ハムスターやウサギのペットロス 小動物飼いの漫画家が語る“後悔しないためにできること”

近年は犬猫を亡くした時の苦しみには理解が示されつつあるが、犬猫以外の動物を失った時に悲しみはまだ軽視されることがある。

一方で、当事者が感じている悲しみは深い。冠婚葬祭事業やペット葬儀事業等に取り組む株式会社サンセルモが、ペットを飼っているもしくは飼育経験がある20歳~~69歳の男女391名を対象に行った「ペットロスに関する意識調査」では小動物や魚類、鳥類は約半数近くの飼い主がペットロスを経験していることが分かった。

天国へ旅立ったハムスターが生前の暮らしを振り返る漫画『ひまちゃんと天国の面接』を描くしらほし卯乃さんは、ウサギの看取りを経験。現在はハムスターと暮らしている。今回はペットロス後の想いや後悔しない今を送るために気を付けていることを伺った。

「あの子が最後にくれた時間」

大好きだったウサギへの後悔

――『ひまちゃんと天国の面接』はウサギの看取りを経験したことから生まれた作品だそうですね。

しらほし卯乃:3匹のウサギと暮らしたことがあります。内1匹のぽんちゃん(ミックス/男の子)は12年も生きてくれました。ガリガリの状態でホームセンターの隅っこにいたので、連れて帰った子です。

しらほし卯乃さんの漫画

――ぽんちゃんは生涯、ほとんど病気をしなかったそうですね。

しらほし卯乃:最後まで自力でご飯を食べてくれ、寝たきりになったのは亡くなる1~2日前だけでした。当時、私は実家を出ており、長期休暇に帰省していました。ぽんちゃんは実家で暮らしており、帰省中、私と2人きりの時に亡くなったんです。

――その看取りは、運命的なものを感じますね。

しらほし卯乃:私が実家から自宅へ帰る直前に亡くなりました。そばにいてほしかったのかもしれません。何時間も寄り添って見送りました。本当に辛かったですが、あの時間は彼がくれた最後のプレゼントでした。

――ぽんちゃんを亡くされた後、どんな苦しみを感じましたか。

しらほし卯乃:長く生きてくれたので、亡くなった直後は納得感がありました。家族と一緒に悲しみ、ちゃんと弔えたので、わりと滑らかに乗り越えられたんです。でも、時間が経ってから後悔が出てきて……。

しらほし卯乃さんのペットウサギのぽんちゃん

自分の知識が増え、ウサギの飼育法に関する情報が時代と共にアップデートされていくと、「してあげればよかったこと」がどんどん出てきました。もっと違うことができたんじゃないかって自分を責めました。

――後悔とはどのように向き合われましたか?

しらほし卯乃:その時にできるベストを尽くしたと言い聞かせました。ウサギ用の仏具があまりない時代だったし、画質のいい写真も残せなかったけど、それでもこんなに姿が焼きついているくらい大事だったんだなと

この後悔があったから、えびてん(今一緒に暮らしているハムスターの名前)にはできる限りのことをしてあげたいとも思うようになりました。

種としての特徴を理解した飼育をしてほしい

――最近では、犬猫と並ぶほどウサギの人気が高まっていますよね。

しらほし卯乃:ウサギ専門のショップや病院も増えてきましたよね。いい変化だとは思いますが、一方で不安もあります。過度なふれあいや、外に連れ出すなど、メジャーなペットと同じように扱うことは必ずしもその子の幸せに繋がるとは言いがたい部分があるので……。

――種としての特徴を理解することは大切ですよね。

しらほし卯乃:命の価値はどの生き物も同じだけれど、向き合い方はそれぞれ違う。種の特性やその子の好き嫌いを理解した上で適切な関わり方をしていきたいですね。

――ウサギを迎えたいと思っている方に、アドバイスはありますか。

しらほし卯乃:一番大切なのは、診てもらえる病院を見つけることです。あと、我が家の場合は、スキンシップは求められたときに応える姿勢にしていました。ナデナデは好きだけど抱っこは苦手という子も多いですしね。通院や災害などの有事にも備えつつ、適切に触れ合いを重ね、信頼を築くことが大事なのかなと。とはいえ私も最新の飼育方法を全把握しているわけではなく……。獣医さん監修の素晴らしい飼育書もたくさん発売されているので、お迎え前にそちらを読み込まれるのが一番いいと思います。

被捕食者であるウサギは上から急に手を出されると怖がる子も多いので、そういう特性も理解することが大事だと思います。

「セカンドオピニオンの選択肢が少ない」ハムスター飼いの現状

――今は、ハムスターの「えびてんくん」と暮らされているそうですね。

しらほし卯乃さん(以下、しらほし卯乃): 2025年の1月中旬に迎えました。キンクマという種類のハムスターを迎えたくてペットショップへ行きました。その時は見た目での個性はあまり分からなかったので、「どの子を選べばいいんだろう」って夫と話していたら、えびてんが近寄ってきてくれたんです。

しらほし卯乃さんの漫画

他の子はお昼寝していたのに、ひとりだけはしゃいでいて(笑)、すごく社交的でした。現在は1歳半くらいなので、そろそろシニアですね。

――初めてハムスターを迎えてみて、驚いたことは?

しらほし卯乃:懐かない子もいると聞いていたので期待しすぎないようにしていましたが、最初から人間に興味を持ってくれて。ハムスターはお迎え後1週間は構わないほうがいいのですが、見つめてきたり遊ぼうとしてきたりしました。

えびてんは、私や夫といる“3人の時間”を大切に思っているようです。ケージから出してスキンシップを取っている時、誰かが離れようとすると膝に乗って止めることもありました。

――賢いですね!

