【後編】エイジズムとは?年齢差別と偏見の問題、具体例を紹介

内閣府によると、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は2022年に29.0%に達しました。今後も高齢化率は上昇することが予測されており、2036年には33.3%、3人に1人が高齢者になると言われています。

誰もが生き生きと活躍するためには、年齢による差別と偏見である「エイジズム」の克服が課題とされています。

この記事では以下5点をレポートします。

前編

後編

※出典:高齢化の現状と将来像|令和3年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府

若者に対する年齢への偏見・差別も存在する

パソコンに向かって仕事する男性

一方で、年齢による偏見や差別は高齢者だけが受けるものではありません。「今どきの若いものは~」などと目上の人が年齢だけに基づいて若者を見ることも少なくありません。

株式会社LIFULLは全国の18歳以上の男女2,000人を対象に「『エイジズム』に関する調査」を行いました。「これまでにあなたが受けたことのある、年齢を理由とした発言や行動」という質問に対しては「年齢に関する冗談を言われた(13.4%)」、「服装や外見を変えるように促された(5.0%)」、「恋愛・結婚への考え方を否定された(3.8%)」、「夢や希望していることについて否定された(3.0%)」などの回答があり、若者を含め、多くの人が年齢による偏見や差別を経験していることがわかりました。

※関連記事:「年齢の森」~対話から考えるエイジズム 

※引用:年齢に基づく固定観念や偏見、差別「エイジズム」がテーマのLIFULL初のドキュメンタリーフィルム第一弾『年齢の森-Forest of Age-』公開 – 株式会社LIFULL(ライフル)

年齢を理由に夢や選択を諦めることはない

空を見上げる子どもと大人たち

エイジズムを克服するには、まず自分を見つめることから始めなければなりません。誰でも必ず偏見や固定観念(ステレオタイプ)をもっているものです。そのことに気付き、認めることが第一歩です。「高齢者だから」「若者だから」という思い込みを捨て、夢や目標の選択肢の幅を狭めず、諦めないで挑戦してみましょう。

また、年齢に関わりなく挑戦しようとする人たちを受け入れてサポートする社会、環境づくりも大切です。年齢を理由に夢や挑戦を諦めない人たちを紹介します。

年齢などの枠にとらわれないファッションと生き方で挑戦を続ける志茂田景樹さん

志茂田景樹さんは、2000年に満60歳、還暦を迎えた時「ぼくは新0歳になりました」と発信、常に『いまが出発点』というスタンスで挑戦を続けてきました。1999年に「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、自ら童話・絵本を執筆しながら、全国各地で読み聞かせを実施し、幅広い社会活動を展開しています。

志茂田さんのTwitterには若者たちから人生相談が寄せられますが、決して「自分の若い頃は」などと苦言を呈することはしません。むしろ、人それぞれの状況は違うことを前提に“寄り添う”気持ちを大事にしています。

目の前のことを大事にしながら、自らの病気をも「楽しむ」高須克弥さん

「YES!高須クリニック」のCMでお馴染みの高須克弥さんはがんを患ったあとも美容医学の医師として現役にこだわり続けています。普通だったら悲観的になるような状況でも高須さんは「がんは自分の楽しみであり、趣味なんです」と目を輝かせます。

「人生100年時代」を楽しむためには100歳になったことばかりを考えて不安になるのではなく、目の前にあるひとつひとつのことを大事にしていくことを優先すべきといいます。

中学生のときに起業し、“子どもは働けない”という既成概念を覆した加藤路瑛さん

加藤路瑛さんは2018年、中学1年生のときに株式会社クリスタルロードを設立、「子どもは働けない」という既成概念を「子どもでも起業できる」という世界に変えました。

今では周囲の音や匂いなどの外部からの刺激を過剰に感じる『感覚過敏』を解決するため感覚過敏研究所を立ち上げ、感覚過敏の人に向けた商品開発や啓もう活動に取り組んでいます。

多くの人が加齢自体をネガティブに受け取り、年齢を理由に「できない」「無理だ」と言葉にすることがあります。こうした年齢を理由とした発言や行動を「エイジズム的行動」と呼びます。年齢や老化に対する思い込みを取り払い、ポジティブに受け止ることで、可能性を制限することなく、それぞれの個性により目を向けられるようになるでしょう。

まとめ

手をつないで万歳する家族

日本社会において定年制や年功序列はこれまで当たり前でしたが、従来のシステムが障壁となり、健康で労働能力がある高齢者が潜在力を発揮できなくなることが懸念されます。また、血縁関係や地域社会のつながりが希薄化し、異なる年齢の人たちが触れあい、互いを理解し合える機会もますます減りつつあります。

世代間葛藤などのようなエイジズムに付随した問題を克服するためには、高齢者にしろ、若者にしろ、年齢にとらわれることなく自分の夢や目標を追い求めている人たちの話に耳を傾けてみるのも良いでしょう。

前編を読む

⇒⇒⇒年齢・エイジズムについての多様な考えを知る⇒⇒⇒

監修者 朴 蕙彬(パク ヘビン)

新見公立大学地域福祉学科講師。博士(社会福祉学)。誰もが対象になりうるがあまり知られていないエイジズム(ageism)について、多くの人に知ってもらうため日本映画を対象に研究。著書に『日本映画にみるエイジズム』(法律文化社)などがある。

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