世界が求める柔軟性のある働き方・自分らしい働き方を実現するには?
「柔軟性のある働き方」や「自分らしい働き方」が世界各国で求められ、国や企業においてさまざまな取り組みが始まっています。このような取り組みは社員がメリットを得られるだけでなく、企業にとっても優秀な人材確保・育成に欠かせないものです。
この記事では以下の4点を見ていきます。
- 柔軟性のある働き方とは?
- 企業が取り組む「自分らしい働き方」ができる職場環境
- 枠にとらわれた働き方を脱するというチャレンジ
- 工夫することで自分らしい働き方は実現できる
「働き方」は多くの人に関係する問題です。時代の流れにより、柔軟性のある働き方を目指す新しい価値観が生まれようとしています。
柔軟性のある働き方とは?
総合人材サービスのマンパワーグループ株式会社が発表した「自分らしい働き方」という労働白書では、柔軟性が高い働き方として次の雇用形態を挙げています。
- 柔軟な出退勤時間
- 完全在宅勤務/勤務地自由
- 勤務シフトの選択性
- 一部在宅勤務
- コンプレストシフト/コンプレストワークウィーク(1日あたりの就業時間を長くし就業日数を少なくする勤務形態。例えば10時間×4日間)
- リフレッシュ休暇・サバティカル休暇または休職制度(例 長期休暇)
- 無制限の有給休暇
- 育児・介護休暇
柔軟な働き方を希望する声は大きく、世界の労働者の38%がキャリア決定の三大要素の一つに挙げています。また組織においても「優秀な人材の確保・育成に欠かせない取り組み」として重要度が上がっています。
各国が求める柔軟性の種類と取り組みの問題点
労働者全体が最も重視する項目は「柔軟な出退勤時間」で全体の26%、次いで「完全在宅勤務」で22%、「シフトの選択性」が15%となっています。とはいえ、労働者が求める柔軟性の種類は文化や環境によってさまざまです。
中国では長時間労働によるストレスから休息や長期休暇を求める声が多く、アメリカでは有給休暇の消化率が低いことから無制限の有給休暇を希望する人が増えています。日本ではシフトの選択性を希望する声が最も多いです。
また、柔軟な働き方を希望する声は2015年の意識調査より性別を問わず高くなってきています。柔軟性のある働き方は、従来の「働くママが仕事と家庭を両立するための手段」という側面から、近年は「男女問わずライフワークバランスを実現するための方法」へと変化しています。特に、やりたいことがどこでもできる環境で育ったミレニアル世代は物理的なオフィスにこだわりがないことからも、柔軟性のある働き方を求める動きは一層加速していくでしょう。
しかしながら「オフィスで長時間働くこと」が熱心と見なされる企業では、このような新しい取り組みが阻害されてしまうこともあります。なぜなら「柔軟性のある働き方=怠慢」という風潮が残っている場合も多いためです。柔軟性のある働き方はまだ模索段階。そのため「導入したけれどうまくいかずに中止することになってしまった」という企業も数多く、取り組みの難しさが問題となっています。
企業が取り組む「自分らしい働き方」ができる職場環境
大きく変化していく社会と働き方の多様化に対応し、自分らしい働き方ができるよう、環境整備に力を入れる企業が増えています。一人一人が「働きがい」や「生きがい」を感じる会社を目指して、企業が行っている取り組みを紹介します。
独自の社風で有名なサイボウズ株式会社は、柔軟性のある働き方をいち早く取り入れ、注目を集めています。
- 社員の声を集めた創造性豊かなオフィス
- 週3日勤務や時短勤務が可能な自由なワークスタイル
- 育児休暇最大6年
- 退社しても再入社できる「育自分休暇」の導入
同社社長の青野慶久氏は、一人の社員の退職をきっかけに、モチベーションには多様性があることに気付きました。そこで「公平性」よりも社員一人一人の「個性」を尊重する人事制度へと改正。柔軟性のある働き方を社内文化へと根付かせるため、次の3つの要件を実行しました。
- 社員の状況が一目で確認できる「ツールの共有」
- 育児休暇や在宅勤務など働き方の「制度の変革」
- 社内で柔軟性のある働き方を認める「風土の育成」
サイボウズではこの3つの中で特に「風土の育成」を最重要とし、個々の柔軟性のある働き方において不満の声が上がらないような社風づくりに努めています。社員とのコミュニケーションを深め、一人一人にとってベストな働き方を模索しています。
枠にとらわれた働き方を脱するというチャレンジ
働く環境を変えたり、まわりを巻き込んだ挑戦をしてみたりすることは、自分らしい居場所を探すきっかけになります。
日本橋で新たなまちづくりを展開する川路武さん
川路武さんは、NPO法人日本橋フレンドの会長として「働いて帰るだけであった場所から第2の地元へというビジョンを掲げ活動を行っています。
