【寄稿】ミニマル思考で本当の自分を見つける|カナダ在住のミニマリスト筆子さんが実践する、「ガラクタ思考」を捨てる秘訣と自分の本音を聞くこと
ミニマルな暮らしが人生を変えた
物や情報があふれている今、私たちは毎日、たくさんの選択を迫られています。
本来なら、自分のためになる意思決定をするべきなのに、外部の基準に合わせて、かえって自分を苦しめる選択をすることが少なくありません。
あなたは、自分ではない、別の誰かの「普通」や、誰かの「こうすべき」に自分を合わせようとしたことはありませんか?
周囲の人とうまくやっていくことは大切ですが、自分のものさしではなく、他人のものさしを使って意思決定をすることが多いと、いつのまにか自分を見失ってしまいます。
本当にやりたかったことを忘れ、自分の良さや可能性に気付かず、ストレスをためます。そして、うまくいかないことを世の中や他人のせいにして、そうする自分に自己嫌悪を抱くのです。
若い頃の私にもそういう面がありました。ですが、生活をミニマルに変え、もっとシンプルに考え始めたら自分軸を取り戻すことができました。今、私が前向きに暮らせているのは、間違いなく、余計なものを持たないミニマルライフのおかげです。
ミニマル思考とは?
ミニマルライフを送っているうちに身に着けた価値観や考え方を、私は「ミニマル思考」と呼んでいます。
ミニマル思考とは、余計な考え事や心配をするのをやめ、自分にとって大切なことについてのみ考えること、そして常に自分のためになる選択をすることです。
ミニマルライフをご存知ない方のために少し説明すると、それは、最小限のものだけを持ち、最大限に生きるライフスタイルです。自分にとって重要でないものや思考はできるだけ手離して、大事にしたいことにだけ、リソース(時間、体力、意識、お金など)を注ぎ込み、自分らしい生活をしていきます。
私は50歳になってから、本格的にミニマルな生活を始めました。最初は、不用品をどんどん捨てていましたが、物理的なものを削ぎ落としているうちに、気持ちの整理も進みました。そして、その時の自分のゴール(一番達成したいこと)だけを追求する、人の目にしばられない選択ができるようになったのです。
自分のためにならない考え方
私達は知らず知らずのうちに、自分のためにならない思考をたくさんしています。
例えば、
- 終わったことをいつまでも後悔し、起こるかどうか分からない先のことを心配する
- 人からどう見られるか、世間にどう思われるかを必要以上に気にする
- 自分と誰かの生活を比べて、落ち込んだり喜んだりする
- どんなことでも完璧を目指そうとする
- 自分が持っていないものや、できないことにばかり意識を向ける
若い頃の私は、こうした余計な思考のせいで、自分で自分の首をしめていました。たくさんガラクタ思考を持っていましたが、特に問題だったのは、「人と自分を比べて、人がいいと言っている生活をしようとしていたこと」、そして、「完璧主義」です。
人の承認を求めてストレスをためる
20代~40代の私は、ストレスの多い毎日を送っていました。ストレスの一番の原因は仕事だと思っていましたが、実は自分の考え方にありました。
その頃の私は、ストレス解消のために買い物をすることが多く、貯金ができず、ガラクタをためこむ日々を送っていました。
この行動の背景には、今の私が「自分のためにならない思考」と考える価値観があったのです。
私の場合、「人からよく見られたい」「頭のいい人だと思われたい」「仕事ができる人だと思われたい」という気持ちが強かったと思います。だから洋服やアクセサリーで外見を整えました。そういうものを買うためにはお金が必要なので、キャリアアップのための勉強をし、いくつか資格も取得しました。勉強する姿を見せることは、他の人の私に対する評価を良くすることにも役立ちました。
でも、そうやって、人の評価を得るために、他人軸で暮らしているうちに、本当の気持ちが分からなくなっていったのです。
本当にやりたいことや、大事なことが分からず、その結果、今、何をしたらいいのか分からない。とりあえず、毎日会社に行って給料分の仕事はしていましたが、全然楽しくありませんでした。
買い物をして、新しいものを手に入れた時はうれしくても、会社や社会に対する不満はどんどんふくれあがっていきました。
私は37歳になる直前にカナダに留学しましたが、留学する理由を母に長々と説明したら、「そんなに社会に幻滅しているなら、行けばいいよ」と母が言いました。
その言葉を聞いて、「ああ、私は社会に幻滅していたんだ」と思いましたが、今思うと、自分自身に幻滅していました。自分の状況にしっかり向き合うと、自己嫌悪からうつうつとするばかりなので、とりあえず、買い物に逃げて本当に起こっていることには気付いていませんでした。
