デザイナーの役割は表現することだけ、なんてない。
ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLには、業界の常識を変えたい、世の中に新しい仕組みをつくりたい、という高い志をもつ同志たちが集まっています。
LIFULLの描く未来の実現や個人が解決したい社会課題への取り組みなど、多様なLIFULLメンバーのこれまでの「挑戦」と「これから実現したい未来」を聞く、シリーズ「LIFULL革進のリーダー」。今回はクリエイティブ本部のコミュニケーションデザイン領域で活躍するデザイナーの上垣 陽和に話を聞きます。
連載 LIFULL革進のリーダー
- 第1回LIFULL HOME'S事業本部 営業 マネジャー 坪井 洋介
- 第2回LIFULL HOME'S事業本部 プロダクトエンジニアリング部長 河津 隆洋
- 第3回LIFULL HOME'S事業本部 事業統括部長 鈴木 章浩
- 第4回LIFULL HOME'S事業本部 マーケティング マネジャー 遠藤 夏海
- 第5回クリエイティブ本部 デザインマネジャー/アートディレクター田中 忍
- 第6回LIFULL HOME'S事業本部 営業 マネジャー 加藤 直
- 第7回テクノロジー本部 シニアプリンシパルエンジニア 相原 魁
- 第8回LIFULL HOME'S事業本部 営業 佐藤 優里奈
- 第9回LIFULL HOME'S事業本部 サービス企画 マネジャー 笹本 昂
- 第10回クリエイティブ本部 デザイナー 上垣 陽和
- 第11回LIFULL HOME'S事業本部 エンジニア 高詰 ありさ
2019年に入社し、6年目に「ホームレス・ワールドカップ」の日本代表のユニフォームデザインという新たな分野の大仕事を任されることになった上垣 陽和。ホームレス問題という社会課題にアプローチするために、どのようなデザインコンセプトを考えたのか。またデザインする上で大切にしたこととは。有志のデザイナーたちと策定した「LIFULL Design Principles」についても詳しく語ってくれました。
社会課題を解決するのは、簡単ではありません。でも「目の前の人を幸せにする」ことを大切にして挑戦していれば、必ず解決につながる。LIFULLなら、どんな挑戦もサポートしてくれる環境が整っています。
LIFULLは“挑戦”できる会社
――LIFULLへの入社を決めた理由を教えてください。
私は、もともと芸術系の大学で映像制作を専攻していたため、CMや映像などの制作会社を志望していました。就活中に大学の教授から「事業会社という選択肢もある」という話を聞いて、LIFULLの会社説明会に参加しました。
説明会で、仕事での挑戦はもちろんのこと、社内外で兼業ができる制度や新規事業を提案できる仕組みなど、さまざまな”挑戦”の機会があることを知りました。その環境に魅力を感じ、LIFULLを志望しました。
――入社してから、どんな業務に就かれたのでしょうか。
2019年に入社し、1年目は横断的にさまざまな業務に関わりました。2年目からはLIFULL HOME'Sの売買領域のサービスデザインを担当し、UI/UXデザインをはじめ、イベントがあればパネルやチラシの作成も手がけていました。そして2023年にはコミュニケーションデザインを担当する部署に異動し、LIFULLとLIFULL HOME'S両方のブランド認知拡大のためのデザインに携わることになりました。現在は、LIFULL HOME'Sブランドに注力したコミュニケーションデザインを担当しています。
LIFULLらしいユニフォームデザインって?
――これまで最もチャレンジと感じたプロジェクトは、どんなことですか。
「ホームレス・ワールドカップ2024」の日本代表のユニフォームデザインを担当したことです。ホームレス・ワールドカップとは、ホームレス状態にある人々の自立を支援するために開催されるストリートサッカーの世界大会です。「ホームレスの存在しない世界」を目指すこと、そして、この大会への出場機会をきっかけに当事者の方々の自立を目指していくことにLIFULLは強く共感し、日本代表チームのオフィシャルスポンサーに就任し、選手の挑戦をサポートしました。そのサポートのひとつとして、私たちデザイナーが日本代表のユニフォームをデザインすることになったのです。服飾のデザイン経験がなかったため、非常に大きなチャレンジでした。
ユニフォームのデザインは、着用時のイメージだけでなく、まずコンセプト設計が重要です。ホームレス問題という社会課題に対して、選手の方々を無意識に傷付けてしまう表現にならないよう配慮が必要です。日本代表として堂々とプレイしてもらえるデザインコンセプトとは何かを、慎重に模索しました。
まず工夫したのは、日本代表として印象付けるために、ブルーをメインカラーに、コーポレートカラーのオレンジをポイントで使ったところです。裾から山なりに繰り返し重なるグラフィックと上に向かって暗いブルーから明るいブルーへ変化するグラデーションは、“上昇”を表しています。選手の内から溢れ出るエネルギーと、過去の苦難から脱却し、未来へと力強く上昇していく姿を表現しています。
※“出場機会は一生に一度だけ”13年ぶりに日本代表が出場する「ホームレス・ワールドカップ2024」日本代表記者会見&新ユニフォーム発表会を9月5日に開催 | 株式会社LIFULL(ライフル)
そして、こだわったのが胸元と背中についている日本国旗のマークです。当初はプリントするだけの予定でしたが、クオリティを上げるために刺繍ワッペンを貼り付けることはできないかという話がでました。しかし、その時点で予算もスケジュールもひっ迫している状況であり、担当の業者さんからも対応が難しいと言われてしまいました。
そこで、社内のLIFULL FabというDIY工房にある刺繍ミシンを使って、自作することを提案しました。自ら資材を取り寄せたり、動画でHOW TOを学んだり、安っぽい仕上がりにならないために複数検証を重ね、求めていたクオリティのワッペンを作り上げることができました。周りの協力を得ながら、40枚ほど刺繍ワッペンをアイロンで貼り付けました。後に記者会見で写真を撮っていただいた際や、実際の試合中の場面でも、国旗がシワになることなく目立ち、日本代表選手であることがしっかりと伝わったように思います。
選手の方々にも「カッコいい」と言っていただき、「LIFULLらしいデザインができたな」とすごくうれしかったです。
――そのプロジェクトで上垣さんが得た気付きとは何ですか?
