ミニマリストとは?【後編】物を消費しない時代の心の豊かさ、今ある物を大切にする暮らし方を解説
「ミニマリスト」と聞くと、物を持たない生活をする人ととらえていませんか? 勘違いされがちですが、ミニマリストは「物に愛着がない人」「断捨離が好きな人」というわけではありません。
最近では、SDGsやサステナビリティーなどの文脈で「大量生産・大量消費」の生活スタイルが見直され、「ミニマリスト」という暮らし方を選択する人が増えています。
この記事では「ミニマリスト」について、下記の5点を解説します。
前編
後編
ミニマリストが目指す「心の豊かさ」とは?

近年、ミニマリストという生き方が注目され、支持されるようになったのにはどんな背景があるのでしょうか?
2019年の内閣府「国民生活に関する世論調査」によると、「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」と答えた人の割合は62.0%に達し、「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」と答えた29.6%を大きく上回りました。
その後もミニマリストという生き方が支持されるようになった大きな要因の一つは、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大だと考えられます。外出を制限され、“ステイホーム”を余儀なくされることで、多くの人が「自分にとって心地よい暮らしとは何か」を考えるようになりました。
岡山理科大学の研究論文では、SNS上のコミュニティーにいるミニマリストが最初にとる行動は、自分の生活を整理することでした。この行動を通じ、大事なことを見極めるようになり、価値観が変化することもあります。
それから「効率的な行動」を通じ、自分にとって大事な人や物に資源を集中して生きていく生活様式が定着します。この一連のプロセスの中で、ミニマリスト志向者は充実感などの価値を獲得するのです。また、ミニマリスト志向者のゴールはあくまでも日常生活の幸福感であるため、物をどの程度減らすかは人それぞれという結果でした。
※出典:国民生活に関する世論調査 図21-1 – 内閣府
※出典:ミニマリスト消費者の価値創造プロセスに関する研究
ミニマリストというライフスタイルは、果たして当事者にとって「幸せ」なのでしょうか? 経済社会学者の橋本 努さんにミニマリズムのブームがいつから起きたのか、世界と日本におけるミニマリズムへの関心の違い、多様な時代だからこそ変化する幸福論について伺いました。
ミニマリストの暮らし方から住まいを探す
ミニマリストは、利便性を重視する傾向があります。特に暮らしや住まいにおいて顕著に表れます。例えば、暮らしにおいてできるだけ物を増やさない工夫をすることです。衝動買いをせず、買うかどうかを数日かけて検討したり、長く使える物を買ったりします。また、不要な購入を避けるためレンタルサービスを利用することもあるでしょう。
物件探しにおいても、「専有面積20㎡以下」などの狭小部屋が人気のようです。一人暮らしであれば、家賃を抑えられるメリットがあります。家賃を抑えることで、「ロフト付き」「駅徒歩10分以内」などの物件も探しやすくなるでしょう。
不動産探しでは、ミニマリスト向けの暮らしに合った条件で探せる不動産情報サイトもあるため、活用してみましょう。
暮らしや物の選び方を見つめ直してみる
ここでは、ミニマリストとして自分らしい暮らしや生き方を実現している人や、今あるものを大切にする暮らしを選択する人たちの事例を紹介します。
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』や『ぼくたちは習慣で、できている。』などの著作で知られる佐々木典士さんは、長らく写真集等の編集職に従事していました。当時は片付けや掃除ができず、物を集めるのが大好きで、それに対する執着心を手放せない生活を送っていたそうです。
転機が訪れたのは、15個しか荷物を持っていなかったアンドリュー・ハイドという人物の存在。自分とあまりに対照的で「僕もこうなりたい」と憧れを抱いたのがミニマリストを志したきっかけでした。
佐々木さん曰く、ミニマリストとは「自分の必要な物が分かっている人、大事な物のために減らしている人」とのこと。「他人の評価軸でも客観的な個数でもなく、何が自分にとって必要なのかを自ら決めているということが一番重要なのです」と揺るぎない価値観を語ります。
ナカムラクニオさんは、東京・荻窪の一角で「6次元」というアトリエを運営しながら日本のみならず、全世界で金継ぎワークショップを行っています。金継ぎの魅力は「価値がなくなった物を組み合わせて唯一無二の物を作り出す」こと。ナカムラさんは、「大切にしていた物をずっと使い続けるために、自分の手で直したい」と言います。
