自然の中で「カカオの一生を味わう」ペアリングコース。 LIFE OF CACAO オープン

地球料理 -Earth Cuisine-

2022年3月14日(月)、新宿御苑の温室でホワイトデー限定イベントLIFE OF CACAOが開催された。

LIFE OF CACAOは、「地球料理 -Earth Cuisine-」の第三弾。「地球料理 -Earth Cuisine-」は地球上でまだ光が当たっていない素材にフォーカスし、その素材を食べることが地球と人のためになる、そんな新たな食材を見つけるプロジェクトである。

第一弾は間伐材の問題を解決すべく「木を食べる」ことをテーマに、第二弾では放置竹林の問題に着目し、「竹を食べる」ことをテーマに期間限定レストランのオープンやECサイトで販売し、それまで光を当てられていなかった素材に「食べる」という新たな価値を生み出してきた。

第三弾となる今回のテーマはチョコレートの原料である「カカオ」。
チョコレートの市場は直近10年で成長を遂げており、世界で需要が増す一方でカカオの市場での取引価格は低いままで、カカオ農家では低賃金の貧困問題が発生している。この社会課題を持続的に解決していくために、着目したのがカカオの廃材。チョコレートにはカカオ素材のうちカカオマスが主に使用されており、残る70%の殻や葉は廃材となってしまっている。

カカオ廃材に「食べる」という新たな価値を生み出し、カカオ農家に利益が還元される仕組みをつくるために、カカオの枝や葉すべて、まさに「カカオの一生を食べる」、LIFE OF CACAOをテーマにデザートとドリンクのペアリングコースがゲストを楽しませた。


地球料理-Earth Cuisine|『LIFE OF CACAO』

シェフや生産者、地球環境などすべてのステークホルダーが幸せになれるようなおいしさの追求

今回のペアリングコースはカカオの誕生から、根づいて芽生えて実る、そして新たな芽を生む還元をテーマに5つのデザート、ドリンクで構成されている。

デザートは虎ノ門のモダンフレンチunisでシェフパティシエを務める江藤英樹さん、ドリンクはワールドバリスタチャンピオンであり、大手コーヒーチェーンのコンサルティングも手掛ける株式会社QAHWA代表取締役の井崎英典さんがメニューの企画開発に携わっている。

チョコレートにまつわる社会課題の解決のため、カカオの廃材に焦点を当てた今回のプロジェクトの取り組みについて二人は思いを語っている。

江藤:シェフとして今までにもカカオを取り扱うイベントに参加したことはありましたが、カカオを守るという趣旨のイベントは初めての試みです。食に携わる一人として、カカオが抱える社会課題は人ごととは思えず、積極的に取り組むべき課題だと感じたため、今回のプロジェクトに協力しました。

カカオを守るということは、カカオを余すところなく食べるということ。今回はカカオの中でも廃材となる部分を使った企画構成となっており、自分が得意としているデザートでカカオのいろんな部位を味わっていただき、まるでカカオ農園にいるかのような体験をしていただければと思っています。

井崎:私はバリスタですが、今回はいつものコーヒーは使わずにカカオの廃材を使ったドリンクをつくるということで驚きはありました。しかし、コーヒーとカカオには地球温暖化による共通の課題があり、私もカカオ農園に頻繁に行っており危機感を持っていましたので、力になるべく取り組ませていただきました。

ドリンクを企画する上でのテーマは二つ。一つはカカオの廃材を使いデザートを引き立てるものをつくること。もう一つは、すべて水出しでつくるということ。ドリンクを提供する上で最も二酸化炭素を排出するのがお湯を沸かす工程です。今回はサスティナブルな取り組みなので、環境負荷の少ない水出しにこだわりました。新宿御苑の温室にはカカオの木もありますので、探してみつつ、食事もお楽しみいただければと思います。

味、見た目、空間でカカオの一生を味わい尽くすペアリングコース

誕生から還元に至るすべてのデザート、ドリンクがカカオの廃材を使用していることを忘れるくらい美しい見た目と上品な味わいに仕上がっていた。デザートとドリンクのペアリングに加えて、自然に囲まれたシチュエーションがカカオの一生を味わう感覚をゲストにもたらした。

新しいおいしさの追求がたくさんの笑顔を生み、カカオの可能性を広げた

5つのペアリングメニューを味わったゲストは笑顔にあふれていただけでなく、新しいおいしさに驚いた様子、そして廃材に対する意識の変化も見受けられた。

ゲストコメント:廃材で作ったことを感じさせないぐらい、想像以上に美味しかった。2品目の『根づき』では、飲み物とデザートが口の中で合わさったときにチョコレートの味に変化してペアリングならではで楽しく味わいました。

