特定空き家とは何か|放置するとどうなる?基準とペナルティをまとめて紹介

近年、日本では空き家の増加が社会問題となっており、その対策として「特定空き家」という制度が設けられています。空き家を相続したり所有している方にとって、自分の物件がこの特定空き家に該当するかどうかは、経済的な負担や法的責任に直結する重要な問題です。この記事では、特定空き家とは何か、どのような基準で指定されるのか、指定された場合のペナルティや対処法について詳しく解説します。空き家の管理や活用を考えている方はもちろん、近隣に空き家があって不安を感じている方にも役立つ情報をお届けします。

特定空き家とは何か

特定空き家は単なる「使われていない家」とは異なり、明確な法律上の位置づけがあります。

特定空き家の定義

特定空き家とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)に基づいて、市町村から指定された問題のある空き家のことを指します。この法律は2015年5月に施行され、適切に管理されていない空き家による周辺環境への悪影響を防ぐことを目的としています。

一般的な空き家と特定空き家の違いは、行政から「問題がある」と認定されているかどうかという点にあります。誰も住んでいない家すべてが特定空き家になるわけではなく、後述する特定の基準に該当する空き家のみが指定の対象となります。

2023年の法改正では、特定空き家になる前段階として「管理不全空き家」という新たな区分が設けられました。これにより、より早い段階で行政が介入し、特定空き家への移行を防ぐ取り組みが強化されています。

特定空き家の背景と社会的影響

特定空き家制度が生まれた背景には、日本の深刻な空き家問題があります。総務省の調査によると、全国の空き家数は年々増加しており、地域の景観悪化や防犯上の問題、倒壊リスクなど、さまざまな社会的課題を引き起こしています。

適切に管理されない空き家は、近隣住民の生活環境に悪影響を及ぼすだけでなく、地域全体の資産価値の低下にもつながります。害虫や害獣の発生、不法侵入者による治安悪化、火災リスクの増大など、放置された空き家がもたらす問題は多岐にわたります。

こうした状況を改善するため、行政には所有者に対して適切な管理を求める権限が与えられました。特定空き家制度は、所有者の責任を明確にしながら、地域の安全と環境を守るための重要な仕組みとなっています。

特定空き家に指定される基準

特定空き家に指定されるかどうかは、空き家対策特別措置法で定められた基準に基づいて判断されます。これらの基準を理解することで、自分の所有する空き家がリスクを抱えているかどうかを判断できます。

倒壊など保安上危険となる状態

建物の老朽化が進んで倒壊の危険性がある状態は、特定空き家に指定される最も代表的な基準の一つです。具体的には、屋根材の脱落、外壁の剥離や崩落、基礎や土台の腐食、柱や梁の破損などが該当します。

また、建物本体だけでなく、敷地内の擁壁や塀の老朽化も判定基準に含まれます。台風や地震などの災害時に、これらが倒れて通行人や近隣の建物に被害を与える可能性がある場合、行政は所有者に対して改善を求めることができます。

以下のような状態は特に危険と判断されやすい項目です。

  • 屋根や外壁の一部が既に脱落している
  • 柱や梁に大きなひび割れや傾きが見られる
  • 基礎部分にコンクリートの欠損や鉄筋の露出がある
  • 窓ガラスが割れたまま放置されている
  • 屋根が大きく陥没している

これらの状態が確認された場合、市町村の担当者が現地調査を行い、倒壊リスクの程度を評価します。

著しく衛生上有害となる状態

衛生面での問題も、特定空き家指定の重要な基準となります。長期間放置された空き家では、さまざまな衛生上の問題が発生しやすくなります。

ゴミの不法投棄や放置、害虫・害獣の発生と繁殖、排水設備の破損による悪臭の発生などが、衛生上有害な状態として認定される代表例です。特にネズミやハクビシン、アライグマなどの害獣が住み着くと、糞尿による悪臭や衛生害虫の発生源となり、近隣住民の健康被害につながる可能性があります。

また、雨漏りや湿気による建物内部のカビの大量発生、浄化槽の管理不全による汚水の漏出なども、衛生上の問題として指摘されます。こうした状態は、目に見えにくいものの、周辺環境や住民の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。このような衛生問題は、近隣からの通報によって発覚することが多く、行政の調査対象となりやすい項目です。

適切な管理が行われず景観を著しく損なう状態

建物の外観や敷地の管理状態が、地域の景観を著しく損なっている場合も、特定空き家指定の対象となります。景観の悪化は、地域の印象や資産価値に直接影響する問題です。

外壁の汚れや破損、窓やドアの破損放置、敷地内の雑草や樹木の繁茂、不法投棄されたゴミの放置などが、景観を損なう状態として認定されます。特に、周辺が住宅地や観光地、商業地域である場合、景観への配慮はより重要視される傾向があります。

例えば、庭木が伸び放題で道路にはみ出している、外壁の塗装が剥がれて見苦しい状態になっている、看板やフェンスが錆びて朽ちているといった状態は、景観を損なう典型例です。

また、周辺の建物と比較して明らかに管理が行き届いていない状態も、判断材料となります。地域の景観ガイドラインや景観計画がある場合、それらとの整合性も考慮されます。

その他周辺の生活環境保全の観点で不適切とされる状態

前述の3つの基準に該当しない場合でも、周辺の生活環境を保全する観点から問題があると判断される状態があります。これは包括的な基準で、地域の実情に応じて柔軟に適用されます。

