見た目がすべて?容姿のみを評価する価値観と差別問題の具体的事例

世界各国で「ルッキズム」をなくそうという取り組みが進んでいます。その背景にはSDGsとのつながりも含め、さまざまな複合的な要素が絡み合っています。この記事では「ルッキズム」や「見た目問題」について、以下の4点について解説します。

容姿のみを評価する偏った価値観と見た目問題

鏡を前に悩む女性

「ルッキズム」に似た社会課題に「見た目問題」があります。NPO法人マイフェイス・マイスタイル代表の外川浩子さんによると、「見た目問題とは、顔や体に生まれつきアザ、事故や病気による傷、変形、欠損、脱毛など見た目に特徴的な症状をもつ人たちが、差別や偏見のせいでぶつかってしまう困難のこと」です。

これに対して、「ルッキズム」とは、病気による症状に由来する見た目だけに限らず、外見のみで人を判断することです。テレビやネットでは、「美しさ」や「格好良さ」について画一的な基準が設けられて、魅力が判断されたり、特定の人が優遇されたりする傾向が助長されています。それにより、自分の体型や顔が他の人よりも劣ると思い込んで自己評価を下げたり、苦しんだりする人が増えています。

外川浩子さんによると、ルッキズムと見た目問題について「ルッキズムがはびこると、見た目問題を抱える当事者はますます生きづらくなる…当事者がどんなに知見を深め、技術を磨いても、ひとたび見た目の美しさが求められれば、力を生かすチャンスすら奪われてしまう」と警鐘を鳴らします。

出典:外川浩子:「見た目問題」から考える、ルッキズムの行く末

見た目重視や容姿差別の問題と社会の動き

ウエストを測る人

アメリカでは、成人の4割以上が肥満とされていますが、体型により就職の機会が奪われたり、仕事の待遇面で差別されたりすることがあるようです。例えば、ヴァンダービルト大学が公表している研究によると、肥満とされる女性は「標準体重」の女性よりも低賃金でより過酷な仕事に就く可能性が高いというデータもあります。(※1)

こうした状況を鑑み、米ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は、2023年5月に就職や住宅の契約、公共施設を利用する際に宗教や人種に加えて、身長や体重を理由に差別してはならないとする法案に署名しました。同市長は「誰も身長や体重で差別されることがあってはならない。仕事を探しているとき、街に出ているとき、アパートの部屋を借りようとしているとき、背の高さや体重は関係ないはずだ」と述べました。(※2)

こうした外見に基づく差別的な扱いが法律で禁じられる動きがある一方、人々の意識はそれとは乖離している現象もみられます。例えば、18歳以上の男女2,197人を対象に行われたイギリスの調査によると、「異性の容姿を理由に相手を無視したり、避けたりする」と回答した男性は全体の31%でしたが、女性の場合、全体の70%に上りました。(※3)

また、ルッキズムは世界各国の若年層をも巻き込んでいます。それはアニメ作品のテーマが多様化し、その中にはルッキズムや人種差別などの社会課題を示唆する作品も増えていることから分かります。

例えば、美容整形が盛んな韓国発のアニメ作品である『外見至上主義』『整形水』はいずれもルッキズムへの風刺を含んでいます。またNetflixシリーズの『マスクガール』はルッキズムにとらわれ、破滅していく女性の悲劇を描いています。

出典
※1  Overweight Women Tend To Earn Smaller Paychecks, Study Claims
※2 Fat people now officially a protected group in NYC: Mayor Eric Adams signs discrimination law that puts obesity in same category as race and religion
※3 The tables have turned when it comes to dating…

ルッキズムとSDGsの関係とは

ルッキズムが世界各国で社会問題として取り上げられている背景には、SDGs(持続可能な開発目標)との関係もあります。

SDGs10は「人や国の不平等をなくそう」というもので、国際連合広報センターによると、「性、年齢、障がい、人種、階級、民族、宗教、機会に基づく不平等や各国内及び国家間の不平等の撤廃」を含んでいます。「外見」は列挙されている要素には直接含まれていませんが、それぞれと間接的なつながりを生みかねません。そのため、外見で人を判断したり、差別したりするルッキズムは克服すべき課題と言えるでしょう。

