ミニマリストとは? 物を消費しない時代の心の豊かさ、今ある物を大切にする暮らし方を解説
「ミニマリスト」と聞くと、物を持たない生活をする人ととらえていませんか? 勘違いされがちですが、ミニマリストは「物に愛着がない人」「断捨離が好きな人」というわけではありません。
最近では、SDGsやサステナビリティーなどの文脈で「大量生産・大量消費」の生活スタイルが見直され、「ミニマリスト」という暮らし方を選択する人が増えています。
ミニマリストとは?

ミニマリストとは、衣食住について必要最小限の物で生活するライフスタイルを実践している人のことです。
英語の「最小限の」を意味する「minimal(ミニマル)」から派生した言葉で、2010年頃から海外を中心に発信されるようになりました。その言葉からは過剰なまでに物を持たない生活をイメージしますが、物を持たない生活をすること自体が目的ではありません。
ミニマリストが目指すのは、自分が暮らす上で心地よいと思う必要な物を厳選し、選び抜いた物とともに豊かに暮らすことだと言えるでしょう。そのため、ミニマリストの中でも、物をどれくらい持つかは人それぞれです。
※出典:ミニマリストとは?ミニマリストの意味を調べる|不動産用語集
断捨離する人とミニマリストの違い
ミニマリストに類似した言葉に「断捨離」があります。断捨離は、ヨガの「断行」「捨行」「離行」の3つの行いを組み合わせた言葉です。「断行」とは、「入ってくる不要な物を断つ」、「捨行」は「家にずっとある不要な物を捨てる」、「離行」は「物への執着心をなくす」ことを意味します。
最近は、「断捨離=不要な物を片付ける」というイメージでとらえられることが多くなっていますが、大切なのは自分にとって何が必要なのか、価値観やライフスタイルを見直すことだと言えるでしょう。
断捨離を繰り返すことで、「自分にとって必要なもの」がどんどん厳選されていくことが期待できます。その一方で、ミニマリストの起源は「物を持たない人」ではなく、「ミニマルアートを作る芸術家」であり、「アート」が起源になっています。
ミニマルアートとは作品の完成度を追求するために、装飾を凝らすのではなく、あえて必要最小限の要素だけ残す表現スタイルです。物作りでもApple社のiPhoneは背面のリンゴマークを主張するため、余計な装飾を限りなくそぎ落としており、ミニマルデザインが美しいと評判です。
このように、ミニマリズムの本質は「ある一点を際立たせるために、他をそぎ落とす“強調”」なのです。
物を減らしていくことで自分が大事にしたい物が浮き彫りになり、より大事にできます。結果的に、「ミニマリスト」という「暮らし方」もしくは「ライフスタイル」にたどり着くことができるのです。
ミニマリストのメリット・デメリット

ミニマリストの暮らし方には、以下の3つのメリットがあるといわれています。
- 時間が増える
物を所有すると手入れをしたり、探したりするのに時間がかかります。例えば、洋服を減らすことで毎回出かけるたびにコーディネートの時間がかからなくなるでしょう。また、不要な電子機器を持たないようにすれば、テレビを見たり、ネットサーフィンをしたりする時間も節約できます。
- お金がたまる
支出が減るため、お金が出ていきません。また、「自分にとって何が必要で 何が不要か」という部分がはっきりするため、無駄遣いも減るでしょう。多くの物を所有して部屋に置くこともなくなり、広い家に住む必要もなくなります。結果的に、安い家賃で家を借りることができ、お金がたまることが期待できます。
- ストレスが減る
ミニマリストになることでシンプルな思考を身に付けることができれば、ストレスを減らすことにつながります。人間関係もシンプルになり、自分が付き合いたい人とだけ付き合うようになるため、必要以上に気を使わなくてもよくなりストレスが減少するでしょう。
しかし、ミニマリストの暮らしには以下のようなデメリットもあります。
- 生活に対する気力が失われる危険がある
「物を手に入れたい」という気持ちが、仕事を頑張るモチベーションとなる人もいるでしょう。このような考え方をする人の場合は、物を持たないことにすると、仕事や生活への熱意や気力を失ってしまう可能性も考えられます。
- 強迫観念に駆られる可能性がある
ミニマリストの本来の目的は「物を減らすこと」そのものではなく、「豊かな生活を手に入れること」です。しかし、人によってはミニマリストを目指して、所有する物を捨てることに快感を覚えるケースもあります。本来は物を手放すことで自由になるはずが、「物を手放すこと」に支配されてしまうのです。必要な物まで手放すことになってしまえば本末転倒になるでしょう。
- 必要な物に事欠くリスクがある
ミニマリストとして日用品のストックまでも減らしてしまうと、新型コロナウイルス感染症などの非常事態に必要な物が手に入れられない可能性もあります。実際に、コロナ禍ではスーパーなどの店頭で食料品や日用品が売り切れてなくなり、トイレットペーパーやティッシュ不足などに悩まされることがありました。
どんな暮らし方をするかは人それぞれ。メリットとデメリットを理解した上で、自分らしい暮らしを楽しんでみましょう。ミニマリストになることで、新しい気付きや生き方に出会えるかもしれません。
ミニマリストが目指す「心の豊かさ」とは?