働く時間は人生の1/3を占めるといわれているのに、働く街のことを全く知らないことに疑問を感じた川路さん。「仕事をするだけの場所という分断された構造を変えたい」と、新しいまちづくりの形を追求するようになりました。
日本橋は半径1km以内に46万人も働き、さまざまな肩書を持つ人が集まるエリアです。日本橋フレンドはそこでさまざまなプロジェクトを展開。どんな人でも受け入れ、すぐに溶け込めるような雰囲気を大切にし、日本橋を愛する人たちの輪をつなぎ続けます。
制約に縛られない生き方を実現させる井上
株式会社LIFULL代表取締役社長井上は、一般社団法人Living Anywhereの理事を務め、場所・時間・仕事などの制約に縛られた人々を解放し、自分らしく生きられる自由な社会を作る活動をしています。地方型のシェアサテライトオフィスと宿泊施設を併せ持つ「共同運営型コミュニティ」を展開し、「いつでも好きな時に好きな場所で生活できる」というライフスタイルを提供しています。
「LivingAnywhere Commons」というプロジェクトは、地域のコミュニティスペースの側面も併せ持つため、フリーランス・他業種の会社員・地域の方など、普段関わらないような人とのコミュニケーションを図ることも可能です。
工夫することで自分らしい働き方は実現できる
会社が定める制度の中で工夫を凝らしたり、新しい技術や制度を駆使することで自分らしい働き方を実現したりしている人がいます。柔軟性のある働き方を目指す上でヒントとなる、3人の生き方をご紹介します。
平日はサラリーマン、週末は世界中を旅するリーマントラベラー東松寛文さん
東松寛文さんは、広告代理店に勤めるサラリーマンでありながら、世界中を飛び回るトラベラーでもあります。そんな東松さんも入社当時は海外旅行経験がなく、仕事中心の生活を送っていました。リーマントラベラーとなったきっかけは、社会人3年目にNBAの試合を見にいくために初めて海外旅行をしたことでした。海外は平日でも人生を楽しんでいる大人がたくさんおり、東松さんは新しい人生の価値観を発見。それ以降、週末や短い休暇を生かし、年に7~8回海外旅行をするようになったそうです。
休暇の取りやすさや働く環境は以前と変わりませんが、東松さん自身の働き方は大きく変わりました。仕事が終わるの金曜日に空港へ行くことを目指すことで、仕事の効率も上がり、海外で受ける刺激によりアイデアがどんどん生まれるようになりました。東松さんは「さまざまな生き方があることを日本人に伝えたい」と話し、リーマントラベラーとして発信を続けています。
仮想空間で仕事をしながら、新しい価値観の先頭に立つ尾原和啓さん
尾原和啓さんはシンガポールやインドネシアのバリ島を拠点にリモートワークをしながら、世界を舞台に仮想空間で多くの人と関わって仕事をしています。尾原さんは阪神・淡路大震災のときにボランティアプラットホームの立ち上げに携わり、一目で今行くべき避難場所や必要な物資がわかる仕組みを作成し、多くの人の負担を減らしました。この経験からプラットホームを最大限に生かす方法を世界に提供することを仕事にすると決め、まずは自らが住む場所を越えた働き方を実現するためにプラットホームの住人として活動を始めたそうです。
「技術でなく価値観をアップデートすべき」と話す尾原さんは「やってみたいことをやることで自分の選択肢が増える。飛び込まないと、そもそも自分の可能性は増えません」と語ります。自ら新しい価値観の先頭に立ち背中を見せ続けることで、多くの人に勇気と新たな生き方を伝えています。
サラリーマンを辞め、理想を求め家族とともに移住した大塚祐介さん
サラリーマンを辞めた大塚さんは、自然豊かな静岡県に移住し、移動販売の「朝霧高原 あおぞらピッツァ」のオーナーとして理想のライフスタイルを手に入れました。退職に至るまでには「理想の生活」と「仕事の責任・安定」のどちらを取るべきかという大きな葛藤があり、苦しい時を過ごしたといいます。そんな中、子どもの誕生をきっかけに「自分のやりたいことをしながら家族仲良く暮らすこと」を選択し移住を決めました。
大塚さんはピッツァの販売を通して、自然の中で生きていくライフスタイルや自分の好きなことを天職として生きていくという理念を伝えようと活動中です。変化を恐れずに新しいことへ挑戦していく姿を発信しながら、さらなる夢へと走り続けます。
まとめ
世界中で柔軟性のある働き方を求める声は高まり、国や企業でもより良い環境づくりのため試行錯誤を続けています。しかしながら、従来の働き方に対する価値観や企業の風潮による影響もあり、新しい働き方の実現には時間を要しています。
そのような中、多様な働き方ができる環境をつくっている人や、個人で働き方を見直してより自分らしい人生が送れるように行動している人もいます。時代の流れにより、柔軟性のある働き方を目指す多様な価値観は今後ますます増えていくのかもしれません。
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