事実婚の手続きまとめ|必要な届出・準備を一から整理

事実婚という選択肢に関心を持ちながらも、具体的にどのような手続きが必要なのか分からず、一歩を踏み出せずにいる方は少なくありません。婚姻届を出さない事実婚には、法律婚とは異なる準備や届出が求められます。住民票の記載方法から社会保険の扶養手続き、相続対策まで、知っておくべきことは多岐にわたります。この記事では、事実婚を始めるにあたって必要な手続きを体系的に整理し、それぞれの場面で押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。自分たちらしい家族のかたちを実現するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

事実婚についての基本知識

事実婚の手続きを進める前に、まずは事実婚とはどのような関係を指すのか、法律婚や単なる同棲とは何が違うのかを正しく理解しておく必要があります。定義や条件を把握することで、自分たちがどのような準備をすべきかが明確になります。

事実婚の定義と法律婚との違い

事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、社会的・実質的には夫婦として共同生活を営んでいる関係のことを指します。内縁関係とも呼ばれ、法律上の手続きを経ていない点が法律婚との最大の違いです。

法律婚では、婚姻届が受理されることで戸籍上も夫婦として記載されます。一方、事実婚では戸籍に変更はなく、それぞれが元の戸籍のままとなります。そのため、姓を変える必要がないというメリットがある反面、法律で定められた配偶者としての権利が自動的には認められないという側面もあります。

以下の表で、法律婚と事実婚の主な違いを整理します。

項目 法律婚 事実婚
婚姻届の提出 必要 不要
戸籍上の記載 夫婦として記載 変更なし
姓の変更 原則どちらかが変更 変更不要
相続権 法定相続人となる 法定相続人にならない
配偶者控除 適用される 原則適用されない

このように、事実婚は法律婚と比べて柔軟な関係を築ける一方で、法的な保護が限定的である点を理解しておくことが大切です。

事実婚が認められる条件

事実婚として認められるためには、いくつかの要件を満たしている必要があります。単に一緒に暮らしているだけでは、事実婚とは認められないため、同棲との違いを明確にすることが重要です。

事実婚の成立には、相互の結婚意思、共同生活の実態、そして社会的な認知という3つの要素が重要視されます。これらが揃っていることで、婚姻に準ずる関係として評価される可能性が高まります。

具体的なポイントは以下のとおりです。

  • 将来にわたって夫婦として生活を続ける意思が双方にあること
  • 継続的に同居し、生活費や家計を共同で管理していること
  • 親族、友人、職場などの周囲から夫婦として認識されていること
  • 排他的かつ継続的な関係であること

なお、仕事の都合や介護などのやむを得ない事情で住所が別になっている場合でも、経済的な支援関係や定期的な交流、周囲からの夫婦としての認識があれば、事実婚として認められる可能性があります。

事実婚を証明するための具体的な手続き

事実婚には婚姻届のような統一的な届出制度がないため、関係を証明するための手続きを自ら行う必要があります。各種行政手続きや契約の場面で、事実婚であることを示す書類が求められることも少なくありません。

ここでは、事実婚を公的・私的に証明するための具体的な方法について、実務的な観点から解説します。

住民票や世帯変更届の提出

事実婚を証明する最も一般的な方法の一つが、住民票の続柄欄を活用することです。同じ住所に住民登録をする際、届出によって相手を「妻(未届)」や「夫(未届)」として記載できる自治体があります。

この住民票の記載は、社会保険の扶養認定や勤務先への届出など、さまざまな場面で事実婚を証明する書類として活用できます。世帯主との関係性を示す公的な書類となるため、取得しておくと手続きがスムーズに進みます。

世帯変更届を提出する際の流れは以下のとおりです。

  1. 転居届または転入届を市区町村の窓口に提出する
  2. 世帯主との続柄を「妻(未届)」または「夫(未届)」として届け出る
  3. 届出が受理されると、住民票に続柄が反映される

ただし、続柄の記載方法は自治体によって異なる場合があります。事前に窓口やホームページで確認し、必要書類を準備しておくことをおすすめします。

公正証書の作成

事実婚の関係をより明確にし、将来のトラブルを防ぐために、公正証書を作成するカップルも増えています。公正証書は公証役場で作成する公的な文書であり、契約内容に高い証明力を持たせることができます。

事実婚契約書を公正証書として残すことで、生活費の分担、財産の管理、関係解消時の取り決めなどを法的に有効な形で定めておくことが可能です。住所が別々の場合や、相続に関する対策を講じたい場合には特に有効な手段といえます。

公正証書に盛り込む内容の例は以下のとおりです。

  • 生活費や家計の分担に関する取り決め
  • 共有財産の管理方法
  • 病気や緊急時の対応についての合意
  • 関係を解消する場合の財産分与や慰謝料の取り扱い

パートナーシップ制度の申請

自治体が導入しているパートナーシップ制度は、事実婚や同性カップルが公的な証明を得るための手段の一つです。証明書を取得することで、行政サービスや民間サービスの一部でパートナーとして扱われるようになります。

パートナーシップ制度の申請は、住所地の自治体窓口で行い、必要書類を提出することで証明書が発行されます。申請に必要な書類や要件は自治体によって異なるため、事前に確認することが大切です。

