海外で働くには? 異国での職探しの主な方法と事前準備・注意点を解説
「海外で働いてみたい」と考える動機はさまざまです。マーケットが求めるグローバル人材を目指す人もいれば、国内で働く人材の多様化・多国籍化ゆえ共生が課題になっている現状を考えると一度は海外勤務をしてみるべき、という人もいるでしょう。また、視野を広げて自分の糧にしてみたい、人間的な成長につなげたいという願いを持つ人もいるかもしれません。
理由は人それぞれですが、心に湧き上がった「海外で働いてみたい」という思いを形にするためには何から始めればよいのでしょうか? 世界を舞台に活躍したい、海外で働きたいと考えている人に向けて海外で働く方法や事前にしておきたい準備について紹介します。
この記事では以下の3点を解説します。
- 海外で働くための5つの方法とは?
- 海外で働くための事前準備や注意点とは
- 海外で活躍する先輩の体験談からヒントを得る
海外で働くための5つの方法とは?
博報堂生活総合研究所が2020年に行った「生活定点」の調査によると、全体の23.8%、つまり約4人に1人が「海外で働くことに抵抗はない」と回答しています。若い世代では特にその傾向が強く、20代では27.6%、30代では25.4%を占めました。また、近年のグローバル化により、海外で働くことに関心を抱く方も増えている傾向にあります。
では実際に海外で働くためにはどんな手段を講じる必要があるのでしょうか。5つの方法について解説します。
海外で働くための5つの方法
1.日本のグローバル企業に就職し海外転勤する
一つは、海外に拠点を持つ日本のグローバル企業に就職し、海外駐在員になる方法です。
ジェトロ(日本貿易振興機構)が1万3,503社を対象に2020年に行った「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、回答があった2,722社の43.9%が今後「海外進出の拡大を図る」(「さらに拡大を図る」19.1%、「新たに進出したい」24.8%)と回答しています。また、海外で事業拡大を図る対象は1社当たり4.9となり、2019年より増加傾向になります。このことから、グローバル企業に就職して、海外勤務のポストを目指すことで実現の可能性があると言えるでしょう。
東洋経済新報社刊行の『就職四季報2018年版』によると、海外勤務者数1位はトヨタ自動車で海外30カ国に約2,450人、2位にはトヨタグループの自動車部品国内最大手デンソーで1,501人でした。また、海外勤務者の比率では独立行政法人のジェトロが40.3%、JICA(国際協力機構)が22.4%と高い数値を誇っています。
2.海外留学した後、現地で就職する
海外留学として一般的なのは語学学校や大学等の語学コースに通う「語学留学」です。しかし、海外就職を目指すなら語学に加え、仕事につながるスキルも身に付けておくと大きなアドバンテージになるはずです。
語学留学とは別の形として、ビジネスやデザインなど専門的な分野の知識を身に付けるための「専門留学」があります。現地の言語で授業を受けるため、日常会話における実践力を身に付けることが期待できます。専門学校であれば入学条件は大学に比べて易しく、短期間で通えるコースも選択可能です。
3.ワーキングホリデーに参加する
海外就職を目指すなら、ワーキングホリデーに参加した後に、アルバイト先やインターン先から正社員として採用してもらうことも選択肢の一つです。この方法のメリットは海外で働く経験を通じ、「これから先も本当に海外で働きたいか」を実体験を踏まえて決められることです。
4.現地企業の求人にエントリーする
海外専門の求人サイトや海外への就職を支援してくれる転職エージェントなどを利用し、エントリーして仕事を見つける方法です。もちろん、語学力に自信があれば、エージェントを経由せずに自ら現地法人の採用ページから直接エントリーすることも可能です。
5.海外ノマドワーカーとして個人事業主になる
ノマドワークとは決まった職場を持たず、海外を転々としたり、特定の国に滞在したりしながら自由に仕事をする方法です。例えば、海外ノマドワーカーには専門スキルを持つエンジニア、デザイナー、ライターなどの職種で活躍している人たちがいます。クライアントとのやり取りや納品は基本的にメールやクラウド、チャットツールなどを使って行うため、ネット環境があることが必須条件ですが、インターネットさえあれば場所を選ばずにどこでも仕事できるのがメリットと言えるでしょう。
海外で働くまでの事前準備や注意点とは
海外で働きたい場合、上述したどの方法を選ぶにしても事前にできるだけ周到な準備をしておきましょう。確実にやっておきたい準備を3つ紹介します。
海外で働く前に準備しておきたい3つのこと
1.海外で働く理由と目的を明確にする
就職や転職先、留学先を見つける上で最初にすべきことは、なぜ海外で働きたいのか、具体的な理由と目的を明確にすることです。キャリアアップ、自由な生活、自分の成長などさまざまあると思いますが、自身の考えを明確にすることで自分の行きたい国や就きたい仕事や選びたい企業が絞られてくるはずです。
2.就労ビザを取得する
長期間にわたり海外の特定の就職先で働く際はパスポートのほか、就労ビザを取得しなければなりません。もし就労ビザなしで働けば不法就労と見なされ、国外追放になるケースもあるため、前もってしっかり調査しておく必要があります。ビザとパスポートの違い、就労ビザの取得条件、渡航先で企業に就職しない場合に必要な一時滞在ビザについて紹介します。
パスポートとは世界で通用する「身分証明書」であり、言葉が異なる海外でも自分が何者であるかを具体的に証明できる唯一の手段です。パスポートがなければ日本から出国もできませんし、どの国でも入国を許可されません。
