アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは?【後編】日常にある事例、具体的な対処法について解説!

私たちは何かを見たり、聞いたり、感じたりした時に実際にどうかは別として、「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があります。これを「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」と呼びます。アンコンシャスバイアスによるネガティブな影響に対処するための第一歩は、「意識し、理解する」ことです。

ここでは以下の5点について解説します。

前編

後編

アンコンシャスバイアスの具体的な対処法は?

アンコンシャスバイアスの具体的対処法には以下の3つがあります。

対処法①決め付けない、押し付けない

アンコンシャスバイアス研究所によると、アンコンシャスバイアスは「決め付け」や「押し付け」の言動となって表れることがあります。

例えば、「普通は〇〇だ」や「みんな〇〇だ」「どうせムリだ」といった決め付けの言葉や「〇〇しなきゃ」「こうあるべきだ」「こうでないとダメだ」といった押し付けの言葉などです。頭ごなしの決め付けは、相手を傷つけたり、自分の可能性を狭めたりすることにつながるかもしれません。これらの言葉に気付いたなら、「これって、私のアンコンシャスバイアスかも?」と立ち止まってみましょう。

対処法②相手の表情や態度の変化など「サイン」に注目する

アンコンシャスバイアスは無意識がゆえに、自分ではなかなか気付けないといったことがあるかもしれません。しかし、自分の言葉で相手の表情が曇ったり、声のトーンが変わったりするなどの「サイン」を敏感に察知することで、相手に対するアンコンシャスバイアスに気付くことが可能です。もし、相手の表情や態度の変化に違和感があれば、そのままにせずに相手がどう受けとめたのかを尋ねるなど、フォローしてみましょう。自分の中にも思い込みがあることを認めるなら、自分とは異なる個性やバックグラウンドを持つ相手を尊重できるようになります。また、さらに「思い込み」ではなく、より丁寧にコミュニケーションと対話を重ねた上で相手を判断することができるようになることでしょう。

対処法③自己認知

アンコンシャスバイアスに対処するための第一歩は、そのことを認知しようとすることです。「メタ認知」とも言い換えられるかもしれません。メタ認知とは、自分を客観的に観察し、分析することです。

メタ認知を向上させる一つの方法に、メモがあります。上述した「決め付け言葉」や「押し付け言葉」を自分が使っていることに気付いたら、それをテキスト化してみましょう。また、相手の表情や態度の変化など「サイン」に気付いた時もメモしておくと、客観的に自分の傾向を分析するのに役立ちます。

※出典:「共同参画」2021年5月号 – 内閣府男女共同参画局

アンコンシャスバイアスを「知り」、「気く」ことから始めよう

はてなマークと豆電球のイラスト

「無意識の思い込み」であるアンコンシャスバイアスが認知心理学や社会心理学で広く使われるようになったのは2000年ごろからで比較的新しい概念です。日本では、2015年前後から認知され、注目されるようになりました。その背景には、非正社員や女性の社会進出、日本に住む外国籍の人、LGBTQ+といったセクシュアルマイノリティーの人々への配慮などにより、組織や企業が多様化に立ち向かう必要が生まれたことが関係しています。

そうした職場環境の変化において、不祥事やハラスメントが相次いで起こり、企業倫理の見直しが迫られました。特に管理職や経営層はアンコンシャスバイアスを「知り」、自身の日頃の言動に含まれるアンコンシャスバイアスに「気く」ことが重要です。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社で、当時人事総務本部長を務めていた島田由香さんは、顔写真やファーストネーム、性別に関わる情報の取得を廃止した「ブラインド採用」の導入を手がけました。島田さんは「バイアスを完全になくすことはできない。でも、正直に伝え合い、仕組みを整えていくことで社会は変わるはず」と言います。

「男性学」の専門家である大正大学心理社会学部准教授の田中俊之さんは、男性ならではの生きづらさに着目。「男は弱音を吐いてはいけない」という“男らしさ”が内包するアンコンシャスバイアスがあるとし、一人ひとりが凝り固まったジェンダー観から解放されることも大切だと語ります。「男だから」「女だから」という鎖で自らを縛って苦しめていないか、振り返ってみてはいかがでしょうか。

「男は泣いちゃだめ」「男は出世しなきゃ」といった価値観は、男性に対して過度なプレッシャーを与えるため“有害な男らしさ”と呼ばれます。桃山商事代表の清田隆之さんは、こうした“有害な男らしさ”によって無意識に他人を傷つけてしまった経験があります。「ホモソーシャル的なコミュニケーションにしんどさを感じている人は、一対一で対話することを心がけていくといいかもしれません」と男性間のコミュニケーションにおける解消法を示してくれました。

「自分には無関係だ」と決め付けず、まずは自分事であることを認識し、日頃から注意することが重要です。個人でできる対策、組織の取り組み事例などを学んで、少しずつ無意識の思い込みがあることを理解していきましょう。

まとめ

アンコンシャスバイアスは本能的なものでもあるため、完全になくすことはできませんが、新たな経験や、見聞きすることで「上書き」は可能です。

アンコンシャスバイアスに気付こうとすることで、モノの見方が変わったり、とらえ方が変わったり、他の可能性を考えてみようと思えたり、一歩踏み出してみようという勇気が持てる等、さまざまな変化がおとずれるでしょう。

自分も言ったり言われたことのある“無意識の思い込み”に気が付くかも?

監修者 守屋 智敬

一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所代表理事。1970年、大阪府生まれ。2018年、一人ひとりがイキイキする社会をめざし、アンコンシャスバイアス研究所を設立、代表理事に就任。企業・官公庁、小・中学校等で、さまざまなテーマ・視点からアンコンシャスバイアスを届けている。アンコンシャスバイアス研修の受講者は8万人をこえる。2022年には、がんと共に働くことを応援するための共同研究「がんと仕事に関する意識調査」報告書を発表。著書に、『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』 (かんき出版)、『導く力』(KADOKAWA)などがある。

みんなが読んでいる記事

LIFULL STORIES しなきゃ、なんてない。
LIFULL STORIES/ライフルストーリーズは株式会社LIFULLが運営するメディアです。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。

コンセプトを見る

#心と身体の健康の記事

もっと見る

#アンコンシャスバイアスの記事

もっと見る

その他のカテゴリ

LIFULL STORIES しなきゃ、なんてない。
LIFULL STORIES/ライフルストーリーズは株式会社LIFULLが運営するメディアです。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。

コンセプトを見る