マインドフルネスとは? ストレスや悩み解消のヒント、瞑想の実践法を解説

毎日、仕事や家事・勉強を頑張ってこなしていると、体の疲れだけでなくストレスにより心が不安定になる日があるかもしれません。休みの日には好きな映画を見たり音楽を聴いたりしてストレス解消をしているつもりだけれど、どうもスッキリしないと感じている人も少なくないでしょう。

そんなストレス社会への対処法の一つとして注目されているのが、「マインドフルネス」です。多くのビジネスパーソンから注目されているマインドフルネスの概要や実践法を紹介します。

この記事では下記の3点を解説します。

  • マインドフルネスの意味・注目されている背景とは?
  • マインドフルネス瞑想の効果と実践方法
  • さまざまな形で心の健康を支援する人々

マインドフルネスの意味・注目されている背景とは?

「マインドフルネス」とは、そもそもどのような手法なのか、その意味とともに、世界に広まっていった経緯を解説します。

マインドフルネスの意味とは?

マインドフルネスとは、「注意(意識)を一つのことに集中できている状態」を言います。一方で、目の前の事柄に集中できず、適切な対処ができない状態を「マインドレスネス」と呼びます。

価値観が多様化し、情報が洪水のように流れ込んでくる現代社会では、さまざまな事柄が頭に浮かび、感情が揺さぶられてしまうこともあります。仕事や人間関係に悩む人は、頭に浮かぶ問題に心がとらわれて、それが頭から離れない「マインドレスネス」の状態に陥っているのです。

そこで、過去に対する後悔や将来への不安に心を奪われずに、今ここにある現実に対して意識(注意)を向けるようにすることが対処法の一つとなります。

「マインドフルネス」という言葉は、仏教の瞑想法に由来しています。仏教の経典で使われているパーリ語の「念」を意味する「サティ(sati)」を英訳したものです。

マインドフルネスの意味として、一般的に「今、ここでの体験に気付き、それをありのままに受け入れる方法」「個人の内的な気付きにとどまらず、人間関係への気付きとケアの心性に結びつく心身の営み」などと説明されます。

マインドフルネスは、アメリカ・マサチューセッツ大学医学部の名誉教授ジョン・カバット・ジン氏が提唱したメソッドに端を発しています。ジン教授はマインドフルネスの本質について次のように述べています。

“マインドフルネスとは、たんなるテクニックや方法ではなく、人のありようであり、ものごとの見方であり、自分の感覚に立ちもどることである。”

※引用:『マインドフルネス認知療法』(著:ジンデル・シーガル/監訳:越川房子/北大路書房)

シリコンバレーでブームとなったマインドフルネス

マインドフルネスは、アメリカのシリコンバレーで注目され始めました。2014年、Googleの元システムエンジニアであるチャディー・メン・タン氏が、マインドフルネス瞑想を実践する独自の研修プログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ(Search Inside Yourself : SIY)」を開発しました。当初はストレスを低減することを目的としていましたが、企業研修や人材育成のトレーニングに適応するために内容がブラッシュアップされていきました。

マインドフルネス瞑想は次第にアメリカ全土へと拡大しました。ハリウッドで活躍する俳優やプロスポーツ選手などがマインドフルネス瞑想の実践者として知られるようになり、その中にはスティーブ・ ジョブズ氏やビル・ゲイツ氏らグローバル企業の有名経営者も含まれています。

企業向けに改良されたマインドフルネス瞑想は、日本でも研修セミナーなどに導入する企業が増えています。例えばヤフー株式会社では、SIYをもとにしたプログラムを実施。リーダーシップを発揮するためには、自分を客観視することが重要だという考えから、マインドフルネスの考え方を取り入れているようです。

また株式会社メルカリでは、有志が部活動としてマインドフルネス瞑想を実践しており、プロのコーチを招いた社内研修として本格的なプログラムに発展させています。

マインドフルネス瞑想の効果と実践方法

マインドフルネス瞑想は、もともと科学的な心理療法を取り入れ、ストレスを軽減する方法として開発されました。海外ではうつ病の治療法として活用された事例もあります。

前述のように、マインドフルネス瞑想がビジネスの現場で注目されているのは、仕事を進めていく上で心を整えるメリットがあるからです。また、マインドフルネス瞑想を実践する方法としては「呼吸法」が多く取り入れられています。これらについて具体的に紹介します。

心を整えるマインドフルネス瞑想

ビジネスの現場にマインドフルネス瞑想を取り入れるメリットとして、まず自分の怒りや悲しみといった感情を上手に取り扱えるようになる点が挙げられます。自分の感情をうまくコントロールできるようになれば、人間関係を良好に保つことにつながります。

また集中力が向上し、仕事のパフォーマンスが上がるのもマインドフルネス瞑想のメリットの一つです。現代のビジネスの現場では、複数の仕事を同時並行で進めるマルチタスクが一般的です。一つの仕事に取り組んでいても、他の仕事の納期やタスクが気になり不安や焦りが生じてしまうことがあります。マインドフルネス瞑想で心を落ち着かせ、目の前の作業に集中できれば、効率良く仕事がこなせるようになるはずです。

また、マインドフルネス瞑想を実践することで、自分の心を俯瞰(ふかん)的に見ることができるようになると期待されており、自分を客観視した上でストレスへの対応法を選択できるようになるため、ストレスから解放されやすくなるようです。

