サードキャリアとは?【後編】65歳以降も生涯現役!高齢になっても働き続けたい理由とウェルビーイング
人生100年時代、働き方に対する向き合い方もここ数年で大きく変化しています。これまでの画一的な発想にとらわれない年齢を踏まえたキャリア観も多様で柔軟なキャリアの考え方が広がる中で、定年後も働く「サードキャリア」という選択があることをご存じでしょうか。
健康寿命が世界一の長寿社会が進む現代、70代80代も現役でポジティブに人生を楽しみたい、体が動くうちはずっと働きたいと思う人材が増えることで、日本社会が直面している深刻な少子高齢化の解決策になることも期待されています。
この記事ではサードキャリアやシニアの働き方について、以下の5点について解説します。
前編
後編
高齢者の働く意欲・就業実態の変化
パーソル総合研究所が2023年11月に公開した「働く10,000人の成長実態調査2023」によると、71歳以降も働きたいシニア就業者、プレシニア就業者が働き続けたい理由は、「働くことで健康を維持したいから」が57.8%で最も高く、続いて「生活を維持するために収入が必要だから(47.6%)」「働かないと時間をもてあましてしまうから(39.9%)」「将来の年金生活が不安だから(39.7%)」「仕事を通してやりがいを得たいから(35.8%)」と続きます。
他の理由も含めて、シニアが働き続けたい理由を大きく大別すると「健康」「収入」「やりがい」の3つを挙げることができます。
「働くこと」に幸福感を抱くシニア世代
シニアが働く理由をさらに掘り下げていくと興味深いことが分かります。
同調査によると、世代別に「私は、はたらくことを通じて、幸せを感じている」と答えた人は20代で34.4%、30代で31.5%、40代で32.1%、50代で36.6%でしたが、60代では46.6%に上りました。逆に「私は、はたらくことを通じて不幸せを感じている」と回答したのは20代で28.7%、30代で24.7%、40代で19.7%、50代で15.1%だったのに対し60代では10.9%に過ぎませんでした。また、過去1年間に成長を実感したシニア就業者にその理由を尋ねると、「仕事にやりがい・意義を感じることができた」が最多であり、41.9%を占めました。
こうした調査結果から、シニアが他の世代以上に「仕事の意義ややりがい」を通じて成長を実感し、それが幸福感(Well-being)につながっていることが分かります。
出典:働く10,000人の成長実態調査2023「シニア就業者の意識・行動の変化と活躍促進のヒント」(パーソル総合研究所)
サードキャリア形成を支援する制度
厚生労働省はシニア世代に向けて「企業等で働き続けるための制度」に関する情報を発信するサイトを設けています。「定年・企業における雇用確保・就業確保」に関する制度だけでなく、「創業支援等措置」や「高齢者雇用に関するイベント・啓発活動」についてもまとめています。
さらに「再就職・就職するための制度」として「再就職援助措置」や「生涯現役支援窓口の再就職支援」や「シルバー人材センターの生きがい就労支援」などに関しても情報発信を行っています。
また、高齢者に限らず、働く人たちの主体的なスキルアップやキャリア形成を支援するために厚生労働省は教育訓練給付制度を設けています。教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。対象の教育訓練は約16,000講座です。オンラインで受講できる講座や夜間・土日に受講できる講座もあり、働きながら受講することもできます。
シニアの場合、シニアになる前までの仕事ではなく、サードキャリアとして自分のやりたいことや価値観に合った仕事を選択し、やりがいや幸福感(ウェルビーイング)を伴った働き方をする方が多くいます。そのためのキャリアアップやキャリアチェンジを目指すための一助になるでしょう。
※出典:教育訓練給付制度(厚生労働省)
年齢に限界はない!新たなキャリアに挑戦する高齢者
最近ではセカンドキャリアを超えて、新たな分野に挑戦するシニア世代が増えています。例えば、秋田在住の78歳の菅原ましこさんは「体調を崩されている方々の健康になれる手助けをしたい!」という思いで一念発起して、オンラインでマッサージセラピーを学ぶスクールに入校しました。菅原さんは、20代は会社員、30代~50代は飲食の自営業、60代はホテル勤務を経て、サードキャリア、さらにはフォースキャリアとしてセラピストを目指しています。
参考:78歳女性がセラピストを目指し、新たなキャリアに挑戦!
瀧島未香さんは87歳で日本最高齢のフィットネスインストラクターになり、90歳を超えても現役インストラクターとしてレッスンを行っています。しかし、瀧島さんがトレーニングを始めたのはなんと65歳からで、それまでは運動らしいことはまったく未経験だったそうです。「人からどう思われるなんて、気にしなくていい。私だって最初は恥ずかしい気持ちもあって『インストラクターになった』と家族や友達に言えなかったけれど、精いっぱい続けていたら、今はみんな応援してくれるようになりました」と瀧島さんは語ります。
メイクアップアーティストとして42年間、第一線を走り続けてきた藤原美智子さんは引退後「ビューティ・ライフスタイルデザイナー」として活躍しています。年齢を理由にやりたいことや目標を諦めないために大切なのは「人と比べずに、自分と比べること」だと藤原さんは語ります。
91歳の大崎博子さんは70歳の定年後は太極拳、マージャン、散歩など幅広い趣味を楽しみ、Twitter(現:X)は10年以上前に始めたといいます。「人生100年時代」を生き抜く秘訣について大崎さんは「自分がどうやって生きていくかというのを、ある程度の年齢になったら考えておくと安心できるんじゃないでしょうか。70歳で定年間近になったら、自分のこれからの歩く道を考えて生活しないとね」と言います。
まとめ
セカンドキャリアだけで満足せずにサードキャリアで輝ける分野を探すことは、シニア世代のWell-beingにつながるだけでなく、日本社会が直面している未曾有の人手不足の解決策になります。「改正高年齢者雇用安定法」など、政府がシニア世代の“仕事力”を引き出すためのさまざまな施策を行っているため、それらの制度に精通し、活用することも一つの方法でしょう。
1976年に米国のダグラス・Tホール教授によって提唱された理論を、法政大学キャリアデザイン学部 田中研之輔教授が現代に合わせて深化させた「現代版プロティアン・キャリア理論」。その理論に基づく組織と個人のより良き関係性構築と個人の主体的なキャリア開発の支援を行う一般社団法人。代表理事は、田中研之輔・有山 徹 。
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