住まい探しは妥協しなきゃ、なんてない。
LIFULL HOME'S事業本部長として、「暮らし」に対する社会課題に日々取り組む伊東祐司。大学生の頃は、人生の目的もよくわからず、やりたいこともなく、アルバイトやバイクに時間を費やす日々だったそう。就職活動の際に、やりたいことはないけれど怠惰な生活から抜け出して生まれ変わるにはチャンスかもしれないと思い直し、2006年、規模もまだ小さなベンチャー企業の株式会社ネクスト(現・LIFULL)に入社。決意を胸にがむしゃらに仕事に注力するようになったという。そして、不動産業界が抱える社会問題に対して、積極的に解決に向けて取り組んでいき、現在はLIFULL HOME'Sの責任者として、人々が「したい暮らし」を実現させるために様々な挑戦をしている。
不動産業界が抱える最大の社会課題は、あらゆることが「見えにくい」ことではないだろうか。不動産会社へ行き、大量の紙媒体で物件を探していた時代から、まずインターネットで物件を調べる方法へ探し方はシフトしているが、インターネット上でも不動産にまつわるすべての情報が公開されているわけではない。家の住み替えはライフステージの変化によって発生することが一般的には多いと思うが、住み替えについて勉強して臨む人は多くはないだろう。だから選んだ物件が自分にとって良いのかそうではないのか比較することができずに限られた情報の中で決めてしまっているのではないだろうか。近年では空き家問題も大きな社会問題として浮き彫りになっている。総務省の発表によると、平成30年の空き家の数は過去最高の846万戸(今年4月に発表)。家はたくさんあるのに、すべての物件から探すことができているわけではない。不動産に関するあらゆる情報が見えることを目指し、不動産業界の「見えにくい」を解決していく。
不動産の最大の課題は見えにくいこと。
一人ひとりがしたい暮らしを実現するための挑戦
「不動産情報の見える化」の実現に取り組んできた伊東。
「物件情報」「価格」「性能評価」「不動産会社」の4つの観点から取り組みを聞いた。

物件の価格や性能を可視化させて不安解消へ
「まず、『物件情報』についてです。私たちは全国の物件網羅を目指しています。空き家となっている846万戸だけではなく、今日本に存在する6,000万戸すべてデータベース化したい。そしてお客さまは全国の全物件から『したい暮らし』を実現する。まだ道半ばですが、全物件の網羅に向けて日々活動をしています。
次に『価格』について。物件種別に関わらず、物件は決して安いものではありません。私たちには『価格』に対して20年間の物件情報データがありますので、これらのビッグデータを使って現在の物件価格を算出しています。エリアの家賃相場だけではなく、『今この部屋を売ったら◯万円です』『この部屋を貸したら◯万円です』などの参考価格も独自開発の不動産参考価格算出システムを使って導き出しています。
また、中古住宅の売買検討時には、物件の情報と価格がわかってもまだ不安は解消されません。いざ中古物件を検討しようと思ったときに、『この物件は安全だろうか』『欠陥はないだろうか』『築年数による劣化はどの程度なのだろうか』など新たな不安は生まれてくるものです。この不安を取り除くためには、中古住宅の建物検査(インスペクション)による『性能評価』が必要です。私たちはインスペクションしている物件掲載をどんどん増やし、お客さまが購入前に『価格』や『性能』を知ることで、安心して中古住宅を購入できるようにしていきます。それが中古住宅の流通活性化にも繋がります。
最後は『不動産会社』です。お客さまが住み替えをするときには不動産会社を介します。その不動産会社に対してどのようなイメージを持っていますか?住み替えの機会は日常ではないので不動産会社との接点も決して多くはなく、イメージのしづらさはあると思います。私たちはLIFULL HOME'Sに物件を掲載している不動産会社に対して『接客グランプリ』を実施しています。これは専門調査員が不動産会社に対してメール対応から接客対応まで抜き打ちで覆面調査を実施し、お客様目線での評価をもとに『接客力ランキング』として発表しています。」
これらの取り組みをしている中で伊東は、2016年に「新UX開発部」を立ち上げ、「LIFULL HOME'S住まいの窓口」(以下、住まいの窓口)という実店舗をオープンさせた。
「住まいの窓口は専属アドバイザーがお客さまと実際に対面して、お客さまの家探し・家作りの相談や悩みを解決、その上で不動産会社とマッチングをするサービスです。インターネット上だけではこれまでサポートが行き届かなかった部分を補います。事業展開から3年、実際にやってみてわかったことは、お客さまは想像以上に住まい探しの『手前』でつまづいているということです。『なにから手を付けたらいいか分からない』とご相談にくるお客さまは多く、アドバイザーはライフプランのヒアリングから始まり、お客さまにとって何を大切にしたいか、お客さまの条件を整理し、優先順位をつけて提案をしています。ただ希望を伺って、会社を紹介する表面的なマッチングではなく、お客さまと向き合い寄り添い、そして並走する。その結果、住まいの窓口をご利用したお客さまから非常に高い信頼と満足度を得ていることは、創業の想い『目の前の人を笑顔に、幸せにしたい。』そのものを体現しています。」

不動産業界の枠を超え、一人ひとりがしたい暮らしの実現を
今後の伊東は常にお客さま目線に立ち続け、まずは不動産業界における課題の解消を、更に一人ひとりが人生を豊かにできる世界を作りたいと話す。
「私には子どもが二人います。日本は他国と比べて住みやすい国だとは思いますが、子どもの代に私は何が残せるだろうか?両親から命のバトンを受け継いだものとして、社会課題の解決、もしくは解決の糸口をみつけて次の時代へバトンを繋いで行きたい。家のためにローンを払うだけの人生ではなく、一人ひとりがしたい暮らしに合わせて住み替えていく。住み替えが負担にならない。更に住まいを中心としたライフスタイルを充実させていく。そうやって誰もがしたい暮らしを実現し、人生を豊かにできる世界観を不動産にこだわらず作っていきたいです。これをビジネスとして何ができるかを常に考えて続けています。時代によって社会課題は変わっても、自分にできることを追い続けていけば必ず実現できると信じています。」
LIFULL HOME'S事業本部長として、「暮らし」に対する社会課題に日々取り組む、伊東祐司。実は、大学生の頃は、学生生活やアルバイトを楽しむような“普通の大学生”だったそう。2006年、株式会社ネクスト(現・LIFULL)に入社してからはそれまでの反動から仕事に注力するようになったという。不動産業界が抱える社会課題に対して、積極的に解決に向けて取り組んでいき、現在はLIFULL HOME'Sの責任者として、人々が「したい暮らし」を実現させるためにさまざまなチャレンジをしている。
1982年、埼玉県出身。
2006年、株式会社ネクスト(現・LIFULL)に入社。08年、新卒3年目で西日本営業責任者に就任し、6年目には賃貸や中古流通のマーケット責任者として、大きなビジネスモデルの変更に挑戦する。8年目の32歳で、最年少で執行役員に就任し、当時の全社売上の約半分120億円規模の事業部門を担当。社外では、国土交通省や経済団体を巻き込んだ大きなプロジェクトを推進する。16年に「新UX開発部」という部署を立ち上げ、電話やチャット、実店舗である「LIFULL HOME'S住まいの窓口」など、インターネット以外でユーザーの住まい探しをサポートするオムニチャンネル戦略を担う。19年10月よりLIFULL HOME’S 事業本部長に就任。
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