法務は後ろに控えてなくちゃ、なんてない。―LIFULLのリーダーたち―CLO平島亜里沙
2024年4月1日、ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLは、チーム経営の強化を目的に、新たなCxOおよび事業CEO・責任者就任を発表しました。性別や国籍を問わない多様な顔ぶれで、代表取締役社長の伊東祐司が掲げた「チーム経営」を力強く推進していきます。
シリーズ「LIFULLのリーダーたち」、今回は2024年4月からCLO(Chief Legal Officer)に就任した平島亜里沙に話を聞きます。
連載 LIFULLのリーダーたち
- 第1回代表取締役社長執行役員 伊東 祐司
- 第2回代表取締役会長 井上 高志
- 第3回CLO平島亜里沙
- 第4回執行役員CCO 川嵜 鋼平
- 第5回不動産転職事業CEO國松圭佑
- 第6回LIFULL HOME'S物件情報精度責任者 宮廻 優子
- 第7回LIFULL FaM事業 CEO 秋庭 麻衣
- 第8回LIFULL HOME'S FRIENDLY DOOR責任者 龔 軼群
- 第9回執行役員CPO 羽田 幸広
- 第10回執行役員CTO 長沢 翼
- 第11回LIFULL HOME'S戸建・注文事業CEO、Sufu事業CEO 増尾 圭悟
- 第12回執行役員CFO グループ経営推進本部長 福澤 秀一
- 第13回LIFULL HOME'S CPO、分譲マンション事業 CEO 大久保 慎
- 第14回LIFULL ALT-RHYTHM責任者 宮内 康光
- 第15回LIFULL HOME'S流通・売却事業CEO 古谷 圭一郎
- 第16回LIFULL Financial代表取締役社長 清水 哲朗
- 第17回LIFULL 取締役 宍戸 潔
- 第18回LIFULL 取締役、グループデータ本部長、CDO 山田 貴士
ニューヨーク州司法試験合格後にオハイオ州の法律事務所でトレーニーを経験し、外資系企業で企業内弁護士を務めていた平島亜里沙。2017年に、「私がやっている仕事は世の中の役に立っていると子どもに話したい」とLIFULLに転職しました。法務部は間接部門ではなく、事業をドライブする一員と捉える平島の視線の先には、事業を通して社会課題を解決し、世の中の人々に寄り添いたいという思いがありました。
部署間でこぼれ落ちそうになっている案件を拾ったり、適切な部署を案内するのも法務の仕事です。領域に制限を設けず、幅広く事業に接している部署です。
変化する社会の価値観に合わせて、自分の常識もアップデートする
――LIFULLにおける平島さんの管掌領域を教えてください。
法務全般です。M&Aや新規事業案件の対応、紛争対応、紛争になりそうな案件やクレームをどう収めていくかも法務の役割です。株主総会、取締役会など企業として必要な会議体の運営や規程管理も担当しています。もちろん、日々の法務相談、契約書の審査、新たに立ち上がる社内プロジェクトに関して、法律やルールに違反していないかの確認などもしています。
また、法律に違反していなくても、常識に照らし合わせておかしいと感じることについても意見を伝えます。逆に、プロジェクトを実行していいかどうか不安になっている人には、法務目線と常識的な目線で見て「大丈夫だよ」と背中を押すことも法務の仕事だと考えています。
――常識も判断基準になると、個人の主観に拠る部分があって難しそうです。
社会の変化により、以前は許されていたことでも社会から非難されるケースが増えてきました。法務目線で見ると同時に、一人のユーザーとして、心地よくないと感じる人がいるのでは? と思ったら担当者に意見として伝えます。どうしても、プロジェクトの担当者になると、案件に入り込むあまり、当たり前になってしまい、気付けない部分があると思います。そんな時、法務が第三者的な目線での意見を伝える意義があると感じています。ですから、法務部は法律を知っているだけではなく、変化していく社会の価値観に合わせて自分の常識もアップデートしていく素養が必要だと感じています。かといって、社会の空気に流されすぎてもダメなので、バランスが難しいところです。例えば、SNSで一瞬にして広がる論調に絶対に合わせないといけないわけではないので、一番座りのよい結論になるのは? と一つずつ慎重かつスピーディーに考えていく必要があります。
――社内では平島さんはどんな役割を担っていますか?
