【前編】エイジレス社会実現に向けた取り組み・課題・多様なライフスタイルとは
日本では、1990年に12.1%だった高齢化率が2020年には28.8%まで上昇しました。 高齢化率が高まりつつある今日、年齢に囚われることなく、多方面で活躍している高齢者も増えてきています。全年代の人たちが、多様なライフスタイルをデザインできるエイジレス社会の実現に向けて、具体的にどんな取り組みが行われ、どんなことが課題になっているのでしょうか。
この記事では以下4点について見ていきます。
前編
後編
日本の超高齢社会が抱える問題
2021年版の高齢社会白書によると、日本の総人口は2020年10月1日時点で1億2,571万人、65歳以上の人口は3,619万人です。65歳以上の人口割合(高齢化率)は総人口の28.8%を占めています。
少子化と相まって、高齢化率の急激な上昇に歯止めがかかっていないのが現状です。高齢化率が全人口の21%を占めると「超高齢社会」と定義されますが、日本はすでにこの基準を大きく上回っています。
高齢化が進むのと同時に、寝たきりや認知症など介護を要する状態ではない期間である「健康寿命」が平均寿命を上回る延びを見せていることから「人生100年時代」が到来したともいわれています。しかし、平均寿命・健康寿命が延びているにもかかわらず、雇用の上限年齢・年金の受給開始年齢・高齢化率などの基準となる、高齢者=65歳以上という定義は変化していません。高齢者であっても精力的に活動する人は増えていることから、高齢者は仕事をせず年金で余生を過ごすものという既成概念は変わりつつあります。
一方、高齢者人口が増えたことで、労働人口の減少による経済成長力の低下や高齢者世代を支える現役世代の経済的負担の増加といった課題への対策が急務となりました。また、超高齢社会の加速により需要が増した医療・介護サービスが行き渡るような制度・体制の整備も急がれます。
エイジレスに働ける社会の実現とは?
日本で急速な高齢化が進む中、「全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会」の構築を目指して、政府はさまざまな取り組みを進めています。
エイジレスとは、「年齢にとらわれない」という意味で、年齢によって区別をせずに全世代にとってベストな暮らし方を見つけ出そうという目的で用いられる言葉です。
政府の姿勢
2018年2月16日、高齢社会対策会議で「高齢社会対策大綱」が閣議決定されました。大綱策定の目的は、自分の人生のさまざまな場面において、年齢で選択の幅を狭められることのない、どの世代にとっても暮らしやすい環境を整えることです。
高齢社会対策大綱は、以下の3つを基本的な考え方としています。
- 年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す
- 地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る
- 技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する
エイジレス・ライフの浸透
出典:令和3年版高齢社会白書
2020年版の高齢社会白書によると、60~64歳、65~69歳、70~74歳の就業率は、全て緩やかな上昇傾向にあります。10年前と比較すると、就業率の伸びはそれぞれ13.9ポイント・13.2ポイント・10.5ポイントと、どの世代でも伸びが見られ、高齢者であっても働く人が増えていることがわかります。
出典:平成29年版高齢社会白書
2017年版の高齢社会白書のデータでは、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しました。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。
このような、年齢にかかわらず働きたいといった考えのように、自分が主体者となって年齢に縛られずに生きることをエイジレス・ライフといいます。エイジレス・ライフとは、内閣府によって推し進められている生活様式のことです。年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送ることを目的としています。
「エイジレス社会」の実現には、政府が実行する政策だけではなく、企業や個人が“年齢にとらわれない生き方を認める”というエイジレス・ライフの考え方を持つことが大切です。また、平均寿命と健康寿命の両方が延びている事実も、エイジレス社会の実現を後押しする一つの要素となります。
エイジレス社会のゴールとは、エイジレス・ライフの浸透と、それを実現可能なものとする社会のあり方の両方が備わった状態のことを指すと言えるでしょう。
後編へ続く
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