早稲田大学文学学術院教授で、日本マインドフルネス学会の理事長でもある越川房子氏は、自分の気持ちをコントロールするマインドフルネス瞑想を次のように解説しています。

“心の筋力トレーニング”と表現しています。“心の筋トレ”によって「心の容量」が増えれば、過去に対する後悔や将来への不安にとらわれにくくなる”

“情報や価値観が多様化している現代社会では、感情が揺さぶられる状況はますます増えています。例えば、複雑な人間関係に悩む人は、うまく人と付き合えない自分を否定的に捉え、そのことが頭から離れない状態、つまりうつや不安の症状に陥りがちです。だからこそ、過去に対する公開や将来への不安にとらわれるのではなく、今、ここにある現実に対して意識的に注意を置き換えることが重要になってくるのです。それを可能にするマインドフルネス瞑想は、「心の筋力トレーニング」といえるでしょう。”

※引用:ストレスをためない心の態度 マインドフルネスのすすめ– 早稲田ウィークリー

マインドフルネス瞑想を実践するための呼吸法

マインドフルネス瞑想を具体的に行う方法として、「呼吸法」がよく知られています。一般的な手順は次の通りです。

軽く目を閉じ、おへその下あたりに意識を向けたら、自然に呼吸をしましょう。おなかが膨らんだりへこんだりする感覚を味わいます。おなかよりも鼻を空気が通る感覚のほうが感じやすければ、そちらに意識を向けてもよいでしょう。実践は20分間を目安とします。

途中でお腹へ向けた意識が途切れ、別の考えが頭に浮かんでくることもあります。そのことで自分を責める必要はありません。「別のことを考えた」と気付き、再び呼吸へ意識を向ければいいのです。

※出典:ストレスをためない心の態度 マインドフルネスのすすめ – 早稲田ウィークリー

前述のジン氏が開発した「MBSR」では、「食べる瞑想」も取り入れています。まず1粒のレーズンを手に取り、見た目を楽しみます。そして口に入れたら、ゆっくりと時間をかけて、味わいや食感に意識を向けて食べるのです。食べる行為は、視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚の五感のすべてを使うため、「今、ここでの体験」を意識しやすくなります。過去や未来の事柄について思い悩むことがなくなり、ストレスを軽減することにつながるわけです。

さまざまな形で心の健康を支援する人々 考え方や意識を変えれば現状を変えることができる

ここまで、マインドフルネス瞑想の効果や実践法を紹介してきました。ここでは、心のケアに関わる取り組みをしているお二人を紹介します。ここでは、マインドフルネスの普及を行う禅僧と、メンタルケアの手助けを行うカウンセラーの事例について解説します。

仏教の禅僧としてマインドフルネスの重要性を説く川野泰周さんの事例

仏教の禅僧と精神科医の二足のわらじを履く川野泰周さんは、マインドフルネスの普及活動を精力的に行っています。現代社会に生きる人たちの心をケアする方法として、マインドフルネス瞑想が有効であると語っています。

カウンセリングでメンタル不調の悩みを解決したいみたらし加奈さんの事例

心があまりに疲弊してしまうと、自分がどういう状態に置かれているか冷静に見られなくなります。また自分の感情も客観的に見ることが難しくなります。それでもなんとか仕事や生活をこなしていこうと無理をして、ますます心を疲れさせてしまうこともあるでしょう。

心を適切にケアする方法として、カウンセラーに頼るのも選択肢の一つです。

臨床心理士のみたらし加奈さんは学生時代、友人・知人から心の不調の相談を受けていたことをきっかけに今の仕事に就きました。みたらしさんは、自分で自分の心をケアすることの難しさについて次のように述べています。

“「自分の心に耳を傾けることって、実はすごく難しいことなんです。『しんどいな』『つらいな』と心が疲弊していても、人は『甘えちゃいけない』『頑張らなきゃだめだ』と無理をして、自分が置かれた状態を冷静に見ることができず、ふたをしてしまいがちです。”

※引用:メンタルの不調は自分で解決しなきゃ、なんてない。 – みたらし加奈

マインドフルネス瞑想を実践したり、カウンセラーに相談したりして、自分の心を意識的にケアするように努めれば、毎日のように自分を悩ませている不安や悩みから解放されやすくなるはずです。仕事や生活がうまくまわっていくことにもつながっていきます。自分の考え方や意識を変えれば現状を変えられるきっかけになるかもしれません。

まとめ

マインドフルネスの核心は「今、ここにある現実に意識を向ける」ことにあります。そのトレーニング法であるマインドフルネス瞑想は、特別な道具を用意する必要はないので、日常生活に取り入れやすいと言えます。現代社会を生きていく上で自分の心をケアする方法として、マインドフルネス瞑想を実践したり、あるいはカウンセラーに相談したりして、ストレスと上手に付き合っていきたいものです。

監修者:藤井 英雄

精神科医、心のトリセツ研究所代表。瞑想歴40年、マインドフルネス瞑想歴25年。潜在意識の法則やマインドフルネス瞑想、認知行動療法、さらには東洋医学、キネシオロジーなどを活用した画期的なメンタルヘルスプログラム「心のトリセツ流幸せの作り方」を開発。従来のリトリート(瞑想合宿)中心の訓練から、自宅で日常生活を送りながら手軽にマインドフルネスを習得できる画期的なプログラム「1日10秒マインドフルネス」を提唱し積極的に情報を発信している。

主な著書
「1日10秒マインドフルネス  大和書房 2018」

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