誰もが自分らしい新生活のスタートを。「LIFULL 新生活アンコン語実態調査 2023」発表イベントをレポート
「アンコンシャスバイアス」という言葉をご存知ですか? この言葉は、「無意識の思い込みによって起こる物事の見方やとらえ方の歪み・偏り」を意味しています。知らず知らずのうちに私たちを縛る既成概念の裏側には、さまざまな「アンコンシャスバイアス」が潜んでいます。
株式会社LIFULLは、多様な人やその生き方をサポートしたいという想いのもと「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを掲げています。今回、LIFULLは「しなきゃ」という既成概念の背景にある「アンコンシャスバイアス」に着目。無意識の思い込みによって発せられた言葉を「アンコン語」と名づけ、新生活における「アンコン語」の実態調査を実施。その調査結果の発表イベントを2月16日(木)に開催しました。
イベントでは、今回の調査を監修した「一般財団法人アンコンシャスバイアス研究所」代表理事の守屋智敬さんとお笑いコンビ・ラランドが登場。調査結果を振り返りながら、ゲストの実体験も交えたトークセッションを行いました。
LGBTQ+、障がい者、外国籍、シングルマザー/ファザー……。多様な1000人に調査した「アンコン語」の実情
調査にいたったLIFULLの想いと専門家が語る意義
事業を通じて社会課題の解決に取り組むLIFULLの理念のもとに実施された今回の調査。結果発表の場となる今回のイベントでは、まずLIFULL執行役員チーフクリエイティブオフィサーの川嵜鋼平が登壇しました。
川嵜は来場者への挨拶のあと、LIFULLが掲げる「しなきゃ、なんてない。」を示すCMや絵本を紹介。そこに込められた「誰もが自分らしく生きていいんだ」という想いについて語りました。
それに続き、川嵜は今回の「LIFULL 新生活アンコン語実態調査 2023」の趣旨を説明。調査にいたった背景について熱弁をふるいました。
川嵜:「この春、新生活を迎えるみなさんに、既成概念にとらわれず自分らしいスタートを切ってほしい。それを目指す上で、既成概念から生まれる無意識の思い込み『アンコンシャスバイアス』を調査する必要性を感じました。私たちは『アンコンシャスバイアス』によって発せられる言葉を『アンコン語』と名づけてその実態調査を行いました。この調査を通じて一人でも多くの方が既成概念に気づき、その視点が変わるきっかけになってくれることを願っています」
続いて、「LIFULL 新生活アンコン語実態調査 2023」の監修を行った「一般財団法人アンコンシャスバイアス研究所」代表理事の守屋智敬さんが登壇。「アンコンシャスバイアス」について、実例を交えてより詳しく解説しました。
守屋:「例えば、『単身赴任といえば男性がするもの』という思い込みに気づかなかったら、日常の中でどんな影響があるか考えてみてください。実際に女性で単身赴任をしている人と遭遇した時に、『女性なのに?』と聞いてしまうなどの言動が、相手を傷つける可能性があります。『これまで出会ってきた人がこうだったから、新たに出会う人もきっと同じだ』と思うのではなく、一人ひとりの違いに目を向けていただければと思います」
さらに、守屋さんは今回の調査の意義について以下のように語りました。
守屋:「『アンコンシャスバイアス』は、新たな経験により上書きすることができます。今回の調査結果を見聞きすることが、『アンコンシャスバイアス』に気づくチャンスになる。『多様な人がいて、一人ひとりその時々で言葉の受け止め方が変わるんだ』という認識を持てるような経験をすることで、見える世界が変わり、それが未来を変えていくかもしれない。今回の調査が、そのきっかけになるのではないでしょうか」
「住んでいる場所で人は決まらない」。ランキングで浮き彫りになった「アンコン語」による苦しみ
イベントはいよいよ調査結果の発表に進行。その結果を見守るゲストとして呼び込まれたのは、お笑いコンビ・ラランドのサーヤさんとニシダさん。LIFULLカラーのオレンジを取り入れた衣装で壇上に登りました。
調査は20〜80代の男女をはじめ、LGBTQ+、外国籍、障がい者、シングルマザー/ファザーといった属性を持つ合計1000人の方々に対して実施。調査対象の方が実際に言われた「アンコン語」の中で違和感を覚えたものを集計し、カテゴリーや対象者ごとのランキングにまとめました。
「住まい」カテゴリーのランキングでは、「社会人になっても実家暮らしなんて甘やかされてるよね」という一言が1位にランクイン。この言葉は「20〜30代女性」や「40〜50代男性」でもトップとなるなど、「自立した大人=一人暮らし」という既成概念に多くの人が苦しめられていることが浮き彫りになりました。
この結果に、サーヤさんは「実家暮らしに対する偏見の声が多いんですね。実家、全然いいのに。住まいで言うと、私は『東京都心の人は冷たい』という言葉に違和感を感じます。私は八王子出身で、東京の中では都会とは言えない場所で育ちましたが、地元でも冷たい人は冷たい。逆に東京の都心にいる人はかなりの割合で地方出身者ですから。住んでいる場所で人は決まるわけじゃない」と語ります。
