top  / stories  / 子どもは働いちゃいけない、なんてない。
STORIES 2020/07/20

子どもは働いちゃいけない、なんてない。

加藤 路瑛

中学生ながら起業家として活動する加藤路瑛さん。2018年12月13日に株式会社クリスタルロードを設立したが、なぜ起業することにしたのだろうか。幼少の頃、父親の働く姿に憧れを持ち、その頃から“働きたい”という思いは強かったそうだが、一般的には学校の授業もあれば友人とたくさん遊びたいと考える年頃だ。「中学生」という既成概念を覆した加藤さんの思いと見つめる先に迫る。

多くの人は「中学生」の頃、何を思って毎日を過ごし、どんな夢を掲げていただろうか。ソニー生命保険の調査によると(調査期間:2019年6月25日~7月2日)、中学生200人のうち、49%の男女が将来の夢について「好きなことを仕事にする」と回答している。就きたい職業別にみると、男性は「YouTuberなどの動画投稿者」「プロeスポーツプレイヤー」、女性では「歌手・俳優・声優などの芸能人」「絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)」が1位、2位を占めたが、その一方で、「1年後の自分」について40%が「不安」と答えている。ちなみに、「3年後の自分」は45.5%、「10年後の自分」は43%が「不安」と回答しており、好きなことをしたいと思う一方で半数近くが将来について不安視していることが分かる。加藤さんは、将来についてどのように思っているのか。「勉強しなければならない」といった既成概念は持っていなかったのだろうか。また、なぜ働こうと思ったのか。そしてなぜ起業するに至ったのだろうか。

「子どもは働けない」という既成概念を
覆して、「子どもだからできる起業」を

加藤さんが株式会社クリスタルロードを設立したのは12歳の時だったが、働くことを意識し始めたのは実は幼少の頃からだったという。

「僕は幼稚園よりもっと前から“早く働きたい”と思っていました。父のサラリーマンのスーツ姿に憧れていたことが理由の一つです。ですが、働きたいということを周りの大人に意思表示すると『大人になってからね』『大学でちゃんと勉強して、卒業してから働きな』なんて言われました。僕はその時はそうだなと思って、中学受験もして、大学を出ようと、当時は何も考えずに勉強をしていました。いま振り返ると、これこそが既成概念だったなと思います。僕が中学1年生の時、ふと出合った『ケミストリークエスト』というカードゲームに“小学生で起業したスーパー高校生社長考案”と書いてあって、『小学生で起業できんの!?』と、衝撃を受けました。会社立てて自分でやれるじゃん、何で今までやってなかったんだろうと思い起業したというのが大きな流れです。こんな世界があったんだって本当に驚きましたし、自分の中の“子どもは働いちゃいけない”という既成概念がいきなり壊れましたね。そして起業を決意したのは、2018年6月13日頃、中学1年生の時でした」

起業についてはまず母親に相談したという加藤さん。次の日には担任の先生に相談しに行ったほどすぐに行動に移した。

「担任の先生に提出するよう言われたのが『事業計画書』だったのですが、その存在について初めて知りました。事業計画書を眺めながら僕は“子どもを理由に「今」を諦めない”というビジョンを掲げて、子どもの起業支援や挑戦資金を集められるような事業をしようと思い起業しました。しかし、始めたばかりの頃は起業支援をしたいと思っていたのですが、誰かに話すにつれて『経験ないのにやるの?』という声が増して。ある人には、『起業の経験がないのに子どもの企業を支援するなんてファンタジーだよ』と皮肉めいたことを言われ、そのときはたしかにそうだなと思いましたが、負けじとリリースできるよう頑張りました」

そんななか、小中高生のみで運営する職業探究&ビジネス実験メディア「TANQ-JOB」を2018年10月に立ち上げた。

「TANQ-JOBは、さまざまな職種の人にインタビューをして、その記事を見た子どもたちに“こういう社会もあるんだ”って知ってもらい、たくさんの仕事があるなかでどう未来につなげられるかを考えるためのメディアにしたいと思いました。メディアを発展させ、子どもの挑戦を紹介する「雑誌」事業に挑戦しようと思い、協力してくれる仲間もたくさん集まってくれましたが、雑誌発行の資金的な課題や販売ルートの課題から、現時点で実現させることはできていません。このような形で、起業して1年間は試行錯誤の連続でした」

「成し遂げたいこと」があれば、ゴールを探すだけでいい

さまざまな挑戦を経て、2018年12月13日、12歳の時に株式会社クリスタルロードを立ち上げた加藤さん。現在は新たなプロジェクトにもチャレンジしている。

「起業をするということに関して当時は批判も浴びましたが、反対に頑張ってねという意見もたくさんいただきました。何より起業しないと出会えなかった仲間に出会えたことが財産です。そんななか、今年1月に『感覚過敏研究所』を立ち上げました。感覚過敏とは、周囲の音や匂い、味覚、触覚など外部からの刺激が過剰に感じられ、激しい苦痛を伴って不快に感じられる状態のことをいいますが、実は僕もその一人なんです。思ったきっかけは、父の言葉でした。『せっかく会社を立ち上げているのなら、自分の困りごとを解決しなよ』とアドバイスしてくれたんです。自分の困りごととは『感覚過敏』でした。自分の困りごとを解決できれば、同じように悩んでいる人の役に立つかもしれないと思って感覚過敏研究所を立ち上げました。まず最初に取り組んだことは、感覚過敏の啓蒙(けいもう)活動です。ビジネスの視点でいえば、市場を作っている段階です。感覚過敏のキャラクターを作成し、そのキャラクターを利用した感覚過敏マークを作り普及活動をしています。感覚過敏マークの缶バッジも販売中です。また、感覚過敏マークを利用して、触覚過敏のためにマスクやフェイスシールドをつけられない人向けの意思表示カードや、視覚過敏や聴覚過敏の人向けにZoomなどのオンライン背景画像を作成し、無料配布しています。また、感覚過敏研究所のなかで感覚過敏を持つ人たちが無料で参加できるコミュニティを作って運営をし、現在は250人くらいが参加しています。感覚過敏の啓蒙活動以外には、感覚過敏の人向けの商品やサービスの企画や開発、感覚過敏の研究にも取り組んでいます。商品開発はいろいろな計画がありますが、感覚過敏の人のためのアパレルブランドを立ち上げたいと考えています。僕もそうですが、洋服のタグや縫い目が肌に触れて痛くて服を着るのも辛いのです。また、研究として、感覚過敏の人の脳波研究をはじめました。感覚過敏の人の特徴的な脳波があれば、それを数値化などして他の方にも理解されやすくなると思っています」