ただし、この証明書は法的な婚姻関係を証明するものではありません。相続権の発生や配偶者控除の適用といった法律婚で認められる効果は得られないため、別途の対策が必要となります。

子どもがいる場合の認知や養子縁組の手続き

事実婚のカップルに子どもが生まれた場合、法律婚とは異なる手続きが必要になります。婚姻届を出していない場合、生まれた子どもは法律上、母親の戸籍に入り、父親との親子関係は自動的には成立しません。

父親が法的な親子関係を持つためには、認知届を提出する必要があります。認知によって、父親は子どもに対する扶養義務を負い、子どもは父親の相続権を得ることができます。

認知の手続きには以下のような方法があります。

  • 任意認知は、父親が市区町村の窓口に認知届を提出することで行う
  • 胎児認知は、出生前に母親の同意を得て認知届を提出することで行う
  • 強制認知は、父親が認知に応じない場合に家庭裁判所で手続きを行う

また、連れ子がいる場合には養子縁組という選択肢もあります。養子縁組をすることで、法的な親子関係が成立し、相続や扶養の面で法律上の保護を受けられるようになります。子どもの将来を考えた上で、必要な手続きを検討することが重要です。

事実婚に伴う税金・社会保険・相続の手続き

事実婚を選択する際には、税制や社会保険、相続といった分野での扱いが法律婚とは異なることを理解しておく必要があります。制度によっては配偶者として認められる場合もあれば、認められない場合もあり、個別の対応が求められます。

ここでは、事実婚に関わる主要な制度上の手続きと、押さえておきたい注意点を分野ごとに解説します。

税制上の扱いと受けられない制度

税法上の配偶者は、原則として民法に基づく法律婚の配偶者のみを指します。そのため、事実婚では、所得税における配偶者控除や相続税の配偶者税額軽減といった税制上の優遇措置が利用できない点に注意が必要です。年末調整や確定申告の際には、この点を踏まえた申告が求められます。

これらの制度が利用できないことは、長期的な家計設計や資産形成に影響を与える可能性があります。税務上の不利益を補うために、生命保険の活用や贈与計画の見直しなど、別の方法での対策を検討することが考えられます。

健康保険と年金の扶養手続き

社会保険の分野では、税法とは異なり、事実婚のパートナーも配偶者として扱われる場合があります。健康保険や厚生年金において、内縁関係にある者を被扶養者として届け出ることが認められています。

健康保険の被扶養者認定を受けるためには、住民票や事実婚を証明する書類の提出が求められることが一般的です。

扶養認定の手続きで一般的に必要となる書類は以下のとおりです。

  • 住民票(続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」と記載されたもの)
  • 収入を証明する書類(源泉徴収票、課税証明書など)
  • 事実婚関係の申立書(健康保険組合所定の様式)

また、遺族年金の受給についても、事実婚のパートナーが対象となる場合があります。ただし、年金事務所での審査において事実婚関係の証明が必要となるため、日頃から関係を証明できる書類を整えておくことが重要です。

相続権における対策

事実婚のパートナーには、法定相続人としての相続権がありません。これは、どれだけ長期間にわたって共同生活を送っていても変わらない原則です。そのため、パートナーに財産を残したい場合には、生前の対策が不可欠となります。

事実婚のパートナーに財産を遺すためには、遺言書の作成や生命保険の受取人指定など、法律婚では不要な準備を自ら行う必要があります。これらの対策を怠ると、パートナーが住居を失うなど、深刻な事態につながる可能性もあります。

相続対策として有効な方法は以下のとおりです。

  • 遺言書を作成し、パートナーへの遺贈を明記する
  • 生命保険の受取人をパートナーに指定する
  • 生前贈与により財産を移転しておく
  • 不動産の共有名義や賃借権の承継について契約で定める

遺言書については、公正証書遺言として作成することで、形式的な不備による無効リスクを軽減できます。また、法定相続人がいる場合には遺留分への配慮も必要となるため、専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

住宅ローンや賃貸契約で必要な証明

住宅ローンの連帯債務やペアローンを組む際には、多くの金融機関で事実婚関係を証明する住民票の提出を求められることがあります。金融機関によっては、事実婚でも連帯保証や収入合算が認められる場合があるため、複数の金融機関に相談してみることをおすすめします。

公営住宅については、国土交通省の通達により、事実婚のパートナーも配偶者として扱われる場合があります。入居要件は自治体ごとに異なるため、事前に窓口で確認することが重要です。

まとめ

事実婚は、婚姻届を出さずに夫婦としての生活を営む選択肢として、近年注目を集めています。姓を変えずに済むことや、価値観に合った柔軟な関係を築けることがメリットとして挙げられます。

一方で、法律婚とは異なり、相続権や税制上の配偶者控除といった法的保護が自動的には受けられません。住民票の続柄記載、公正証書の作成、遺言書の準備など、関係を証明し権利を守るための手続きを自ら行う必要があります。

社会保険では事実婚も配偶者として認められる場合があるなど、分野によって扱いが異なる点も理解しておくことが大切です。自分たちに必要な手続きを把握し、計画的に準備を進めることで、安心して事実婚という選択肢を歩むことができるでしょう。

LIFULL STORIES編集部

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