家庭でできる防災対策とは? 自然災害への対策・備えの重要性と心構え

地震や台風・火山の噴火などの大きな災害が多発する日本は、「災害大国」と呼ばれています。いざという時のために備えを万全にしておきたいものです。そこで、家庭でできる防災対策について、その大切さや具体的な方法について紹介します。

この記事では次の4点について解説します。

  • 日本の自然災害はなぜ多いのか?
  • 災害時に慌てず対処できる防災の備えと心構え
  • アウトドア体験を通じた防災の考え方とは?
  • いざという時の自助をサポートする防災備蓄サービスとは?

日本の自然災害はなぜ多いのか?

1998年に制定された被災者生活再建支援法によると、自然災害とは「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されています。

日本で発生したマグニチュード6以上の地震回数は1996年から2005年の間で合計190回となっており、世界全体の20.8%を占めています。また、活火山数は108で世界全体の7.0%を占め、死者数は8000人で世界全体の0.4%、災害被害額は2145億ドルで、世界全体の18.3%になります。日本の国土面積(世界の陸地のわずか0.25%)に対して非常に高い数値だと言えるでしょう。

※出典:1 災害を受けやすい日本の国土 : 防災情報のページ – 内閣府

日本で自然災害が多く発生する理由として日本の地理的な環境が挙げられます。

まず地球の表面はプレートと呼ばれる十数枚の岩盤で形成されており、日本列島は4つのプレートが衝突する場所に位置しています。これにより地震や火山活動が活発な地域となっているのです。

また、日本は国土面積が狭いために山の斜面が急で険しくなっています。山から流れ出す川の流れも速く、川の氾濫などの水害が起こりやすいと言えるでしょう。さらに、日本はモンスーンアジア地域に属しているため、梅雨と台風の時期に集中豪雨が発生しやすくなっています。

日本では都市化による地形開発が進んでいることから河川や海岸・火山に接して住宅や農地が造られている場所が多く、土砂災害や液状化現象が起こりやすくなっているのです。

災害時に慌てず対処できる防災の備えと心構え

普段から災害が起こることを想定し、あらかじめ準備をしておけば、被害を最小限に抑えられる可能性があります。突然の災害発生にも対処できるよう、日頃から備えておきましょう。

家庭での防災の備えには何が必要?

家庭で災害に備えるには、内閣官房内閣広報室が発表した「災害に対するご家庭での備え」が参考になります。そこでは、次の5点が紹介されています。

1つ目は、家具の置き方を工夫することです。大地震が起きた時は「家具は必ず倒れるもの」と考えて対策を講じておきましょう。家具が転倒しないように壁に固定しておく、寝室や子ども部屋にはできるだけ家具を置かない、なるべく背の低い家具を選び、倒れても出入り口を塞がないようにしておくなどの工夫が有効です。

2つ目は、食料・飲料・生活用品を備蓄しておくことです。防災用に特別なものを用意するのではなく、普段利用している食品類をそろえるのが良いとされています。災害時には飲料水や非常食の他にも、トイレを流すための生活用水も必要になります。日頃から、ポリタンクに水道水を溜めておく、お風呂の水はつねに張っておくなどの工夫をしましょう。

3つ目は、非常用持ち出しバッグを準備することです。自宅が被災し避難場所で生活するようになった場合に備え、必要なものをバッグに入れておきましょう。食料品・飲料水・貴重品・救急用品・衣類・下着・懐中電灯などをいざという時に持ち出せるようにしておきます。

4つ目は、安否確認の方法を決めておくことです。家族が別々の場所にいる際に災害が発生した場合、お互いに安否確認を行えるようにしたり、集合場所を相談したりします。災害時には携帯電話の回線がつながりにくく連絡が取れない場合もあるので、災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板を利用することも想定し、使い方をあらかじめ調べておきましょう。

5つ目は、避難場所・避難経路を確認しておくことです。いざ災害が起きた時に慌てずに避難できるように、あらかじめ自治体のホームページや国土交通省ハザードマップポータルサイトなどで、防災マップやハザードマップを入手しておきます。豪雨・津波・火山噴火など、災害の種類によって安全な避難場所が異なるので、それぞれどう行動すれば安全に避難できるか準備しておきましょう。

※出典:災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~ | 首相官邸ホームページ

災害発生時にはSNSの情報を生かそう

災害時の情報収集や避難行動には、スマートフォンのアプリを活用することも有効です。ここでは、災害に備えてインストールしておきたい防災アプリを3つ紹介します。

「Yahoo!防災速報」は、豪雨や津波など14の災害情報をプッシュ通知で受信できます。自宅や実家・勤め先など、最大で3カ所まで通知場所を登録可能。登録した場所以外にも現在地の情報を得られる他、「地震」「豪雨」「土砂災害」など、受け取る情報も細かく設定できます。

※参考:Yahoo!防災速報 – 災害から命を守る、ヤフーの防災アプリ 

「ココダヨ 防災速報と位置情報共有で家族や子供見守り・安否確認」は、災害時に自分や家族の居場所を確認したり、チャットで連絡を取ったりできる防災アプリです。通信が困難になる前に居場所を自動で共有したり、近くの避難所までのルートを検索したりする機能もあります。

※参考:【ココダヨ】安否確認と見守りに、位置情報共有・防災速報アプリ 

「防災情報 全国避難所ガイド」は、全国の避難所などの防災情報を得られるナビゲーションアプリです。現在地から半径1km以内の避難場所をピン表示します。ARカメラやコンパス機能により、知らない土地で避難する際も素早い行動に役立てることができます。

※参考:防災情報 全国避難所ガイド

アウトドア体験を通じた防災の考え方とは?

