ミニマリストとは?【前編】物を消費しない時代の心の豊かさ、今ある物を大切にする暮らし方を解説
連載 ミニマリスト―少ない物で豊かに暮らす―
- 第1回ミニマリストとは?【前編】物を消費しない時代の心の豊かさ、今ある物を大切にする暮らし方を解説
- 第2回ミニマリストとは?【後編】物を消費しない時代の心の豊かさ、今ある物を大切にする暮らし方を解説
- 第3回ミニマリストの部屋の特徴・洋服の選び方・生活スタイルとは?
- 第4回ミニマリストになる第一歩「断捨離」を始めよう!【前編】 習慣化のコツ・50代からの終活にもおすすめ
- 第5回ミニマリストになる第一歩「断捨離」を始めよう! 【後編】習慣化のコツ・50代からの終活にもおすすめ
- 第6回ミニマリストは幸せになれるのか?|人生哲学?節約術?新しい生活様式?経済社会学者・橋本 努が語る、ミニマリストのリアルとは
- 第7回ミニマリストになるためには?【前編】整理整頓や片付けを継続するコツを解説
- 第8回ミニマリストになるためには?【後編】整理整頓や片付けを継続するコツを解説
「ミニマリスト」と聞くと、物を持たない生活をする人ととらえていませんか? 勘違いされがちですが、ミニマリストは「物に愛着がない人」「断捨離が好きな人」というわけではありません。
最近では、SDGsやサステナビリティーなどの文脈で「大量生産・大量消費」の生活スタイルが見直され、「ミニマリスト」という暮らし方を選択する人が増えています。
この記事では「ミニマリスト」について、下記の5点を解説します。
前編
後編
ミニマリストとは?
ミニマリストとは、衣食住について必要最小限の物で生活するライフスタイルを実践している人のことです。
英語の「最小限の」を意味する「minimal(ミニマル)」から派生した言葉で、2010年頃から海外を中心に発信されるようになりました。その言葉からは過剰なまでに物を持たない生活をイメージしますが、物を持たない生活をすること自体が目的ではありません。
ミニマリストが目指すのは、自分が暮らす上で心地よいと思う必要な物を厳選し、選び抜いた物とともに豊かに暮らすことだと言えるでしょう。そのため、ミニマリストの中でも、物をどれくらい持つかは人それぞれです。
※出典:ミニマリストとは?ミニマリストの意味を調べる|不動産用語集
断捨離する人とミニマリストの違い
ミニマリストに類似した言葉に「断捨離」があります。断捨離は、ヨガの「断行」「捨行」「離行」の3つの行いを組み合わせた言葉です。「断行」とは、「入ってくる不要な物を断つ」、「捨行」は「家にずっとある不要な物を捨てる」、「離行」は「物への執着心をなくす」ことを意味します。
最近は、「断捨離=不要な物を片付ける」というイメージでとらえられることが多くなっていますが、大切なのは自分にとって何が必要なのか、価値観やライフスタイルを見直すことだと言えるでしょう。
断捨離を繰り返すことで、「自分にとって必要なもの」がどんどん厳選されていくことが期待できます。その一方で、ミニマリストの起源は「物を持たない人」ではなく、「ミニマルアートを作る芸術家」であり、「アート」が起源になっています。
ミニマルアートとは作品の完成度を追求するために、装飾を凝らすのではなく、あえて必要最小限の要素だけ残す表現スタイルです。物作りでもApple社のiPhoneは背面のリンゴマークを主張するため、余計な装飾を限りなくそぎ落としており、ミニマルデザインが美しいと評判です。
このように、ミニマリズムの本質は「ある一点を際立たせるために、他をそぎ落とす“強調”」なのです。
物を減らしていくことで自分が大事にしたい物が浮き彫りになり、より大事にできます。結果的に、「ミニマリスト」という「暮らし方」もしくは「ライフスタイル」にたどり着くことができるのです。
ミニマリストになる第一歩「断捨離」を始めよう!【前編】 習慣化のコツ・50代からの終活にもおすすめ
ミニマリストのメリット・デメリット
ミニマリストの暮らし方には、以下の3つのメリットがあるといわれています。
- 時間が増える
物を所有すると手入れをしたり、探したりするのに時間がかかります。例えば、洋服を減らすことで毎回出かけるたびにコーディネートの時間がかからなくなるでしょう。また、不要な電子機器を持たないようにすれば、テレビを見たり、ネットサーフィンをしたりする時間も節約できます。
- お金がたまる
支出が減るため、お金が出ていきません。また、「自分にとって何が必要で 何が不要か」という部分がはっきりするため、無駄遣いも減るでしょう。多くの物を所有して部屋に置くこともなくなり、広い家に住む必要もなくなります。結果的に、安い家賃で家を借りることができ、お金がたまることが期待できます。
- ストレスが減る
ミニマリストになることでシンプルな思考を身に付けることができれば、ストレスを減らすことにつながります。人間関係もシンプルになり、自分が付き合いたい人とだけ付き合うようになるため、必要以上に気を使わなくてもよくなりストレスが減少するでしょう。
しかし、ミニマリストの暮らしには以下のようなデメリットもあります。
- 生活に対する気力が失われる危険がある