2024年4月から、法務部長とCLOを兼務しています。CLOとは、最高法務責任者です。実は、日本ではCLOを置いている会社がまだ少なく、その役割は会社によって様々です。欧米ではCLOやGC(General Counsel)といって、日々経営陣と直接話をしてアドバイスを行う役割の人がいます。今後は経営陣の一角として、法務の観点から経営に対して直接助言をすることも私の役割の一つだと考えています。
自分の仕事が社会貢献につながっていることをより強く感じながら日々仕事をしたい
――これまでの平島さんの職歴を教えてください。
2003年に弁護士登録をして、長島・大野・常松法律事務所でM&Aとコーポレートを担当し、その後アメリカのロースクールに留学しました。卒業後にニューヨーク州司法試験に合格して、オハイオ州の法律事務所でトレーニーを経験しています。そこでは、日系企業の米国進出や合弁会社の設立などをお手伝いしていたのですが、日本に帰国するタイミングで企業内弁護士に転向しようと思い、外資系の企業に就職しました。そこで6年間働き、2017年にLIFULLに入社しました。
――なぜLIFULLに入社したのですか?
前の会社で働いていた時に子どもが二人生まれて、二度の産休と育休を取りました。育児中に、子どもが大きくなったら「私がやっている仕事は世の中の役に立っているよ。仕事って大変だけどやりがいがあるよ」と話したいと思っていました。また、前職でBtoCの商品・サービスを担当した時に、自分のサポートした商品・サービスが世の中に出ていくことが分かりやすく、やりがいを強く感じました。
転職を考えていた時に、LIFULLを紹介されたんです。社是が利他主義であることと、事業で社会課題を解決すると宣言している点に惹かれました。LIFULLで働くことで自分の仕事が社会貢献につながっていることをより強く感じながら仕事ができるのではないかと考えました。また、私自身そろそろマネジメントを経験したいと思っていて、管理職の募集があったのも決め手になり転職することにしました。今では、子どもがCMを見て「ママはLIFULLで働いているんでしょう?」と言ってくれます。子どもは二人とも小学生なので、LIFULLでの仕事のことや、日々やりがいを感じながら働けることのありがたさなど、今後もっと子どもに話していけたらいいな、と思っています。
LIFULLの法務は、事業の伴走者であり推進役でもある
――LIFULLは、事業を通じて社会課題解決に取り組む企業グループであることを明示しています。平島さんご自身は、事業を通してどんな社会課題を解決していきたいのですか?
私は、がむしゃらに事業推進をしていくタイプではありません。どちらかというと、頑張って事業を進めている人や、これから頑張りたいと思っている人をサポートしたいのです。努力している人に伴走して一緒に考えたり、さらに先へ進む一歩の背中を押したい。LIFULLでは「薩摩の教え(※)」に例えることが多いのですが、私は三番目の「挑戦した人の手助けをした人」として、社会課題を解決しようとしている人の伴走者として頑張りたいです。
※薩摩の教え(男の順序):薩摩藩で代々引き継がれた教え・人材評価の基準。次のような順番で、より価値のある行動をした人とされる。 1.何かに挑戦して成功した人 2.何かに挑戦して失敗した人 3.挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした人 4.何もしなかった人 5.何もせずに批判だけしている人 6.批判して人の足を引っ張る人
――平島さんが、これからの5年間で取り組みたいことを教えてください。
まずは、法務部として組織の力を高めたいです。たとえ法務部のメンバーが変わっても、法務部としての事業サポート力、牽引力、社内での影響力が落ちないように、メンバー全員のレベルが高く、組織として強い状態を目指したいです。そのために、次のマネージャーを育てるのも今後の職務の一つです。また、LIFULLのビジョンにフィットした新卒のメンバーに、ゼロから法務としてのスキルを身につけてもらうことで、“LIFULLらしい法務パーソン”となるよう育成したいとも思っています。
――「組織として強い法務」とは、どんな状態ですか?
