理想の暮らしを実現することは難しい、なんてない。【後編】
新しい価値観やライフスタイルに触れることができる世界中のトピックを発信している「TABI LABO」。同メディアの創設者であり、運営会社NEW STANDARD株式会社の代表取締役でもある久志尚太郎さん。世界を旅し、田舎暮らしも経験した久志さんの、令和という新しい時代の幸せの志向性とは?

心が疲れているときなどは特に、「自然豊かな田舎で暮らしたい……」と思ってしまうものだが、ウェルビーイング的な自分の理想を問われたら果たして即答できるだろうか? 満たされて生きるためには何が必要なのか、自分にとっての理想の暮らしとはどんなものなのか。世界を旅し、田舎暮らしも経験した上で、「東京で心地良く暮らしている」久志さんに自分を満たす生き方について話を聞いた。
人生観もライフスタイルも
今後はもっと自由に多様化していく
“令和の幸福論”では「周りからどう見えているか」よりも、「自分がどうありたいか」、自分の価値観がすべての軸になる。例えばその視点から“家探し”を考えるなら、間取りや駅近とかいった合理性だけでなく個人の価値観はより重視されるようになるだろう。
「人によってはワンルームでも会社から徒歩30秒のところに住むほうが満足度が高い場合もあれば、片道2時間かかっても爆音で音楽を聴ける環境に幸せを感じる人もいる。これまでの既成概念の「良いもの」という価値観に意味がなくなっているので、人生観もライフスタイルも今後はもっと自由に多様化していくと思います」
自分の価値観を知るためにはどんな方法が考えられるのだろうか。例えばアドレスホッピング的な居住スタイルで自分の価値観を探るという方法は有効なのだろうか?
「自分が何に重きを置く人間なのかを知る手段のひとつとして、アドレスホッパーとして生活するというのはすごく有効だと思います。暮らしにおいてトライ&エラーを経験することって少ないので。今はライフスタイルにものすごく多様性が生まれているしテクノロジーも発達している。シェアハウス、ゲストハウス、OYO、一定期間暮らせる場所もたくさんあります。それこそアドレスホッピング用の家を全国に用意しているスタートアップ企業も生まれています。定住しなくても暮らしを営める仕組みが整っていっていますよね」
「既成概念の外に飛びだそう」必要なのは少しの勇気と好奇心
人生をいかに幸福に生きるかを考えたとき、「今の自分という枠の外側に行ってみることで、思いもしなかった本来自分が求めている幸福が見つかる」と久志さんは語る。
「僕は今まで、迷ったときは真逆に振り切るということをしてきました。そこでわかったのは、好きとか嫌い、得意とか不得意と自己認知しているものって実はすごくバイアスがかかっていて間違っていることが多いということ。やってみて初めてわかることってすごく多いんです。だからまずはやってみることをすごく大事にしています。料理なんて何の興味もなかったけど、やってみたらすごく楽しくて意外と向いていることもわかった。今はプロフェッショナルとして料理道を極めたいとまで思っている。東京には二度と戻らないと思って宮崎に移住したけど、自分にとっての心地良さは暮らす土地より住環境に条件があることも知った。すべてやってみないとわからなかったことです」
やってみなければ「既成概念の外に飛び出す」ことはできない。かといって何も世界を旅する必要もなければ、田舎に暮らす必要もない。必要なのは自分のバイアスの影響を離れて世界を広げること。そのためにまずは目の前にあるものを創造してみることだ。
~理想の暮らしを実現することは難しい、なんてない【前編】はこちら~
撮影/尾藤能暢
取材・文/ささきみどり

NEW STANDARD株式会社
代表取締役
1984年生まれ。中学卒業後、米国留学。16歳で高校を飛び級卒業後、起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスマンに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25カ国を放浪。復職後は25歳でサービスセールス部門のマネジャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2014年株式会社TABILABOを創業、2017年社内組織BRANDSTUDIO(ブランドスタジオ)を設立、2019年8月NEW STANDARD株式会社へ社名変更。
NEW STANDARD HP https://new-standard.co.jp
Twitter @shotarobinkushi
みんなが読んでいる記事
-
2024/01/16あなたの“普通”がみんなにとっての“普通”、なんてない 。―「障害は世界を捉え直す視点」を掲げ活動する田中みゆきが語るアクセシビリティ―田中みゆき
「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに、フリーのキュレーター/プロデューサーとして活動している田中みゆきさん。障害のある方と一緒に、多くのプロジェクトを手がけてきた田中さんに、今の社会に必要な「アクセシビリティ」について伺った。
-
2024/03/19「若いね」「もういい年だから」……なぜエイジズムによる評価は無くならないのか|セクシズム(性差別)、レイシズム(人種差別)と並ぶ差別問題の一つ「エイジズム」。社会福祉学研究者・朴 蕙彬に聞く
『日本映画にみるエイジズム』(法律文化社)著者である新見公立大学の朴 蕙彬(パク ヘビン)先生に、エイジズムに対する問題意識の気付きや、エイジズムやミソジニーとの相関関係について、またメディアやSNSが与えるエイジズムの影響や、年齢による差別を乗り越えるためのヒントを伺ってきました。
-
2024/04/23自分には個性がない、なんてない。―どんな経験も自分の魅力に変える、バレエダンサー・飯島望未の個性の磨き方―飯島 望未
踊りの美しさ、繊細な表現力、そして“バレリーナらしさ”に縛られないパーソナリティが人気を集めるバレエダンサー・飯島望未さん。ファッションモデルやCHANELの公式アンバサダーを務め、関西テレビの番組「セブンルール」への出演をも果たした。彼女が自分自身の個性とどのように向き合ってきたのか、これまでのバレエ人生を振り返りながら語ってもらった。
-
2019/12/02家族以上の強い結びつきは作れない、なんてない。藤代 健介
多種多様な人が集まり、共に暮らし、共に働くことを目的につくられた拡張家族「Cift」の発起人である藤代健介さん。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に在学中、空間設計に関連するコンサルティング会社prsm(プリズム)を設立。以降は、場づくりを通して「平和とは何か」について考え、個人同士がより深い愛を持ってつながられる社会づくりを目指しています。自身もCiftに住みつつ、現在は複数の拠点を持ちながら生活を送り、従来の家族という枠を超えたコミュニティーを今まさに構築している藤代さんの考えに迫ります。
-
2025/03/06新生活ブルーのあなたに届けたい言葉
人間関係や仕事の向き不向き、将来への不安に対して、既成概念にとらわれず自分らしく生きる人々の名言まとめ記事。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」
-
個人から世の中まで私たちを縛る既成概念について専門家監修の解説記事、調査結果、コラムやエッセイを掲載。