起業に関して批判もあったと語る加藤さんだが、やはり一般的には“子どもは働けない”という既成概念が存在しているようだ。加藤さんはどのように捉えているのだろうか。

「僕は既成概念なんてそもそもないと思っています。本人の受け止め方によって既成概念ではなくなります。既成概念を前提とした考え方に満足していればあえてそれを壊す必要はないけれど、満足していない人たちはやはり考え方や捉え方を変えていくことが大切だと思います。もしも何か阻むものがあるのなら、それを壁だと思わないことが重要。壁じゃないと思い始めたら勝手に壁は“透明”になり、想像力や、いろいろな視点を持つことで、自分は傷付かなくなるし壁にもなりません。一番の問題は、自分がいる世界の外側に別の世界があることに気がつけないことです。小中高生の場合、学校の世界が大半を占めるので、『起業』を含め広い世界があることに気づけないのです。それが挑戦したい人が増えていかない原因なのかなと思っています。起業したばかりの頃は批判をたくさん浴びましたし、今も新しい挑戦をするたびに批判を受けることはありますが、自分のなかでは乗り越えたというよりも気にしなくなったという方が正しいです。批判を浴びて、まだ挑戦しにくい社会なんだなということに気づいたんです。自分のビジョンが持てれば、批判というものは気にならなくなります。そういう他人からの批判で傷ついたり揺るがない自分の柱が持てるようになったことは自分の中では大きいです。一番成し遂げたいことが明確になればゴールはもう見えているので、あとはその道を探すだけで良いんです」

見たことのない世界を見続けたい

加藤さんは、今後、どんなことを世の中に向けて発信していきたいのだろうか。

「加藤路瑛としては、今を諦めないで生きるということを大切にしてほしいと思います。〇〇が終わったら……とか言っていたらずっと何もやれないじゃないですか。だからこそ、今やりたいと思ったらすぐやることをずっと大切にしていて、そういったことをSNSなどを通じて発信し続けています。人生の目標のような大袈裟なものは持っていませんが、あえて言うなら“死ぬこと”です。死ぬために生きています。見たことのない世界を見たいという気持ちがどこかにあって。それが僕の行動や挑戦の原動力です。いつ死んでもいいように、今を諦めずに生きています」

今を諦めないことの大切さを発信し続けることで、どんな未来を想像するのか。加藤さんが描く未来とは?

「僕の主観でお話させていただくと、これからは多様性がより認められる社会に変わっていけばいいなと考えています。そうなれば誰しもが挑戦しやすくなる世の中になる。ちょっとずつではありますが、挑戦している人は増えていっているとは思いますし、僕の場合は『親子起業』という名称で商標登録もしていますが、親子で起業する方法もどんどん広めていけたらなと考えています。今の日本は、社長になるのには年齢制限はありませんが、法人設立は15歳から。登記に必要な印鑑証明が取れないからです。ですから、親が代表取締役になって登記し、子どもが取締役社長になる起業方法を『親子起業』と名付けました。親がビジネスパートナーになって新しい関係ができますし、親子起業はとても可能性があります。僕が起業した頃は、起業は大人がやることで、子どもは子どもらしく学校で勉強するのが仕事だという考えが多くの人にありましたが、これからは誰もが自由に生きられる世界に変わっていくと思います。一意見をSNSなどで発する際に“僕は”や“誰々は”という主観の視点を入れれば押し付けられている感じがしなくなる。つまり、自分の主張の発信には主語を入れるということです。一意見に対して、誰の目線かということを周りの人に教えてあげたり、意思表示することが大切なんだと思います」

既成概念に縛られている人がいるなら、その既成概念がある世界から少し離れてみてほしい。僕は“子どもは働けない”という既成概念のある世界から、“子どもでも起業できる”という世界に移り、初めて自由に生きられるようになりました。もし自分と同じ価値観を持つ世界がなければ、自分で作ることもできます。僕としては、今を諦めないでその世界を探したり、その世界を自分自身で作ることが一番早いし楽かなと思います。
Profile 加藤 路瑛

2006年生まれ、千葉県出身。
2018年6月に起業を決意し、同年10月に小中高生のみで運営する職業探求&ビジネス実験メディア「TANQ-JOB」を立ち上げる。同年12月13日に株式会社クリスタルロードを設立し、2020年1月に感覚過敏研究所を立ち上げる。現在は、感覚過敏の人に向けた商品開発や感覚過敏の啓蒙(けいもう)活動にも積極的に取り組み、中学生起業家として世の中に挑戦することの素晴らしさを伝え続けている。

STORIES 2020/07/20 子どもは働いちゃいけない、なんてない。