ビザは、渡航先の政府が外国籍の市民に対し、入国を認めるために発行する入国許可証です。通常、書類や面接など事前審査が行われ、承認された場合にのみビザが発行されます。
目的や渡航先の国によってビザの種類・区分・制度は異なります。また、就労ビザのうち専門家や技術職専用のビザでは一定年数の職務経験、学歴や年齢が取得条件になっているビザもあります。
一方で、ビザ免除で短期間滞在できることもあります。在留期間は国によって異なりますが、インドネシアおよびタイは15日、ブルネイは14日、アラブ首長国連邦は30日、その他の国・地域については90日と定められています。詳しくは、外務省ホームページの「ビザ免除国・地域(短期滞在)」を確認しましょう。
就労ビザの取得を目指す際は、渡航先の国の在外公館(大使館・総領事館など)ホームページなどで、最新の情報を確認しておくと安心です。
※出典:ビザ免除国・地域(短期滞在)|外務省
ほとんどの場合、就労ビザを取得するには渡航先の企業への就職が必要です。しかし、多様な働き方が増えていく中で、フリーランスや海外でのリモートワークを選択する人も急増しています。海外ノマドワーカーとして長期間海外で生活する人もいます。そうした人は就労ビザではなく一時滞在が認められるビザを取得することで、海外で働ける場合もあります。
一時滞在ビザは国によって名称や申請条件、必要書類が異なります。例えば、アメリカの一時滞在ビザ(非移民ビザ)には商用/観光ビザ、学生ビザ、就労ビザなどがあり、その種類によって現在の収入や学校の成績表などの提出が必要になります。書類の準備には時間がかかることも多いため、国の在外公館ホームページなどで前もって確認しておきましょう。
3.語学力を身に付ける
海外で働きたい場合、現地や職場で求められる語学力を身に付けることも必要です。現地の仕事や生活で使用される言語を習得するようにしましょう。英語圏の国以外に住むとしても、入国手続きや銀行口座を開設する際の書類などは英語で書かれていることが多いので、共通語として利用されることの多い英語を学んでおくと安心できます。また、日常生活においては、現地語を話せるとコミュニケーションが取りやすいという場合もありますので、英語と現地語を両方学んでおくといいでしょう。
海外で活躍する先輩の体験談からヒントを得る
海外で働くことを希望する場合、実際に現地で働いている人の体験談や感想が参考になります。成功談でも失敗談でも、海外で働くことを具体的にイメージする上でヒントを与えてくれるからです。
自分の生き方や人生を大きく変えることになる海外暮らしをする場合は、賢明な判断をするためには事前の情報収集は欠かせません。海外で実際に働いている人のブログやSNS、インタビュー記事をチェックしておくといいでしょう。
例えば、日本と海外の多拠点生活を家族と共に実践している人や、国境を越えてライターとして活躍している人、また海外で俳優として新しい道を切り開いている人もいます。海外で働くための、それぞれの挑戦を紹介します。
Webサービスを運営しながら海外で「家族ノマド」を実践する板羽宣人さん
板羽さんは単身での多拠点生活ではなく、あくまでも「家族ノマド」にこだわります。
「家族でノマド生活なんてとても自分には無理」と感じるかもしれません。ところが実際に経験した板羽さんは「一度経験するとハードルはぐっと下がるもので、国内だけじゃなく海外、海外も一度行ったらもうどこへでも行けると思います」と語ります。そして、「まずは小さなことから、やるときはどんなことでも思い切って覚悟を決めてやってみてください」とエールを送ります。
枠にとらわれない執筆活動をしながら世界中を飛び回るライターの佐久間裕美子さん
ニューヨーク在住で世界中を飛び回っている佐久間さんですが、かつては日本社会の刷り込みで自分に制約を課していたそうです。しかし、そうした「こうあるべき」という価値観から解放された今、「海外に行くにしたって言葉や準備が完璧じゃなくても大丈夫。行けばなんとかなります」と勇気づけてくれます。
俳優、モデルとして国内外で活躍する尚玄さん
俳優・モデルとして国際的に活躍する尚玄さんは2008年に「海外で挑戦したい」という強い思いに突き動かされ、日本の家も荷物も仕事も手放し、単身渡米。オファーを待つのではなく、目標を実現するため手探りで道を切り開いていきます。尚玄さんは挑戦し続けるための極意は「逆境でも諦めないこと」と言います。
まとめ
海外で働きたい人に向けて、働くための方法や事前にしておきたい準備について解説してきました。渡航する前に、日本とは異なる文化や生活などの情報を集め、現地での暮らしをどんなものにするかイメージしておくとよいでしょう。
具体的な計画を進めるにあたっては、事前準備が欠かせません。海外で就職したいと思う理由や目的についてしっかりと考えてみましょう。また、情報収集をし、実際に海外で仕事をしている先輩たちの生きた経験に耳を傾けることも一つの方法です。海外就職の選択肢も増えていますので、まずは小さなことから行動することで夢を実現に近づけることができます。
監修者:大塚万紀子
1978年生まれ。中央大学大学院法学研究科卒業。株式会社ワーク・ライフバランスの取締役/パートナーコンサルタント。自らのマネジメントスタイルを変革してきた過去の経験や、高度なコーチングスキル、コミュニケーションスキルを生かしてさまざまな働き方変革を効果的に遂行。行政組織における働き方の見直しや、地域創生の鍵としての働き方改革促進を担う。
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