また、「20〜30代男性」「20〜30代女性」の2位には同じ言葉がランクイン。それは、「同棲ってことは結婚するんでしょ」という一言でした。「すべてのカップルが同棲→結婚というステップを踏むべき」という押しつけに若い世代が違和感を抱いていることがわかります。
このことにニシダさんは、「ぼくの周囲にも恋人と同棲していたけど別れて、一人で住むには広すぎる部屋に暮らしている人がいます。そういう実情を見ると、みんな結婚するわけじゃないし、したいわけじゃない、と感じます」と話します。サーヤさんから「ニシダは彼女の家に転がり込んで家賃を払っていない」とツッコまれると、「ぼくは野良猫と同じシステムですから。家賃を払っていないぼくをイベントに呼んでくれるLIFULLさんの懐の深さに感謝です!」と返し、会場の笑いを誘っていました。
「男性にもいろんな境遇の人がいる」「職業で一括りにするのは乱暴」ラランドが体験した「アンコン語」とは
続いて、イベントはラランドのふたりが「自分にとっての新生活アンコン語」を発表する流れに。それぞれがこれまでの経験の中で感じた「アンコン語」をフリップに書いて発表しました。
ニシダさんがチョイスしたのは「男性にはオートロック不要」というワード。その理由をこのように語りました。
ニシダ:「ぼくは最近引っ越しを考えていまして。いまの家はファンの人にエリアが知られていて、最寄駅やよく行くコンビニで待ち伏せされることがあるんです。だからオートロックがある部屋がいいなと思って物件を探すと、そういう物件の紹介文には必ず『女性にも安心!』と書いてあるんです。セキュリティーが強い物件は女性のためのもの、というのは一種の思い込みなんじゃないかと思いますね。いろんな境遇の男性がいますから、『男女ともに安心』と書いてほしい」
そして、サーヤさんが書いたのは「芸人って家を借りづらい」という言葉。
この言葉を選んだ理由を問われたサーヤさんは次のように語り、「芸人」という職業への既成概念について吐露しました。
サーヤ:「新しく家を借りる時、収入の実績をきちんと提示しても『いつか稼げなくなるんじゃないか』と言われて断られることがあります。芸人という職業には『収入が不安定で派手な遊びやギャンブルをする』というイメージがいまだにあります。職業で一括りにして、『この人たちはこう』と決めつけるのは乱暴じゃないかと思います」
ラランドが語る「既成概念にとらわれず、自分らしく生きるコツ」
イベントの最後には、ラランドへのインタビューセッションも実施されました。司会者から「既成概念にとらわれず自分らしく生きるコツ」を問われると、ふたりは軽妙な掛け合いの中で独自の人生観を教えてくれました。
サーヤ:「自分らしく生きるコツ……。なんでしょうね。私はラランドの会社『レモンジャム』の社長で、ニシダよりもしっかり者というイメージで見られることが多いです。でも、人に見られていない時にはすごくだらけている一面もある。ニシダが『クズ芸人』のようなキャラクターだからといって、私がダメじゃないかというと全然そんなことはないんです。いまの時代はSNSもあって、誰もが人の目を気にして生きている。でも、それにとらわれないことが、自分らしくあり続ける上で大切なのかもしれません。ただ、人の目をまったく気にせずに生きた結果がニシダなので、それもどうかなと思いますけどね(笑)」
ニシダ:「気にせず生きた結果、こうなりました(笑)。なので、人の目を気にしなさすぎるのもだめですよ。0か100かではなく、程よいバランスを見つけて生きてみてください。みんなそれぞれ個性がありますから、それぞれにとって最適な社会との接し方があるはずです」
GUEST
ラランド
ボケ担当のサーヤとツッコミ担当のニシダからなる漫才コンビ。2014年に上智大学のお笑いサークルで結成。「M-1グランプリ」においてアマチュアながら2年連続で準決勝に進出し話題に。その後、芸能事務所から多数のオファーがあったもののフリーで活動を続け、2021年2月に個人事務所・株式会社レモンジャムを設立。サーヤが社長、ニシダが正社員となった。また、2022年にはサーヤが川谷絵音らとバンド「礼賛」(らいさん)を結成しメジャーデビュー。ニシダは講談社の「小説現代」やKADOKAWA「野性時代」で小説を執筆するなど、幅広く活動を行っている。
守屋智敬
2018年、 1人ひとりがイキイキする社会をめざし、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所を設立、代表理事に就任。企業・官公庁、小・中学校等で、様々なテーマ・視点からアンコンシャスバイアスを届けている。受講者は8万人をこえる。2022年には、がんと共に働くを応援するための共同研究「がんと仕事に関する意識調査」報告書を発表。著書に『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』 (かんき出版)、『導く力』(KADOKAWA)などがある。
取材・執筆:生駒 奨
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