立ち木の枝が道路や隣地に越境している、門扉や塀が壊れて不審者の侵入が容易になっている、防犯上の問題があるなど、近隣住民の日常生活に支障をきたす状態が該当します。また、放火や不法侵入のリスクが高い状態も、この基準で評価されることがあります。

以下は、生活環境保全の観点から問題とされやすい状態の例です。

  • 敷地内への不法侵入が容易で治安上の不安がある
  • 樹木や雑草が隣地や道路に大きく越境している
  • 壊れた看板や設備が落下する危険性がある
  • 照明設備が壊れて夜間の視認性が悪い
  • 排水が適切に行われず近隣の敷地に流出している

これらの問題は、単独では小さな不便に見えても、複数重なることで地域住民の生活の質を大きく低下させます。行政は、近隣からの相談や通報を受けて、総合的に判断します。

特定空き家に指定されたときの手続きと影響

特定空き家に指定されると、所有者にはさまざまな義務が課せられ、従わない場合には厳しいペナルティが科されます。ここでは、指定から最終的な措置までの流れと、その影響について詳しく解説します。

指定までの流れと行政の対応

特定空き家の指定は、段階的なプロセスを経て行われます。まず、近隣住民からの通報や行政の巡回によって問題のある空き家が発見されます。

行政は現地調査を実施し、空き家の状態を詳細に確認した上で、所有者に対して助言や指導を行います。この段階では、まだ法的拘束力はなく、所有者が自主的に改善することが期待されています。

指導に従わない場合、次の段階として「勧告」が行われます。勧告は文書で通知され、改善期限が設定されます。この勧告を受けた時点で、後述する固定資産税の優遇措置が解除される可能性があります。

勧告にも応じない場合、行政は「命令」を発することができます。命令に違反すると、50万円以下の過料という罰則が科されます。さらに、命令にも従わない場合や緊急性が高い場合には、行政代執行という手段が取られることがあります。

行政代執行とは、行政が所有者に代わって空き家の解体や撤去を行う措置で、その費用は全額所有者に請求されます。解体費用は建物の規模や状態によって異なりますが、一般的な住宅でも数百万円に及ぶことがあります。

一度特定空き家に指定されても、適切な改善措置を講じれば指定を解除してもらうことができます。解除の条件は、指定の理由となった問題点が解消されることです。

指定される前にできる対処法

特定空き家に指定される前に、所有者自身ができる対策はいくつかあります。早期の対応が、結果的に費用や手間を最小限に抑えることにつながります。

定期的な点検と清掃、必要最小限の修繕、適切な換気と湿気対策、敷地内の草刈りや樹木の剪定など、基本的な管理を継続することが重要です。月に一度程度の見回りでも、大きな問題の早期発見につながります。

遠方に住んでいて自分で管理できない場合は、空き家管理サービスを利用する方法があります。これらのサービスでは、定期的な見回りや清掃、簡易的な修繕、庭木の手入れなどを代行してくれます。費用は月額数千円から数万円程度で、特定空き家指定のリスクを大幅に減らすことができます。

また、活用の見通しが立たない場合は、早めに売却や賃貸を検討することも有効な選択肢です。以下のような活用方法が考えられます。

  • 不動産会社を通じた売却
  • 空き家バンクへの登録
  • リノベーションして賃貸物件として活用
  • 地域の団体やNPOへの貸与
  • 更地にして駐車場や資材置き場として活用

これらの選択肢を検討する際には、それぞれのメリットとデメリットを比較し、自分の状況に最も適した方法を選ぶことが大切です。

専門家の活用法

特定空き家の問題に直面した場合、専門家のサポートを受けることで、より適切な対応が可能になります。それぞれの段階や目的に応じて、相談すべき専門家が異なります。

建物の状態診断には建築士、法的な問題には弁護士、売却や活用には不動産会社や不動産コンサルタント、税金関連の相談には税理士など、目的に応じた専門家に相談することで、最適な解決策を見つけやすくなります。特に、行政から勧告や命令を受けた場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

また、自治体の空き家相談窓口では、無料で基本的な相談に応じてくれる場合があります。まずは自治体の窓口で情報収集をしてから、必要に応じて専門家に依頼するという流れが効率的です。

専門家に依頼する際の費用は、相談内容や依頼範囲によって異なりますが、長期的な視点で見れば、適切な専門家のサポートを受けることで、結果的に費用や時間を節約できることが多いです。

まとめ

特定空き家とは、空き家対策特別措置法に基づいて市町村から指定された、管理不全で周辺環境に悪影響を及ぼす空き家のことです。倒壊の危険性、衛生上の問題、景観の悪化、生活環境への影響という4つの基準のいずれかに該当すると指定される可能性があります。

指定されると、固定資産税の優遇措置が解除されて税負担が最大6倍になるほか、命令違反には過料が科され、最終的には行政代執行によって強制的に解体され、その費用を請求されることもあります。こうしたリスクを避けるには、定期的な管理や早めの売却・活用の検討、専門家への相談などが有効です。

▼関連サイト

https://www.homes.co.jp/akiyabank/
LIFULL HOME'S空き家バンクサービスでは、空き家を探したり、空き家所有者のお悩み相談窓口も開設しています。空き家のリスクから事前対策、解決方法まで、管理と活用のヒントがあります。
空き家を所有している方は、問題が深刻化する前に行動を起こすことが大切です。自分の状況に合った対策を選び、必要であれば専門家のサポートを受けながら、適切な管理や活用を進めていきましょう。空き家問題は個人だけでなく地域全体に関わる課題でもあるため、所有者としての責任を果たすことが、より良い地域社会づくりにもつながります。

LIFULL STORIES編集部

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