就活の負けは人生の負け、なんてない。-CGOドットコム総長バブリーさんのギャルマインドで自分らしく生きる秘訣-
ギャルマインドで「世の中のバイブスをアゲる↑」を標榜する会社CGOドットコムが、日本の企業の熱い視線を浴びている。企業内のコミュニケーション、特に世代間コミュニケーションの難しさに直面している企業が、彼女たちの掲げる「ギャルマインド」を取り込むことでそれを克服し、コミュニケーションの活性化と生産性の向上を図っているのだという。そんなCGOドットコムを、“総長”として率いるバブリーさんに話を聞いた。

この春、企業に就職した新社会人、そして就活に取り組んでいる大学4年生、就活のスタートを切った3年生は、何かと悩み多き日々を過ごしている時期かもしれない。そんな彼らとって、企業に招かれてギャル式ブレストⓇを主催したり、講演を行ったり、企業とコラボした製品を開発したりと、めざましい活躍で世間の耳目を集めるバブリーさんのお話は、何かと参考になるのではなかろうか。ましてや彼女が、かつては高校を2年で中退し、大学も1年で辞めて別の大学に入り直し、新卒で入った会社もまた1年で辞めてと、紆余曲折を繰り返した人物であることを知れば、なおさら。
私が履歴書を書くとすると「高校中退」「大学中退」で超マイナスだけど、私は逆にそういう凸凹してる人こそ面白いし、評価されるべきだと思う。
高校を辞めて家出、大阪で“ギャル”と出会う
高校に入るまでのバブリーさんは、ギャルとは縁もゆかりもない、真面目で活発で超がつくほどの優等生だった。「成績はもう、ずっとオール5。部活のバスケではキャプテンやってたし、生徒会長もやった。先生に言われたこと、求められることは、すべてこなす優等生でした」
そんな彼女がなぜ、中退することになったのか。「高校に入ったら、先生からいきなり『東大に行きなさい!』って言われて、『えっ?』てなったんですよね。そのとき初めて、『なんで自分は今まで勉強してきたんだろ?』『なんで東大に行かなきゃいけないの?』って、突然すべてがわからなくなった。それで高1の夏から不登校になって、3か月間家で過ごしてました」
そして2年生になる時、高校を辞めて家出した。知人のいる大阪へ。その大阪でギャルたちに出会って衝撃を受ける。毎日をひたすら「楽しく面白く」生きるギャルたちを見て、自分がいかに様々なものに縛られて生きてきたかに気づいたという。振り返れば、やりたいこと、着たい物も口に出せない、自己表現のできない子供だった。「親や先生の期待を感じ取るばかりで、自分の人生の主語が、自分ではなかったんですよね」
ギャルとの出会いをきっかけに、大学へ
家出した先で出会ったギャルたちは、みんな頭が良かった。しかし経済的な理由で自分の進路をあきらめ就職する人が多かったという。日本は豊かな国だと思っていたのに、実はそうでもないことを目の当たりにした。一方で、自分は勉強すれば経済的に大学に行けるチャンスはあったので、「じゃあ自分は、大学に入って勉強して、世の中の当たり前とか価値基準とかを変えていけたらいいな」と考えるようになる。それから半年間、ほぼ独学で受験勉強に励んだ。一日中誰とも話さない日も多かったという。「たまに言葉を交わす相手といえば、コンビニの店員さんでした(笑)」
大学に入っても、頭の中は「ギャル」でいっぱい
そして大学に合格。しかし大学に入っても、バブリーさんの頭の中は、ギャルでいっぱいだった。その頃ネットでは「ギャルはもうオワコン」「ギャルは絶滅した」などと言われ始めていた。しかしバブリーさんの思いは全く違っていた。
「ギャルの本質は、見た目じゃなくて、そのマインドであって生き方なんだから、流行ったり廃れたりするものじゃない、だから絶滅とかしないよね、って思ってた。そんなギャルのマインドセットというものを、何らかの方法で社会的に提唱できないかな?事業としてやれないかな?って考えて今のサービスを立ち上げたんです。
それと、このギャルマインドが今の日本社会には足りないんじゃないかな?とも思ってた。ちょうどその頃は『心理的安全性(=組織やチームにおいて、自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態)』とか『忖度(=相手の考えや意図を、相手が明言しなくてもこちらから読み取ろうとする行為)』とかも、世の中的に言われ始めた時代で、ギャルたちの自分軸で発言するところとか、自分らしくコミュニケーションを取るところが、そんな課題を解決する手だてになるんじゃないかな?って考えて、今の“ギャルが会議に加わる”みたいなスタイルを思いついたんです」
CGOドットコムでは、自分軸、直感性、ポジティブの3つをギャルマインドの3軸と定義しているが、当時バブリーさんは、そんなギャルマインドを持つ仲間を集めるために、スカウト活動を始めた。クラブに入り込んで面白そうな子を物色したり、お店の人に紹介してもらったり、あるいは「ギャル探してます」と書いたプラカードを掲げて駅前に立ったりもした。そうする内に徐々に仲間が集まってきて、大学生の時に、その仲間たちと今に通じる活動を始めた。
