才能がなければ一流のデザインはできない、なんてない。
ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLには、業界の常識を変えたい、世の中に新しい仕組みをつくりたい、という高い志をもつ同志たちが集まっています。
LIFULLの描く未来の実現や個人が解決したい社会課題への取り組みなど、多様なLIFULLメンバーのこれまでの「挑戦」と「これから実現したい未来」を聞く、シリーズ「LIFULL革進のリーダー」。今回はクリエイティブ本部においてデザインマネジャーでアートディレクターとして活躍する田中 忍に話を聞きます。
連載 LIFULL革進のリーダー
- 第1回LIFULL HOME'S事業本部 営業 マネジャー 坪井 洋介
- 第2回LIFULL HOME'S事業本部 プロダクトエンジニアリング部長 河津 隆洋
- 第3回LIFULL HOME'S事業本部 事業統括部長 鈴木 章浩
- 第4回LIFULL HOME'S事業本部 マーケティング マネジャー 遠藤 夏海
- 第5回クリエイティブ本部 デザインマネジャー/アートディレクター田中 忍
- 第6回LIFULL HOME'S事業本部 営業 マネジャー 加藤 直
- 第7回テクノロジー本部 シニアプリンシパルエンジニア 相原 魁
- 第8回LIFULL HOME'S事業本部 エンジニア 高詰 ありさ
- 第9回LIFULL HOME'S事業本部 サービス企画 マネジャー 笹本 昂
新卒で2012年にLIFULLに入社して12年。現在はLIFULL HOME'Sのサービスデザイン部門の責任者として堂々たる貫禄をみせる田中忍。一見、挫折知らずの華やかな経歴に見えるが実はデザイナーとしてコンプレックスを抱えていたと言います。他社とはひと味もふた味も違う、LIFULLにおけるデザイナーの立位ち置とその理由、これまでの自身の重要なターニングポイントなどについて話を伺いました。
ブランド、サービス、コミュニケーション、これらの領域を越境しながら、社会課題を解決する事業をデザインしていく。領域を問わず能力を伸ばし、発揮していけるような環境というのはすごく面白いしユニークだと思います!
プロジェクトの上流から参加しデザイナーが旗振り役になることも
――なぜLIFULLに入社したのですか?
絵が好きで美大に入ったのですが、才能豊かな学生たちと自分を比較して自信を失い、自分が本当にやりたいことってなんだっけ?と、将来について悩んでいた時期がありました。そんな中で自分を見直すきっかけになったのはバンド活動でした。当時、協力者を集めてライブイベントを主催したことがあったのですが、パンフレットやWebサイトなどさまざまな制作物を自分で作って準備をして、その当日を迎えたらめちゃくちゃ盛り上がって。最後の自分たちの出番、ステージからの光景を見た時に「ああ、これでいいんだ」ってふと気付いたんです。自分がつくったもので誰かが喜んでくれることそのものが、自分にとっては価値がある。それは自分のものづくり全てに言えることだと。だから「何をつくるか」よりも「なぜつくるのか」のほうが大事だなと思ったんです。そういう目線で進路を考え、利他主義という社是と経営理念に共感したのがネクスト(現LIFULL)でした。
――現在の業務内容を教えてください。
LIFULL HOME'S全体のサービスデザインを担う部署のユニット長を務めています。サービスデザインユニットは業務委託メンバーを含めて総勢20人のチームで、領域や担当に応じてさまざまな業務がありますが、大きくはプロダクトのグロースにおけるデザインを担っています。具体的には、サービス企画やエンジニア、マーケティング部門などのメンバーとチームを組んで、ビジョンと事業指標を共有しながら話し合い、実際に作り、ユーザーに使ってもらい、そのフィードバックや検証結果をもとにさらにサービスを磨いていくという、上流から下流までのデザイン併走です。
――グロースにおけるデザイン併走で最も大事なのはどのようなことですか?
端的にいうと「論語と算盤」の両立です。この場合、「論語」は経営理念やそれに基づいて部門ごとに定めているビジョンを指します。LIFULLは社是に「利他主義」を掲げ、社会課題を解決するために事業を運営しています。例えばLIFULL HOME'Sを通じて住生活を革進していこう、より多く、より正確な情報を集め、一人ひとりがぴったりの住まいと出会える世界にしよう、というのはビジョナリーで定性的な目標です。一方、実際にどれぐらいの情報量があって、どれぐらいの正確性を保てているか、ユーザーからの反響数はどれくらいか、ありがとうの総和としての売上利益目標はどれぐらい達成できているか、というのは定量的な目標になります。2つの目標をメンバー1人ひとりが理解し共有することで、基本的なところで目線を揃えることができます。
――他社のデザイナーと比較して、LIFULLだからできることはありますか?
LIFULLには、プロダクトに関わる、デザイナー、サービス企画・エンジニアが三位一体となってプロダクトを育てていこうという「プロダクトマネジメント体制」というものがあり、担当領域ごとに最上流からデザイン連携ができます。デザイン工程は、上流から「戦略→戦術→企画→設計→開発→検証」というような流れがありますが、一般的なデザイナーが関わり始めるのは、「設計や開発」あたりが多いと思います。一方LIFULLの場合は、「企画」から介入することができる。デザイナーが中心となって仮説を立て、自分たちで施策化していくこともできます。さらに上位工程になると、ある一定以上の知見は必要になりますが「戦略や戦術」の段階から連携することも可能です。
経営陣にもクリエイティブの専門家が。デザインを重視する文化がある
――リーダーとしてどのような課題に取り組んできましたか?
