住まいは不動、なんてない。道を切り開く体験を通じて、自分らしい生き方と人生の価値が見えてくる

2023年に「ライオンズマンション」からリブランディングし、生まれ変わった「THE LIONS」は、「THE LIONS 2050」プロジェクトにて2050年に向けたビジョン「THE LIONS JOURNEY」を提案しました。

住まいの既成概念にとらわれず、バックキャスティングの手法を用いながら、自由な発想で未来を模索したプロジェクトです。そこで浮かび上がってきた、人生の価値を高める3つの要素は、「未知」の設計、多様な「居場所」の創出、自然との「共生」です。

今回は、その中で“「未知」の設計”について「THE LIONS 2050」ディレクターの高橋愛莉さんと語り合います。モデル・デザイナーの酒井景都さんは、幼少期の海外生活、ファッションブランド立ち上げ、子育てといった多様な体験を通じて、さまざまな「未知」と遭遇してきました。「THE LIONS JOURNEY」のコンセプトを起点に、酒井さんが考える上質な暮らしや豊かな時間とは。

海上を移動する未来のマンション

酒井：「THE LIONS JOURNEY」のコンセプトムービーを拝見して、マンション自体が海上を移動していく斬新なコンセプトが、非常におもしろいなと感じました。

他のマンションとドッキングしたり、各地のポートに停泊したりすることで、降り立った「未知」の場所との出合いから感じたことを家に持ち帰れるんですね。

高橋：コンセプトムービーを見ていただき、ありがとうございます。私たちが開発している不動産は、文字通り「動かないもの」です。しかし今回2050年をターゲットに、既成概念にとらわれずに人生の価値を模索してみると、「マンションが動いてもいいのではないか」という発想が生まれました。

ワークショップで専門家の方の知見を交えて、住む世界が常に新しくあり続けるために、海の上を移動しながら暮らしていけるマンションを考えました。朝起きると窓の外の景色が変わっていたり、立ち寄る港ごとに新しい出会いや発見があったりするような設計を模索してきました。

（左）モデル・デザイナー酒井景都さん　（右）株式会社大京 事業管理部 事業企画室 ブランド推進課 係長 高橋愛莉さん

酒井：私は2年前に自宅を建てて、今は鎌倉の自然の中で住んでいます。もちろん移動することはできないのですが、さまざまな「未知」が毎日あります。窓をたくさん設けていて、天窓や歩道側の窓からは朝日が入ってきます。春夏秋冬で光の影が違っていたり、天気によって入ってくる光が違っていたりするのがおもしろいんです。

あえて遮光カーテンはつけていません。日の出とともに、1歳の子どもと一緒に起きてしまいます。日の出前の暗がりから、だんだん日が入ってきて、家の中に虹が出る瞬間もあります。そういった光の変化などを楽しみながら過ごしていると、日々に「未知」や新しい発見がありますね。「THE LIONS JOURNEY」のコンセプトとつながっているように思って、共感する部分でした。

まだ2年しか住んでいないので、まだ発見しきれていない「未知」がたくさんあると思います。それを発見していくのが楽しみです。

酒井さん宅のリビングに出現した虹。日常に幻想的な彩を添えてくれる。

人類は「未知」を求めてきた

高橋：今回、“「未知」の設計”という要素を考える上で、ウェルビーイングの研究を日本で牽引している予防医学研究者の石川善樹氏からの知見も参考にさせていただきました。人類がこれまで歩んできた歴史を振り返ってみると、未知なる道を切り開きながら進化を遂げてきたと思います。言い換えると、「常に未知がある状態は、人生の価値を高める」と私たちは考えました。

酒井さんは、これまでの暮らしでどんな「未知」がありましたか？

酒井：私は学生時代から洋服づくりとモデルの仕事をやっていました。アーティストに洋服を提供する機会があった時、突然「音楽も作れますか？」と言われたんです。声をかけてくださったのは、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅさんのプロデュースでもよく知られている中田ヤスタカさんです。

