美の基準に縛られる日本人【後編】容姿コンプレックスと向き合うための処方箋
日本人は、海外の人と比べると「自分の容姿に自信がない」と答える人が多いそうです。実際、「理想の体型とほど遠い」「顔のパーツが好きじゃない」など、容姿に対してコンプレックスを感じる人は少なからずいることでしょう。
「外見より中身が大事」という声を聞くこともありますが、それでも人の価値を外見だけで判断する考え方や言動を指す「ルッキズム」にとらわれている人は少なくありません。なぜ、頭では「関係ない」と理解していても外見を気にする人がこれほど多いのでしょうか?
この記事では、容姿コンプレックスとルッキズムについて、以下の4点に焦点を当て解説します。
前編
後編
見た目で判断する風潮からの脱却
外見重視の考えを見直し、見た目で相手を判断するのをやめようとする「反ルッキズム」の動きは、欧米を中心に強まっています。日本でもその影響は広がっており、改革のひとつとして注目されているのが「ミスコンの方針変換」です。ここからは、各地のミスコンとその変化について見ていきましょう。
反ルッキズムの国内事例①上智大学のミスコン
上智大学のミスコンは1980年代から続くコンテストで“女性アナウンサーの登竜門”として有名でしたが、2020年に廃止され、「ソフィアンズコンテスト2020」として生まれ変わりました(※5)。
その背景には、2019年から「ミスコンはジェンダーの観点から問題があり、多様性を尊重する上智大にはそぐわない」という声が学生や教授から上がっていたことがあります。新しいコンテストでは、「ミス=女性」、「ミスター=男性」という区別をなくし、性別やジェンダーを問わず応募できます。また、ルッキズムを排除するために、スピーチや自己PRなども審査基準に盛り込みました。
反ルッキズムの国内事例②愛知県一宮市の「ミス七夕」コンテスト
1956年(昭和31年)の第1回から60年以上にわたり続けられてきたミスコンテスト「ミス七夕」「ミス織物」が2022年に廃止されました。開催側によると、「ミスの応募条件に『18歳以上の未婚女性』という条件があり、これが世の中の現状に適していない。議論を重ねた結果、廃止することにした」ということです。(※6)
出典:
※5 「SOPHIAN’S CONTEST 2023」
※6 ミス七夕・ミス織物(コンテスト)の廃止および今後の方針について
容姿コンプレックスとどう向き合うか
自分らしく生き生きと輝く憧れの人も、過去にコンプレックスを抱えていたという話はよく聞きます。顔や体型に自信がなく、ふさぎ込んでいた時期を乗り越え、コンプレックスを強みや個性に変えて「自分らしさ」を手に入れた人たちのストーリーを紹介します。
筋トレ系YouTuberとして活躍するぷろたんさんは、中学・高校時代に過度な減量から拒食症寸前になった経験を持っているそうです。周りから「デブ」と心ない言葉を投げかけられ、食べても太らない体を目指して筋トレに励みました。YouTubeで筋トレ動画をアップすると、そのストイックな姿と見事な肉体美が多くの人に感動を与えました。
芸能界を目指し、モデル活動をしていた斎藤ゆきえさんは、片目の視線が合わない斜視という容姿コンプレックスを抱えていました。しかし、欠点だったコンプレックスを個性ととらえ、サイバー系コスプレというジャンルを築き上げ、SNSで発信すると瞬く間に注目を浴びました。「自分の身体的特徴やコンプレックスは一生付き合っていかなくちゃいけないので、それが少しでもポジティブに変換できたら人生もHappyですよね!」と笑顔で話す姿が印象的です。
大学講師・ライターであるトミヤマユキコさんによると、ルッキズムを考える上で大切なのは「セルフラブ」です。「『ボディポジティブ(社会から押し付けられる見た目の評価ではなく、多様な自身の体を前向きに捉えること)』と言うときには『セルフラブ』の概念もくっ付けないといけない。つまり、“ご自愛”ですよね。他人からとやかく言われることを気にしないのは良いことだけど、自分をケアせずに無頓着でいるのはちょっとまずい。だからこそ、ボディポジティブとセルフラブはセットで語った方が良いと考えています」と言います。
まとめ
現代社会では、「女性は痩せていなきゃ」「モテる男性は脱毛するのが当たり前」など見た目に対する思い込みや偏見がいまだに根強いのが現状です。日本人の容姿コンプレックスは、そういった外見重視な価値観が助長しているとも考えられます。
外見を基準に人の価値を判断すべきでないことは誰もがわかっていても、ルッキズムがなくならず、むしろ深刻化しているのにはさまざまな要素が関係しています。大切なのはルッキズムの問題を安易に単純化せずに、「善」か「悪」かで二極論にしないことでしょう。
見た目依存への仕組みや構造を知ることで、容姿コンプレックスを生み出す外見至上主義社会から脱却し、誰もが生きやすい社会を目指せるはずです。
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