅は、法律上10種類以上あるという。よく聞くのは「有料老人ホーム(介護付き/住宅型)」「サービス付高齢者向け住宅」「認知症対応型グループホーム」「特別養護老人ホーム」の4種類だが、ペット可となると主に、前者2つに絞られる。
「有料老人ホームは、2000年から激増した民間のサービスです。入居金もゼロから数千万円までと幅広く、他社と差別化するためにサービスも多彩。例えば、こだわりの食材や温泉といった施設の個性を出してきます。その一つとして、ペット可も増えていると考えられます」
一方、通称・サ高住と呼ばれるサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームと異なる賃貸物件。比較的プライバシーは保たれやすく、自宅のような感覚で暮らすこともできる。施設として義務付けられているのは、入居者の安否確認と、生活相談だ。例えば、入居した時は自立していても、年月が経ち、介護保険を使いたいと思ったときなど、すぐに相談できる体制が整っている。
また、特別養護老人ホーム(特養)は、介護保険で運用されている公的な施設。費用は比較的抑えられる一方、地域によっては空きが少なく、人口が多い地域では数百人以上もの入居希望者が待機しているという。
※いずれも2026年9月10日現在
2026年には「ペットと入れる老人ホームに関する意識調査」を実施。ペットと最後まで暮らしたい人は多いが、ペット可の老人ホームはまだ認知度が低い
一緒に住めるだけ?ペット可物件の見学で確認すべきこと
小菅さんが強調するのは、「ペット可」シニア向け住宅を探す時の注意点だ。
「ペットと一緒に住めるだけなのか、ペットのお世話を頼むこともできるのかでは、大きな違いです」
お世話を頼める場合でも、対応ごとにオプション料金がかかる場合や、月額サービス料金に含まれるなど、料金体制は施設によって異なる。後々のトラブルを避けるためにも、事前にしっかり確認したい。
また、これまでの調査結果から、シニア向け施設探しにまつわる現状も共有された。例えば、65歳以上の約7割の人が、現在の住まいに住み続ける上での不安があり、その不安の上位は「自宅で倒れても気づかれない」ことだった。
入居先を探す際、体の状況やご家族の事情などで必要に迫られ、比較検討できずに決める場合もあるが、調査によると半数以上の人は「3箇所以上の施設を見学」している。この結果に小菅さんも、「1箇所見ただけではぜったいに決めないで欲しい」と言葉を継いだ。
「ペット可の施設は少ないので、すぐに決めたくなるかもしれないのですが、見学1箇所目でどんなに気に入ったとしても、一旦グッと堪えて、他も見学してみてください。できれば3箇所くらいは見学してほしい。その結果やはり1箇所目に申し込むことになるかもしれませんが、納得感が違うと思います」
イベント後、参加者から寄せられた質問(抜粋)はこちら。
Q.自立している子・母親・ペットが一緒にサ高住に入居できるのでしょうか?
A.小菅さん:サ高住は制度上、原則として「60歳以上」または「60歳未満であっても要支援・要介護認定を受けている方」が入居対象です。親子で入居する場合も、お子様が60歳以上であれば対象になります。そのためお子様が60歳未満で自立されている場合、原則として同居対象にはなりませんので、個別に確認が必要となります。まずは「ペット可」物件の候補を選び、その中から親子で入居可能かどうか等、物件ごとの入居条件を確認するのが良いと思います。

最後に小菅さんは、全国でも非常に珍しい「ペットと一緒に入居できる特養」を教えてくれた。しかし、比較的安価な利用料でペットと入れるとなると、当然ながら空きが出ても、すぐに決まってしまうようだ。
大和さんも第一部の最後に、「ペットと一緒に入院できる病院」を教えてくれた。これまた現状では全国に1箇所だけであり、東京から遠く離れたその病院までは、自力で行く必要がある。
おふたりともに、「今後はもっとペットとの暮らしに寛大な施設やサービスが増えていくのではないか」という考えで一致していた。団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となった今、当事者のニーズも多様化していくことが予想されている。まずは、愛犬・愛猫とともにどんな晩年を過ごしたいのか。自分の希望を考えてみることから始めてみるのはどうだろう。
ペット可老人ホーム ウェルハイム八王子施設長への取材記事を読む
おひとりさま終活士 大和泰子さんの取材記事をあわせて読む
執筆:やなぎさわまどか
撮影:三村健二