例えば社内でプロジェクトが走りだす時に、法務がボトルネックにならずタイムリーに事業を支え、必要であれば引っ張っていけるような組織です。必要とされている法務対応の質を常に高い状態にしたいです。そのためには、新卒と中途採用のメンバーが各年代でバランスよく揃い、各メンバーで能力を高めあっていく必要があります。
法務対応は国内だけではありません。海外で展開する事業の発展のために、海外にいる法務担当者、コンプライアンス担当者とのネットワークづくりを進めていきます。今までは現地にお任せしている部分が多かったので、まずは状況の見える化から進めていきます。
――最後にお聞きします。平島さんの「しなきゃ、なんてない。」は?
「法務は後ろに控えてなくちゃ、なんてない」。LIFULLでは、法務部を含め管理部門は後ろに控えて待っていて、依頼がきた案件だけをやるもの、とは思っていません。
今のチームビジョンは「いつもあなたのそばに~LIFULL法務’s」です。LIFULLの法務は、事業部に寄り添って一緒に事業を進めていきたい。しかし、事業部が法務におんぶにだっこでよい、というわけではありません。「あなたのそばに」いるけれど、プロジェクト担当者にとっては厳しいことを言う場合もあります。それは法律の観点からだったり、第三者の目線からだったりしますが、事業を推進していきたいという思いはプロジェクト担当者と同じです。
取材・執筆:石川歩
撮影:服部芽生
2003年10月弁護士登録。長島・大野・常松法律事務所でM&A・コーポレート案件を担当。2009年6月UC Berkeley School of Law卒業(LL.M.)。2010年米国ニューヨーク州弁護士登録。オハイオ州の法律事務所でトレイニーとして勤務。2011年6月日本マイクロソフト株式会社に入社し、主にコンシューマー向け製品等に関する法務業務に従事。2017年11月LIFULL入社。2018年2月よりグループ経営推進本部法務グループ長。2024年4月より現職。
みんなが読んでいる記事
-
2024/09/30女性だと働き方が制限される、なんてない。―彩り豊かな人生を送るため、従来の働き方を再定義。COLORFULLYが実現したい社会とは―筒井まこと
自分らしい生き方や働き方の実現にコミットする注目のプラットフォーム「COLORFULLY」が与える社会的価値とは。多様なライフスタイルに合わせた新しい働き方が模索される中、COLORFULLYが実現したい“自分らしい人生の見つけ方”について、筒井まことさんにお話を伺った。
-
2023/09/12ルッキズムとは?【前編】SNS世代が「やめたい」と悩む外見至上主義と容姿を巡る問題
視覚は知覚全体の83%といわれていることからもわかる通り、私たちの日常生活は視覚情報に大きな影響を受けており、時にルッキズムと呼ばれる、人を外見だけで判断する状況を生み出します。この記事では、ルッキズムについて解説します。
-
2023/02/27アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは?【前編】日常にある事例、具体的な対処法について解説!
私たちは何かを見たり、聞いたり、感じたりした時に実際にどうかは別として、「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があります。これを「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」と呼びます。アンコンシャスバイアスによるネガティブな影響に対処するための第一歩は、「意識し、理解する」ことです。
-
2021/06/17エシカル消費はわくわくしない、なんてない。三上 結香
東京・代官山で、エシカル、サステイナブル、ヴィーガンをコンセプトにしたセレクトショップ「style table DAIKANYAMA」を運営する三上結香さん。大学時代に「世界学生環境サミットin京都」の実行委員を務め、その後アルゼンチンに1年間留学。環境問題に興味を持ったことや、社会貢献したいという思いを抱いた経験をもとに、「エシカル消費」を世の中に提案し続けている。今なお根強く残る使い捨て消費の社会において、どう地球規模課題と向き合っていくのか。エシカルを身近なものにしようと活動を続ける三上さんに、思いを伺った。
-
2024/04/04なぜ、私たちは親を否定できないのか。|公認心理師・信田さよ子が語る、世代間連鎖を防ぐ方法
HCC原宿カウンセリングセンターの所長である信田さよ子さんは、DVや虐待の加害者・被害者に向けたグループカウンセリングに長年取り組んできました。なぜ、私たちは家族や親を否定することが難しいのか。また、世代間連鎖が起きる背景や防ぐ方法についても教えていただきました。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
個人から世の中まで私たちを縛る既成概念について専門家監修の解説記事、調査結果、コラムやエッセイを掲載。