偉大な親は超えられない、なんてない。
日本を代表するビッグネームが両親のIMALUさん。2009年にモデルデビューすると一躍脚光を浴び、順調にキャリアを積んできた。’13年には事務所を移籍し、より自分らしさの出せる音楽系の活動にも注力。生まれながらにして“普通”では居られなかった彼女の歩みについて話を伺った。

’09年、人気女性ファッション誌に登場した新人モデルが、日本中で話題となった。明石家さんまさんと大竹しのぶさんの娘、IMALUさんである。芸能界を代表する大物2人に育てられた彼女にとって、エンタテインメントの世界は日常であり、最もよく知る仕事。その方向に舵を切るのは自然なことだったのかもしれない。
両親の看板がいかに強力かを、同じ土俵に立って初めて知った彼女。戸惑いながらも成長し、今は自分らしい道を見つけ、一歩ずつ前進している。世間一般の女子とは明らかに異なるキャリアと、さらに羽ばたこうとする行き先について、自身の言葉で語ってもらった。
両親が大スターだからこその
プレッシャーと可能性
1989年にIMALUさんは生まれた。両親は明石家さんまさんと大竹しのぶさん。共に誰もが知る大スターである。
「小さい頃から両親以外の芸能人が誰かしら家に来ていました。ですから、私にとって芸能界はとても身近な世界だったんです」
しかし、人見知りが激しく、特別に親しくなる相手は限られていたそう。
「学校でも同じでした。シャイなので仲良くなるのに時間がかかってしまうんです」
小学校の入学式ではビッグカップルの娘が来るとすでに知られており、会場に足を踏み入れた瞬間から好奇の視線にさらされた。
「仕方のないことですが、とても嫌でした」
運動会ではまともにお弁当を食べた記憶がないとも。
「次々と写真やサインを頼まれて。父が断らないので、延々と続いちゃうんです。家族で行った東京ディズニーランドも、アトラクションに乗れませんでした。父に行列ができてしまって(笑)」
両親が有名だという理由だけで近付いてくる同級生だって居た。
「子供同士って親関係なく、気が合えば自然と仲良くなれるものだと思います。それが他クラスの子にいきなり友達になって!と頼まれても悲しいだけでした。芸能人の子どもと呼ばれる人たちはいじめられる場合が多いみたいですが、私はなかったですね。見られるのが嫌で、ツンツンしていましたから。本当にすごくツンツン。あまり弱みを見せないようにしていたんです」
海外に出て気付いた日本人の素敵な部分
幼い頃から大好きなのが音楽。ダンスレッスンを受け、中学では軽音部に入部し、仲間たちとワイワイ楽しんだ。特に洋楽の影響を強く受け、憧れたのがMTVのビデオ・ミュージック・アワード。
「受賞スピーチする姿がみんなカッコ良い。大勢が見ている前で、自分の意見をはっきりと主張するんですよ」
何を発言しているのか、人が訳した文章ではなく、自分の耳で聞いて知りたい。自然な流れで英語を学びたいと思うように。
「中学卒業後、母の勧めもあってカナダに留学しました。母方の曽祖父母はサンフランシスコ留学中に出会ったそうで、2人の英語への好奇心が私に隔世遺伝したようです」
ハイスクールムービーのファンだった彼女にとって、夢の外国暮らし。日本人同士で固まらず、真剣に語学力向上に努めた。
「中学では紙袋に包んだサンドイッチがお弁当!と決めていたほどかぶれていましたから、毎日ワクワク」
カナダで生活したことにより、語学面以外でも思わぬ学びもあった。
「外国のようにYES、NOはっきりしているのがカッコ良いと思っていましたが、序列や礼儀、ルールを重んじる日本的考えも素敵だと思えるように。そこには気遣い、優しさも含まれているんですよね。もちろん、個を思うがまま主張できる社会も素晴らしいですけど」
芸能界に居る今、より日本人らしい価値観の大切さを感じている。
「両親は日本人の良い点をたくさん持っているんです。圧倒的なキャリアを持つ2人が、どれだけ周囲に気を使ってきたか。どうして私に礼儀を口酸っぱくして指導したのか。成長し、同じ世界で勝負するようになってわかりました」
テレビにどれだけ馴染みの芸人が出ていても呼び捨てにするな。人に挨拶するときは頭を下げろ。お年玉をもらったら自分の口から感謝を伝えろ。両親でとても厳しかった。
「お年玉は父母を通じて大変な件数頂くんです。なので、お礼の電話がなかなか大変。でも、ありがとうございました!の一言がどれだけ大事か、しっかり学べました」
想像以上に大きかった両親の存在感
そもそも、芸能界入りしたのも偉大な両親の助力があったから。
「大学行こうか、働こうか、それとも興味があるメイクの専門学校に行こうか……。高校卒業時、将来に対して深く考えていなかったんです」
キーになったのは親しい友人の一言だった。
「MTV好きなのだから、VJになればいいのでは?って」
英語は勉強したし、大好きなジャンル。興味がないわけない。
「なりたい、やりたいみたいなことを口に出したんですね。すると、周りの大人たちがササッと動いてくれて。ものすごいスピードでラジオアシスタントや雑誌の音楽連載が決まりました。意識的に芸能界に入ったというより、いつの間にか仕事が決まっていたような感じ」
転がりだしてから大変なことになったと気付き、両親の名前が自分の想像を超えた強さだというのも知った。
「いきなり荒れた海に放り出されたのと同じ。ただあがくしかなくて。でも、それくらい厳しいほうが、必死になって泳げるようになるのかもしれません」
隠したかった出自を不本意ながら先に明かされてしまい、いきなりハードルの高いデビュー。さまざまなチャンス、チャレンジを与えられるも、納得がいく結果を出すのは難しかった。
