サードキャリアとは?【前編】65歳以降も生涯現役!高齢になっても働き続けたい理由とウェルビーイング
人生100年時代、働き方に対する向き合い方もここ数年で大きく変化しています。これまでの画一的な発想にとらわれない年齢を踏まえたキャリア観も多様で柔軟なキャリアの考え方が広がる中で、定年後も働く「サードキャリア」という選択があることをご存じでしょうか。
健康寿命が世界一の長寿社会が進む現代、70代80代も現役でポジティブに人生を楽しみたい、体が動くうちはずっと働きたいと思う人材が増えることで、日本社会が直面している深刻な少子高齢化の解決策になることも期待されています。
この記事ではサードキャリアやシニアの働き方について、以下の5点について解説します。
前編
後編
70歳以上でも働きたい人が増加
パーソル総合研究所が中央大学経済学部の阿部正浩教授と共同開発した「予測モデル」によると、2030年には7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、644万人の人手不足になるとのことです。特にサービス業では400万人、医療・福祉業では187万人もの人材不足が見込まれています。
同報告では、644万人の人材不足を解決する4つの方向性が提示されており、その一つが「働くシニアを増やす」ことです。64歳男性の労働力率が69歳まで維持され、60代女性の70%が働くようになると、労働人口が163万人も増えると見込まれています。
実際、内閣府が全国の60歳以上の男女で現在収入のある仕事をしている人に対して行った意識調査によると、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」という質問に対して「70歳を超えても働き続けたい」と回答した人が87.0%に上りました。また、「働けるうちはいつまでも」と答えた人も36.7%を占めました。
※引用:就業・所得|令和4年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府
内閣府の「高齢社会白書(令和4年版)」によると、令和3年の労働力人口は6,907万人でしたが、そのうち65~69歳の人は410万人、70歳以上の人は516万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の人の割合は13.4%と上昇し続けています。
※引用:就業・所得|令和4年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府
出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
令和4年版高齢社会白書(全体版)
シニア世代の“仕事力”を引き出す法改正
働くシニアが増えれば人材不足は解決されるといっても、受け入れる企業や社会が変わらなければ、「絵に描いた餅」になってしまいます。その点、2021年4月から「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、70歳までの就業確保措置を講じることが事業主の努力義務となりました。
改正前は、企業は65歳までの雇用を確保することが義務付けられていました。そして、その選択肢は以下のいずれかの措置によるとされていました。
- 65歳まで定年年齢を引き上げ
- 定年制の廃止
- 65歳までの継続雇用制度を導入
改正後は改正前の義務に加えて、企業は70歳までの就業確保のために次の5つのうちいずれかの措置を講じることが努力義務となりました。
- 70歳までの定年引上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 希望する場合は、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 希望する場合は、70歳まで継続的にa、bの事業に従事できる
- a.事業主自ら実施する社会貢献事業
- b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
70歳までの雇用確保はあくまでも努力義務であるため、基準を設けて対象者を限定することは可能です。ただ、その場合、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。
また、労使間で十分に協議された上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとしたり、他の労働関係法令や公序良俗に反したりするものは認められません。例えば、「会社が必要と認めた者に限る」」「男性(女性)に限る」「組合活動に従事していない者に限る」などの基準は不適切といえます。
1976年に米国のダグラス・Tホール教授によって提唱された理論を、法政大学キャリアデザイン学部 田中研之輔教授が現代に合わせて深化させた「現代版プロティアン・キャリア理論」。その理論に基づく組織と個人のより良き関係性構築と個人の主体的なキャリア開発の支援を行う一般社団法人。代表理事は、田中研之輔・有山 徹 。
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