画家・塩谷歩波を知るための10のポイント【止まった時代を動かす、若き才能 B面】

あしたメディア×LIFULL STORIES共同企画

2019年末から世界を侵食し、今なお我々を蝕むコロナ禍。失われた多くの命や、止まってしまった経済活動、浮き彫りになった価値観の衝突など、暗いニュースが多い現在。しかし、そんな閉塞的な空気の漂う今でも、むしろ今だからこそ、さらに自身のクリエイティビティを輝かせ、未来を作っていく素敵な才能を持つ若者たちが存在する。

既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援する「LIFULL STORIES」と、社会を前進させるヒトやコトをピックアップする「あしたメディア by BIGLOBE」は、そんな才能の持ち主に着目し、彼ら/彼女らの意志や行動から、この時代を生き抜く勇気とヒントを見つけるインタビュー連載共同企画「止まった時代を動かす、若き才能」 を実施。

A面では、その才能を支える過去や活動への思いを、B面では、表舞台での活躍の裏側にある日々の生活や、その個性を理解するための10のポイントを質問した。

A面はこちらから⇒【銭湯で「好き」を仕事にした画家・塩谷歩波】

『銭湯図解』をはじめ、幼少期から抱く芸術が「好き」という気持ちをパワーに変え、多方面で活躍する画家・塩谷歩波さん。1問1答で紐解く「塩谷歩波を知るための10のポイント」。

画家・塩谷歩波を知るための10のポイント

1. 銭湯は「ケの日のハレ」。だから好きなんです

家のお風呂が日常で温泉が非日常だとすると、銭湯はちょうどその間なんです。文化人類学の言葉で「ハレとケ」という言葉があります。「ハレ」は非日常、「ケ」は日常を指す言葉なのですが、銭湯はまさに「ケの日のハレ(日常の中の非日常)」のような感覚です。ちょっと気晴らしに行けるお風呂で、その手軽さがすごくちょうどいいんです。早めに仕事が終わったから銭湯でも行くか、とか眼が疲れたから銭湯に行って休もう、みたいなちょっとしたご褒美みたいに使えるところが銭湯の素敵なところだと思います。

2. 湯上がりの中華までが最近のマイブーム

最近は西荻窪と荻窪の間にある「秀の湯」によく行きます。こじんまりとしているのですが、露天風呂・炭酸泉・薬湯・サウナと充実した設備がギュッと詰まってます。その2軒先にある中華料理店がめちゃくちゃ美味しくて、秀の湯から中華という流れにハマってます。

3. 憧れはミケランジェロやダリ。絵描きを夢見た幼少期

小さい頃からミケランジェロやダリの絵がすごく好きです。あれほどの巨匠になれるかはわからないですけど、絵を描く人は小さい頃からの憧れでした。本当、ふんわりとした憧れですかね。だから小さい時から絵描きになりたいと思っていました。

4. 1ヶ月休めるなら、イタリアで名画を観まくりたい

もし1か月休めるならイタリアに行きたいですね。大学生の時に1度行ったことがあるのですが、その時に訪れたフィレンツェは街並み、食事、人柄や雰囲気などが全部が心地よくてフィットして、初めて来たと思えないような感覚がありました。当時はまだ大学生で絵の知識もなかったのですが、画家になった今、全ての見え方が違うんだろうなと思うんです。水が合うように感じたイタリアに1か月滞在して、名画を観まくれたらどれだけ幸せだろう、と思います。

5. 一緒に愚痴って、一緒に怒ってくれる大切な友人

俳優の小川紗良さんは大切な友人です。私の銭湯での経験を題材にしたドラマ『湯あがりスケッチ』(2022、ひかりTV)で私の役を演じてくださったのをきっかけに出会いました。紗良さんは人の心の機微に敏感なんです。俳優・小説家・映画監督と、様々な表現をしているので人の心がよくわかるんだと思います。一緒に愚痴ってくれて、一緒に怒ってくれる、大好きな友人です。

