言葉だけが想いを伝える手段、なんてない。

LIFULL HOME'S プロダクトエンジニアリング部長 河津 隆洋 LIFULL HOME'S

ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLには、業界の常識を変えたい、世の中に新しい仕組みをつくりたい、という高い志をもつ同志たちが集まっています。

LIFULLの描く未来の実現や個人が解決したい社会課題への取り組みなど、多様なLIFULLメンバーのこれまでの「挑戦」と「これから実現したい未来」を聞く、シリーズ「LIFULL革進のリーダー」。今回はLIFULL HOME'S事業本部プロダクトエンジニアリング部長として活躍する河津隆洋に話を聞きます。

LIFULL HOME'S事業本部 エンジニア マネジャー 河津 隆洋

エンジニア組織を率いる河津は、スペインの子会社に3年間出向し、言語も文化も異なるメンバーたちと事業を推進した経験を持ちます。現在、組織長として率いるプロダクトエンジニアリング部は、マレーシアやベトナムの開発拠点と連携し、国際的なチームで開発を進めています。

国際的な環境で働き、生活を送った経験のある河津が多様な価値観や文化を持つ人々の人とコミュニケーションを取るときに意識していることやプロダクトエンジニアリング部の未来について、話を聞きます。

エンジニアは、開発して納品すれば終わりではありません。企画やデザイナー、営業のメンバーと連携しながら自ら提案をし経営をリードし、ビジョン実現に貢献することができます。

納品して終わりではなく、ビジョンの実現に貢献する

――河津さんのLIFULL入社までの職歴を教えてください。

新卒で、SES(システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の略)のスタートアップ企業に入社しました。受託開発をする会社で、入社時には社員数20名程度でしたが、私が在籍した4年間の間には、最大で600名ほどの規模に成長しましたが、残念ながら最終的には倒産してしまいました。激動の4年間で、組織のビジョンなどを考える余裕はなかったように思います。とにかくお客様の要求を最優先に考え、期日までに納品する仕事を、ひたすらやっていました。

仕事をするうえでビジョンについて考えたことがなかったことに気づいたのは、ネクスト(現LIFULL)に出合ったのがきっかけでした。当時のエンジニアの組織長2名とカジュアル面談をさせてもらったときに、「ネクストのビジョンをエンジニアの力でこうやって実現させていきたい」と自身の言葉で力強く語ってくれたのが衝撃的で。エンジニアはただ作って納品するだけではなくて、自分が手掛けたプロダクトをユーザーに使ってもらい、フィードバックを得られる開発ができることと、ビジョンの実現や経営にコミットしていけることに魅力を感じて入社しました。

――これまでLIFULLで特に印象的だった仕事を教えてください。

2008年に入社してから、LIFULL HOME'Sのプロダクト開発に携わっています。分譲戸建事業領域のサイト開発からスタートし、2011年には複数に分かれていたサイトを一つに統合する大規模なサイトリニューアルを担当する等、数多くの挑戦をしてきましたが、印象深いのは、2018年にLIFULL HOME'Sの集客課題である自然検索流入を改善させる特命プロジェクトのリーダーを担当したことです。

かつては先行して取り組んだSEO対策が奏功しGoogleでの自然検索流入が多かったのですが、同業他社の影響もあり、自然検索流入が少しずつ減ってきていたのです。以前出向していたスペインの子会社ではSEOに強いサイトを開発していたこともあり、そのノウハウも活かしながら、もっとも自然検索流入数が多かった年に1年で戻すことが当時の社長である井上から与えられたミッションでした。

数ある課題の整理をしながら、アプローチを決めて、最短で実装できる人員を集めて実行していきました。例えば売買領域に着手するときには、売買に詳しい人たちに3か月間だけ来てもらい、その期間で成果を出す必要がありました。

結果として、わずか1年間で改善案を78件リリースすることができ、自然検索流入は昨対比106%まで上昇させることができました。このプロジェクトが評価され、ベストマネジャー賞もいただけたことは印象に残っています。

ユーザーにとって本当によいことを最優先する

――特命プロジェクトでは、どんなことを大切にしていましたか?

SEOを考えるとき、Googleから評価されることが重要です。ただ、私は「Googleのためにサイトを作っているのではない」とメンバーに対して伝えていましたし、メンバーも共感してくれていました。私たちは、必ずユーザーのために作っています。

Googleはあくまでもひとつの評価であって、ユーザーにとって良いサイトであることで、結果的に自然検索流入の増加にもつながると考えていました。例えば、ユーザーにとって視認性が良いこと、スピードが速くてレスポンスが良いことなどがとても大事です。トリッキーな施策ではなく、本当にユーザーに価値提供できているかどうかを考えるのは、当社が社是として掲げる「利他主義」につながっていくと考えていました。

――河津さんはスペイン・Trovit社(現LIFULL CONNECT)への3年間の出向も経験されています。Trovitではどのようなことを経験しましたか?