「スタートから3年くらいは、初めてのことばかりで混乱。記憶がないくらいです」
事務所を移籍してより自分らしい方向に
いつ頃からか、自分の中でズレが生じつつあるのを感じ始めた。与えられた仕事を一生懸命こなすだけでいいのか。自分がやりたい活動はなんだったのか。母と共に所属していた当時の事務所は、演劇系に強く、音楽に関しては疎かったのだ。
「活躍する場を与えてもらえるのは、とてもありがたかったです。だけど、私が心から望むスタイルではありませんでした」
このままズルズルと引っ張られていては、永遠に自分になれない。
「私が進む方向は自分で決める。出会う人みんなに触れ回り、いろんな事務所へ伺いました」
宣言して逃げられないようにし、自分らしいベクトルを模索し始めたわけである。そして、ファッション&音楽系のイベントで現事務所の社長と知り合い、移籍を果たす。
「私の目指すアーティスト的側面を理解してもらい、お互いのタイミングもハマりました。確かにリスクは高いのですが、自分の道をいつかは開かないといけませんから」
大女優を擁する前事務所時代とは違い、今や自分が大黒柱。責任は半端ではないと自覚している。
「その分、自由度は高く、自分のアイデアが生かせる環境。初めて自分の足で立てたのかもしれません」
映画や音楽の魅力をIMALU流に伝えたい
映画や音楽、特に洋楽の楽しさをもっと伝えたいというIMALUさん。
「テレビやラジオ、雑誌で発信できたり、実力ある海外アーティストに取材したり、少しずつ私らしいアクションができるようになりました。充実していますし、続けていきたいですね」
さらに、LULU X名義でのアーティスト活動も’17年から始動。タレントとは違う顔を見せ、新たなステージに到達した。
「それでも、今はまだ両親の名前は大きいです。タレントとしては永遠にくっついてくるものだと思います。だけど、自分が好きな音楽や映画というジャンルだけでも、いつか私にしかない価値を生み出せたらいいなと思っています」

1989年生まれ。東京都出身。幼い頃から音楽やダンスに親しむ。中学卒業後、カナダの高校へ語学留学。帰国後、ファッション誌でモデルデビューし、タレントやアーティストとして各メディアで活躍する。2017年にはLULU X名義の音楽プロジェクトも開始。東海テレビ「スイッチ!」、テレビ朝日「Break Out」、BS-TBS「かわいいアニマル大集合!どうぶつのじかん」などにレギュラー出演中。
オフィシャルブログ https://ameblo.jp/imalu-beepbeepbeep/
ツイッター @imalu0919
インスタグラム @imalu_0919
みんなが読んでいる記事
-
2022/09/29結婚できない女性はかわいそう、なんてない。山口 真由
東大卒、財務省入省、ニューヨーク州弁護士資格取得と、誰もが認めるエリート街道を歩んできた山口真由さん。だが、30代後半に待ち受けていたのは「結婚できない女はかわいそう」の大合唱だった。彼女が考える日本の家族や法律の問題点、アメリカとの比較、親に自分の考えを理解してもらうために必要な姿勢について伺った。
-
2023/07/12心地よいはみんな違う。私たちのパートナーシップ【つくしの場合】
心地よいパートナーシップは、一人ひとり違う。しかしながら、パートナーシップのあり方にはまだまだ選択肢が乏しいのが現状だ。「LIFULL STORIES」と「あしたメディア by BIGLOBE」では、つくしさんに「心地よいパートナーシップ」について聞いてみることにした。
-
2024/01/16あなたの“普通”がみんなにとっての“普通”、なんてない 。―「障害は世界を捉え直す視点」を掲げ活動する田中みゆきが語るアクセシビリティ―田中みゆき
「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに、フリーのキュレーター/プロデューサーとして活動している田中みゆきさん。障害のある方と一緒に、多くのプロジェクトを手がけてきた田中さんに、今の社会に必要な「アクセシビリティ」について伺った。
-
2024/03/19「若いね」「もういい年だから」……なぜエイジズムによる評価は無くならないのか|セクシズム(性差別)、レイシズム(人種差別)と並ぶ差別問題の一つ「エイジズム」。社会福祉学研究者・朴 蕙彬に聞く
『日本映画にみるエイジズム』(法律文化社)著者である新見公立大学の朴 蕙彬(パク ヘビン)先生に、エイジズムに対する問題意識の気付きや、エイジズムやミソジニーとの相関関係について、またメディアやSNSが与えるエイジズムの影響や、年齢による差別を乗り越えるためのヒントを伺ってきました。
-
2019/12/02家族以上の強い結びつきは作れない、なんてない。藤代 健介
多種多様な人が集まり、共に暮らし、共に働くことを目的につくられた拡張家族「Cift」の発起人である藤代健介さん。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に在学中、空間設計に関連するコンサルティング会社prsm(プリズム)を設立。以降は、場づくりを通して「平和とは何か」について考え、個人同士がより深い愛を持ってつながられる社会づくりを目指しています。自身もCiftに住みつつ、現在は複数の拠点を持ちながら生活を送り、従来の家族という枠を超えたコミュニティーを今まさに構築している藤代さんの考えに迫ります。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」
-
個人から世の中まで私たちを縛る既成概念について専門家監修の解説記事、調査結果、コラムやエッセイを掲載。