結婚や子育ての正解に合わせなきゃ、なんてない。
「既成概念にとらわれない生き方をしている」として、2021年7月に開催されたLIFULLの「『しなきゃ、なんてない。』アワード2021」を受賞。「芸能人は何を言われても黙っているべし」という風潮を意に介さず、ネットの誹謗(ひぼう)中傷に毅然と反論する強さは一体どこにあるのだろうか。最初は家族のために始めた芸能生活だったが、現在は「ファンの子を一人でも救うために」という気持ちに変わったという。その意図とは?デビュー以来持ち続けているコンプレックスやそれを克服するための努力、ファンに伝えたいことなどを伺った。

彼女は、この10年ずっと私たちをドキドキさせる存在だ。もがさんは10年前から「自分らしさを曲げない」という強い覚悟で、「芸能人はこうあるべき」という世間の常識と戦い、「芸能人とSNS」の新しいスタンダードを切り開いてきた。そして、今はママという新たなステージでまた輝きだしている。そんな、もがさんの「ぶれない生き方」とは。
芸能人だからどんな非難も我慢すべきなんておかしい。私は今日も“自分らしく”発信する
「『しなきゃ、なんてない。』アワード2021」受賞で得た思い
株式会社LIFULLは、2021年7月12日に「『しなきゃ、なんてない。』アワード2021」を開催した。LIFULLが掲げる「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを体現する方として、既成概念にとらわれない生き方をしているメイプル超合金のお二人とともに表彰されたのが、最上もがさんだ。世の中の「当たり前」にとらわれることなく結婚、子育て、セクシュアリティについてカテゴライズされない生き方を発信されている点や、2021年5月の出産以降、ご自身のSNSを通じて「結婚や子育てに正解なんて、ない。」と積極的に発信していることなどが今回の受賞の理由です。
「この賞を頂いて、本当に驚いたのと同時に、今までの自分の活動や生き方が認められたような気がしてとてもうれしかったです。2011年にデビューして以来、私はずっとたたかれやすい存在だったと思います。『こういうふうに言ったらまたいろいろ言われるだろうな』『また生意気と書かれるだろうな』と分かっていても、芸能人に対する“こうあるべき”と思い描かれる世間の常識に無条件に従うことがどうしてもできなくて。
たくさんの摩擦や挫折もありましたが、今回の受賞はそういった私の生き方を認められた感じがしました。嫌な思いもたくさんしてきたけど、周囲に流されずに自分の正しいと思う道を追求して頑張ってきて良かったなと、強く思いました。ありがとうございました」
「SNSの誹謗中傷が嫌なら見るな」というのは、いじめられている子に学校に行くなと言うのと同じ
「そもそも私が芸能界にデビューしたきっかけは、父の失業でした。芸能人に強い憧れがあったわけではなく『私が家族を、父を助けなきゃ』という気持ちでアルバイトを始め、その中で偶然声をかけられた縁でデビューすることになったんです。だから、芸能人はこうあるべきということをあまりよく分かっていなかったし、その像に自分を無理に合わせることがどうしてもできなくて。だって、おかしいことはおかしいじゃないですか。デビュー初期の頃からブログで発信していましたが、『アイドルらしくない言動』と生意気に受け取られることも多く、嫌な思いをたくさんしてきました。
言葉って、凶器になるんです。特にネットは顔が見えない世界だからこそ気遣いや思いやり、伝え方が大切なはずなのに、『芸能人だから何を言ってもいい、傷つけてもいい』と思うのかな。特にひどかったのが2014年頃。毎日毎日『死ね』っていうメッセージが届いていました。それも何通も。ブロックしてもブロックしても、また届くんです。
家族のプライバシーをさらされたり、ひどいことがたくさんあって。私は、ただただお仕事を頑張っていただけなのに。
当時所属していた事務所には『気にしなきゃいい、芸能人なんてそんなもん』と言われ、SNSでつらいと発言した際はそれだけで炎上し、知らない人から『じゃあSNSやめれば? 芸能人やめれば?』と言われました。
『え、なんでそうなるの?』って思いました。私はファンとの交流がしたくてSNSをやっているのに、被害を受けている側の私が我慢して逃げなくちゃいけないって、おかしいですよね。楽しみにしてくれているファンもたくさんいるのに、その子たちの楽しみも遮断しなくちゃいけなくなる。
その発想って、『いじめられてつらいなら、学校に行かなければいい』という発想と一緒だと思います。本人が行きたいのにもかかわらず、どうして被害者が我慢するのが当たり前で、加害者はそのままなのか。やめるべきなのは加害者側でしょ?って」
そんな理不尽ともとれる周囲の声をよそに、「自分がされて嫌なことを人にするのはやめよう」と発信し続けてきた彼女。それを「発言がよく炎上する」と受け取られてしまったことも悲しかった。そんな彼女の思いや行動が「間違ってないよ」「独り善がりじゃないよ」と認められた一つの結果が、今回の受賞だと感じてくれたようだ。
