マンスプレイニングとは?【後編】職場や日常生活での具体例
マンスプレイニングとは、男性が女性に対して上から目線で説明や解説をすることを指します。相手に説明すること、情報を提供することが問題視されているわけではなく、その根底には「男性である自分は女性よりいろいろと知っている」という無意識の偏見が存在することが指摘されています。
ここでは、職場や日常生活の中でマンスプレイニングがどのように起こるか、いくつか具体例を挙げます。
前編
後編
マンスプレイニングの具体例

職場でのマンスプレイニング
- 女性よりも多く知っているように振舞う
社内での雑談の折、女性社員の何気ない発言に対し、男性社員が「教えてあげないと」といわんばかりに口を挟みます。男性社員は女性社員に変わって会話の主導権を取り、女性社員は気まずい思いをします。
- 専門知識の否定
上司に対して、プロジェクトメンバー数人が分析情報や経験に基づきアイデアを提案します。若手のメンバーが発言しますが、上司は他の経験あるメンバーに比べ、そのアイデアの重要度は低いと考え、軽視する発言を繰り返し、押し通そうとします。
- 昇進に関する偏見
管理職の立場にある社員が集まり、部下の昇進を検討しています。若手社員と経験ある社員が候補に挙がり、同じだけの業績を残しているにもかかわらず、若手社員を過小評価する意見を述べ続けます。
- プロジェクト配属での差別的扱い
重要なプロジェクトの人員配置を決めています。専門知識や経験に基づくと女性メンバーがプロジェクトリーダーに相応しいにもかかわらず、軽視する自説を述べ、男性メンバーが選ばれるようにします。
日常生活でのマンスプレイニング
- 女性の趣味や関心事の軽視
日常的な会話の中で、女性の趣味や関心ごとが男性よりも「劣る」ように扱われます。女性はスポーツや自動車、機械などに関心を持つと「女性なのに珍しいね」と男性から驚かれます。
- 家事や育児に関する経験の軽視
家庭内で夫の給料の額や企業でのキャリアに比べ、妻の家事や子育ての貢献が低く評価されます。夫は「女性は家庭を守るべき」という偏ったジェンダーロールに基づき、発言します。
- 聞かれていないのに説明する
女性が動物園で好きな動物を見ています。知らない男性がやってきて、唐突に動物についての蘊蓄を語り始めます。女性は何も質問していないのに一方的に説明され、不快な気持ちになります。
- 日常的な意思決定の場面
家族や同僚と一緒に旅行の計画を立てたり、買う物を決定する時に「女性の決定は衝動的」「女性は男性の決定に従うべき」などと、女性の意見や希望が軽視されたり、無視されたりします。
まとめ

上から目線で接することが多いマンスプレイニングのような言動は、男性に限ったことではありません。その根底にあるのは、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)や偏見、ジェンダーに基づく差別構造などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。注意したいのは、「自分はマンスプレイニングと無縁で、したことがない」と思い込んでいる人が、マンスプレイニングをしているケースが少なくないということです。
職場や日常生活でマンスプレイニングを経験したり、見かけたりしても、そういった言動をしている人を批判するよりも、自分自身の中に無意識の思い込みや偏見がないかを見つめる機会にしたいものです。
執筆:河合 良成
立命館大学産業社会学部特任教授・名誉教授。1989年より立命館大学産業社会学部、人間科学研究科・応用人間科学研究科で研究と教育に携わる。専門分野は社会病理学、臨床社会学、男性性研究。『「男らしさ」からの自由』『家族のゆくえ』『家族の暴力をのりこえる』『ドメスティック・バイオレンスと家族の病理』『治療的司法の実践』など著書・共著書・訳書多数。立命館大学副学長など歴任。現在、日本社会病理学会会長、対人援助学会理事長、内閣府女性に対する暴力に関する専門調査会委員など。
みんなが読んでいる記事
-
2022/09/28トランスジェンダーだから叶わない夢がある、なんてない。Mei2022年9月、あるインフルエンサーの婚約報告がSNS上で話題となった。「【ご報告】現在お付き合いさせて頂いてる、男性がいます プロポーズされて婚約者です」たくさんの祝福の言葉が贈られる中、「勇気をもらえた」「感動した」という声も。この婚約報告をしたのは、2022年の3月に性転換手術を受け、“女性”になったばかりの元男子インフルエンサー、Meiさんだ。約14年間トランスジェンダー女性として生活してきた彼女。「好きな人と結婚する」という長年の夢に大きく近づいた姿に、多くの人が感動した。
-
2023/02/24対話の質とは?【前編】多様性を深めるコミュニケーションSNS等で失われた「対話」の重要性が増しています。価値観多様化の今、相互理解には対話が不可欠。本記事では、会社、家庭、学校などあらゆる場面で役立つ対話の仕方を解説します。対話力向上は、より良いコミュニケーションと人間関係を築く第一歩です。ぜひ、極意を学び、豊かな人間関係を育みましょう。
-
2023/05/09【前編】民間シェルターとは?種類/期間/実態と女性・子供への支援家庭内での虐待やDV(ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力)は、さまざまな社会問題とつながっています。それらの被害者を保護するための措置のひとつ、「民間シェルター」について解説します。
-
2024/03/29歳を取ったら諦めが肝心、なんてない。―91歳の料理研究家・小林まさるが歳を取っても挑戦し続ける理由―「LIFULL STORIES」と「tayorini by LIFULL介護」ではメディア横断インタビューを実施。嫁舅で料理家として活躍する小林まさみさん・まさるさんにお話を伺った。2人の関わり方や、年齢との向き合い方について深堀り。本記事では、まさるさんのインタビューをお届けする。
-
2024/07/25なぜ、差別や排除が生まれるのか。│社会モデルとセットで学びたい合理的配慮とは?世の中の「ふつう」を見つめ直す。野口晃菜が語るインクルーシブ社会2024年4月、障害者差別解消法が改正されて、事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。「合理的配慮が義務付けられて、障害のある人があたり前にサービスを利用できるように、企業や店側が調整しなければいけないといえることは大きな前進」と話すのは、インクルーシブ社会の専門家・野口晃菜さん。一方、法制化されたとはいえ、合理的配慮を求める障害者に対して「ずるい」「わがまま」といった批判の声もやまない。なぜ日本社会において、差別や排除はなくならないのか。そもそも「インクルーシブ社会」とは何かについて伺いました。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」