いざという時に適切な行動をとるために、毎日の暮らしやアウトドアでの遊びを通して、普段から防災に役立つ経験や知識を得ておくことも一つの方法です。ここでは、キャンプの体験を災害時に生かす考え方やキャンプ用品を防災グッズとして活用する方法を解説します。

キャンプを通じて災害時に役立つ知識や技術を楽しく学ぶ

キャンプはレジャーとして人気を集めていますが、災害時に命を守る「防災」の知識を身に付ける体験と考えることもできます。火のつけ方や防寒対策といった災害時に役立つ知識や技術が、キャンプを楽しむうちに身に付いていきます。

例えば、東京都町田市の町田山崎団地では、「団地 de キャンプ」と題し、団地の広場でキャンプをしながら災害時に有効な知識や技術を身に付けるイベントが開催されてきました。

参加者は、安全で効率的なテントの張り方を教えてもらいながら、普段の生活で遊び場として利用している広場が被災時に生活の場になることを体験します。また、ガスなどのライフラインが寸断されたケースを想定し、鍋やざるといった身近な道具でかまどを作る催しも開催。かまどでおしるこを作りながら、災害時に火を起こし調理するための技術を学びます。

夕食の時間になると、カレーライスやスープ作りに取り組みますが、被災時にも応用できるよう、調理法は普通のアウトドア料理とは少し異なっています。貴重な水や燃料を節約するため、ご飯は水かお湯をかけるだけで食べられるアルファ米を使ったり、スープはレトルトカレーを温めたお湯を再利用します。野菜チップスをカレーにトッピングするなどで栄養不足を補います。食器にはラップをかけ、洗わなくてもよい工夫をして、再利用の際の衛生面にも配慮します。

他にも、兵庫県宝塚市では2021年から「おうちで防災キャンプをやってみた」を開催しています。参加者は部屋にテントを張って避難所生活を疑似体験したり、ブレーカーを落として停電の体験をしたりして防災意識を高めました。また、群馬県前橋市では2021年12月に電気・ガスを使わない炊事や、段ボールベッド・簡易トイレの設置などを体験する「あかぎ防災キャンプ」を実施しました。同様のイベントが全国各地で催されています。

キャンプ用品は防災グッズとして活用できる

家庭に備えておく防災グッズの中には、キャンプ用品と兼用できるものがいくつもあります。キャンプで使用する道具はコンパクトに収納でき、耐久性も高く設計されているので、災害時にも活用できます。

例えば、災害時に停電になると移動が困難になります。手元を照らすライトやその場に置けるLEDランタンがあれば、安全に明かりを灯すことができ、不安を解消する効果も期待できるでしょう。屋外であれば、ガスランタンでより強い光量の明かりが得られます。

ライフラインが断たれた場合、熱源の確保も重要となりますが、アウトドア用バーナーを使えば、お湯を沸かしたり、調理したりできます。小型の調理器具も非常時には重宝するでしょう。断水時には、ウォータージャグが活用できます。水をこぼさずに移動できる他、ゴミやホコリが入らないので、貴重な水を衛生的に保存するのに適しています。クーラーボックスは、冷蔵庫の氷を詰め込めば、停電時にも食料の貯蔵庫として利用でき、中の氷が溶けてしまったあとも、水の保管場所として役立つでしょう。

キャンプで使うテントやシェードは、プライベート空間を確保することに役立ちます。少しでも快適な空間で休息をとれれば、心身の健康を損なうことなく避難生活を送ることにつながるはずです。

アウトドア体験を防災につなげる寒川一さんの事例

アウトドアライフアドバイザーの寒川さんは、アウトドア活動を通して災害時にも役に立つ知識や実践法を教えています。昨今のアウトドアブームが防災につながる可能性を見いだしながらも、「『防災』というものがもし『モノを備える』というだけの意味だったら、僕はあまり意味がないと思っています」と語る寒川さんは、防災において本当に大切な心構えを教えてくれます。

いざという時の自助をサポートする防災備蓄サービスとは?

災害時の備えとして、非常食備蓄のサブスクリプションサービスを活用するのも一つの方法です。

株式会社LIFULLのCoReStock事業責任者を務める北原潤さんは、2019年に台風19号が関東に上陸した際、近所のスーパーマーケットから食料がなくなり子どもにしっかりとした食事を提供できなくなる怖さを感じたそうです。その出来事をきっかけに備蓄の重要性を強く意識するようになり「CoReStock」を立ち上げました。月々数百円の定額で、国が推奨する最低3日間分の食料・飲料などが家庭に届くサービスです。

このサービスによって「一人ひとりが安心できる状況になれば、思いやりのある行動をするようになり、本当に助けが必要な状況の人たちが支援を受けられる状態になる」と北原さんは語ります。

まとめ

日本は災害が発生しやすい環境にあり、今後も大きな災害が繰り返される可能性があります。家庭で災害に備える方法として、家具の配置の再点検、食料の備蓄、非常用持ち出しバックの準備、安否確認方法の決定、避難場所の確認が考えられます。その他の備えとして、災害時に役立つスマートフォンのアプリを把握しておくことや、キャンプの経験を通じて知識や技術を身に付けておくことも有効です。非常時にも過度に不安にならないように、いざという時に備えて準備をしておきましょう。

監修者:高荷智也

「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに、大地震や感染症などの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで解説をする防災の専門家。講演・執筆・メディア出演の他、防災YouTuberとしても多くの動画を配信中。
ホームページ:https://sonaeru.jp/
YouTube(そなえるTV):https://www.youtube.com/c/sonaerujp-tv
Twitter:https://twitter.com/sonaeru

 

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