ゲストコメント:普段はチョコレートやカカオなどしか食べたことはなかったが、廃棄されている70%の枝や葉、殻の部分がこんなにおいしくいただけたことに感動した。

ゲストコメント:生産者の存在を意識したいと思った。消費者が生産者のことを知るだけでなく、カカオの生産者にも自分たちがこうやってすべての素材をおいしくいただいたということを知ってもらえたら、利益の循環に感謝の循環も加わり、よりサスティナブルになるなと思った。

ゲストとの交流を通じてたくさんの言葉を贈られた三人。イベントの企画開発を通じて感じた気付き、そして思いについて語る。

川嵜:LIFE OF CACAOのコンセプトをお二人にご提示したのが2021年の8月。難しいコンセプトの中、お二人が素敵なペアリングコースをつくり上げ、皆さんにも楽しんでいただけたかなと思います。江藤さん、井崎さん、お二人のような一流の方に廃材を使った取り組みを行っていただいたことで、廃材の可能性や新しいおいしさが次の世代へと更新されていきます。サスティナブルな視点をもってカカオと向き合い、料理をしていく方が増えていくという点で、お二人にご尽力いただけたことは非常に大きかったです。

江藤:自然の中で味わうロケーションも相まって皆さまが楽しんでいらっしゃる様子が印象的でした。また、今回はデザートだけでなくドリンクとのペアリングだったことがお互いをより引き立てていました。ドリンクが水だったら全く違う印象だったと思いますね。

カカオ廃材を加工し、おいしいデザートに仕上げていく部分は試行錯誤の連続でしたが、開発を通じて、カカオの枝や葉が想像していたよりも食べることができるなと強く感じました。カカオパルプやハスク(外皮)は近頃、流通し出しており使う人も増えてきていますが、枝や葉に関してはいわば未知の領域ですので、今後さらに掘り進めて、カカオはおいしく、余すところなく使える食材だという考えを広めていこうと思います。

井崎:皆さまから想像以上の「おいしい」という言葉をたくさんいただきました。おいしくなければサスティナブルではない、と考えており今回はさらに「楽しい」という言葉がプラスされていたことが非常に良かったです。

開発に当たっては、いつものコーヒー素材を使わずに自分の色を出していくために、カカオの素材、廃材を正しく理解することに注力しました。カカオ廃材との組み合わせや江藤さんのデザートに合わせていくという試行錯誤を繰り返し、そこに自身のコーヒーづくりの技法をエッセンスとして加えることで皆さんに楽しんでもらえるドリンクにたどり着いたかなと思います。

それぞれの分野において一流のクリエイターの力でカカオの「新しいおいしさ」を伝えたLIFE OF CACAO。今後、サスティナブルな目をもってカカオを料理していく人が増えていき、この「新しいおいしさ」がより多くの人に伝わっていく日も近いのではないだろうか。カカオに関わるすべてのステークホルダーの幸せのために。

 

Profile

江藤 英樹:Hideki Eto

辻調グループフランス校卒業。フランス・ラナプール「L’OASIS」カンヌ「villa des Lys」にて修業。「BEIGE Alain Ducasse TOKYO」にて経験を積み、「DOMINIQUE BOUCHET TOKYO」「SUGALABO」「THIERRY MARX」等、数々の名店でシェフパティシエを歴任し、2020年「unis」のシェフパティシエ、「Social Kitchen」プロデューサーに就任。21年自身のブランド「PAYSAGE」を立ち上げる。サロン・デュ・ショコラに18年より4年連続参加中。

井崎 英典:Hidenori Izaki

株式会社QAHWA代表取締役 2012年にジャパン・バリスタ・チャンピオンシップにて史上最年少で国内チャンピオンとなり、翌年2連覇を達成。2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップにてアジア人初の世界王者となる。コロナ禍以前は年間200日以上、海外を拠点に活動。現在は国内事業にも注力。コーヒー関連機器の研究開発や、大手チェーンなどの商品開発からマーケティングと幅広いコンサルティングを提供。NHK『逆転人生』、BS日テレ『バカリズムの大人のたしなみズム』他、メディア出演多数。

川嵜 鋼平:Kohei Kawasaki

2017年LIFULL入社。執行役員Chief Creative Officerとして、ブランド戦略、ブランドデザイン、プロダクトデザイン、マーケティング、新規事業、研究開発など、社会課題解決に取り組む企業のクリエイティブを統括。LIFULLは、過去3年間のブランド活動全般を評価するJapan Branding Awards 2021にて最高賞であるBest of the Bestを受賞。

最近のプロジェクトに、LIFULL企業CM「しなきゃ、なんてない。2021年」篇、地球料理 Earth Cuisineなどがある。Cannes Lions金賞、One Show金賞、Clio金賞をはじめ、国内外の180以上のデザイン・広告賞を受賞。

Information

イベント名
LIFE OF CACAO
日時
2022年3月14日(月)
場所
新宿御苑 温室(東京都新宿区内藤町11−15 )
シェフ
江藤 英樹氏
バリスタ
井崎 英典氏
全体統括
川嵜 鋼平

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