LIFULL HOME'Sは全体でみるとサービス規模が大きいので賃貸や売買といった領域ごとに事業部制のようなチームを組んで開発しているのですが、ユーザーがどの領域のサービスを見たとしても同じLIFULL HOME'Sというサービスだと見えるように意識をしてデザインしています。自分はサービスデザインのリーダーとして、マーケティング職や事業部のリーダーたちと定期的にすり合わせをしながら、ブランドガイドライン策定を推進してきました。現在は領域毎にガイドラインの拡充や反映を進めています。最近では「LIFULL HOME'Sらしさを考えるとこうしなきゃいけないよね」という意識と考え方が全メンバーに浸透しつつあるとと感じています。
――ブランドガイドラインを策定するような取り組みは一般的なものなんですか?
一般的にデザインシステム等と呼ばれる仕組みは、規模が大きいサービスサイト運用の現場では取り組んでいるケースは多くあります。ただ、LIFULLでは「マスターブランド戦略」を推進しており、企業ブランディングやコミュニケーションと一貫する形で、サービスサイトにおけるデザインシステムが整備されています。マスターブランド戦略というのは、一つの主要なブランドのもとに、各グループ企業、および製品やサービスを統合する戦略のこと。まずLIFULL Brand Design Guidelineがあり、LIFULL HOME'Sの各種ガイドラインがあって、その下にプロダクト個別のスタイルガイド等があってと全てが構造化されています。また、一般的には外部のクリエイティブディレクターの協力のもとでブランドの本筋を作っていき、社内のデザイナーが展開していくという方法を取られることもありますが、LIFULLではブランドにまつわるガイドライン全てが首尾一貫して内製化されているのも特徴です。会社のルールとしても、不特定多数の人たちに見られる会社公式のクリエイティブに関しては、基本的には全てLIFULLのデザイナーが監修することになっています。
LIFULLではマスターブランド戦略とそれを推進する仕組みがあることによって、クリエイティブがブランドに沿ったものになっています。ここまでデザインを一貫できるのは、執行役員でCCOの川嵜鋼平の存在が大きいと思います。2017年に川嵜が入社してから、ブランド戦略の考え方やデザイナーの在り方について、土台を1から作り直していった経緯があります。私も大変影響を受けました。
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何をつくるのかより、なぜつくるのかが大事
――デザイナーにとってLIFULLはどのような点が魅力だと思いますか?
広義のデザインが実践できるというのはとても大きな魅力だと思います。LIFULLでは、デザイナーの職種は「デザイナー」だけなんですよ。一般的に、グラフィックとサービスは職種が分かれていたりすると思うのですが、LIFULLは分かれていない。なぜならば、社会課題を解決する事業の推進にクリエイティブの力を活かそうと思うなら、クリエイティブにおけるあらゆる視点や選択肢を備える必要があるからです。ブランド、サービス、コミュニケーション、これらの領域を越境しながら、社会課題を解決する事業をデザインの力で推進していく。所属するデザイン部門によって軸足を置く領域は多少変わりますが、それでも横断的に様々な機会にコミットすることができます。領域を問わず能力を伸ばし、発揮していけるような環境はすごく面白いしユニークだと思います。
私自身、「何をつくるか」より「なぜつくるのか」の方が大切で、あらゆる領域でデザインをしていきたいと思っているので、とても肌に合っています。
――これから取り組みたいことはありますか?
新しいテクノロジー、特にGAI(General Artificial Intelligence)に注目しています。現在も、GAIのチームとデザイン連携するケースがありますが、進化がものすごく速くて、旧来のあらゆる機能が代替されていく可能性を秘めています。これをいちはやく取り入れ活かしていくことで、自分たちのサービスはどう変わるんだろうかと考えると、妄想が広がってすごくワクワクします。
――最後に、田中さんの「しなきゃ、なんてない。」をお聞かせください。
「才能がなければ一流のデザインはできない、なんてない。」です。私は自分のことを今でも凡才だと思っています。学生の頃から表現感覚に自信を持てず、ずっと心のどこかにコンプレックスがありましたが、CCOの川嵜と出会い「一流のクリエイティブにも再現性を持つことができる」ということを学びました。クリエイティブには「マジック」と「ロジック」の両面がありますが、私はロジックとは「再現性」を担うものだと考えています。もちろんマジックを生み出す発想力と表現力は不可欠ですが、それを含めて“ロジックで補完できる”という考え方は、自分にとって大きな気付きになりました。これからもデザインを通じて、あらゆるLIFEを、FULLにするために挑戦を続けていきます。
2012年に新卒で株式会社ネクスト(現 LIFULL)に入社。既存サービス開発、プロモーション、ブランディング、新規事業などの領域を横断。2017年にCCOに就任した川嵜鋼平に強い影響を受ける。2022年からクリエイティブ本部デザイン部ユニット長に就任し、LIFULL HOME’Sのサービスデザイン部門の責任者を務める。
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