【後編】子どもの貧困の実態とは? ひとり親世帯と貧困が生む教育格差、原因、貧困支援を解説

生まれ育った家庭の経済状況や環境によって、満足にご飯が食べられなかったり、教育の機会が得られなかったりする子どもたちがいます。日本に住んでいると、「子どもの貧困」について実感がわかないという人も少なくないでしょう。しかし、データを基に日本社会が置かれている状況を分析すると、決してそうではないことが浮かび上がってきます。

ここでは下記の5点を解説します。

前編

後編

シングルマザーの貧困率はなぜ高い?

子どもの貧困問題は家庭の経済状況と密接に結び付いていて、ひとり親世帯では世帯収入が大きく減ってしまうという背景があります。さらに、父子世帯より母子世帯のほうが就業によって得られる収入は低い傾向にあります。シングルマザーの世帯は、貧困率が高い傾向にあるということです。

厚生労働省の調査によると、母子世帯の就業状況は86.3%ですが、そのうち正規の職員・従業員として勤めているシングルマザーは48.8%にとどまります。シングルマザーの半数近くは、賃金の低いパートやアルバイトで生計を立てていることがわかります。

そのため、シングルマザーに対しては社会的に偏見を持たれることが少なくありません。例えば、シングルマザーというだけで「収入が少ない」と思われたり、家探しの際などに不動産店などから不当な扱いを受けたりすることもあります。シングルマザーの暮らしの選択肢を狭めない取り組みが必要です。

1級建築士の秋山怜史さんは、2012年に日本初となるシングルマザーのシェアハウスを企画しました。空き家を活用し、家探しが難しい場合もあるシングルマザーを支援する仕組みです。秋山さんは「豊かな暮らしをするために選択肢を増やし、空間作りだけでなく世の中の仕組み自体をつくる」ことが大切だと語ります。

※出典:「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」結果について – 厚生労働省

子どもの貧困対策や支援には何がある?

日本における子どもの貧困に対する取り組みには以下のようなものがあります。

  • 奨学金:授業料や生活費に対する現金の給付、もしくは貸与
  • 学習支援:無償または低額での学習支援
  • 子ども食堂や居場所支援:無償または低額での食事や居場所の提供

長年、日本の貧困問題に取り組んできた社会活動家の湯浅誠さんは、東京大学先端科学技術研究センター特任教授を務めるかたわら、認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の理事長として子どもの貧困問題にも取り組んでいます。湯浅さんが取り組んだのは子ども食堂でしたが、その理由について次のように語ります。

「貧困問題と言うと、『深刻な貧困』『壮大な社会問題』というイメージを持つ人が多く、『自分にはどうすることもできない問題』と考えられてしまいがちです。一方で子ども食堂は、子どもも大人も高齢者も、みんなが関わることができる場所であり、助けが欲しい人、何かしたいと思っている人……みんなの受け皿になっています。そんな多様な人たちが集まる子ども食堂こそが、貧困問題に関わる人の数を増やし、貧困の解消への糸口になると感じたんです」

また、子どもの居場所を支援する取り組みの事例として、「LIFULL HOME'S Action for all」があります。家探しが難しいシングルマザー・ファーザー向けの住宅探しをサポートしています。「子どもと一緒に暮らす家を探しているけど、見つからない」という悩みを持つ方は利用してみてはどうでしょうか。

まとめ

貧困問題が生む教育格差は根深い社会課題であり、私たちにとって実は身近な問題です。貧困問題に取り組むために、必ずしも多額の寄付をしたり、ボランティア活動に毎週参加したりする必要はありません。身近な隣人やクラスメートに関心を払ったり、気遣いの言葉を掛けたりすることから始めてみるのもよいかもしれません。

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監修者 能島 裕介

NPO法人ブレーンヒューマニティー創業者。関西学院大学法学部卒業後、株式会社住友銀行(現・三井住友銀行)入行。1999年4月、ブレーンヒューマニティー設立のため、同行退職。現在は公益社団法人ハタチ基金理事、関西学院大学非常勤講師などを務める。

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