鎌田安里紗さんは、エシカルファッションプランナーとしてフェアトレード製品の企画・制作をはじめ、ファッションや暮らしに関する情報発信や啓蒙(けいもう)活動に取り組んでいます。エシカルファッションとは、自然環境や労働者の人権などに配慮した倫理的なファッションのことです。ファストファッションが増え、手頃な価格でおしゃれな服を手に入れることができるようになった一方、自分たちが着る服がどこから来て、どのように作られているのか私たちは知りません。
「サステナビリティーって、どうしても『考える』ところから入って、正しさを求めがちになってしまいますが、自分の五感を使って感じることが大切だなと思います」という鎌田さんの視点は、私たちが日常生活で毎日使う物を選ぶためのヒントになるかもしれません。
まとめ

「ミニマリストだ」と宣言して物を減らしたり、断捨離したりするかどうかは別にして、誰もができることがあります。それは自分にとって心地よい生活スタイル、必要な物は何か、これまでの価値観を見直してみることです。そうすることで、ストレスを軽くし、より大切なことに時間やお金を使えるようになることでしょう。
1995年生まれ、福岡県出身。2017年に開始した「ミニマリストしぶのブログ」は開設1年で月間100万PVを超える人気ブログに。海外2カ国でも翻訳された著書『手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』はAmazonベストセラー1位を記録。2018年に「Minimal Arts 株式会社」代表取締役に就任。ミニマルな機能美を追求するアパレルブランド「less is_jp」を監修。
ブログ: https://sibu2.com
みんなが読んでいる記事
-
2024/03/07いつからアンコンシャスバイアスの考え方を持つ? 研究の歴史と日常的に生じる偏見や思い込み「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」は偏ったものの見方であり、実は昔から私たちの日常にあふれていて、誰にでもあるものです。最近よく目にするなと思った方もいることでしょう。では、いつ頃からメディアに取り上げられるようになったのでしょうか。この記事ではアンコンシャスバイアスの歴史や対処法を紹介します。
-
2024/06/18高齢者の生きがいとは?60・70歳シニア世代の働く意欲と年齢との向き合い方「人生100年」といわれる時代において高齢者の生きがいは非常に重要なテーマです。高齢者の生きがいを満たしていくには、社会や周りの人たちのサポートも必要ですが、高齢者自身が積極的に社会とつながり交流していくことが大切です。その一つの要素として“働き続ける(活躍し続ける)”ということも有効な視点です。この記事では高齢者と仕事について解説します。
-
2021/04/23いじめの当事者以外は口出しちゃいけない、なんてない。春名 風花ジャンルを問わず読書を楽しむ両親の影響で、マンガや絵本に囲まれて育ったという春名風花さん。“はるかぜちゃん”の愛称で知られる彼女は0歳から子役として活躍し、大好きな声優の仕事を経験して新たなステージへ向かっている。3歳から自分の携帯電話でブログを書き、9歳の頃にTwitterを始めた。昨年はネット上で誹謗(ひぼう)中傷した投稿者を相手取り、民事訴訟を起こし話題となった。デジタルネイティブ世代らしいエピソードに事欠かない彼女に、決して目を背けてはいけない「いじめ問題」について伺った。
-
2021/04/23“美しいが善し”、なんてない。山﨑ケイ「ちょうどいいブス」のキャッチフレーズで人気の芸人、相席スタートの山﨑ケイさん。小学生の頃から読んでいた少女漫画で繰り広げられるような恋愛に憧れるものの、現実はそうではなかったことから、「容姿」について意識し始めたのが中学生のときだったという。2018年には初のエッセイ集『ちょうどいいブスのススメ』を出版し、反響を呼んだ。ルックスをネタにすることが炎上すらする時代の中で、どう自分の立ち位置と向き合ってきたのか――。“美しいが善し”とされるルッキズムの価値観について、改めて考察する。
-
2021/08/30障がいがあるからスポーツはさせられない、なんてない。西村 大樹在、2つのダンスユニットに所属し、プロのダンサーとして活躍をしている。2021年春には「ダンスを福祉でデザインする」をコンセプトとするダンスチーム、SOCIAL WORKEEERZの2代目代表に就任したばかりだ。夢は障がい者が気兼ねなくダンスを楽しめる、本当のバリアフリーの環境をつくること。幼い頃からスポーツが大好きだったが、ずっと「危険だから、責任を取れないからやめてほしい」と、自分の「やりたい!」を周囲からの決めつけに押しつぶされながら生きてきた。自分の体のことなのになんで自分で決められないんだ、という悔しい思い。それでも何度も立ち上がって道を探し、今はプロのダンサーだ。スポーツを愛して道を切り開き続けてきた、西村大樹さんのこれまでとこれからを伺った。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」