「物を手に入れたい」という気持ちが、仕事を頑張るモチベーションとなる人もいるでしょう。このような考え方をする人の場合は、物を持たないことにすると、仕事や生活への熱意や気力を失ってしまう可能性も考えられます。
- 強迫観念に駆られる可能性がある
ミニマリストの本来の目的は「物を減らすこと」そのものではなく、「豊かな生活を手に入れること」です。しかし、人によってはミニマリストを目指して、所有する物を捨てることに快感を覚えるケースもあります。本来は物を手放すことで自由になるはずが、「物を手放すこと」に支配されてしまうのです。必要な物まで手放すことになってしまえば本末転倒になるでしょう。
- 必要な物に事欠くリスクがある
ミニマリストとして日用品のストックまでも減らしてしまうと、新型コロナウイルス感染症などの非常事態に必要な物が手に入れられない可能性もあります。実際に、コロナ禍ではスーパーなどの店頭で食料品や日用品が売り切れてなくなり、トイレットペーパーやティッシュ不足などに悩まされることがありました。
どんな暮らし方をするかは人それぞれ。メリットとデメリットを理解した上で、自分らしい暮らしを楽しんでみましょう。ミニマリストになることで、新しい気付きや生き方に出会えるかもしれません。
ミニマリストになるためには?【前編】整理整頓や片付けを継続するコツを解説
1995年生まれ、福岡県出身。2017年に開始した「ミニマリストしぶのブログ」は開設1年で月間100万PVを超える人気ブログに。海外2カ国でも翻訳された著書『手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』はAmazonベストセラー1位を記録。2018年に「Minimal Arts 株式会社」代表取締役に就任。ミニマルな機能美を追求するアパレルブランド「less is_jp」を監修。
ブログ: https://sibu2.com
みんなが読んでいる記事
-
2022/02/10意見がないなら対話しちゃいけない、なんてない。永井 玲衣
日本全国の学校や企業、寺社など幅広い場所で哲学対話の活動を重ねてきた永井玲衣さん。哲学対話はその場ごとにテーマを設けて、複数人で話しながら思考を深めていく活動だ。数え切れないほどの回数を重ねながらも、未だ「対話は怖い」という永井さんだが、ではなぜ活動を続けるのだろうか。哲学対話、そして他者と話すことの怖さと面白さについて話を伺った。
-
2022/09/16白髪は染めなきゃ、なんてない。近藤 サト
ナレーター・フリーアナウンサーとして活躍する近藤サトさん。2018年、20代から続けてきた白髪染めをやめ、グレイヘアで地上波テレビに颯爽と登場した。今ではすっかり定着した近藤さんのグレイヘアだが、当時、見た目の急激な変化は社会的にインパクトが大きく、賛否両論を巻き起こした。ご自身もとらわれていた“白髪は染めるもの”という固定観念やフジテレビ時代に巷で言われた“女子アナ30歳定年説”など、年齢による呪縛からどのように自由になれたのか、伺った。この記事は「もっと自由に年齢をとらえよう」というテーマで、年齢にとらわれずに自分らしく挑戦されている3組の方々へのインタビュー企画です。他にも、YouTubeで人気の柴崎春通さん、Camper-hiroさんの年齢の捉え方や自分らしく生きるためのヒントになる記事も公開しています。
-
2023/01/05障がいがあるから夢は諦めなきゃ、なんてない。齊藤菜桜
“ダウン症モデル”としてテレビ番組やファッションショー、雑誌などで活躍。愛らしい笑顔と人懐っこい性格が魅力の齊藤菜桜さん(2022年11月取材時は18歳)。Instagramのフォロワー数5万人超えと、多くの人の共感を呼ぶ一方で「ダウン症のモデルは見たくない」といった心無い声も。障がいがあっても好きなことを全力で楽しみながら夢をかなえようとするその姿は、夢を持つ全ての人の背中を温かく押している。
-
2019/03/19街づくりは専門家に任せなきゃ、なんてない。田中 元子
夢や目標をかなえるには強い意志が必用だが、「喫茶ランドリー」を運営する株式会社グランドレベル代表の田中元子さんが持つ信念の形はとてもしなやかで優しい。起業の発端となった建築という専門性と一般の人の間を取り持ちたいという思いの起源と、多くの人と大切な場を共有する絶妙なバランスのとり方は、いかにして生まれたのだろうか?
-
2021/09/30【前編】女性が活躍する社会を実現するには? 女性活躍は多様性を生かす試金石
女性活躍推進には、企業の風土改革や男性・女性問わず、社員一人ひとりの仕事・育児・出産に対する意識改革が求められています。性別にとらわれず自分らしく輝けるよう、経営陣や現場のメンバー含め、一丸となって取り組んでいく必要があります。
「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトに、読んだらちょっと元気になる多様な人の自分らしく生きるヒントやとらわれがちな既成概念にひもづく社会課題ワードなどを発信しています。
その他のカテゴリ
-
「結婚しなきゃ」「都会に住まなきゃ」などの既成概念にとらわれず、「しなきゃ、なんてない。」の発想で自分らしく生きる人々のストーリー。
-
LIFULLが社会課題解決のためにどのような仕組みを創り、取り組んでいるのか。LIFULL社員が語る「しなきゃ、なんてない。」