6. 「塩谷ちゃんはやっぱり絵がすごい好きじゃん」

友達に言われてすごく印象に残っている言葉です。当時はまだ建築事務所で働いており、転職に迷っていた時でした。なかなか自分に自信を持てずにいたので、自分の絵に対するコンプレックスも強くて。なので、改めて友人から「絵がすごい好きなんだから、その道の方がいいんじゃないの」と言われて、目から鱗でした。「友人にそう言われるほどわたしは絵が好きだったんだ」って感動しました。

7. 友人からは「凄まじいオタク」と言われます

友人からは「凄まじいオタク」と言われます。ハマってからのスピードとか知り方が深すぎて、それが怖いと(笑)。何に対しても熱量がすごいということみたいです。確かに、銭湯もはまってから仕事にするまでのスピード感も結構早いのかも。

8. 世の中の情報をできるだけインプットしてから発信します

自分で表現するまでにリサーチを徹底します。凄まじいオタクの私のやり方は、まずオフィシャルの情報を漁ります。世の中に出ている情報をできるだけ全部見た上で、次にファン層を見ます。Twitterやファンコミュニティを見てファンを知り、ある程度の知識を入れてから、やっと自分で表現をし始める。基礎知識があった上で発信するとフォロワーが増えて、コミュニティが広がっていきます。漫画、アニメ、お茶、銭湯、アート、音楽まで、ハマる時はすべてこの順序です。銭湯やお茶では最後に公式とつながるところまで行きました(笑)。9月くらいから茶室の図解を描くのですが、それもお茶にハマって調べるうちに茶道の先生と仲良くなった、というのがきっかけでした。

9. 疲れを癒してくれるのはやっぱりアート

弱ってるときほどアートに癒されます。映画も音楽も文章も絵も、表現と言えるもの全部が大好きです。「今日は泣きたいな」と思って映画を観たり、「こういう気持ちを知りたい」と思って文章を読んだりします。音楽や映画、文章は心が苦しくなったときにいつも寄り添ってくれる存在なんです。

特に絵を観るときは、解説文や案内などの前提知識なしで実物を観ます。ノイズキャンセリングで音を全部シャットアウトし、帽子を深くかぶって視界を閉じて、絵だけに集中するんです。そうして「絵に対して自分がどう感じているか」を深く考えています。

10. 丁寧に見る、丁寧に知ることを大切にしたい

いま大切にしてることは、物事を丁寧に見て知ることですね。自分に都合が悪いこともちゃんと見るようにしています。自分で描いている作品も「本当にこの色でいいのかな」とか、「何でこの絵を描いているのかな」「この建物ってどうしてこの色合いなんだろうな」とか、細かいことを丁寧に見ています。丁寧に見れば見るほど、自分がやっていることの意味や、自分の絵を見て心惹かれてくれる理由が分かるような気がして面白いんです。なので、丁寧に見ること、丁寧に知ることを大事にしてます。

好きを原動力に新しい世界に挑戦し続ける塩谷さんのプライベートには、絵や銭湯など好きなものが寄り添っていた。物事に丁寧に向き合うことを大切にしていると話してくれた塩谷さん。周りにも「凄まじいオタク」と言われるほど好きなことを突き詰め、自分自身の感情や芸術とも真剣に向き合う姿勢が、塩谷さんが「好き」を仕事にし、活躍する秘訣なのかもしれない。

Profile
塩谷 歩波
設計事務所、高円寺の銭湯・小杉湯を経て、画家として活動。建築図法“アイソメトリック”と透明水彩で銭湯を表現した「銭湯図解」シリーズをSNSで発表、それらをまとめた書籍を中央公論新社より発刊。レストラン、ギャラリー、茶室など、銭湯にとどまらず幅広い建物の図解を制作。TBS「情熱大陸」、NHK「人生デザイン U-29」など数多くのメディアに取り上げられている。2022年には半生をモデルとしたドラマ『湯あがりスケッチ』が放送された。
Twitter @enyahonami
Instagram @enyahonami

★塩谷さんのA面記事を読む⇒【銭湯で「好き」を仕事にした画家・塩谷歩波】

文:Natsuki Arii
編集:おのれい
写真:内海 裕之

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