エイジズムってなんだろう?世代を超えて年齢について語り合う『年齢の森』
「エイジズム」、簡単に言えば「年齢による偏見や差別」のことだ。ジェンダーや人種など、様々な差別がこの世界には存在するが、年齢も例外ではない。
もういい歳なんだから。年甲斐もなく。そんな言葉を自分にも、家族や友人、知人にも投げかけてしまったことはないだろうか。暮らしの中で、想像以上に年齢に縛られている場面は多いのではないだろうか。
LIFULLが制作したショートフィルム『年齢の森』では、この「エイジズム」をテーマに、10代から80代まで、生き方や価値観の異なる11人が集い対話する様子が収められている。
ショートフィルム『年齢の森』概要
あなたにとって、「歳を重ねる」とは?
集められた11人の参加者たち。部屋の中には、たくさんの数字が書かれたモチーフが天井からぶら下げられている。
「高齢者は何歳から?」
こんな問いを投げかけられた参加者たちが、思い思いに数字の書かれたモチーフを手に取っていく。手に取る数字は、思いのほか、バラバラだ。白髪の男性は「私の若い頃は(高齢者は)50歳くらいだったんですけど、今はもう80歳くらいかなという気がします」と笑顔で言う。
やりたいことや仕事ができなくなる年齢が高齢者というイメージから57歳63歳を選ぶ10代の参加者たち。対して、70代以上の参加者の1人は、自らが71歳で退職したときの経験から、「明日から(職場に)来れないとなると悲しかった。その人の能力と比例していけば年齢を決めなくてもいいと思う」と語る。
「若者は何歳まで?」
反対にこんな問いを投げかけられた参加者たちは、またバラバラの数字を手に取る。20歳と言う者、29歳と言う者。彼らにとって年齢とはどういった存在なのだろうか。それぞれの視点から、年齢とは?を語り合う。
13歳の少年は「(年を重ねるのは)ちょっと大人の方がかっこいいからいい感じがする」と語る。24歳の女性は「今は(歳を)重ねたくない」と言い、71歳の女性は「嫌です。絶対嫌です。キープでいきたい」と話す。
エイジズムを知っていますか?
「エイジズム」という言葉は、聞いたことはあるような気がするけれど、よく知らない。そう答える参加者たち。初めて知ったこの言葉を元にさらにトークが続く。
他人に対して年齢を知りたい、そう思う場面は多くの人が遭遇したことがあるだろう。一方で、自分が聞かれたらなぜ年齢を知りたいと思うのだろうか、そう感じるのも事実だろう。「年齢を聞いて、あんたは私の何を判断するの?」そんな気持ちになることがあるという50代以降の参加者たち。
これに対応するように、13歳の少年は「お母さんに年齢のことを言うと怒られる」ことがあると話す。自身も子育て経験のある50代の女性は「そんなに深く傷ついているわけではないかもしれないけれど、小さく小さく積み重なって、また年齢のことで言われちゃったなと思っているかもしれない」と答える。
一方で、若者にも年齢による固定観念が向けられることもある。「若いんだから立ってなさい」と電車で声をかけられる。将来のことを学校の先生に言うと「まだそんなこと考えなくていい」と言われる。10代、20代の参加者からはそんな声が上がった。
各参加者の現時点での年齢や、置かれている状況によって捉え方は違えど、それぞれが年齢によるジャッジの目を向けられた経験があるようだ。
年齢に縛られないために
若さも老いも、生きている限りはどの人も通る道である。だからこそ、誰もが年齢という「枠」に当てはめられてしまう可能性があるし、誰かを年齢という「枠」に当てはめてしまう事態も簡単に発生する。
最も身近な差別のひとつだろうに、日本ではあまり目を向けられてこなかったエイジズムという概念。このショートフィルムをきっかけに、年齢に縛られずに生き生きと暮らすための社会について考えてみるのはいかがだろうか。
執筆:白鳥 菜都
みんなが読んでいる記事
-
2025/03/06結婚と家族のこと 〜自由な選択への気づき〜
結婚、非婚、家事・育児の分担など、結婚や家族に関する既成概念にとらわれず、多様な選択をする人々の名言まとめ記事です。
-
2025/05/29性別は「男と女」だけじゃない。ノンバイナリー、Xジェンダー…当事者の声と活動史から紐解く多様な性のあり方と「誰もが生きやすい」未来|社会学者・ジェンダー研究者 武内今日子
ノンバイナリーやXジェンダーなどの多様な性のあり方を理解し、「誰もが生きやすい」未来を目指す社会学者・ジェンダー研究者、武内今日子氏が、多様性と共生の意義を当事者の声と活動史を交えながら語ります。
-
2019/01/11好きという気持ちがなければ一流にはなれない、なんてない。清塚 信也
「好きを仕事に」という理想を掲げる人は多いが、本当に好きなことだけで成功している人はごくわずかだ。置かれた場所でいかに自分らしい花を咲かせるか、というのが多くの人が向き合う現実であろう。清塚信也さんの場合も“好き”という気持ちが始まりだったわけではない。世界的ピアニストという地位を築くまでの軌跡について語ってもらった。
-
2024/04/22デザイナーに社会課題解決はできない、なんてない。 ―LIFULLのリーダーたち―執行役員CCO 川嵜 鋼平執行役員 CCO 川嵜 鋼平
2024年4月1日、株式会社LIFULLはチーム経営の強化を目的に、新たなCxOおよび事業CEO・責任者就任を発表しました。性別や国籍を問わない多様な顔ぶれで、代表取締役社長の伊東祐司が掲げた「チーム経営」を力強く推進していきます。 シリーズ「LIFULLのリーダーたち」、今回は執行役員でCCO(Chief Creative Officer)、LIFULL HOME'S事業本部副本部長 CMO(Chief Marketing Officer)の川嵜鋼平に話を聞きます。
-
2019/12/02家族以上の強い結びつきは作れない、なんてない。藤代 健介
多種多様な人が集まり、共に暮らし、共に働くことを目的につくられた拡張家族「Cift」の発起人である藤代健介さん。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に在学中、空間設計に関連するコンサルティング会社prsm(プリズム)を設立。以降は、場づくりを通して「平和とは何か」について考え、個人同士がより深い愛を持ってつながられる社会づくりを目指しています。自身もCiftに住みつつ、現在は複数の拠点を持ちながら生活を送り、従来の家族という枠を超えたコミュニティーを今まさに構築している藤代さんの考えに迫ります。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」