しらほし卯乃:夫婦の間に入ってきて、ニコニコと嬉しそうにしていることもあります。ハムスターって感情豊かな生き物なんですよね。

――共に暮らす中で感じるもどかしさは?

しらほし卯乃:一番大きいのは、ハムスターを診られる動物病院が少ないことです。私はお迎前にエキゾチックアニマルを診てもらえる病院を探しました。

しらほし卯乃さんのペット

偶然、自宅から通えるところにありましたが、この先、セカンドオピニオンを求めたいと思った時に選択肢が少ないことへの不安はあります。地方だと、24時間対応の動物病院がないこともあるので、それも不安に繋がりますね。

心に刺さる「寿命が短いから可哀想」の言葉

――ハムスターは体が小さいので、犬猫とは違った悩みも出てくるのではないでしょうか?

しらほし卯乃:動物病院へ行く際は、毎回かなり気を遣いますね。通院のストレスで体調を崩してしまう子もいるし、医師が体を掴んだ途端、パニックになって容体が悪化してしまうこともあるので……。我が家の場合は日々観察、そして1ヶ月〜3ヶ月に1回程度の健康診断に行くことで、獣医さんにも普段の状態をわかっていただけるようにしています。とはいえ、大きい動物よりしてあげられるケアが少ないこともあるので、もどかしいですね。

――繊細な生き物なんですね。

しらほし卯乃:飼い主は、祈るような気持ちで人間用の甘いものをあげることもあります。これは、獣医さんに指導をいただいた上で行う最後の手段。カロリーを摂取して栄養をつけ、なんとかピンチを乗り越えてもらうんです。

もちろん普段はNG。よほど体調の悪い時や看取りの時などに獣医さんに確認してから行いましょう。

しらほし卯乃さんのペット

――ハムスターは寿命が短い生き物ですが、お迎え前、そういう事実とはどのように折り合いをつけられましたか。

しらほし卯乃:迎える前は、私も寿命が短いことが気になっていました。最初から、カウントダウンが始まっているように思ってしまわないかなって。でも、実際はそんなことなくて、一緒に過ごす時間の密度がすごく濃い。もう、7年くらい一緒にいる感覚です。

ペットロス後には共に過ごした時間の密度や関係性を認めてほしい

――ハムスターは寿命が短い分、多頭飼いの方は別れが連続することもありますが、周囲の飼い主さんを見ていて、当事者はどんな風に心の折り合いをつけていると感じていますか。

しらほし卯乃: はたから見ると「連続した悲しみ」に映るかもしれませんが、飼い主としては、そのひとつひとつにちゃんと区切りや納得があるのだとも感じます。

もちろん納得できない別れもありますが、濃密な時間を過ごせたという実感を持ちながら次の子へ愛を注がれる方も多いように思います。

――納得感のある看取りをするには元気な時の接し方も大切だと思うのですが、ご自身が意識されていることはありますか。

しらほし卯乃: 被捕食者のハムスターは体調不良を隠しやすいので、小さな違和感を見逃さないようにしています。しばらく様子を見てから動物病院に連れて行くのでは命が守れないこともある。

エアコンを24時間つけながら、専用のヒーターでケージ内の温度を調節して、体調管理を徹底しています。

――体調を崩さないケアが重要なんですね。

しらほし卯乃:あとは、してあげたいと思ったケアを精査します。なるべく通院ストレスをかけないよう、“人間が納得感を得るためだけのケア”をしないようにしています。

――近年ではペットロスへの理解が進んできましたが、ハムスター界隈もそのような流れでしょうか?

しらほし卯乃:看取り時に休暇を申請しやすくなるなど、以前より悲しみを分かってもらいやすくなってきたそうです。ただ、「寿命が短いから可哀想」と言われることはまだあります。

しらほし卯乃さんのペット

たしかに時間としては短いですが、その中身は濃くて充実しています。物足りなかったという気持ちには絶対になりません。

――もし、身近な人がハムスターを亡くした場合、周囲はどんな言葉をかければ当事者の心を抉りにくいでしょうか。

しらほし卯乃:私だったら、「濃い時間を過ごしたんだね」とか、「大事だったんだね」とか、関係性や時間の密度を認めてもらえる言葉が嬉しいです。「寿命が短いのは分かってたでしょ?」みたいな言葉は苦しいかもしれませんね…。

――最期に、小動物のペットロスとはどう向き合うべきか、ご自身の考えを教えてください。

しらほし卯乃:ペットロス後は、一緒に暮らす時間よりも長い。どれだけ落ち込んでいても、生活は続いていきます。完全に消えることはない傷とどう一緒に生きていくか考えることが大切なのかもしれません。

しらほし卯乃さん漫画

『ひまちゃんと天国の面接』の2巻にはハムスター以外の動物も登場し、ペットロス後の飼い主たちが思い出を話す姿を描きました。亡くなった子を想う時、手に取ってもらえたら嬉しいです。

ペットロスは犬猫に限らず、どんな命でも深い悲しみを伴う。だが、その後悔や喪失感は愛情の証。消えるものではないからこそ、別れを少しだけ優しくする捉え方を見つけていきたい。

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取材・執筆:古川諭香

しらほし卯乃さんプロフィール画像 エビフライの絵
Profile しらほし卯乃

鹿児島県出身の漫画家、イラストレーター。ゆるくかわいく少し切なく。「ひまちゃんと天国の面接」単行本1〜2巻好評発売中。

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