マイクロアグレッションとは?【前編】日常の発言や会話に潜む無意識の差別・偏見にどう対処するのか

「マイクロアグレッション(Microaggression)」という言葉をご存じでしょうか?

マイクロ=小さい、アグレッション=攻撃性を意味することから、「マイクロアグレッション」とは、無自覚の差別行為によって相手を見下したり、否定したりする態度を指します。

この記事では「マイクロアグレッション」について、以下の5点について解説します。

前編

後編

マイクロアグレッションとは

大東文化大学文学部特任教授(教職課程センター副所長)で、『マイクロアグレッションを吹っ飛ばせ(高文研)』などの著書で知られる渡辺雅之氏によると、「マイクロアグレッション」とは、「社会や心の中に潜んでいる、特定の人やグループを軽視するような敵対・中傷・否定のメッセージを含むものであり、発した本人に誰かを差別したり、傷つけたりする意図のあるなしとは関係なく、それゆえ受け手の心にダメージ(含む、もやもや)を与える言動の総称」のことです。

「小さな攻撃性」という言葉が示すとおり、加害意図をもってなされるあからさまな人種差別とは異なり、日々の生活や会話の中で自然に語られることが多く、発した本人もその問題性や加害性に気付かない点が特徴です。例えば、「悪気のないギャグ」として発信されるため、周囲も同調し笑ってすませることで問題は顕在化せず、社会の中に埋め込まれていきます。

出典:『マイクロアグレッションを吹っ飛ばせ』(渡辺雅之著、2021年高文研)

アンコンシャスバイアスとマイクロアグレッションの違いは?

議論する人々

マイクロアグレッションに似た概念に「アンコンシャスバイアス(unconscious bias)」があります。アンコンシャスバイアスは、「無意識の思い込み」と表現されることが多いですが、具体的には「A型の人はきちょうめん」「看護師は女性」「男性は出産休暇/育児休暇を取るべきではない」など、属性で相手の性格や仕事・役割、行動をイメージすることが含まれます。日常生活のさまざまな場面に潜んでいる点で、マイクロアグレッションとアンコンシャスバイアスは共通しています。

異なるのはマイクロアグレッションが言動であるのに対し、アンコンシャスバイアスは心の中にある思い込みや偏見である点です。つまり、アンコンシャスバイアスが表面に表れ、意図せずに相手を傷つけてしまうことがマイクロアグレッションと言えるでしょう。

内閣府男女共同参画局が2022年11月に行った「性別による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に関する調査研究」によると、男性の中でも年代が若いほど「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」「営業職は男性の仕事だ」「女性社員の昇格や管理職への登用のための教育・訓練は必要ない」と考える人の割合が高いことが明らかになりました。こうしたアンコンシャスバイアスは次第にマイクロアグレッションとして職場ににじみ出てきます。そして、いつの間にか採用や人材育成、昇進などのシーンでネガティブな影響を及ぼすことになりかねません。

※出典:令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

 

監修者 渡辺 雅之

大東文化大学文学部特任教授(教職課程センター副所長)。福島県生まれ。22年間埼玉県内で中学校教員として勤務。いじめ問題に取り組んだ実践が、TBSドラマ「3年B組金八先生」でそのままモデルとして取り上げられる。国会前デモのリーガル(警備) やヘイトスピーチへの抗議(カウンター)、UDAC-埼玉投票率を上げる市民の会(代表)、朝鮮学校補助金再開を求める有志の会(共同代表)、などの社会運動に関わる。近年はHate!No 銀座小店のレギュラー講師など人権問題や教育問題に関する講演活動で全国各地を飛び回っている。専門は生活指導、道徳教育、多文化共生教育。主な著書に、『マイクロアグレッションを吹っ飛ばせ』『どうなってるんだろう?子どもの法律1,2』『ヒューマンライツ-人権をめぐる旅へ』など。

みんなが読んでいる記事

LIFULL STORIES しなきゃ、なんてない。
LIFULL STORIES/ライフルストーリーズは株式会社LIFULLが運営するメディアです。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。

コンセプトを見る

#ダイバーシティの記事

もっと見る

#アンコンシャスバイアスの記事

もっと見る

その他のカテゴリ

LIFULL STORIES しなきゃ、なんてない。
LIFULL STORIES/ライフルストーリーズは株式会社LIFULLが運営するメディアです。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。

コンセプトを見る