出典 人や国の不平等をなくそう

容姿や見た目を差別して問題となった国内事例

自分のお腹を指さす人

ルッキズムや見た目問題に対する意識を向上させようとの動きとは裏腹に、官民の責任ある立場の人たちが容姿や見た目を差別して問題になる事例も見受けられます。

例えば、大阪市にある冷凍宅配弁当のベンチャー企業「ナッシュ」の取締役が社内チャットで「デブの人は採用しないようにしましょう」と発言。その理由として、同氏は「仕事ができない確率が高いと考えており、かつ、権利主張が激しく、ナッシュと相性悪く双方不幸せな結果になると思っています」と述べたとされています。(※4)

また、麻生太郎・自民党副総裁が講演で、上川陽子外相について「そんなに美しい方とは言わない」「おばさん」などと発言(その後撤回)したことに対し、ジェンダー差別、ルッキズムだという批判が巻き起こったことは記憶に新しいでしょう。(※5)

さらにSNS上でも看護師がポストした「どうか、肥満体型の方、痩せてください」というコメントについて、共感のリポストが多いものの、中にはルッキズムだと批判する人もいました。

出典
※4 <チャット入手>NHKも紹介した宅食ベンチャー・ナッシュ取締役「デブの人は採用しないように」「権利主張が激しい」
※5 麻生氏発現に指摘された「ルッキズム」 米国での差別との闘いに源流

ルッキズムと向き合う女性芸人の想い

M-1グランプリ2016で決勝進出を果たし、活躍中のお笑い芸人コンビ「相席スタート」の山崎ケイさんは、2018年に初のエッセイ集『ちょうどいいブスのススメ』を出版しました。山崎さんが発信したフレーズは容姿に自信のない女性がいったん自分をブスと認めた上で、内面やオシャレなどで愛される魅力を高めようという“ポジティブワード”でしたが、「女性蔑視」「女性の自己肯定感を下げるもの」として厳しい意見が飛び交ったといいます。ルッキズムに敏感になるあまり価値観が「0か100か」になってきていると山崎さんは感じています。

ルッキズムという社会課題にどう立ち向かう?

外見にとらわれずに脱ルッキズム社会を目指すには、どうすれば良いのでしょうか?大切なことはすぐに善悪二元論で決めつけず、ルッキズムの本質や背景を知ることです。そうすることで、容姿に対する固定観念から少しずつ解放されるはずです。

スタイリストの小泉茜さんは、数年前にあるきっかけで性差別や社会課題に向き合うようになり、ジェンダーやボディポジティブに関する発信も積極的に行っています。ルッキズムを乗り越える視点として、小泉さんは「自分を知ることが大切だと思います。わたしたちは他者を満足させるために存在しているわけではないので、自分はどうしたいのか、どういうときに幸せな状態であるかを、意識的に振り返る時間を作るようにしています」と述べます。

また、日本社会では見た目で「若い」「年配」と判断されることがあり、若く見える人がより魅力的だとされることもあります。新見公立大学地域福祉学科講師の朴蕙彬(パク ヘビン)さんは、年齢に基づく固定観念、偏見、差別である「エイジズム」に対して問題提起をしています。

朴さんは「エイジズムはどの世代であっても被害者にも加害者にもなりうる。そこがこの概念をとらえづらくしている要因です。時に、自分自身でさえエイジズムの対象になりえます」と述べていますが、ルッキズムにも同じ構造が見え隠れします。

アイドルとして活躍するゆっきゅんさんは、「男らしさ」「女らしさ」について「自分の気持ちも目の前にいる人も、そもそもどんどん変わっていくもの…目の前にいる人に優しくしていればいい」と語ります。ゆっきゅんさんは「知識と創造力の両輪」が必要と言いますが、ルッキズムという社会課題に立ち向かうためにも欠かせない要素でしょう。

まとめ

草原を走る人々

もともとアメリカに源流をもつ「ルッキズム」という社会課題は、日本では「見た目問題」とも結びつき、独自の問題提起をしているように思います。ただ、誰にとっても相手を外見に全くとらわれずに見ることは不可能です。大切なのは、そのことを意識し、それがどのように差別や偏見につながるかを丁寧に議論していくことでしょう。

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