現地のメンバーと協力し、世界最大規模のアグリゲーションサイトの開発をしていました。2014年にTrovitを子会社化したあと、日本から事業統括、企画、そしてエンジニアの私の3名で常駐していました。

まず大変だったのは、マインドの問題でした。現地のメンバーからすれば、日本の本社から突然「管理者」が来ると、やはり緊張してしまうのは当然ですよね。「日本人は夜中まで働く」といったアンコンシャス・バイアスもあったようです。一方で、私たちも「スペイン人はシエスタ(長いお昼休憩)を取る」といったアンコンシャス・バイアスがありましたが、実際にはシエスタを取る人はほとんどいませんでした。

LIFULL HOME'S事業本部 エンジニア マネジャー 河津 隆洋

そこから、異文化の人同士が一緒に仕事をして、成果を上げていくための工夫を考え始めました。私たちが話し合って決めていたのは、「管理」の立場にならないことでした。一緒にサイトを良くしていく「メンバー」だと考え、実際に私はTrovitの技術試験を受け、クリアした上で仲間に入れてもらいました。そうすることによって、情報共有を円滑にし、チームの誰かが困っていることを見つけ出して解決しやすくなるようにしていたんです。

「べき論」を上から押し付けるのではなくて、みんなで「正論」を探って、一緒に実現に向かっていくその方法は、帰国してからも大事にしている考え方です。

文化が違っていても仲間になろうとする意思を見せる

――プロダクトエンジニアリング部として、LIFULLでこれからどんなことを実現していきたいですか?

LFIULLのビジョンを実現するために、エンジニアは一人ひとりが「経営をリードするエンジニア」となって、より一層ユーザーへの価値提供を加速させていきたいと考えています。経営をリードするエンジニアとは技術でビジネスを牽引していくエンジニアです。そのために、「開発生産性の向上」「技術負債の解消」「グローバル開発体制の構築」の3点を、プロダクトエンジニアリング部として掲げています。

「開発生産性の向上」では、エンジニア業務の生産性を上げるだけではなく、プロダクトの生産性を高めることを目指しています。プロダクトエンジニアリング部では開発生産性を測るひとつの指標としてPR/Authorを計測しています。PR/Authorとはエンジニア一人ひとりの生産性を測る物差しですが、日々の開発に関わる小さな改善を積み重ね、3カ年計画で150%成長を目指し、最終年である今年はその達成が見えています。

「技術負債の解消」では、エンジニアも経営をリードできることを意識しながら、将来的に負債が溜まらないように仕組みを構築します。技術負債が溜まれば溜まるほど、本来やりたいことの足かせになってしまうからです。業務時間の10%程度の工数を確保しながら、必要な時には抜本的に開発基盤を刷新することも含め、負債が溜まらない仕組みを作り、進めていきます。

「グローバル開発体制の構築」では、海外拠点との連携を推進していきます。LIFULLのビジョンに共感してくれるエンジニアは、日本のみならず、海外にも数多くいます。具体的には、私が管轄するプロダクトエンジニアリング部のエンジニアは約80名ですが、連携しているマレーシアやベトナムにある海外開発拠点のエンジニアを含めると、LIFULLのプロダクト開発に関わるエンジニアはおよそ150名にもなります。CTOの長沢も述べているように、私たちは単なる「オフショア開発」という考え方ではなく、ビジョンに共感する優秀なエンジニアたちが「海外でリモートワークしている状態」くらいのイメージで協働しています。

グローバル開発体制を構築する上で3つの壁「意識・文化」、「仕組み」、「言語」が大事だと思っていて、各拠点のエンジニアがお互いに協力してこの壁を越えていこうと取り組んでいます。 問題や課題は必ず起きるし簡単に解決できるものばかりではないですが、一つひとつ越えていきます。

――河津さんの「しなきゃ、なんてない。」を教えてください。

「言葉だけが想いを伝える手段、なんてない。」です。スペインのTrovit社に出向していたとき、最初は特に言葉で表現することが難しいこと、誤解が生まれることが多々ありました。

そんなときには百聞は一見にしかずで、まずはアウトプットを出して見せることを意識していました。同僚の役に立ちたい、一緒にプロダクトをより良くしたいという想いから、「こうした方がいいと思うからこれを作ったんだよね」と見せると、言語がうまく伝わっていなくても、そのアウトプットをもとにブラッシュアップしたり、別のアイデアを引き出せたりします。

アウトプットを出していくうちに、「この人は本気で仲間になろうとしている」と思ってもらえるようになりました。すると、社内の他部署でも噂が立ってきて、「あいつに言えば何か助けてくれるよ」と聞きつけた人がいろんな相談をしてくるようになったんです。

言葉が通じなくても、文化が違っていても、アウトプットを出して仲間になろうとする意思を見せれば、チームで成果を出せると思っています。

また、この考え方は、プロダクト開発においても同じだと思っています。ユーザーへの価値提供に真剣に取り組み、考え生み出したアウトプットには必ずそのサイトや機能を利用して下さるユーザーみなさんの反応が返ってきます。それが私たちとユーザーみなさんとの一つの対話となってより良いプロダクト開発につながっていくと私は信じています。

LIFULL HOME'S事業本部 エンジニア マネジャー 河津 隆洋
Profile LIFULL HOME'S プロダクトエンジニアリング部長 河津 隆洋

SESのスタートアップ企業を経て、2008年に中途入社。2013年から国際事業に従事し、2015年からスペインの子会社Trovitへ出向、3年間の任期を経てLIFULLへ帰任。帰国後、2018年には特命プロジェクトを担うチームを率い、ベストマネジャー賞を受賞。2023年10月より当時の部長(CTO)から引き継ぐ形でプロダクトエンジニアリング部長に就任。現職。

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