一方、必死に勉強して大学に入ったものの、その大学では、自分の学びたかったことが学べないことがわかった。学びたかったのは、ギャルと出会うことで見えてきた“社会的貧困”が、なぜ起きているのか?そして、それに対する最新の取り組みだった。それで1年生の途中でその大学を辞め、コミュニティ福祉を学べる別の大学に入り直した。そしてNPO法人でインターンも始めた。それは楽しくて充実した経験だったという。
就職したのは、事業のノウハウを身につけたかったから
バブリーさんは、そんな自分の活動を続けながら、その後一般企業への就職も経験している。どうして就職する必要があったのだろう。「就職した理由は、単純にその頃自分がやってた事業だけでは、お金が稼げなかったから。生活できないから就職せざるを得なかったんです。それと、自分のやってたことをちゃんとした事業にしたかった。事業を作るノウハウが自分にはなかったので、そういうことが学べる会社を、って考えながら就活しました。あと就活って、人生で1回しかできないものだから体験しておきたい、というのもありましたね」
20社以上受けて、受かった中から人材育成や事業立ち上げで定評のある企業を選んだ。「とても勉強になりました。いろんな先輩がいらして。その会社は懐の深いところがあって、社内でウチの事業を一部やってくれたりもしたんですよ。ギャル式ブレストをやらせてくれて、実際とても好評でした」。しかし、会社勤めと自分の事業を両立するのは大変だった。平日はもちろん、週末も寝る時間がなかったという。一方で自分の事業が、「会社の会議にギャル注入」という見出しで日経新聞に取り上げられ、それを見た人から次々に取材や問い合わせが入るようになった。「当時2つの仕事をやってたけど、頭の中はギャルでいっぱいだったので、やっぱり自分のやりたい事業がやりたくて、それも20代のうちにやりたくて。それで新卒から1年経った時に会社を辞めて、自分の事業にフォーカスすることにしたんです」
「やりたいこと」なんて、そうそうあるもんじゃない
かつては就活も経験したバブリーさんに、「今の学生さんたちの中には、『自分のやりたいことが見つからない』『やりたいことがない』という人が多い。そんな彼らに向けてアドバイスを」とお願いしてみた。すると返って来た答えは、実に彼女らしいものだった。「よく言われる『あなたのやりたいことは何ですか?』って、質問のスケールが大き過ぎてピンとこないことが多い気がする。だいたいそんなもの、ないじゃないですか?少なくとも私にはないです。もうちょっと小さな心の機微っていうか、私たちは“バイブス”って呼んでるんですけど、そこに目を向けてみると、例えば子供の頃だと『泥んこに飛び込んでみたい!』とか、今だったら『今日はマック食べたい!』とか、そういう小さな“やりたい”は、日常の中に落ちてるはずですよね。それが『○○せねばならない!』って思った途端にどんどん失われていってしまう。私たちが大切にすべきなのは、“もう少しハードルの低い、やりたいこと”なんじゃないかと思いますね」
身のまわりのグッズにも、ギャルマインドがあふれている。
就活は1つのゲーム。負けたからって全てを否定されたわけじゃない
ところでギャルマインドを掲げるバブリーさんは、いったいどんな就活をしたのだろう?「はい、20社くらい受けたんじゃないかな?リクルートスーツ着て、黒髪にして受けましたよ(笑)」。へえ、そうだったのか。ではどんな気持ちで臨んでいたのか?「言い方は悪いかもしれませんけど私、就活って“ゲーム”だと思ってるんですよね。ゲームだからルールがあるわけで、そのルールにうまく乗っかった人が勝つんだと思ってる。ゲームに負けたからって、自分を完全に否定されたって思うのは辛いし、『なんでお前なんかに評価されなきゃいけないんだよ!』って思うじゃないですか。だから人生とゲーム(=就活)は分けて考えた方がいい。単にあるルールを持ったゲームにたまたま負けただけなんだっていうことを、分かっておく必要があると思う」
ギャルを心の中に飼おう!
「私たちは『ギャルを心の中に飼おう!』って言ってるんだけど、例えば就活で不合格もらうと落ち込むけど、そんな時『ま、いっか!』って、心の中のギャルが言ってくれるんですよ。『あんた、いいとこもあるから大丈夫だよ!』って。そういう、自分を認めてあげるもう一人の自分っていうのを持ってないと、流れに巻き込まれちゃう」
「ギャルマインドで日本をアゲ↑ていく」と聞けば、向かうところ敵なしの、イケイケの人物を想像してしまいがちだが、その足跡をたどると数々の紆余曲折と試行錯誤が潜んでいた。そしてそれこそが彼女のパワーの源泉になっているのだと感じた。これからも彼女たちには、かつては栄華を誇りながらも今やずいぶんと停滞してしまっているこの国を、グイグイとアゲ↑ていって欲しいものだ。
取材・執筆:宮川貫治
撮影:服部芽衣

高校在学中、家出先の大阪で出会ったギャルのマインドに感銘を受ける。
ギャルマインドで「世の中のバイブスをアゲる↑」ことを目指し、合同会社CGOドットコムを設立。
企業や団体にギャルを送り込む『ギャル式ブレスト®︎』を展開する。
「Forbes Japan 世界を救う希望100人」に選出。
X(元Twitter):@Rirara0508
Instagram:@rickel_pistachio
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