主張を曲げずにクラスで孤立してしまった私を救ってくれたネットゲーム
「孤立したとしても自分をちゃんと伝えたいという性格は小学生の頃からだと思う」と、もがさんは言う。
「おかしいと思ったことには『おかしい!』とズバッと言う性格は、小学生の頃から変わりませんね。学校生活をしていると、『なんとなくこっちの意見についた方が得かな』みたいな場面ってよくあるじゃないですか。でも私は『みんながこう言っているから私も』とはならず、自分の意見を貫いていました。
女の子がグループになるというのも当時は理解ができず、みんなと仲良くしたくても、違うグループ同士は仲良くなれない。あなたは結局どこのグループなの?と言われ、それが決められず孤立していきました。
その時に私を救ってくれたのが、ネットゲームでした。もともと家族もゲームが好きで、小さな頃から身近な存在ではあったのですが、学校で居場所がなくなるにつれ、どんどんのめり込むようになって。学校でどんなにつらいことがあっても家に帰ってゲームの世界に行けば、全く別の楽しい世界がある。友達もたくさんいる。それが当時の自分を本当に救ってくれたなと思います」
芸能界デビューは家族のために。今はファンのために
「芸能界のデビューはもともとは家族のためでしたが、実際にデビューしてしばらくたつと目的が変わって。グループに入り、みんなのことを知って大好きになり、“グループのため”に頑張る年が続き、そのうち “応援してくれるファンのため”という気持ちに、そして今は“娘のため”もプラスされました。
芸能界にデビューしても、ずっと自分に自信がなかったんです。芸能界って本当にびっくりするほど完璧にかわい子がたくさんいるんですよね。それに比べて私はゲームばっかりしていた、すごくオタクで根暗。おしゃれもメイクも疎い。人前に出る仕事なのに人と話すのも苦手だし、たいしてかわいくないしで良いところなんかないんだと。とにかく自分にずっと自信がなかったんです。
自信がある人って胸を張って堂々としていますよね? それとは反対に、私はずっと猫背で、事務所の人にも『もっと姿勢良くして!』とよく注意されていて。胸を張るのが怖くて、ある意味自己防衛みたいな感じで猫背になっていました。自信の持ち方がよく分からなかったんです。
それでもファンの子に『もがちゃん、かわいい』って言ってもらえると、やっぱりうれしいですよね。それと同時に、私自身少しでもかわいくなるため、自信を持てるようにこの10年すごく努力をしてきたので、『みんなにもできる』って強く思います。
自分に自信がないからこそたくさん努力をするのは、一般人も芸能人も関係ないって思います。今では、少しずつだけど自分を認められるようになってきたので、『みんな一緒に頑張ろう。私にもコンプレックスはたくさんあって、それを克服するために努力をしてきたし、今もしている』ってブログとかで発信しているんですよね。
変わろうと思えば変われるし、学生時代より今の方がきれいになっていると思っています。あの頃の写真は今見てもひどいです(笑)。30代になってからは何もしないでいるとただ衰えていくばかりなので、より一層頑張らなくちゃと思っています。
容姿のことだけじゃなく、学校に行けなくて悩んでいる子や人間関係がうまくいかない子、さまざまな悩みがファンの子から届きます。私自身も挫折やダメな時期もたくさんあったし、HSP(※)だったりうつ病だったり睡眠障がいなど、自分自身を理解して、いろんな方法を試して、笑顔になれる時間が増えていったので、ベストかどうかは分からないけど同じ悩みを抱えているファンの子には『私はこうやって乗り越えたよ』とブログで伝えたりします。誰かを救うなんておこがましいけれど、一つの参考になればいいなと思って。
(※)HSP:Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質もった人」という意味。
今の楽しみとこれからのこと
「コロナ禍に子どもを産んだので、いろんなことに制限があって大変だったりしますが、時には家族に協力してもらったり、友人と連絡をとって気持ちの発散をしたりしながら、日々子育てをしています。初めてのことだらけで、つらくなったり、どうしていいか分からなくなる時もたくさんありますが、最近は日常ブログも始めたので、そこにありのままを書いて息抜きしたりしています。
最近、娘の手を持ってボクササイズみたいに軽く動かすと、すごく笑うんです。『ストレート!ストレート!ジャブ!ジャブ!』みたいな (笑) 。これからそんな小さな喜びがたくさん出てくるんだろうなあと楽しみです。
子どもが生まれたことで将来への意識もずいぶん変わりました。アイドル時代は『とにかくグループを売りたい!』という欲がありましたが、今はとにかく娘が優先。ひっそりと穏やかに過ごしたいというのもあり、3歳までは保育園などに入れずになるべく一緒に過ごそうと、家でできる仕事を増やすために試行錯誤中です。でも正直、先のことは全然想像もつかないですね。