デザインコンセプトの重要性です。私たちはコーポレートメッセージの「あらゆるLIFEを、FULLに。」を実現するために、LIFULLとしての一貫した美しさ、ふるまいをデザインするため「LIFULL Design Principles」というデザインの三原則を社内のデザイナーたちで話し合い、策定しています。
その三原則とは、「①まっすぐシンプルなデザイン」、「②やさしく誠実なデザイン」、「③前向きな変化を生むデザイン」の3つです。今回のユニフォームは、この3つのデザイン原則が社外から見ても満たされたデザインになったと考えています。
「①まっすぐシンプルなデザイン」とは、価値の本質をとらえて、的確かつ直感的に届くデザインです。ユニフォームのグラフィックがそのデザイン原則を反映させたものになっていて、上昇する気持ちを湧き上がらせ、前に進む力強さを感じさせる勢いのあるデザインになっています。
「②やさしく誠実なデザイン」は、一人一人とそのLIFEに寄り添い、誰も取り残さず傷付けないデザインです。今回のユニフォームの場合、選手の方々が着た時に不快な気持ちにならないことが前提でした。例えば、すべてをオレンジにすると企業の色が強調され、選手たち自身のことではなく、会社のことだけを考えているように見えてしまいます。
「③前向きな変化を生むデザイン」は、一人一人が喜びを感じられるように、興味を刺激し、気付きや感動を与え、前向きな感情をもたらすデザインです。これはホームレス問題という社会課題にアプローチするデザインコンセプトにそのまま詰め込まれています。結果的に、このユニフォームを着た選手の方々が堂々とプレイできるデザインになったのではないかと自負しています。
デザインで社会課題に挑む、目の前の人を幸せにする取り組み
――上垣さんが解決したい社会課題は何ですか?
社会課題というと、とても重い言葉で、それを簡単に解決するのは難しいように思えます。しかし、私自身は「目の前の人を幸せにする」ことを大切にしながら、これまでずっとデザインに取り組んできました。例えば、ホームレス・ワールドカップのプロジェクトもそのひとつですし、かつて担当したLIFULL HOME'Sの「ハザードマップ」のデザインをした時もそうでした。「ハザードマップ」とは、住まい探しの段階から物件エリアにおける洪水リスクを知ることができるサービスです。洪水・土砂災害・液状化・最大震度の4項目の災害リスクレベルを、地図にプロットしてヒートマップで分かりやすく見ることができます。ヒートマップは一般色覚の方だけでなく、色覚の障がいを持つ方の見やすさにも配慮し、ヒートマップで用いる色のバリアフリー対応を行い、あらゆる人が物件選択の不安を払拭できるようにデザインの工夫をしました。
また最近では、新卒採用の面談を通じて、就活中の学生さんと話す機会が増えています。私もそうでしたが、学生にとって就活という限られた期間で、膨大な数の企業をリサーチし、どの企業で働きたいのかを決めるのは本当に難しいことです。特にデザイナー志望の学生にとっては、実際の業務を経験する場が少ないため、その選択はさらに難しくなります。だからこそ、ワークショップやインターンシップといった機会を提供できたらと思っています。今後そういった企画に携わることで、学生にとっても、企業にとっても良い機会になるのではないかと考えています。
――これから挑戦したいことはどんなことですか?
もともと映像制作ができる仕事を目指して就活をしていたため、その挑戦は諦めきれず、入社後も、ずっと映像制作をしたいと言い続けていました。すると、次第に社内の方々から「こういうのはできる?」と声をかけてもらえるようになりました。
最初は社内の勉強会の動画編集から始まり、今では社内のキックオフパーティのオープニングムービーを制作したりと、念願の映像制作に携わっています。映像制作のスキルをさらに磨き、できることを増やして、いつか社内でCM制作を一貫して手がけられるようになることを、ひそかに目指しています。
――最後に、上垣さんの「しなきゃ、なんてない。」を教えてください。
「デザイナーの役割は表現することだけ、なんてない。」です。ただ、言われたまま形にすることだけがデザイナーの役割ではなく、そのデザインで誰がどのような気持ちになるかを考え、適切な表現をし、発信する。このプロセスすべてがデザイナーの仕事だと思っています。
そしてLIFULLは、挑戦できる会社です。やりたいことが実現できる環境が豊富にあるからこそ、どうすれば実現できるかを思考し、自らが行動することが大事です。
もちろん、決められた仕事をしっかりやり遂げることは重要です。任せられた業務に真摯に向き合い、信頼を得ることで次のチャンスが広がります。その上で、自分のアイデアを積極的に提案し、周囲とコミュニケーションを取りながら、お客様へより良い価値を提供していく。この姿勢をデザイナーとしてこれからも大切にしたいです。
京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)を卒業後、2019年入社。1年目はクリエイティブ本部にてさまざまな領域のデザインに触れた。2年目からLIFULL HOME'Sのサービスデザインを担当し、2023年10月からコミュニケーションデザインを担当する部署へ異動。CM制作、老卒採用などコミュニケーションデザイン領域で活躍。
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