【後編】女性が活躍する社会を実現するには? 女性活躍は多様性を生かす試金石

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後編

国の認定制度を活用し、具体的なアクションへ

女性活躍推進を実現するためには、企業の風土改革や男性・女性問わず、社員一人一人の仕事・育児・出産に対する意識改革が求められています。ジェンダーにかかわらず、社員一人一人が自らのキャリア意識を高め、能力を発揮できる人材育成や環境づくりが必要です。また、ワークライフバランスを考慮した多様な働き方への対応、仕事と育児の両立を可能にする制度による支援といった取り組みも不可欠でしょう。

女性の雇用環境を整備し認可を受けることで、「女性に対するサポートが整っている企業」だとアピールできる認定制度があります。ここからは、具体的な認定・選定制度を4種類紹介します。

くるみん認定について

子育てサポート企業として認定されると取得できるのが、「くるみん認定」です。認定基準をクリアしていれば「子育てサポート企業」の認定と「くるみんマーク」が付与されます。付与された「くるみんマーク」は、ホームページや広告などに表示が可能です。さらに高い基準を満たすと「プラチナくるみん認定」への申請もできます。

えるぼし認定について

出典:厚生労働省 女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」
「えるぼし認定」は、女性の活躍推進活動の状況などが優良な場合に認定されるものです。えるぼし認定は以下の評価項目を満たすことで申請できます。

  • 女性労働者の競争倍率・女性労働者の雇用割合
  • 女性労働者の平均継続勤務年数・雇用割合
  • 長時間労働となっていないか
  • 女性管理職比率
  • 多様なキャリアコース

これらの項目を基準以上でクリアしている数と、女性の活躍推進企業データベースに毎年公表することで、段階ごとのえるぼし認定が取得できます。そして、全ての評価項目をより高い基準で満たしていることに加えて、独自の要件を満たしていると「プラチナえるぼし」が与えられます。

 

なでしこ銘柄について

出典:経済産業省 女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」

女性活躍推進に優れた企業を、経済産業省と株式会社東京証券取引所が共同で選定するのが「なでしこ銘柄」です。なでしこ銘柄の選定条件は、上場していることに加え、女性活躍度調査の基準をクリアする必要があるなど、厳しいものになっています。しかし選定されれば強いアピール方法となり、投資家からの注目も集められるでしょう。
これらの認定・選定はそれぞれに証明できるマークが付与されます。働きたい女性に対しても、社会的にも高い企業価値をアピールできます。

認定・選定制度は、あくまでも女性活躍実現へのスピードを加速する手段の一つです。固定化した価値観やジェンダー役割などを無意識に決めつけてしまうのを防ぐためには、あらゆる面での意識改革を忘れてはいけません。

例えば、「家事育児は妻の仕事で、夫は仕事一筋」という価値観は、女性の活躍を阻害するだけでなく、男性の育児機会の喪失にもつながります。男性の働き方を見直し、女性・男性共に活躍できるダイバーシティ経営を実現することが、企業価値の向上に直結すると言えるでしょう。ビジネスニュースサイト「Business Insider Japan」統括編集長の浜田敬子さんは、男女共に意識を変えないと、ジェンダー役割などの既成概念は取り払えないというメッセージを発信しています。

企業が取り組むダイバーシティ・女性活躍推進の事例

すでに多くの企業が女性活躍推進法に基づく行動計画を策定し、ダイバーシティ経営に意欲的に取り組んでいます。ここでは、3社の事例を紹介します。

大王製紙の取り組み

大手製紙メーカーである大王製紙株式会社は、ダイバーシティ経営推進の専門委員会を設立し、女性活躍推進・育児支援などの施策を実行しています。

具体的には、育児休業復帰からのキャリアアップを目指せる環境を提供するため、復職前面談を実施しています。さらに、育児支援として子どもが小学3年生の学年末を迎えるまでベビーシッター補助制度、時短勤務を認めています。また、上司とのキャリア面談や外部研修会社への派遣も実施しています。

朝倉染布の取り組み

スポーツウエアや合成繊維の染色加工業務を行う朝倉染布株式会社は、女性社員が活躍できるよう、積極的に職場環境の見直しを行っています。男性ばかりの生産現場に女性社員を配置するため、布製品を運搬する電気自動車を導入するなどして、男女の体力差をカバーする対策を実施してきました。現場の女性リーダー育成にも力を入れ、女性のキャリアアップのための研修制度も整えています。

ソリマチ技研の取り組み

新潟に本社がある情報通信・ソフトウェア開発の株式会社ソリマチ技研には、創業当時より「女性だから」という偏見を持たず、男女の区分けをしないという風土が根付いていました。年齢や性別問わず平等にチャンスを与え、社員一人一人の「やりたい!」を尊重する企業です。
ソリマチ技研の女性活性化プロジェクト「ソリパスプロジェクト」には、15社からなるグループの女性社員が参加しています。企業成長を見据えた新たなビジネスや、多様な働き方でも継続可能な事業を企画・提案します。プロジェクト参加を通じて、メンバーの成長も目標に掲げており、ビジネス開発と人材教育の両面を兼ね備えた取り組みです。

女性活躍推進の実現において、「育児」と「仕事」の両立は課題が多いと認識されています。しかし、実現が難しいと諦めず、問題の解決にまい進する人たちによって、「育児もこなしながら働きたい」という女性のニーズに応えるサービスや取り組みが生まれています。自分らしさを大切にし、それぞれのステージで活躍する女性の記事はこちらをご覧ください。


まとめ


女性活躍推進の一環として注目されるダイバーシティ経営。企業のダイバーシティ経営を推し進めるため、国は認定制度なども設けています。
多様性のある企業を目指すためには、性別や年齢、人種、宗教、価値観など、一人一人のパーソナリティーだけでなく、キャリアプランや経験値、希望する働き方なども捉える必要があります。女性活躍推進においても、ジェンダーの側面に限らず、すべての人が自分らしく輝けるよう、経営陣や現場のメンバー含め、一丸となって取り組んでいくことが求められています。

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