娘が生まれたことで環境ももちろん変わりましたが、自分自身がどんどんタフになるのを感じています。子どもが泣いたりぐずったりした時にイライラすると、母親は罪悪感を持ってしまいがちかもしれませんが、『子どもの泣き声は母親にとって不快な周波数である』って以前何かで記事を読んで、すごく納得したんです。赤ちゃんが母親に助けてほしい、気づいて欲しいと思ってわざとイラつかせる周波数で泣くんだって。それなら母親がイライラするのだって当然だって思ったらちょっと楽になりますよね。
赤ちゃん自身のSOSが母親に伝わらなかったらそれこそ危険ですしね。そうやって一つ一つ納得してクリアしながら、これから娘との未知の世界を楽しんでいきたいです」
デビューから10年。常に自分らしさを曲げずに、ある時は真正面から戦い、ある時は傷つき、それでも「ファンのために」という強い思いで活動を続けてきた最上もがさん。女優、モデル、そして今は母親としてさまざまな顔を持つ彼女は、他人の決めつけや一般の既成概念に縛られることなく、自分らしさを貫きながら、幸せを追求していくことだろう。

2011年に芸能界デビュー。現在は女優・タレント・モデルとしてさまざまな分野で活躍している。ゲーム好きとしても有名。グラビアデビュー時には、それまでにはあまりいなかった筋肉質で美しいスタイルが多くの女性からの支持を集めた。2021年5月の出産公表後、約3カ月で完全に体を戻したことで、女性の憧れとして「ボディメイク法」にも注目が集まっている。
Twitter @mogatanpe
Instagram @mogatanpe
公式アメブロ「最上家の日常」 https://ameblo.jp/mogafamily
公式HP(ファンクラブ:Mogarium) https://mogatanpe.com
みんなが読んでいる記事
-
2024/08/08マイクロアグレッションとは?【前編】日常の発言や会話に潜む無意識の差別・偏見にどう対処するのか
「マイクロアグレッション(Microaggression)」という言葉をご存じでしょうか?マイクロ=小さい、アグレッション=攻撃性を意味することから、「マイクロアグレッション」とは、無自覚の差別行為によって相手を見下したり、否定したりする態度を指します。この記事では「マイクロアグレッション」について解説します。
-
2022/09/16白髪は染めなきゃ、なんてない。近藤 サト
ナレーター・フリーアナウンサーとして活躍する近藤サトさん。2018年、20代から続けてきた白髪染めをやめ、グレイヘアで地上波テレビに颯爽と登場した。今ではすっかり定着した近藤さんのグレイヘアだが、当時、見た目の急激な変化は社会的にインパクトが大きく、賛否両論を巻き起こした。ご自身もとらわれていた“白髪は染めるもの”という固定観念やフジテレビ時代に巷で言われた“女子アナ30歳定年説”など、年齢による呪縛からどのように自由になれたのか、伺った。この記事は「もっと自由に年齢をとらえよう」というテーマで、年齢にとらわれずに自分らしく挑戦されている3組の方々へのインタビュー企画です。他にも、YouTubeで人気の柴崎春通さん、Camper-hiroさんの年齢の捉え方や自分らしく生きるためのヒントになる記事も公開しています。
-
2023/01/05障がいがあるから夢は諦めなきゃ、なんてない。齊藤菜桜
“ダウン症モデル”としてテレビ番組やファッションショー、雑誌などで活躍。愛らしい笑顔と人懐っこい性格が魅力の齊藤菜桜さん(2022年11月取材時は18歳)。Instagramのフォロワー数5万人超えと、多くの人の共感を呼ぶ一方で「ダウン症のモデルは見たくない」といった心無い声も。障がいがあっても好きなことを全力で楽しみながら夢をかなえようとするその姿は、夢を持つ全ての人の背中を温かく押している。
-
2024/08/06インクルーシブ防災とは?【後編】障がい者・高齢者など災害弱者を取り残さない取り組みと社会づくり
「インクルーシブ防災」は「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」という言葉から来ており、これは「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないように援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表します。インクルージョン防災の定義や事例を紹介します。
-
2023/04/11無理してチャレンジしなきゃ、なんてない。【後編】-好きなことが原動力。EXILEメンバー 松本利夫の多彩な表現活動 -松本利夫
松本利夫さんはベーチェット病を公表し、EXILEパフォーマーとして活動しながら2015年に卒業したが、現在もEXILEのメンバーとして舞台や映画などで表現活動をしている。後編では、困難に立ち向かいながらもステージに立ち続けた思いや、卒業後の新しいチャレンジ、精力的に活動し続ける原動力について取材した。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」
-
個人から世の中まで私たちを縛る既成概念について専門家監修の解説記事、調査結果、コラムやエッセイを掲載。