本当の自分を見つける
ミニマルに暮らし始めて、大事にしたいことに意識を向けるようになりました。たくさんものを持っていましたが、不用品を捨てて残ったのはほんの少しだけ。普段使っているものや、本当に大事なものはそんなになかったのです。
それは、思考に関しても同じです。不用品を捨てながら、自分と向き合うことも始めました。
やり方は簡単で、毎日自分の思ったことや悩んでいること、心配や不満、その他なんでも、思いつくままに紙に書き出すだけです。
毎日あれやこれや書きながら、心の中にたまっていたガラクタ(無駄な思考)をどんどん取っ払って捨てました。そして、一番下にあった自分の本当の気持ちを掘り出したのです。それは地面をどんどん掘っていき、ダイヤモンドを採掘する作業でした。
私の場合、一番大事にしたいことは、「自分が好きなことをやること」でした。誰かが「やりなさい」と言っても、それが自分のしたいことでないなら、やりたくないのです。
他人軸に合わせて、微調整しながら暮らしていた時、すごくストレスが多かったのは、世間や人が「こうするといい」と言っていることを、自分の本音は無視して、無理にやろうとしていたからです。
ものやお金がたくさんなくても、自分の好きなように生きられれば、私には、それが一番うれしいのだと分かりました。
私が他人の評価を求めていたのは、自分に自信がなかったからですが、自信がなかった理由は、本当の自分をずっと抑え込んで、見ようとしていなかったからです。私は持っていないものや、自分ができないことしか見ていなかったので、山のような劣等感を抱えていました。
人より劣っていると感じていたから、「有能な人」になるために、他人の評価を追い求めていました。ですが、よく考えたら、本当の私にはできることも、いいところもたくさんあったのです。
ガラクタのような思考に埋もれていた本当の自分は、まさしくダイヤモンドのようにキラキラとした存在。それだけで圧倒的に輝いていて、誰かが「きれいね」と言っても言わなくても、そんなことは全く関係なくすばらしいものなのです。
人と比べる時間があったら自分に向き合おう
人間は社会的動物なので、常に他の人にどう思われるかを気にして、自分の行動や立ち位置を調整しています。この行動をやめることはできません。でも、ソーシャルメディアで自分と他人を比べる機会が多い今、やらなくてもいい比較を簡単にしてしまいますよね。
昔なら知るよしもなかった有名人や、自分と同じぐらいの年の人、境遇がよく似ている人、学校や会社が同じだけど日常では特に接点がない人。SNSはそんな人達の幸せの瞬間や成功、成果を嫌というほど見せてくれます。
こんな社会にいたら、「比較するな」と言われても比べてしまうでしょう。でも、私は比べないことをおすすめします。そんな時間があったら自分の道を追求するべきです。
人間が群れをなして暮らしていた昔は、他人の評価を得られるかどうかは死活問題でした。しかし、群れを作らなくてもいい現代、そして価値観が多様化している今は、もう他人軸を使った調整は不要です。
そもそも、他人の思考はコントロールできないし、一口に他人と言ってもいろいろな人がいるので、全員の意見に合わせることなんて不可能です。自分と他人を比べることは、典型的なガラクタ思考です。
ストレスが多い毎日を送っているなら、ミニマル思考を採用して、ガラクタ思考をどんどん捨ててみてはどうでしょうか?
私達はもっと自由に生きられるはずだし、そうしないと、嫌なストレスから逃れられません。今、わだかまりの多い毎日を送っているとしたら、自分のためにならない思考を頭の中にためこみすぎて、本当にしたいことが分からなくなっているからです。
頭の中にあるガラクタはどんどん捨てて本当の自分を再発見してください。そして、他人の声ではなく、自分の声を聞きましょう。今こそ、ずっと無視してきた自分の本当の声を聞く時なのです。
ブロガー、1959年生まれ、カナダ在住。ブログ「筆子ジャーナル」にて、2015年より持たない暮らしについて発信。
著書に『1週間で8割捨てる技術』『それって、必要? いらないものにしばられずに、1週間で人生を変える30の方法』(KADOKAWA刊)、『書いて、捨てる! モノと心の“ガラクタ”を手放せる4つのノート』、『買わない暮らし。』『本当に心地いい部屋』(大和出版刊)。最新刊は、『50歳からのミニマリスト宣言!』(扶桑社)がある。
ブログ https://minimalist-fudeko.com
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