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STORIES 2018/11/08

趣味は仕事にできない、なんてない。

詩歩

2013年あたりから巻き起こっている絶景ブームをご存じだろうか? 素晴らしい景色を求めて旅したり、出合った美しい風景を撮影してSNSに投稿したりする、近年稀に見るビッグムーブメントである。始まりは、たった一人の若い女性。Facebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営する詩歩さんは、絶景ブームのパイオニアでありけん引者だ。埋もれていたニーズを見いだし、仕事とした彼女の今までとは?

2014年の新語・流行語大賞。日本エレキテル連合による"ダメよ〜ダメダメ"や、"アナと雪の女王"のありのままで”と並んでノミネートされたのが、"絶景"というワードだ。いつ誰が発したのかわからない一般名詞が、なぜ流行語とされたのか。背景には、あるWEBページのヒットがあった。
詩歩さんが12年にオープンしたFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」は、瞬く間に70万以上の"いいね!"を獲得。大きく話題になり、関連書籍も多数刊行された。なかでも同タイトルを冠するシリーズは累計60万部超え。アジアを中心に海外でも出版されるほどの人気に。
現在も彼女はサイト運営のほか、旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップ、地域振興のアドバイザーなど、"絶景"にまつわる事業で活躍している。まだ20代の女性が、どのようにして唯一無二の絶景プロデューサーとなり得たのか、考え方や今までの経緯を伺った。

やり続けて突き詰めれば
何かの第一人者になれる

1990年、静岡県浜松市に生まれた詩歩さん。特別に裕福でも貧しくもないごく普通の家庭で育った。

「ただ、負けず嫌いでしたね。テストでは絶対に一番になりたいって」

だから、成績は優秀。高校時代はトップになることもしばしばだったとか。

「スポーツは適性や向き不向きでどうしようもない部分がありますが、勉強なら努力すれば反映される。特に記憶力勝負の科目は自信がありました」

大学進学を機に上京し、元々興味のあった環境問題について学んだ。初めての海外は大学2年生の時。

「両親が全く旅行しなかったので、私も大学生になるまでは静岡県内しか知らない状態。でも、キャンパスには留学生や海外生活経験者といった、自分にとって未知の世界を通っている人が大勢いて」

まだまだ知らないことがたくさんあるのに気づいた彼女、持ち前の負けず嫌い精神を発揮して行動に出る。

「知らないというのがとても嫌で。海外に行ってみたいし、外国の友達も欲しい」

と、一人で1カ月間イタリアに。 ところが、そんなに楽しい体験ではなかったそう。

「外国人はみんな英語が話せると思っていたほど、私が海外に対して無知過ぎました。当たり前ですが、イタリア人はイタリア語を使うんです。加えて、テストでは点を取れていた英会話が、実際には通じるレベルにないという事実。だいぶ凹んで帰国しました」

一方で収穫もあった。遺跡と日常的に向き合える環境への、驚きや憧れの思いだ。

「昔の人と自分が同じものに触れているってスゴい! もっと歴史に触れたい! この衝動が以降の”旅行欲”の源になりました」

大怪我した経験から「死ぬまでに……」のタイトルが

日本一周や南米、エジプト、ヨーロッパなど、積極的に旅していた学生時代。まだ絶景を意識することはなかった。

「大学卒業後、インターネット専門の広告代理店に入社しました。新人研修として与えられたお題が、”Facebookページでいいね!数を競え”だったんです」

同期たちがサッカーや映画をネタにページ作成するなか、詩歩さんは絶景にフォーカス。結果、2カ月で2万いいね!を記録した。

人の目を引いた理由の一つに、キャッチーなタイトルがある。ルーツは大学の卒業旅行。オーストラリアで事故にあい、ドクターヘリ搬送されるほどの大怪我を負ったのだ。意識はあったけれど、あまり覚えていない状態。文字通り死にかけたそう。この経験から「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」の名タイトルが誕生したわけだ。

「そのまま会社勤めを2年続けました。副業禁止でしたが、本だけは特別にOK頂いて出版。以来、いろいろなオファーがあったのですが、すべて断って」

しかし、自分のページの反響は日々増していく。それにまつわる仕事の問い合わせも絶えることがない。

「会社で働くのも楽しかったのですが、自分にしかできない仕事とは何かを考えるように……」

仕事がなくても死にはしない。生粋の絶景マニアではないけれど、大好きな旅行ともっと絡めるならと独立を決意。今では絶景プロデューサーとして、引く手あまたの存在に。

計画性よりも継続する力が重要

「やり続けること、突き詰めることが大切だと感じています。誰も見ていなかったジャンルでも、第一人者になれば仕事になるんです。旅を仕事にしたい人は多いですが、本当に始めるパターンはわずか。さらに、継続する人はもっと減ります。私は図らずもスタートさせ、会社員と二足のわらじながら続け、結果的に絶景業界を生み出せました。そして、業界のパイオニア、代表者として活動させてもらっています」

多くの人々が、仕事は探すだけもの、与えられるものという思い込みにとらわれてはいないだろうか。詩歩さんは誰もが知る”絶景”と、旅行好きな自分の個性を融合させ、見事に新しい市場、仕事を生み出した。

「やり続けること、突き詰めることが大切だと感じています。誰も見ていなかったジャンルでも、第一人者になれば仕事になるんです。旅を仕事にしたい人は多いですが、本当に始めるパターンはわずか。さらに、継続する人はもっと減ります。私は図らずもスタートさせ、会社員と二足の草鞋ながら続け、結果的に絶景業界を生み出せました。そして、業界のパイオニア、代表者として活動させてもらっています」

多くの人々が、仕事は探すもの、与えられるものという思い込みに捉われてはいないだろうか。詩歩さんは誰もが知る”絶景”と、旅行好きな自分の個性を融合させ、見事に新しい市場、仕事を生み出した。

感性を鋭く保つため、本当は少し休みたい

将来の野望、目標は特にないと笑う彼女。とはいえ、SNSや旅行業界は大きな変革の時にあり、合わせて自身も変わる必要があるという。

「身近なところだと東京オリンピック・パラリンピック。今後増えるインバウンド向けに、国内の絶景を紹介できるようになりたいですね。そのために3年前から定期的に留学し、英語力を磨いているんですよ」

さすがは業界随一の実力者。自然と将来のプランニングができているようだ。

「でも、本当はもうちょっと家でゆっくりしたいんです。旅は行き過ぎると常態化し、感動が薄れてしまうから」

私は、誰も知らない絶景を見つけられはしません。すでに発見されているけど、くすぶっている景色を提案しているだけ。それでも人をワクワクさせられ、私自身も満足しています。世界を旅して学んだのは、セーフティネットの発達した日本では、死なない限り未来があるということ。何かやりたいのなら、恐れずに始めてみてはいかがでしょう。せめて半年、できれば1年。望み通りの結果が出なくとも、海外ほど追い詰められませんし、必ず何かを得られるはずです
Profile 詩歩

1990年生まれ、静岡県出身。「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサー。Facebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」の運営のほか、書籍も多数発売している。現在は旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップ、自治体等の地域振興のアドバイザーなどでも活躍。2017年には地元・浜松市の観光大使に就任した。
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