近年、ミニマリストという生き方が注目され、支持されるようになったのにはどんな背景があるのでしょうか?
2019年の内閣府「国民生活に関する世論調査」によると、「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」と答えた人の割合は62.0%に達し、「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」と答えた29.6%を大きく上回りました。
その後もミニマリストという生き方が支持されるようになった大きな要因の一つは、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大だと考えられます。外出を制限され、“ステイホーム”を余儀なくされることで、多くの人が「自分にとって心地よい暮らしとは何か」を考えるようになりました。
岡山理科大学の研究論文では、SNS上のコミュニティーにいるミニマリストが最初にとる行動は、自分の生活を整理することでした。この行動を通じ、大事なことを見極めるようになり、価値観が変化することもあります。
それから「効率的な行動」を通じ、自分にとって大事な人や物に資源を集中して生きていく生活様式が定着します。この一連のプロセスの中で、ミニマリスト志向者は充実感などの価値を獲得するのです。また、ミニマリスト志向者のゴールはあくまでも日常生活の幸福感であるため、物をどの程度減らすかは人それぞれという結果でした。
※出典:国民生活に関する世論調査 図21-1 – 内閣府
※出典:ミニマリスト消費者の価値創造プロセスに関する研究
ミニマリストというライフスタイルは、果たして当事者にとって「幸せ」なのでしょうか? 経済社会学者の橋本 努さんにミニマリズムのブームがいつから起きたのか、世界と日本におけるミニマリズムへの関心の違い、多様な時代だからこそ変化する幸福論について伺いました。
ミニマリストの暮らし方から住まいを探す
ミニマリストは、利便性を重視する傾向があります。特に暮らしや住まいにおいて顕著に表れます。例えば、暮らしにおいてできるだけ物を増やさない工夫をすることです。衝動買いをせず、買うかどうかを数日かけて検討したり、長く使える物を買ったりします。また、不要な購入を避けるためレンタルサービスを利用することもあるでしょう。
物件探しにおいても、「専有面積20㎡以下」などの狭小部屋が人気のようです。一人暮らしであれば、家賃を抑えられるメリットがあります。家賃を抑えることで、「ロフト付き」「駅徒歩10分以内」などの物件も探しやすくなるでしょう。
不動産探しでは、ミニマリスト向けの暮らしに合った条件で探せる不動産情報サイトもあるため、活用してみましょう。
暮らしや物の選び方を見つめ直してみる
ここでは、ミニマリストとして自分らしい暮らしや生き方を実現している人や、今あるものを大切にする暮らしを選択する人たちの事例を紹介します。
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』や『ぼくたちは習慣で、できている。』などの著作で知られる佐々木典士さんは、長らく写真集等の編集職に従事していました。当時は片付けや掃除ができず、物を集めるのが大好きで、それに対する執着心を手放せない生活を送っていたそうです。
転機が訪れたのは、15個しか荷物を持っていなかったアンドリュー・ハイドという人物の存在。自分とあまりに対照的で「僕もこうなりたい」と憧れを抱いたのがミニマリストを志したきっかけでした。
佐々木さん曰く、ミニマリストとは「自分の必要な物が分かっている人、大事な物のために減らしている人」とのこと。「他人の評価軸でも客観的な個数でもなく、何が自分にとって必要なのかを自ら決めているということが一番重要なのです」と揺るぎない価値観を語ります。
ナカムラクニオさんは、東京・荻窪の一角で「6次元」というアトリエを運営しながら日本のみならず、全世界で金継ぎワークショップを行っています。金継ぎの魅力は「価値がなくなった物を組み合わせて唯一無二の物を作り出す」こと。ナカムラさんは、「大切にしていた物をずっと使い続けるために、自分の手で直したい」と言います。
鎌田安里紗さんは、エシカルファッションプランナーとしてフェアトレード製品の企画・制作をはじめ、ファッションや暮らしに関する情報発信や啓蒙(けいもう)活動に取り組んでいます。エシカルファッションとは、自然環境や労働者の人権などに配慮した倫理的なファッションのことです。ファストファッションが増え、手頃な価格でおしゃれな服を手に入れることができるようになった一方、自分たちが着る服がどこから来て、どのように作られているのか私たちは知りません。
「サステナビリティーって、どうしても『考える』ところから入って、正しさを求めがちになってしまいますが、自分の五感を使って感じることが大切だなと思います」という鎌田さんの視点は、私たちが日常生活で毎日使う物を選ぶためのヒントになるかもしれません。
まとめ

「ミニマリストだ」と宣言して物を減らしたり、断捨離したりするかどうかは別にして、誰もができることがあります。それは自分にとって心地よい生活スタイル、必要な物は何か、これまでの価値観を見直してみることです。そうすることで、ストレスを軽くし、より大切なことに時間やお金を使えるようになることでしょう。
1995年生まれ、福岡県出身。2017年に開始した「ミニマリストしぶのブログ」は開設1年で月間100万PVを超える人気ブログに。海外2カ国でも翻訳された著書『手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』はAmazonベストセラー1位を記録。2018年に「Minimal Arts 株式会社」代表取締役に就任。ミニマルな機能美を追求するアパレルブランド「less is_jp」を監修。
ブログ: https://sibu2.com
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