彼が「歌手を目指している人ではなくて、洋服を作っているような人と音楽が作りたい」と考えていたタイミングだったそうです。それから中田さんと音楽ユニット「COLTEMONIKHA」を結成し、CDデビューすることになったんです。

高橋：そんな「未知」から生まれたユニットだったんですね。

酒井：人生って何がどうなるかわからないものですね。

振り返ると、たまたまモデルとして参加した現場のカメラマンさんが、中田さんとお友達だったのです。「こういう子に出会ったよ」と話題に出たようで、中田さんが「じゃあ衣装を頼みたいな」というきっかけで。そこから始まって、気付いたら一緒に音楽を作っていました。日々まいている種がどういう風に広がっていくのかはわからないので、あまり綿密には計画せず、何かが生まれる余白を持っておくことは大事なのかなと思っています。

高橋：今回私たちが提案しているコンセプトでは、マンション同士がドッキングして、他のレジデンスともつながっていきます。もちろん場所もそうですし、人とも、自然とも新しいつながりを見いだせるようなマンションとなっています。酒井さんが、ご自身の積み重ねてきたことと余白の掛け合わせで新しい道を切り開かれてきたのは、まさに私たちのコンセプトを体現されているように感じました。

世界中の「未知」に触れながら暮らしたい

高橋：酒井さんは、移動しながら暮らせるとしたら、どんな風に楽しみたいですか？

酒井：今回の対談にあたって、移動しながら暮らすことについて初めて考えました。私はこれまで、東京、横浜、そして鎌倉と引っ越しという意味での移動はしてきました。ただ、もしも理想がかなうのなら、世界中を移動しながら暮らしてみたいですね。私が移動しながら暮らせるなら、世界のアートを鑑賞し、家では絵本を作って暮らしてみたいです。

日頃からインプットを大切にしていて、日々のクリエーションに生かしています。仕事でアウトプットばかりしているとアイデアは枯渇してしまうので、美術館に定期的に行くようにしたり、そこで本を買って帰るようにしたりしているんです。子育てをしていると旅行に行ける回数は減ってしまうのですが、家そのものが移動しながら暮らせて、そこで仕事もできたら理想的ですね。

高橋：私もインプットはとても大事に思っているので、共感します。今回、海の上を移動するマンションを提案したのは、“「未知」の設計”を通して、暮らす人々がやりたいことをできるきっかけを作りたいという思いを込めています。「人生には価値がある」と感じるために、「未知」のきっかけが生まれやすい場を考えてきました。

ご家族と移動しながら暮らして「未知」を探すとしたら、どのように過ごしたいですか？

酒井：いろんな港に降り立つというコンセプトを聞くだけでワクワクしています。いろんなところに降り立って、それぞれの海や街の生活を楽しんでみたいですね。釣りをしたり、漁港の近くでご飯を食べたり、街並みを探索したりしてみたいです。

特に子育ては、いろんな場所でできたら楽しそうです。ただでさえ、子どもは毎日成長していくので、「未知」がたくさんあります。今、娘が小学1年生なので、初めての学校は幼稚園と違うことが多くて「未知」そのものです。疲れてしまう部分もありますが、「未知」との出合いを通じて子どもも自分も成長が感じられて、人生が豊かになっていく実感があります。

例えば、ヨーロッパの各地でアートを鑑賞した後に、家族でハワイに行ってリラックスして過ごしたりしながら、「未知」を楽しんでみたいですね」

バックキャスティングの手法で、既成概念にとらわれず2050年の住まいを提案する「THE LIONS」。その中で浮かび上がってきたキーワードは「未知」でした。「マンションは土地に固定されているもの」という既成概念さえも飛び越えて、海の上を移動し、「未知」に遭遇しやすくなるマンションが提案されています。「人生には価値がある」を証明するマンションに、期待せずにはいられません。

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